第0952日目 〈雅歌第4章:〈恋人よ、あなたは美しい。〉&夕べ、飲み過ぎて帰る途次、……〉 [雅歌]

 雅歌第4章です。

 雅4:1-16〈恋人よ、あなたは美しい。〉
   若者の歌
 1:恋人よ、あなたは美しい。
  あなたは美しく、その目は鳩のよう
  ベールの奥にひそんでいる。
  髪はギレアドの山を駆け下る山羊の群れ。
 2:歯は雌羊の群れ。毛を駆られ
  洗い場から上ってくる雌羊の群れ。
  対になってそろい、連れあいを失ったものはない。
 3:唇は紅の糸。
  言葉がこぼれるときにはとりわけ愛らしい。
  ベールの陰のこめかみはざくろの花。
 4:首はみごとに積み上げられたダビデの塔。
  千の盾、勇士の小盾が掛けられている。
 5:乳房は二匹の小鹿。
  ゆりに囲まれ草をはむ双子のかもしか。

 6:夕べの風が騒ぎ、影が闇にまぎれる前に
  ミルラの山に登ろう、乳香の丘にわたしは登ろう。

 7:恋人よ、あなたはなにもかも美しく
  傷はひとつもない。

 8:花嫁よ、レバノンから出ておいで
  おいで、レバノンから出ておいで。
  アマナの頂から、セニル、ヘルモンの頂から
  獅子の隠れが、豹の住む山から下りておいで。

 9:わたしの妹、花嫁よ
  あなたはわたしの心をときめかす。
  あなたのひと目も、首飾りの一つの玉も
  それだけで、わたしの心をときめかす。
 10:わたしの妹、花嫁よ、あなたの愛は美しく
  ぶどう酒よりもあなたの愛は快い。
  あなたの香油は
    どんな香り草よりもかぐわしい。
 11:花嫁よ、あなたの唇は蜜を滴らせ
  舌には蜂蜜と乳がひそむ。
  あなたの衣はレバノンの香り。

 12:わたしの妹、花嫁は、閉ざされた園。
  閉ざされた園、封じられた泉。
 13:ほとりには、みごとな実を結ぶざくろの森
  ナルドやコフェルの花房
 14:ナルドやサフラン、菖蒲やシナモン
  乳香の木、ミルラやアロエ
  さまざまな、すばらしい香り草。
 15:園の泉は命の水を汲むところ
  レバノンの山から流れてくる水を。

   おとめの歌
 16:北風よ、目覚めよ。
  南風よ、吹け。
  わたしの園を吹き抜けて
  香りを振りまいておくれ。
  恋しい人がこの園をわがものとして
  このみごとな実を食べてくださるように。

 これがどういう歌かといえば、一読瞭然(こんな言葉ないけれど)、男女が床入りを前に経験する甘美な性的衝動、もうなにものにも抑えられぬ法悦へと身を投げ出す衝動に駆られての歌です。「夕べの風が騒ぎ、影が闇にまぎれる前に/ミルラの山に登ろう、乳香の丘にわたしは登ろう。」(雅4:6)はわたくしの殊に気に入っている詩句であります。
 簡単に註釈めいたことを記しておきます。雅4:8「アマナの頂から、セニル、ヘルモンの頂」とあります。いずれも同じヘルモン山ですが、ヘルモン山には3つの峰があり、アマナもセニルもその内の一つ。
 ヘルモンの頂は「アンティ・レバノン山脈の南端にある海抜2,800メートルを越える最高峰」であり、北端の頂がアマナ、中央がセニルと呼ばれる。「北東のダマスコ、西のレバノン、南西のナザレ、また南東のハウランのどの方向から眺めても、畏怖の念を抱かせる姿でそびえ立ち、山頂は年間を通して雪に覆われている。雪解けの水は豊富で、西側の斜面にはヨルダン川の源流が見られる。」(『新エッセンシャル聖書辞典』P895)
 こうした理解が先にあると、「花嫁よ、レバノンから出ておいで」や「獅子の隠れが、豹の住む山から下りておいで」という若者の呼びかけも、なるほど、とわかると思います。


 世界よ、お前に慈悲があるならば、望みをかなえてほしい。ゆるぎなき想いに根差した望みを。――夕べ、飲み過ぎて帰る途次、いつもの飲み場に腰をおろし、葉を茂らせた桜の木と、その向こうに静かに浮かぶ月影を仰ぎ、願ったのです。思い出はますます鮮やかになってゆく。◆

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。