第2647日目 〈マカバイ記 一・第3章1/2:〈ユダ・マカバイ〉、〈ペルシアおよびユダヤへの王の遠征計画〉他with窮屈になってゆく日本語のなかで。〉 [マカバイ記・一(再)]

 マカバイ記・一第3章です。

 一マカ3:1-12〈ユダ・マカバイ〉
 マタティアが死んで、その息子の一人ユダが立った。信仰を同じうして律法への情熱を燃やす者たちの指導者、指揮官として、ユダ・マカバイは立った。兄弟たちはかれを助けてイスラエルのための戦いに明け暮れることになる。
 マカバイは大いなる栄光を天から授かる運命にあった。破竹の勢いでユダヤの各地を駆け巡り、律法を尊ぶユダヤ人を迫害から助けた。律法に従わない者を探し出しては追いつめ、民を惑わす者あらばこれを殺したのである。
 ユダ・マカバイの名は広くユダヤ全土に知れ渡り、シリア王の弾圧に滅びを待つばかりで心を弱くしていた敬虔なユダヤ人にとっては、救いの灯し火となった。かれらはいった、「我々の道は彼の手で開かれた」(一マカ3:6)と。
 ──さて、ここにアポロニウスてふ者ありき。セレコウス朝シリアに於けるサマリア地方の司令官(総督というべきか)を務める人。アポロニウスは大きな部隊を編成してマカバイ討伐に向かったが、あえなく戦場に散華した。そのときアポロニウスが握っていた剣はマカバイの手にわたり、以後その剣はマカバイとともに戦場で敵の肉を斬り切り血を吸うことになる。マカバイとアポロニウスの戦い、それは前165年のことだった。

 一マカ3:13-26〈ユダ、セロンを撃つ〉
 同じ前165年。シリア軍の指令セロンはマカバイとその軍勢の評判を耳にし、大いに功名心に駆られ、発憤した。セロンの言、「王国一の栄誉はおれのものだ」(一マカ3:14)と。ただちに出陣したセロン軍には多くの不敬虔なユダヤ人が合流した。
 ベト・ホロンの登り坂にさしかかったセロン軍を、マカバイの急襲部隊は捉えた。1人の兵がセロン軍の威勢を前におののき、弱音を吐いた。一戦交えるには不利である。
 が、マカバイは、否、といった。少人数で多勢を破ることもできるのだ、と怖じ気づく兵を鼓舞すると、続けて曰く、「敵はおごり高ぶり、不法の限りを尽くして我々を妻子ともども討ち滅ぼし、我々から略奪しようとやって来ている。しかし、我々は命と律法を守るために戦うのだ。天が我々の目の前で敵を粉砕してくださる。彼らごときにひるむことはない」(一マカ3:20-22)と。
 そうしてマカバイの急襲部隊は、未だこちらに気附かぬセロン軍に不意打ちを喰らわせて雪崩れこみ、ベト・ホロンの坂からシリア勢を追い払った。残党はユダヤに隣接するペリシテ地方へ逃げこんだ。
 ──これらのことによって、「ユダとその兄弟に対する恐怖の念が広まり、恐怖が周囲の異邦人たちを震え上がらせた。その名は王の耳にまで達し、ユダの戦いぶりが異邦人の間でも語りぐさになった」(一マカ3:25-26)のだった。

 一マカ3:27-37〈ペルシアおよびユダヤへの王の遠征計画〉
 マカバイの勇名はアンティオコス4世エピファネスの耳に達した。これに激怒した王は国内の全軍を動員して、マカバイ家とその親派の殲滅に乗り出した。
 が、それは王の心中に1つの憂慮を生むことにもなった。兵に与える俸給や報奨金、その財源に難があったのだ。王国の財政は逼迫していた。度重なる紛争にかかる経費が膨大なものとなり、また天災に見舞われた際の復興財源も貧窮しつつあり、加えて頼みの収入源である地方からの租税も減少する一方であったからだ。
 版図拡大、領内のヘレニズム化の徹底と抵抗分子の鎮圧、或いは諸々の政策を実行するためにもいまやアンティオコス4世は、目を東に向けてペルシア遠征の青写真を描いて敢行するより他ない、と、そう断を下したのである。みずからが出向いてペルシア諸地方から租税を徴収し、国庫の補填に中てようというのだった。
 王は自分が不在する間、いっさいの国事と王子アンティオコス(後のアンティオコス5世エウパトル)の教育を腹心、リシアスに委ねてペルシア遠征に出発した。そのとき、アンティオコス4世はリシアスにこういい置いていった、──
 エルサレムにわずかの情けもかけてはならない。連衆を一掃して、根絶やしにせよ。かれらを思い出させるものはなんだろうと地上から消し去って、かれらのいた土地には異民族の入植を推奨せよ。
 ギリシア人の王朝の第147年、というから前165年、王都アンティオキアを発ったアンティオコス4世とその軍隊は、ユーフラテス川を渡り、その向こうに広がる地へと進んでいった。

 ユダ・マカバイの獅子奮迅の活躍が本章から始まり、それはかれの死ぬ第9章まで休むことなく描かれてゆきます。
 正直なところ、わたくしはこのユダ・マカバイ(ノートでは民族の「ユダ」「ユダヤ」と区別するため、「マカバイ」としております)が好きになれぬ。血に飢えた狂犬、という印象が先に立ち、<義のための戦士>や<憂国の英雄>という肖像がかすれてしまうのです。
 次章以後を読み進めても、この捉え方に変化が生じることはなかった。前回も、今回も。いったいユダ・マカバイの好戦とアンティオコス4世の蛮行に違いはありましょうか? 同じであります。視点を変えればアンティオコス4世も讃えられるべき為政者であります。
 さりながら旧約聖書からずっと読み続けてここに至りマカバイを知ると、律法から離れた同胞を容赦なく殺してゆくその様子に、何者かの影をかれの上に感じるのであります。それは誰か? ほかならぬ旧約聖書の神──戦争と虐殺を是とする旧約聖書の神であります。マカバイの英雄化はイスラエル/ユダヤの信じる神の具現(現人神とまで述べる気は、勿論ない)であったのかもしれません。
 アンティオコス4世は制圧下にあるペルシアへの遠征を、財源確保のために実行した。資力確保や資源欲しさのための遠征や戦争は、いつの時代にも、どの国でもあったようですね。人間は本質を変えることのできない生物のようであります。
 次回お披露目は第2647日目、第3章2/2。01月26日午前2時の予定。



 横溝正史を読んで今日では校閲対象・削除/検閲対象となる差別語、或いはいまやすっかり死語となった言葉を知る。
 どうしてこれが差別語認定されたのか、疑問に思い、またいまも生き残って場面によっては普通に使う(差別語と知らぬままに)言葉のなんと多いことか。あまり目くじらを立てていると、或いは過敏になってしまうと、どんどん日本語は貧弱で窮屈な言語になってしまう。
 不謹慎を承知で、良識が許すギリギリの範囲で、そうした言葉を駆使して一編のエッセイを織りあげてみたい、と思うている。◆

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