第2072日目 〈使徒言行録第28章:〈マルタ島で〉、〈ローマ到着〉&〈パウロ、ローマで宣教する〉with「使徒言行録」読了の挨拶。〉 [使徒言行録]

 使徒言行録第28章です。

 使28:1-10〈マルタ島で〉
 わたしたちはシチリアの南、マルタ島に漂着したのであった。島民はわたしたちのために火を焚き、大変もてなしてくれた。
 パウロが一束の枯れ枝を集めてきて、それを火にくべた。すると火の熱で炙り出された蝮がパウロの腕に噛みついた。それを見た島民はパウロを指して、かれは人殺しに違いない、海では助かっても正義の女神はかれを生かしておくつもりはないのだ、と囁き交わした。
 が、パウロは蝮を火中に振り落とし、特に毒が廻って死に至るようなこともなかったのである。それを見た島民はパウロを指して今度は、かれは神様に違いない、と囁き交わすのだった。
 マルタ島のその場所近くには島の長官プブリウスの所領地があった。プブリウスもまたパウロたちをあたたかく歓迎してもてなした。パウロは熱病と下痢で床に臥せっているプブリウスの父のことを知るとそこに行き、祈り、手を置いて癒やした。これがきっかけで島中の病人がパウロの許を訪れ、その癒やしの恩恵に与った。
 わたしたちが島を出るときが来ると、島の人々は皆見送りに来てくれて、なおかつ残りの航海とその後も必要となるであろう品々を届けてくれたのである。

 使28:11-16〈ローマ到着〉
 わたしたちはマルタ島でそのあと3ヶ月を過ごし、冬を越した。そうして、ディオスクロイを船首飾りとするアレクサンドリア船籍の船に乗り、シチリア島のシラクサに寄港してイタリア本土レギオンを経て、南からの追い風を帆に受けてプテオリの港に到着した。
 ──カイサリアから始まった海の旅はこの地で終わり、ここからは陸路で帝都ローマへ行く。
 そのローマからはわたしたちのことを伝え聞いた兄弟たちが、アピイフォルムとトレス・タベルネまで迎えに来てくれた。わたしたちは非常に喜び、神に感謝した。そうしてわたしたちは遂にローマへ来た。
 「わたしたちはローマに入ったとき、パウロは番兵を一人つけられたが、自分だけで住むことを許された。」(使28:16)

 使28:17-31〈パウロ、ローマで宣教する〉
 ローマ到着の3日後。パウロは都のおもだったユダヤ人を招いて、話をした。囚人としてエルサレムでローマ人に引き渡されたこと。民にも先祖の慣習にも背いたことがないこと。取り調べの結果、ローマ人は自分に刑に値することをなに一つ見附けられなかったこと。にもかかわらず同胞が求刑を訴えたこと。それがために皇帝への上訴を決めたこと。その目的が同胞の告発ではないこと。だからこそ、あなた方を招いてお会いし、話し合いたいと思うたのです。いまわたしは、イスラエルの希望のために鎖につながれています。
 これを聞いた都のおもだったユダヤ人たちが、パウロにいった。あなたについてエルサレムからはなにも聞かされていません。ここにいる誰一人としてあなたのことを悪く報告したり話したりする者もいません。だから、とかれらはいった。「あなたの考えておられることを、直接お聞きしたい。この分派については、至るところで反対があることを耳にしているのです。」(使28:22)
 ──パウロはユダヤ人のために家を開放し、日を決めてそこで朝から夜までナザレ人の分派、ユダヤ教イエス派について説明を続けた。神の国について力強く証しして、イエスについて律法や預言者の書を引用して説得したのである。
 ユダヤ人のうち、或る者はパウロの言葉を信じ、或る者は疑った。意見が一致しないまま立ち去ろうとするかれらに、パウロは預言者イザヤの言葉を引用した。そのあとで、「だから、このことを知っていただきたい。この神の救いは異邦人に向けられました。彼らこそ、これに聞き従うのです。」(使28:28)
 このことについてユダヤ人たちは大いに論じ合いながら帰って行った。
 「パウロは、自費で借りた家に丸二年間住んで、訪問する者はだれかれとなく歓迎し、全く自由に何の妨げもなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストについて教えた。」(使28:30-31)

 確実に福音の種は蒔かれた。あとは人々の心のなかにそれが芽吹き、育ち、伝えられてゆくのを待つだけだ。まさにイエスが語った「種を蒔く人の喩え」の実現である(マタ13:8,23、マコ4:8,20、ルカ8:8,15)。良い土地に落ちた種は立派な善い心で御言葉を聞き、それをよく守り、忍耐して実を結ぶ人たちなのだ。パウロは異邦人にその期待と希望を託した……。
 これまで読んできた聖書の各書物で幕切れの言葉が印象に残ったものは、殆どない。「歴代誌・下」とこの「使徒言行録」はその類稀なる例外である。どちらにも力強い希望が満ちており、未来への視界が開けていた。旧約聖書の歴史書のしんがりに置かれる「歴代誌・下」と新約聖書の歴史書のしんがりに置かれる「使徒行伝」のラストが、斯様なまでに似た印象を残すのは、果たしてわたくしの贔屓目か、それともただの偶然か。
 パウロが乗ったアレクサンドリア船籍の船のフィギュア・ヘッドはディオスクロイだったという。ディオスクロイはギリシア神話に登場するカストールとポリュデウケスの双子神で、母はレダ、父は一説ではゼウスとされる。そうしてかれら──ディオスクロイは船乗りの守護神であった。船上や嵐の海上に現れて苦境の人々を救うといわれ、また、「セント・エルモの火」(1980年代の映画『セント・エルモス・ファイヤー』のタイトルの由来であり、スティーヴン・キングの小説『ペット・セマタリー』後半のモティーフにもなった)はこの双子神に由来するそうだ。
 パウロがローマの兄弟に出迎えられた町、アピイフォルムはプテオリとローマのほぼ中間に、トレス・タベルネはややローマ寄りの町である。

 本日の旧約聖書は使28:26-27とイザ6:9-10。



 だいぶ息が切れた状態で本日「使徒言行録」読了であります。
 予定通りの更新が行えず、不規則な形での日々の更新となってしまったけれど、まずはゴールまで辿り着いたことに安堵しておる。暑さと怠さを理由に1日お休みする予定がどんどん伸びてゆき、このままフェードアウトしてしまうかなぁ、とわれながら心配もしたけれど、よくぞ読者諸兄よ、皆々様、辛抱強く忍耐強くこれまでお読みくだすった。心から感謝しております。やはり読者あっての読み物ですよねぇ……。
 さて、次に読むのがパウロ書簡の始め、「ローマの信徒への手紙」であるのは動かぬ事実なのですが、向こう1ヶ月程は既に予告しておりますように、毎週特定曜日にエッセイをお披露目することとし、その間はパウロ書簡の最高峰へ挑む英気を養おうと思います。体力作りと読書を進めておく、ということですね。
 それでは次の更新日にお会いしましょう。◆

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