第2824日目 〈渡部昇一の露伴受容 付記〉 [日々の思い・独り言]

 2年程前から渡部昇一が『努力論』に触れた箇所へ接するたび、氏が露伴をどう読み、自著のなかで語ってきたか、まとめてみたいと思うていました。それを今回、2回分載でお披露目に至ったのは、ひとえに年来の知己であるC・Tが掌でわたくしをうまく転がした結果であります。
 場所を地下の穴蔵から4階建てビルの一室へ移しての語りおろしは、はじめての出来事ゆえにずいぶんと緊張し、また喉の渇くのが早い経験でありました。終わったときにはじっとりと汗がにじんでいた程です。
 当初は文字に起こしてどの程度の分量を口述できるか不安でしたが、終わってみればいつもよりちょっとだけ多い文字数であったのは、正直なところ意外でした。だってね、プロの、売れっ子の物書きでもない普通の人間が、どうして口述筆記なんて経験しましょうか。
 持ちこんだ参考文献は全部で12冊。これを口述現地まで運ぶのは難儀なこと、また運転免許を持っていないことも手伝って、自宅まで相手に送迎してもらいました。贅沢ですか、そうですね。が、やはりそれらがないとなにも始まりませんから、敢えてそれは、必要にして切実なる贅沢であった、と弁解しておきましょう。
 口述も朱入れも終わってお披露目したあと、脱力感に見舞われました。なんだかもう今月はこれ以上なにも書かなくていいや、というぐらいに、精も根も尽きたように感じています。すくなくとも渡部昇一についても幸田露伴についても、いまはもうなにも語るべき材料も思い入れも自分のなかには残っていません。そう考えると、まだじゅうぶん井戸に水は溜まっていなかったことを実感しますが、また渡部昇一に関しては数ヶ月後、露伴に関しては数年後に、なにかしらの語るべき材料を見附けて組み立ててお披露目できるようになるのではないかな、と思うております。
 かねてより書くことを強く望んでいたテーマを、今回口述という方法で実現させてくれたC・Tに心よりの感謝をささげます。どうもありがとう。手土産にした竹むらの揚げまんじゅうは君、美味しかっただろう? つぎはくず餅だね。
 最後に貧弱ながら参考とした文献を列記して、筆を擱くといたします。

渡部昇一
読書有朋 大修館書店 1981年2月 谷沢永一との対談
随筆家列伝 文藝春秋 1989年4月
幸田露伴『努力論』を読む 人生、報われる生き方 三笠書房 1997年11月
読書有訓 私を育てた古今の名著 致知出版社 1999年10月
幸田露伴『修省論』を読む 得する生き方 損する生き方 三笠書房 1999年1月
幸田露伴の語録に学ぶ自己修養法 致知出版社 2002年10月
読書こそが人生をひらく 「小」にして学び、「壮」にして学ぶ モラロジー研究所 2010年9月 中山理との対談

幸田露伴
露伴全集第27巻 評論4 『努力論』 岩波書店 1979年6月 後記:蝸牛会
露伴全集第28巻 評論5 『修省論』 岩波書店 1979年6月 後記:蝸牛会
『努力論』 岩波文庫 2001年7月改版 解説:中野孝次
『努力論』 角川ソフィア文庫 2019年7月 解説:山口謠司

井波律子・井上章一共編
幸田露伴の世界 思文閣出版 2009年1月 鈴木貞美「『努力論』とその時代」◆

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。