第2865日目 〈野原一夫『太宰治 生涯と文学』を買いました。〉 [日々の思い・独り言]

 スーツを直しに出かけた帰り、野原一夫『太宰治 生涯と文学』(ちくま文庫)を古本屋にて購入。同じ店で以前、『回想 太宰治』(新潮文庫)を見附けて買った。ちょうど、『新ハムレット』所収「女の決闘」を読み始めたところで、しかも『太宰治 生涯と文学』を開いたら、偶然にもこの短編に触れたページが開いた。一瞬の逡巡は途端払拭され、他の文庫といっしょにレジへ運んでいた。
 思い返せば、一人の作家をずっと読み耽っている間、研究書や回想など並行して購うたことある作家は、わずかだ。記憶をたぐれば鏡花と三島、E.ブロンテとドストエフスキーぐらいだ。そこに太宰が加わる。古典時代にまで対象を広げれば、定家卿と秋成が登場する──作品となればホームズがあるが、いまは脇に退かしておこう──。好む作家、淫した作家はまだあるにもかかわらず、どうしてこの4人だけなのだろう。
 敢えて一言で回答するなら、自分と相通ずる部分あるを見、或いは狂おしいまでの憧れを抱くところあり、魂の底からの共鳴を覚えたからだ。いわば骨の髄まで惚れこんだ作家たちについて、作品だけでなく興味関心が人物や伝記、知己の人たちの手に成る証言の類を、無理ない範囲で、偶然に任せつつ1点1点、ゆっくりと買い集めてゆくのだ。積もる頃にはその作家への<愛>はもはや進化てふ言葉ではいい表せぬあろう。
 それにしても書簡や伝記、回想のみならず写真アルバムまで文庫で入手可能な作家なんて、太宰治以外にあるだろうか。やっぱりみんな、太宰が好きなんだ。だから売るし、買うんだね。泉下の三島は歯ぎしりしているかな。◆

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。