第2063日目 〈今日のブログはお休みするよ、っていうお知らせと、『ビブリア古書堂の事件手帖』を巡るわが思いの断片。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 本日この時間から公開予定だった「使徒言行録」第20章ノートですが、作成済みの原稿に重大な欠陥が発見されました。為に予定を変更して,当該ノートは明日からの公開に変更させていただきます。
 読者諸兄には二重三重にご迷惑をお掛けして申し訳ありません。が、これも質の向上を目指してのこととご理解の上、どうぞご寛恕くださいませ。
 それにしてもどうしてこれだけ大きな欠陥をこれまで見過ごしていたのだろう。大きすぎたから、却って見逃してしまった? うん、そうかもね。そう考えて慰めることにするよ。よくある話だものね(え、ないの!?)。
 でも、これだけでは味気ないので、幾つか小さなお話をさせていただこう。
 ──えっとね、近頃の寝しなの読書は三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス)であります。既刊6巻のうち、後半の2巻は読まずに積んであったのだよ。理由は聞かないでくれ、知らぬが仏さ。すべての鍵はドストエフスキー氏が握っている、ヒントを与えるならこの一言かな。呵々。
 この作品の良くないところは、扱われる作家の本を無性に読みたくなることだ。これは好ましからざる現象だ。一方でこの作品の良いところは、扱われる作家の本を無性に読みたくなることだ。縁なきまま過ごしてきた作家を読む良き呼び水となる。どちらにせよ、紹介される本その物には辿り着けぬし、辿り着こうと考えると底無し沼に嵌まりこむ。
 第3巻まで読了したいま、改めて読んでみようかな、と思うておるのは宮沢賢治だ。『春と修羅』──栞子さんと昴くんの間で交わされた会話のなかに出る詩「昴」を読んでみたいな、と思う。併せて、『バーナード嬢曰く』第2巻に登場した「告別」も。だいじょうぶ、余剰金は幾許かながらも、ある。……あ、本屋へ行く前にラーメン食べなくちゃ……。
 も一つ小さな話をしよう。未だ醸成できていない『ビブリア古書堂の事件手帖』の話を。
 渡部昇一『青春の読書』(ワック)は読了しているのだが、どうも『ビブリア古書堂の事件手帖』を読まずにこの小説を引き合いに出している気のする箇所がある。書物には<版>というものがあることを、恩師架蔵の『古今和歌集打聴』と自分が購入した『古今和歌集打聴』を見較べて知る挿話に前後して、著者は『ビブリア古書堂の事件手帖』に触れる。
 曰く、最近は『ビブリア古書堂の事件手帖』がベストセラーになったお陰で日本の読者も書物の版について詳しくなってきている、と。
 初めてこの箇所を読んで以来、胸のなかにはものすごいモヤモヤ感が募っている。まだ正確な言葉は与えられずにいるけれど、著者は本当に『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んだのかなぁ、と疑問が湧いている。たしかに本書のお陰で書物の版について知り、知識を得た人もいることだろう。
 でも、この書き方にはなにか引っ掛かりを感じる。『ビブリア古書堂の事件手帖』は古本の知識が詰まったノウハウ本、或いはなにかの教義本かなにかのように思っていらっしゃるのかしら。古書にまつわる本って,或る意味で著者にはいちばん似つかわしくないのだけれど……。穿った見方をすれば、最近の流行りも押さえていますよ的なものさえ感じる。鼻白んじゃいますね、事実だったならば。もしかすると渡部昇一はドラマを先に観て、そのあと原作小説の存在を知ったのかもしれないなぁ。
 この件についてはもう少し再考してみよう。価値あると判断すれば一個のエッセイに膨れあがるだろうし、どうでもいいや、とわたくしが判断すれば、このまま闇に葬られることだろう。
 うぅむ、ドラマって言葉が出ちゃったなぁ……自らスイッチを入れるようで恐縮だが、いまいちど申しあげれば、ドラマ版『ビブリア古書堂の事件手帖』は非道い出来だった。当初は剛力彩芽ばかりを批判したけれど、顧みれば全員が全員、壮絶なミス・キャストであったように思われる。セットはとても良くて、雰囲気も出ていたのだけれど。
 ゴーリキが「栞子さんのイメージ、ぶっ壊します!!!!!!!」なんて思い上がりも甚だしい台詞を別の機会に、別の場所でひっそり発信しておれば、わが憤慨もここまで大きくならず、ドラマ版への印象も少しは変わったかもしれないのに(「かも」というところは目障りでない程度かつ可能な限り大きなポイントで表現したい)。正直なところ、このドラマを観て、演技が幼稚園の学芸会レベル、台詞が咀嚼されていなくても、事務所のゴリ押しがあれば主演女優になれることについて、わたくしは本心から感銘しておる。栞子さんってあんな頭悪そうな顔していないよね、という意見があるが、わたくしもそう思う。
 久しぶりに怒ってしまった。いけない、いけない。
 渡部昇一や剛力彩芽のような者の言葉は掃除機に吸わせてゴミ出しすれば良い。気分もすっきりじゃ。
 閑話休題。
 しばらくの間、寝しなの読書として『ビブリア古書堂の事件手帖』を読むことになる。残り3巻の読了まで、あとどれぐらいの日数が必要だろう。仕事のこと、家のことから解放される唯一の時間に激しい内容の小説は読みたくない。冒険物なんて最悪だ、そのまま興奮して睡眠時間がなくなってしまうからね。やっぱりこうした時間には人間の優しさや善意、人肌の感じられる小説が読みたいよ。そんなことを考えれば、『ビブリア古書堂の事件手帖』は現状では最良かつ最善のセレクトであった。次に控えるのは佐々木邦と小山清になるかな、この分だと。
 それでは明日、「使徒言行録」第20章ノートでお会いしましょう。◆

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