第1648日目 〈マカバイ記二第10章2/2:〈治世の初め〉、〈ゴルギアスとの戦い〉&〈ティモテオスに対するユダの勝利とゲゼルの占領〉withチンピラ者へのレクイエム〉 [マカバイ記・二]

 マカバイ記二第10章(アンティオコス・エウパトルの治世下の事件)2/2です。

 マカ二10:9-13〈治世の初め〉
 では、アンティオコス5世エウパトルの御代にあった出来事について語ろう。
 その御代の始め、コイレ・シリアとフェニキアの総督にリシアスが任命された。ユダヤ人を庇護したことが原因で前任者プトレマイオスが解任されたためである。
 かれはエジプト王に仕えてキプロス島を任されたが、やがてその役を捨ててアンティオコス4世の臣下となった。裏切り者と呼ばれ続けたプトレマイオスは総督の地位を追われた後、服毒自殺して、この世を去った。

 マカ二10:14-23〈ゴルギアスとの戦い〉
 ユダヤ南部のイドマヤ地方の総督になったゴルギアスは傭兵を雇い、また周辺の砦を占領しているイドマヤ人と組んで、ユダヤを攻めて苦しめるようになった。
 ユダ・マカバイは主に祈ったあと、出陣した。そうして数の上でははるかに優るゴルギアス勢を殲滅した。それを免れた敵は、「包囲に対処してあらゆる備えをした非常に堅固な二つの塔」(マカ二10:18)へ雪崩を打って逃げ込んだ。ユダ・マカバイはそこの包囲をシモンとヨセフ、ザカイとその勇士たちに任せ、自分はまだ攻撃を受けている遊軍の救援に回った。
 ──ところが、銀貨7万ドラクメで買収されたシモンの部下たちが、敵が砦から逃亡するのを見逃してやる、という事件が起こった。その報告を受けたユダ・マカバイは民の長老たちを集めて叱責、件のシモンの部下たちを処刑した。
 2つの塔は時を置かずして占拠された。

 マカ二10:24-38〈ティモテオスに対するユダの勝利とゲゼルの占領〉
 前の戦闘で敗走したティモテオスが、軍勢を新たにして再びユダヤに戦いを挑んだ。
 ユダ・マカバイは主に祈願するため、祭壇の前にひれ伏した。曰く、「神よ、我らに哀れみを垂れ、律法が明示しているように、我らの敵に対しては敵となり、我らの反対者に対しては反対者になってください。」(マカ二10:26)
 斯くして両軍は夜明けと共に、ゲゼル近郊で激突した。その戦いがいよいよ佳境に入った頃、ユダヤ軍を守るかのようにして5人の騎士が現れ、ユダ・マカバイたちを導いた。
 「戦いがたけなわのとき、金のくつわをはめた馬にまたがる五人の騎士が、天からはっきりと敵前に出現し、ユダヤ人たちの導き手となった。そのうちの二人は、自ら盾となってマカバイの両側に立ち、彼に傷一つ負わせないようにし、敵に対しては、矢と稲妻を浴びせかけた。敵は目がくらんで右往左往し、逃げ惑った。」(マカ二10:29-30)
 その結果、ティモテオス軍の過半が地に倒れた。
 ティモテオスはゲゼルへ逃げ込んだ。5日目の夜明け、ユダヤ軍の若者20名が果敢に町へ突入し、出会うや敵を斬殺した。これを契機にユダヤ軍はゲゼルに雪崩れ込み、塔に火を放ち、主を冒瀆する者たちを生きながらにして焼き殺し、貯水池に潜んでいたティモテオスを捕らえて惨殺した。
 「一切が終わり、ユダヤ人たちは、賛歌と感謝とをもって、イスラエルに大いなる恵みを施し、勝利を与えられた主をほめたたえた。」(マカ二10:38)

 本日から読書はアンティオコス5世の御代の出来事に入ります。
 セレコウス朝もプトレマイオス朝もアレクサンダー大王の後継者が建てた国家なので、実際はわたくしなどが思う以上にしばしばあったことなのかもしれませんが。コイレ・シリアとフェニキアの総督であったプトレマイオスが以前はエジプト王に仕えており、一つの島の警護を任されるだけの地位にあった、ということが驚きなのであります。相応の人物であったことが想像されますが、そんなかれがいったいどういうわけでセレコウス朝の役人になったのか、という一点にわたくしの興味は集中します。
 これが一種の人事異動なのか、障りあって亡命めいたことを行わねばならなかったのか。<裏切り者>と称される以上はおそらく後者なのでしょうが、いったいなにがかれを駆り立てて斯く行動させたのか、非常に気になるところであります。ゆえに「マカバイ記二」が終わったら、かの時代について書かれた書物を、仕事帰りの図書館で読み漁ることになりそうな、そんな予感が胸の隅っこに芽生えております。
 引用もしたマカ二10:29-30で現れた騎士たちは、同書3:25-26にて、神殿の宝庫に侵入したヘリオドロスの前に現れた騎士、5:23にてアンティオキア上空に出現した幻の騎士、或いは明日読む11:8にて報告されるエルサレム近郊でユダ・マカバイたちの前に現れた騎士と、同じでありましょう。イスラエルの主の遣いにしてユダヤの守護騎士、と申せばいいでしょうか。当時は言い忘れてしまったことですが、マカ二5:23に騎士たちの幻が出現した場面を読んでいてわたくしは思わず、アーサー・マッケンの<モンスの天使>事件を想起いたしました。これについては、「マカバイ記二」読了から「知恵の書」に入るまでの間にご紹介しましょう。



 今夜ばかりは村上春樹を避けて、ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』の新訳を読んで、欠伸が3連発したところで巻を閉じ、部屋の電気を消す。真っ暗な部屋の闇に何物も潜んでこちらを窺っていませんように、と祈りながら、まぶたを閉じる。どうか今宵は久しく再会していない妻なりし人と夢のなかで再会できますように。そうして幻の子供たちともう一つの現実を生きることができますように。
 やがて、──
 静寂が降りた夜の住宅街に突然車のタイヤがきしむ音がし、ドアが荒々しく開かれ閉められる。続けて聞こえてくるは、無学文盲、理性が端から欠如したようなチンピラ風情のけたたましき声と罵声。なにが理由か知らぬが、やたらとトサカに来ているようだ。対応する相手の声が静かに聞こえる。理性と知性が保たれた物言いだった。
 言い合い。チンピラによる悪罵のリピート。突然近隣の家の住民から、黙れ、と一括する声があがる。途端ににチンピラの声は聞こえなくなり、ぎわーっ、と叫んだ後、再び車に乗り込み急発進させる──が、その十数秒後、電柱だかガードレールだかに思い切り衝突する音が、深夜の静寂を完全に破った。
 やれやれ、と隣で眠る者が気付かぬよう頭を振り、グッド・グリーフ、と口のなかで呟いてみる。遠くからサイレンの音が近づいてくる。ああ、今日も寝不足。明日は仕事じゃ、どうしてくれるのだ。
 チンピラ者よ。君にささやかなる神の怒りが降りますように。食べ物の恨みもそうだが安眠を妨げられた者の怒り恨みは、それよりはるかに強いのじゃ。呵々。◆

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