第2668日目 〈明け渡しの日、来たる。〉 [日々の思い・独り言]

 昨日の黄昏刻、これまで約6年に渡り一角を占めていた<それ>に代わって、かつての盟主が入城した。凱旋のラッパが鳴り響き、その光景を生きて目にし得た幸せに涙ぐむ者もあった。
 上文意訳:これまで約6年に渡って書棚の一段を占めていた村上春樹の著作をいっせいに移動させ、殆どがらんどうになったそこには昨夏、アパート取り壊しに伴い撤去予定の倉庫から自宅建て直しの際放りこんでおいた捨て難き書物のうち、もっともわたくしの愛惜する分野の書物、即ち日本の古典文学のテキストや研究書などを、分類や整理は二の次にして置いたのである。
 凱旋のラッパはわたくしの胸のうちで控えめに、されど壮麗に響き渡り、16年ぶりに棚に収まったそれらを見ることはできないと思いこんでいたのもあってその光景を目にできた途端、涙が静かにこぼれ落ちてゆくのを禁じ得なかったのだ。
 ──こうして再び書架に収まり背表紙を見せているのを眺めていると、古典の読書と研究に没頭していた頃から今日までの間に四半世紀前後という時間が経過したこと、あまり信じられないのが正直なところ。
 が、視線をぐるりと巡らせれば、村上春樹や三浦しをん、クリスティやキング、古今東西のミステリ小説を詰めこんだダンボール箱の山、山、山。もはや処分することもできぬ、情のたっぷり塗りこめられたものであるゆえ、その扱いにじつは閉口している。こうなったら、と考えるのだ、──
 書架のみならず床積みの本の群れに厳しくプライオリティを設定し、最上級(=もっとも手許に置いておきたい本)のものを除いた他の本はすべて、一時的であれ恒久的であれ貸し倉庫にあずけよう、と。その間にわたくしが目論んでいるのは、部屋のリフォームである。荷物を運び出して床の点検を行った後、窓際の壁を可能な限り作り付けの書架(と抽斗)とする。ついでにクロゼットも改修して、その下半分を抽斗にしたい。
 とにかく普通に考えても不足している収納を増やし、必要なものがすぐに見附けられて使えるようにしたいのだ。村上春樹の著作を移動させたのは、その端緒である。実を申せば、お願いしたい業者の絞りこみは着々と進んでいるのです。あとは資金面を如何にクリアするかだなぁ。
 これらのことが年内に実行できるか分からないけど、こうして書いてしまえば意思表示にもなるので、やがて強迫観念のようになって計画をなかばむりやり、強引に、実行に移すことを、当のわたくしは知っています。
 「まず計画を立てよう、それを実行しよう、そうして反省しよう」
 ……ああ、なんと良い言葉なのでしょう!◆

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