第1614日目 〈マカバイ記一第2章:〈マタティアとその子ら〉、〈安息日の惨劇〉他with憂い事、非常事態宣言〉 [マカバイ記・一]

 マカバイ記一第2章です。

 マカ一2:1-28〈マタティアとその子ら〉
 時に前167年、エルサレム北西約30キロにあるモデインという町に、一人の敬虔なユダヤ人マタティアが、5人の息子と一緒に暮らしていた。ヨハネ、シモン、マカバイと呼ばれるユダ、エレアザル、ヨナタンである。かれらはエルサレムで起こった凶事の数々を知って、声をあげて、衣服を割いて粗布をまとい、泣き悲しんだ。
 その年の或る日、アンティオコス4世の命令を伝えに、セレコウス朝の役人がモデインヘやって来た。背教を促しに来たのである。町の住人すべてが集められた。マタティアとその息子たちも役人の前に集められた。役人がマタティアに目を留めて、言った。曰く、⎯⎯
 あなたはこの町の有力な指導者で人々の信頼も篤い。だから、あなたには率先して王の命令に従ってほしい。そうすれば、たくさんの褒美が与えられることだろう。
⎯⎯と。
 が、マタティアは頑としてこれを拒んだ。たとい王の領土内で暮らすすべての人々が、王の命令に従って先祖の宗教を棄てたとしても、わたしはそんな命令に従って生きるつもりはない。わたしは先祖の神との契約に従って生きる。「律法と掟を捨てるなど、論外です。わたしたちの宗教を離れて右や左に行けという王の命令に、従うつもりはありません。」(マカ一2:22)
 そのとき、1人の住民が、異教の祭壇へ生贄を捧げようと進み出た。恭順の意を示そうというのだろう。しかしマタティアはこれを見て大いに憤激し、律法への情熱ゆえにかの者を斬殺した。またその勢いで、王の役人の1人も同じ目に遭わせ。マタティアは続けて異教の祭壇を引き倒す。それらは往古、ピネハスがジムリに対して行ったと同様、律法への情熱が為さしめたものであった(ex;民25:7-8,14-15)。
 モデインの住民に向かってマタティアは、律法に従って生きる者、契約を固く守る者はわたしに続け、と言って町を去り、山中へと逃れた。5人の息子たちがそれに従っていた。

 マカ一2:29-38〈安息日の惨劇〉
 時を同じうして、荒れ野には背教を拒み、王の命令に従わぬ者たちが集まっていた。このことは当然、王の役人たちと軍隊の知るところとなった。
 安息日。セレコウス朝の兵たちは荒れ野の隠れ場に潜むユダヤ人たちに恭順と排莢を呼び掛ける。が、ユダヤ人たちはこれを拒絶した。安息日を汚せ、という王の命令など聞けるものか、と言って。
 すると兵たちはユダヤ人の攻撃に掛かった。けれども安息日なるがゆえにユダヤ人たちは応戦せず、隠れ場を守ることなく、大地に倒れていった。かれらの曰く、「我々は全員潔く死ぬ。お前たちが我々を不当に殺したことを大地が証言してくれよう」(マカ一2:37)と。
 この安息日に殺されたユダヤ人は1,000人に及んだ。

 マカ一2:39-48〈抵抗の始まり〉
 同胞を見舞った安息日の惨劇を知ったマタティアとその同志たちは、犠牲となったかれらを心より悼み、決意した。
 荒れ野の同胞は安息日を守って敵に抗うことなく死んでいったが、われらはそれを良しとしない。たとえその日が安息日であろうと、敵が襲いかかってくるならば、剣を持って戦おう。荒れ野の隠れ場で死んでいった同胞のような最期は決して遂げまい。
 ⎯⎯マタティアの下には続々と志を同じうする者が馳せ参じてきた。イスラエル屈強のハシダイの一群もそのなかにいた。その後も陣営は規模を大きくしてゆき、結束を固めた。かれらは異教に染まって先祖の生活を顧みなくなったユダヤ人を討ち、町々にある異教の祭壇を破壊した。割礼を受けていないユダヤ人がいれば力づくで割礼を施させた。こんな風にしてかれらは各地を回ったのである。
 「こうして彼らは不遜な者どもを追撃し、勝利への道を着々と手にして、異邦人や、王たちの手から律法を奪回し、勝利の角笛を罪人に渡すことはなかった。」(マカ一2:47-48)

 マカ一2:49-70〈マタティアの遺言〉
 前166年マタティアに死期が近附いた。
 かれは5人の息子たちに遺言した。曰く、⎯⎯
 「今は高慢とさげすみのはびこる、破滅と憤りの世だ。お前たちは律法に情熱を傾け、我らの先祖の契約に命をかけよ。我らの先祖がそれぞれの時代になした業を思い起こせ。そうすればお前たちは、大いなる栄光と永遠の名を受け継ぐことになる。」(マカ一2:49-51)
 アブラハムを思え。ヨセフを思え。ヨシュアを、カレブを思え。王ダビデを思え。預言者エリヤを思え。ハナンヤ、アザルヤ、ミシャエルを思え。ダニエルを思え。
 神に希望を置く者は決して力を失わない。罪人の言葉を恐れるな。かれの栄光は明日には消え失せる。、息子たちよ、律法を拠り所として雄々しく生きよ。律法によってのみお前たちには栄誉が与えられるのだ。
 息子たちよ、兄弟シモンの言葉に耳を傾けよ。かれは知略に長けた者である。
 息子たちよ、兄弟ユダ・マカバイを軍の指揮者として仰げ。かれは諸国民との戦いを戦い抜くであろう。
 「お前たちは、律法を実践する者全員を集め、民のために徹底的に復讐することを忘れるな。異邦人たちには徹底的に仕返しし、律法の定めを固く守れ。」(マカ一2:67-68)
 前166年、マタティアは5人の息子を祝福したあと、逝去した。遺体はモデインにある先祖の墓へ葬られた。
 全イスラエルがかれの死を深く悼んだ。

 マタティアは<マカバイ戦争>のシナリオのファースト・シーンを書いた人でした。
 セレコウス朝の役人の前で堂々と自己の信ずるところを述べ、眼前で敵に恭順を示す輩あれば、同胞であろうとためらうことなく殺められるマタティア。律法への情熱を失うことなく抱き続けた人だからこそ、その意志が誤ることなく揺らぐことなく、5人の息子たちへ伝わったのでありましょう。
 息子たち、専らユダ・マカバイの活躍は次章以後で語られてゆきます。そうしてマタティアの血筋は再びこの地方に王朝国家を芽生えさせることになるのです。
 マタティアという人物の、その律法主義の頑なさ、その国粋主義の強烈さ、その行動理念の過激さに感じ入るところ大だったわけですが、これは亡国を経験した民族ならではのアイデンティティなのかもしれません。



 おわかりいただけるかもしれないが、本書に入ってブログ原稿は長いものばかりである。なんとか知恵と能力を絞って短くしようと思うものの、あまり成果はない。
 これまでならモレスキンのノートに1ページか1.5ページ程度で収まっていた原稿が、現在は2ページ以上になることが当たり前である。必然的に清書を読む時間、不明点があれば調べる時間、原稿を書く時間、帰宅してパソコンに清書する時間が、以前に比べて長くなるわけだ。
 わたくしがちかごろ軽くて駆動時間の長い、13インチ程度のノートPCの購入を真剣に検討しているのは、それゆえのことなのだ。おまけに最近は残業と早朝出勤がしばしばで、ますます時間は足りなくなってくる。おお!
 頭痛の種の一つが読者離れの懸念だ。長くなる原稿を読んでくださる方がどれだけいるだろうか? 原稿作成にかかる時間の短縮と読者離れを防ぐ、一挙両得の方法はないものか。……実は一つだけある。考えられる限り、唯一現実的な、<たったひとつの冴えたやりかた>。
 つまり、原稿の分割である。これまでもたびたび採ってきた方法だ。ほぼすべての章が「1/2」、「2/2」となるが、案外「マカバイ記一」はこのスタイルがぴったりかもしれない。こちらも息切れすることなく、読者も飽きず読みやすく、これこそ一挙両得なのではあるまいか?
 とはいえ、これの採用をいますぐ行うわけではない。当面は常の通り、1日1章の原則を貫徹する。本ブログが「マカバイ記一」の読書中に分割掲載を行ったら、一種の非常事態宣言であると思うていただいて構わない。◆

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。