第1519日目 〈トビト記第6章:〈魚の捕獲〉&〈ラファエル、サラをめとるようトビアに勧める〉withあの人を祈り求めなさい、現実を厭う者よ。〉 [トビト記]

 トビト記第6章です。

 トビ6:1-9〈魚の捕獲〉
 犬も加えた一行がティグリス川の畔で夜明かしすることになった晩である。川縁に下りて足を洗おうとしていたトビアに大きな魚が襲いかかった。同伴者が悲鳴をあげているトビアに、その魚を捕らえて放すな、といったので、トビアはそうした。
 かれらは切り裂いた魚から心臓と肝臓を取り出し、また胆のうを取り出すと、身は食べて他はすべて棄てた。
 メディアへ近附いたとき、トビアは同伴者に、あの魚の内臓は薬として役立つといったがどんな効能があるのか、と訊ねた。同伴者が答えるに、心臓と肝臓は悪魔/悪霊憑きの者の前で燻すと禍々しいものの力は失われてしまいます、また目にできた白い膜に胆のうを塗るとそれは取り除かれて以前のように見ることができるようになります、と。

 トビ6:10-18〈ラファエル、サラをめとるようトビアに勧める〉
 エクバタナ近郊まで来ると、同伴者はトビアに今後のことを語った。曰く、――
 今夜は同じナフタリ族のラグエルの家に泊まりましょう。そこには一人娘のサラがいます。あなたは彼女を妻となさい。あなたは同族で唯一、サラの夫となる資格を持つ人です。
 エクバタナのラグエルの家で、今夜わたしはかれとこのことについて話し合います。そうしてあなたとサラの婚約を取り決めます。ラグエルがあなたとサラの結婚に反対することはありません。なぜならかれも、あなたが娘と妻とするに足る唯一の人物であると知っているからです。
 ……そう、確かにサラには悪魔憑きの噂があり、それは事実です。そこであなたは婚礼の夜、彼女の前であの魚の心臓と肝臓を、焚いた香の上に置くのです。そうすると悪魔はその匂いに耐えきれなくなり、すたこらさっさと逃げてゆきます。もう二度と悪魔の力がサラに及ぶことはありません。
 そのあとであなたたちは天の主へ祈りなさい。恐れず畏れよ。既にあなたたちは世の始まる前から夫婦となるよう定められていたのです。やがて2人の間には愛すべき子供が生まれることでしょう。
 トビアよ、あなたの父君の言葉を忘れぬように。
 ――これを聞いてトビアは同じナフタリ族の者であるというサラを深く愛するようになり、かれの心は固く彼女へ結び付けられたのだった。

 トビ6:13は、モーセの書が定めるところによってラグエルはサラを妻としてトビアに差し出すことを拒んではならない、背くことは死に価する罪を犯すに等しい、と述べます。モーセの書、というのはなんだろう、と考え、所謂モーセ五書を斜め読みした。おそらく民36:6を指すか、と思いますが、自信は持てません。いったい注釈書の註を付けることの難しさを想像する次第であります。
 続編については教会の人も信者もあまり頼りにならないからなぁ……。どこかに有能なブレインはいないだろうか?



 祈り求めなさい、「世の始まる前に、この娘はあなたの妻として定められていたのですから。彼女を悪魔から救い出すのはあなたであり、彼女はあなたと生涯を共にするのです。きっと二人の間に子供たちが授けられ、子供たちはあなたにとって、愛すべき者となるでしょう。」――最後まで引用を迷ったトビ6:18にあるラファエルの言葉です。
 いやぁ、これ読んでて空しくなりましたね。わたくしにとっては嫌味なぐらいまるきり縁なき文言ですから。おまけに、いまのわたくしの心をずたずたに裂くにこれ程、直球な文言も聖書にはなかなかあるまいよ。
 いつか現実になればいいと思うけれど、世界は自分に都合の良いようには動いてくれない。時間は望むように流れてくれない。希望は夢想にすり替えられ、夢想はやがて死んでしまう。そうして過去はいつまでも魂を苛む。
 悠希さん、あなたを想う哀れな男がそこにいます。いつになっても枯れることを知らない気持ちが妄執のように、ずっとそこにあって蜷局を巻いています。
 或る朝、隣に。
 小倉さん?
 ん、小倉だよ?
 本物?
 本物だし、現実だよ。
 ――朝の健やかな光に包まれて、いつか見たい思い描いた光景。『定家葛』◆

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。