第1795日目 〈バルク書第1章1/2:〈序言〉withまた一つ、読んでいたマンガが完結した……。〉 [バルク書]

 バルク書第1章1/2です。

 バル1:1-9〈序言〉
 前586年、新バビロニア帝国がユダに最後の侵攻を行った。南王国ユダの最後の王ゼデキヤと高官、役人、富者といった有力者たちと職人たちが敗都エルサレムから引き離され、遠く敵国の帝都バビロンへ、捕囚として連行されてゆく。
 それから5年後、かの月の7日のことである。かつて預言者エレミヤの友にして書記を務めた人、バルクはバビロンを流れるスド川のほとりにて、その地に住む同胞を前にして一巻の巻物を朗読した。集まってきたユダヤ人のなかにはユダ滅亡よりも前に捕囚となっていたエコンヤ(ヨヤキン)王の姿もあった。
 バルクがこれを読むと、かれらは一様に涙し、断食して主なる神へ祈った。そうして各々の分に応じてお金を出しあい、いまは荒廃したエルサレムに残る同胞へそれを送り届けた。当時そこに残っていたのは、大祭司ヨヤキムとその他の祭司たち、それに特に貧しい民らであった。
 このとき既にバルクは、神殿から略奪された銀製の祭具を取り戻していた。これらはエコンヤ王たちがバビロニアへ連行されていったあと、ゼデキヤ王によって作られたものである。

 「エレミヤ書」を読んでいたのがずいぶんと前のことに思える。さすがに記憶が曖昧になっているので、復習を兼ねて南王国ユダ滅亡/王都エルサレム陥落の年代について触れておこう。
 上記ではそれを前586年と特定したが、史料によって若干のズレが生じるのは紀元前のことゆえ仕方ないとして、一方で前587年とする説もある。「エゼキエル書」を読んでいたとき、バビロン捕囚の時期と、連行された主だった人をまとめたことがあった。曰く、──
 ○バビロン捕囚 
 前605年 第1次バビロン捕囚:ダニエル他
 前593年 第2次バビロン捕囚:ヨヤキン王、エゼキエル他
 前586年 第3次バビロン捕囚:ゼデキヤ王他 エルサレム陥落/ユダ王国滅亡
 前583年 第4次バビロン捕囚:バビロニア軍親衛隊長ネブザルアダンが745人を連行
 (第1208日目 〈エゼキエル書第2章:〈エゼキエルの召命〉2/3〉より)
 ヨヤキン王を指す「エコンヤ」という名は、新改訳聖書で馴染む表記だ。新共同訳では「列王記」、「歴代誌」いずれでも「ヨヤキン」とされるため、「バルク書」を読んで戸惑うかもしれないけれど、同一人物である。ちなみにバル1:3で「ユダの王エホヤキム」と書かれる王もいるが、これはエコンヤの父でユダ王国の前王ヨヤキムのこと。立て続けに似た名前が登場すると混乱してしまう、という好き例であろう。
 〈序言〉に名の出る3人の王ついては以下の通り、──
 エホヤキム/ヨヤキムの事績は王下23:36-7と代下36:5-8に載る。
 エコンヤ/ヨヤキンの事績は王下24:8-17、同25:27-30と代下36:9-10に載る。
 ゼデキヤの事績は王下24:18-25:7と代下36:11-21に載る。
 エコンヤ/ヨヤキンは捕囚となってから37年が経った前556年、時のバビロニア王エビル・メロダクの恩赦によって放免された。ジークフリート・ヘルマンがいうように、これは「希望の曙光」(『聖書ガイドブック』P66 教文館)であった。
 ここで一つ気になるのは、バルクが巻物を読むのを聞いたユダヤ人たちにユダの元王ヨヤキンが混じっていた、という点である。「列王記・下」にある解放の記述に従うなら、これはおかしな話だ。バルクが巻物を読んだのはエルサレム陥落から5年後、即ち前581年である。ヨヤキンが解放(出獄)されたのはかれが捕らえられて37年後のこと──計算するまでもなく、前556年となる。年代がまったく合わない。しかし、「バルク書」は史実に立脚した書物ではない。この記述は、バルクが読む手紙に真実味を加えることを目的とした潤色ではないか。
 年代については若干の異同があるが、新バビロニア帝国の王は以下の通りである、──
 1;ナポポラッサル王 前626-605年
 2;ネブカドネツァル王(2世) 前605-562年
 3;エビル・メロダク(アメル・マルドゥク)王 前562-560年 ネブカドネツァルの子
 4;ネリグリサル王 前560-556年
 5;ラバシ・マルドゥク王 前556年
 6;ナボニドゥス(ナボニドス)王 前556-539年
 7;ベルシャツァル 前539-543年 ネブカドネツァルの孫、ナボニドスの子
 最後のベルシャツァルは「ダニエル書」でその名をわれらは見た。が、かれは実際のところ、「王」ではなく「摂政」であった、という。
 バルクが読んでエルサレムへ送った手紙には、バビロンの王ネブカドネツァルとその子ベルシャツァルの長寿と健康を祈れ、とある(バル1:11-12)。これもまたおかしな話であるが、「バルク書」が史実に立脚した書物ではない、と申しあげる根拠でもある。
 バル1:8「シワンの月」とは捕囚後のユダヤ暦で3月。今日われらが用いる太陽暦では5-6月であるとのこと。ふむ、課税証明書が発行される時期であるな。
 なお、12小預言者の一人、ヨエルはおそらく陥落後のユダを舞台に活動した預言者と思う、と第1319日目にてわたくしは書いた。いちおうバルクが大祭司ヨヤキム宛へ手紙を書き送ったのと同じ時期に当のエルサレム、もしくはその周辺地域で活動していた人物、と考える。



 さと『タイムフラグ』第2巻を読みました。これを以て完結。次の巻を楽しみにするマンガがまた一つ減った。蔵石ユウ・原作/西木田景志・作画『我妻さんは俺のヨメ』も今年完結してしまったしね。残るは吉田秋生『海街diary』と石塚真一『BLUE GIANT』ぐらいか。だんだんと淋しくなってゆくなぁ。
 『タイムフラグ』については感想を書きたいですね。これは短くも感想を書くに値する作品だった。◆

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