第1949日目 〈ルカによる福音書第9章:〈十二人を派遣する〉、〈サマリア人から歓迎されない〉他with欠けた「カフカ・コレクション」を買いに行く。〉 [ルカによる福音書]

 ルカによる福音書第9章です。

 ルカ9:1-6〈十二人を派遣する〉
 或るとき、イエスは12弟子を呼び集め、「あらゆる悪霊に打ち勝ち、病気をいやす権能を」(ルカ9:1)かれらに与えた。その際、イエスは弟子たちにいった、──
 旅の荷物を携えてはならない。食糧もお金も衣類もなにも持たずに旅をせよ。町や村に到着して誰かの家に入ったらそこに留まり、その家から次の目的地へ向かいなさい。どの家もあなた方を迎え入れなかったら、その町や村を出るとき足の裏の埃を払い落としなさい。
 「十二人は出かけてゆき、村から村へと巡り歩きながら、至るところで福音を告げ知らせ、病気をいやした。」(ルカ9:6)

 ルカ9:7-9〈ヘロデ、戸惑う〉
 ヘロデ・アンティバスはイエスの業、教えのことを伝え聞いて、戸惑った。自分が処刑を命じた洗礼者ヨハネのよみがえりのように思えたからである。それでもなお、ヘロデはイエスに一度会ってみたい、と願うのだった。

 ルカ9:10-17〈五千人に食べ物を与える〉
 各地へ派遣した12弟子が戻って来、イエスに活動報告を済ませた。イエスはかれらを伴ってベトサイダの町へ退いた。が、群衆がそのあとに続いたので、イエスはかれらに神の国の福音について語り、治療の必要な人を癒やしたのだった。
 時間が経って、弟子たちが群衆を解散させようとイエスを促した。いまならまだ近隣の村でかれらが食事できるからである。イエスは否を唱え、あなた方がかれらに食事を与えなさい、といった。弟子たちはそれを拒んだ。
 イエスは5切れのパンと2尾の魚を持ってこさせ、天に祈りをささげて人々へ分け与えさせた。人々はそれを満腹になるまで食べた。パン屑を集めると籠12杯分になった。

 ルカ9:18-20〈ペトロ、信仰を言い表す〉
 イエスは祈りの傍ら、侍る弟子たちに訊ねた。世間の人々はわたしのことをなんといっているか。
 洗礼ヨハネと呼ぶ者もあれば、先生こそエリヤであるという者もおります、と弟子たちはいった。
 ではあなたがたはわたしを何者と思うか。そうイエスは訊ねた。
 ペトロが、神からのメシアです、と信仰告白した。

 ルカ9:21-27〈イエス、死と復活を予告する〉
 ──イエスは弟子たちを戒め、誰にもこのことをいわないよう厳しく命じた。そのあとでイエスは自分の未来についてこう予告した。曰く、人の子は多くの苦しみを受け、敵対者の手に渡され、そうして処刑される。が、3日後に復活する。続けて、──
 「わたしについて来たい者は、自分を捨て、日々、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを救うのである。(中略)わたしとわたしの言葉を恥じる者は、人の子も、自分と父と聖なる天使たちとの栄光に輝いて来るときに、その者を恥じる。確かに言っておく。ここに一緒にいる人々の中には、神の国を見るまでは決して死なない者がいる。26-27」(ルカ9:23-24,26-27)

 ルカ9:28-36〈イエスの姿が変わる〉
 自分の死と復活を予告してから8日程経った頃。イエスはペトロとヨハネ、ヤコブを連れて、祈るために或る山へ登った。するとイエスの顔の様子が変わり、服は真白く輝いた。ペトロたちが見ると、「二人の人がイエスと語り合っていた。モーセとエリヤである。二人は栄光に包まれて現れ、イエスがエルサレムで遂げようとしておられる最期について話していた。」(ルカ9:30-31)
 モーセとエリヤがイエスから離れかけたとき、ペトロが、先生、ここに3つの仮小屋を建てましょう、1つは先生、1つはモーセ、1つはエリヤのために、といった。ペトロはこのとき感極まっており、自分でもなにをいっているのかわからない状態であった。
 イエスとモーセとエリヤを雲が覆った。そのなかから声がした。「これはわたしの子、選ばれた者。これを聞け。」(ルカ9:35)──やがて雲が晴れ、イエスだけがそこにいた。
 ──ペトロとヨハネ、ヤコブはこのことを後の時代になるまで、誰にも語ることがなかったのだった。

 ルカ9:37-43a〈悪霊に取りつかれた子をいやす〉
 翌日、4人が山を下りてくると、男がイエスの前に出て、悪霊に取り憑かれたわが子を助けてください、と頼んだ。あなたのお弟子さんたちでも歯が立たなかったのです。
 「なんと信仰のない、よこしまな時代なのか。」(ルカ9:41)そうイエスは嘆いた。わたしはいつまであなた方と共にいなくてはならないのか、我慢しなくてはならないのか。
 イエスは件の男に、子供を連れてくるよう命じた。イエスは子供に憑いていた悪霊を叱って追い出し、癒やした子供を父親へ返した。

 ルカ9:43b-45〈再び自分の死を予告する〉
 イエスは再び自分の死を予告して、それを弟子たちに伝えた。が、かれらにイエスの言葉はうよくわからなかった。すぐには理解できないよう、真実が隠されていたからだ。

 ルカ9:46-48〈いちばん偉い者〉
 自分たちのなかで誰がいちばん偉いか、と議論する弟子たちを前に、イエスは子供の手を取ってからこういった、──
 わが名のためにこの子を受け入れる者はわたしを受け入れる。「あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である。」(ルカ9:48)

 ルカ9:49-50〈逆らわない者は味方〉
 イエスの名を騙って悪霊を追い出している者がいる、とヨハネがイエスに告げた。
 実はヨハネはそれを止めさせようとしていたが、イエスはそれに反対した。その者はわたしの名によって悪霊を追い払う奇跡を行ったのだから、よもやそのすぐあとでわたしの悪口はいえまい。わたしに逆らわない者はわたしの味方である。

 ルカ9:51-56〈サマリア人から歓迎されない〉
 自分の天に上げられる時期が近附いた、と感じたイエスはガリラヤを去ってエルサレムへ赴くことを決めた。
 ガリラヤからユダヤへ。そのためには、間に横たわるサマリア地方を縦断しなくてはならない。そうしてサマリア人はエルサレムへ向かうイエスたちを歓迎しなかった。
 弟子ヤコブとヨハネの兄弟が、天から火を降らせて焼き滅ぼしましょうか、と提案したが、イエスはこれを退け、かれらを戒めた。そうして一行は別の村へ向かった。

 ルカ9:57-62〈弟子の覚悟〉
 イエスは自分に付き従う大勢の人たちに、ガリラヤ湖の向こう側を指差して、あちらへ渡れ、といった。群衆のなかから1人の律法学者が歩み出て、イエスに曰く、どこへでも付き従います、と。それに答えてイエスの曰く、──
 「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない。」(ルカ9:58)
 また、弟子の1人が曰く、その前にまず亡き父の埋葬を済まさせてください、と。それに答えてイエスの曰く、──
 「死んでいる者たちに、自分たちの死者を葬らせなさい。」(ルカ9:60)
 また家族に暇乞いをしたいと願い出る弟子には、「鋤に手をかけてから後ろを顧みる者は、神の国にふさわしくない」(ルカ9:62)といった。

 サマリア人はどうしてイエスたちを歓迎しなかったのか。次に読む「ヨハネによる福音書」第4章第9節には、ユダヤ人とサマリア人は不仲であり、交流が殆どなかった旨記されている。
 これはおそらく<サマリア人>が混血だったせいであろう。アッシリア帝国の侵攻によって北王国イスラエルは滅亡した。サマリア地方はかつて北王国イスラエルがあった土地である。王国滅亡の際、王国の民はアッシリア乃至はその領内に捕囚となって連行され、かの地で散らされた。代わってイスラエルの土地にはアッシリアによる異民族の移住が進められ、かれらと、残ったわずかのユダヤ人との雑婚が繰り返された結果、新約聖書の時代にはユダヤ地方やガリラヤ地方でいうところの<ユダヤ人>はサマリアから姿を消していた。
 「(イエスたちは)サマリア人の村に入った。しかし、村人はイエスを歓迎しなかった。イエスがエルサレムを目指して進んでおられたからである。」(ルカ9:52-53)
 ユダヤ人であるイエスをそのDNAに刻みこまれた先祖の記憶ゆえに歓迎しなかったサマリア人。かれらにとってユダヤ人とは、またエルサレムとはどのような位置づけで語られるものだったのだろう。これについては<るさんちまん>という単語一つで片附けられるものではないだろう。そもユダヤ人とサマリア人との間にあった不和の種は、今日のパレスティナ問題とも根っこの部分で繋がるところがありそうだ。──ユダヤ人とサマリア人の不和については今後も資料を漁って勉強してみるつもり。
 偶然ではあろうけれど、イエスたちを歓迎しなかった<良くないサマリア人>の描写は次章で語られる<良きサマリア人>を際立たせる意図があってここに置かれたような気さえするのは、著者が知識階級にある文筆を得手とする者なるがゆえの邪推であろうか。
 いや、それにしても、このサマリア人たちに対するヤコブとヨハネ兄弟の台詞はふるっていますね。「ボアネルゲス、すなわち、『雷の子ら』」(マコ3:17)とあだ名されるだけのことはある。



 昨日のエッセイの続き。先刻、唐突に思い出したのだが、わたくしはまだ白水uブックスの<カフカ・コレクション>を全巻揃えていない。つまり、未読の巻があるということだ。
 これはどうにも気持ち良くない。気に入った作家の作品は1作でも多く読みたいのだ。ゆえに、書架から欠ける巻が2つあるのは、どうにも落ち着かないし、皮膚と肉の間を虫が這っているような気持ち悪ささえ覚える。
 だから、というわけではないのだが、これから本屋に行って欠けている2巻を購入してくる。『城』と『万里の長城』が、欠けた巻。棚にあると良いのだけれど……。◆

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