第2955日目 〈新たなる亡霊の誕生を、わたくしは寿ぐ。〉 [日々の思い・独り言]

 わたくしは亡霊に取り憑かれている。30年以上、わたくしを支配してきた亡霊だ。
 怖さは微塵も感じない。思えば思う程愛おしくなるその亡霊にわたくしは、この30年以上というもの縋って生きてきた。
 このまま誰と縁を結ぶことなく悲願の世界に渡り、川の向こうで待つ亡霊に手を取られて新しい人生を営むことになるのだろうな。──ゆえに誰に対してものめり込むことなく、すべてを失っても構わないぐらいに深くて重い愛情を抱いたこともなかった。
 昨夏までは。
 これ以上は述べない。既にここで書いてきたことだから。
 亡霊を調伏してみせた20代の女の子を、わたくしはこれから一生忘れることができない。好きな人への気持ちを諦められない、といっていたその人の容姿や声や思い出を大切に仕舞って、旧きに替わって棲みついた亡霊に残りの時間を支配してもらって、生きてゆく。彼女の言葉を一言一句、信じる。
 諸君、喝采せよ、ここに新たなる亡霊が誕生した。◆

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