第2786日目 〈部屋のお掃除;パンドラの箱は開けられた(第1回)〉 [日々の思い・独り言]

 パンドラの箱、別名;大きな方の葛籠箱を、開けてみた。全部ではなく、3箱。途端、いろいろなものが飛び去っていったが、たしかに──神話が伝えるように──希望がそこには残った。……あ、「そこ」は指示代名詞の「そこ」と「底」の掛詞であります(駄洒落とも、笑えぬ言葉遊びともいう)。
 希望とは、①秋成研究の書物や雑誌が思いの外残されていたこと、②岩波文庫の黄帯が大量に仕舞われていて、そのなかには八代集読書に用いた手沢本が含まれていたこと、③折口信夫の初版本や特集雑誌、そうして中公文庫版全集が揃いで残されていたこと、である(2019年12月07日00時11分現在)。
 秋成本で「おお!」と驚喜したのは、国書刊行会版『上田秋成全集』全2巻及び補巻として刊行された『秋成遺文』、鵜月洋『雨月物語評釈』(角川書店)、日本古典文学集成『雨月物語・癇癪談』『春雨物語・書初機嫌海』といったテキスト群(影印本を含む)、『共同研究 秋成とその時代』(勉誠社)、高田衛『上田秋成研究序説』(旧版)などの研究書が出てきたこと。購入したことは覚えているが、それが倉庫へ仕舞いこんだのか、或いは火事の際処分した大量の蔵書の内であったか、よく覚えていなかったのだ。
 いま書架に収まる本と併せて考えるとどうやら、秋成の作品集や研究書は展覧会のパンフレットも含めて散逸したものは、限りなくゼロに近い様子だ。ということは、以前同様わたくしにはまだ資料を自由に使い倒して秋成に関する文章を書く機会がある、ということだ。これは2ヶ月程前に古典のテキストを書架に並べ得たときと同じぐらいの慶事というてよい。
 が、その喜びは束の間。すぐに上書きされてしまった。岩波文庫黄帯の大量発掘が、その原因だ。「大量」というてもその数、たかだか41冊。内、重複は2作、分冊が3作。ゆえ、実数はもうすこし減る勘定ですが、ここへ既に書架に並ぶ或いは室内のダンボール箱に収まる黄帯を加えたら、その数おそらく100冊になんなんとす(あら、100冊ですって、奥様。このままリスト作れちゃいますわね──黄帯だけで。むふぅ!)。
 変な風に押しこんだのか、運搬の途中でずれたのか、よくわからないけれど、幾冊かの本は全体が撓み、表紙カバーともども波打っている。どういうわけか、その被害は西鶴に集中。『西鶴文反故』、『好色五人女』、『本町二十不孝』、『世間胸算用』、一九で『東海道中膝栗毛』が、現時点で把握できる被害確認書目。但し、『世間胸算用』は角川文庫ソフィアの1冊であることをお断りしておく(黄帯の『世間胸算用』は無事。序にいえば『武道伝来記』も然り)。
 未だあるを確認できない書目も、存在する。就中『胆大小心録』と『漆山本 春雨物語』が。処分などぜったいあり得ぬものゆえ、未開梱の箱のなかにあると期待したいが、さて?
 岩波文庫の黄帯発掘を完全に上書きしなかったとはいえ、折口関係の本の発掘もまた喜ばしい出来事であった。穂積生萩の著書2冊(『私の折口信夫』講談社と『執深くあれ』小学館/山折哲雄との対談)があったのは実際のところ、かなり想定外だったのだが、それ以上に想定外というか「ウソッ!?]とキャサリンばりに思わず叫んでしまったのが、中公文庫版折口信夫全集全巻揃いが敷き詰められていたことである。
 これこそ疾うに、いまはもうない伊勢佐木モールの古本屋に売り払ってしまったと思いこんでいたものだから、いやもう、なんというてよいやら、言葉が出て来ないのであります(人はね、本当にうれしいときは却って言葉が出ないものなのですよ)。活字が小さかったりで多少の読みにくさはあると雖も、この文庫版全集の価値が貶められることは、今後まずあるまい。
 ちかごろ自分の心が古典文学の読書へ再び向きつつあるのを、感じている。書架にテキストが並んでいるせいか。が、作品を読んで辞書や註釈、或いは現代語訳に助けを求めること殆ど無く読みこなせるということは、おお神よ感謝します、まだわたくしの能力も然程劣ってはいないということの証し。と、わたくしは自負したい。
 なればこそ年末年始はすべての太宰を休んで、たとえば『万葉集』を読み通してみようか……令和元年ですし。では、どこの出版社から出ている『万葉集』を読むか、というお話になるのですが、ここは一つ、今回大きな方の葛籠箱から発掘した1冊である明治書院「和歌文学体系」の『万葉集』全4巻本にしましょうかね……と思うたら、どうしたわけか、あるのは第1巻だけで残りの巻がないではないか!? という次第で来週か再来週、東京に出て(上京!)購い、重い思いをして多摩川越えて帰宅するとしましょうか。書店さん、帯附き用意して待っててね!◆

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