第2672日目 〈どうして最近は文章が短いの? ──夏の夕暮れの、2人の会話。〉 [日々の思い・独り言]
客:最近は文章の量が短いようだね?
主人:そうなんだよ、こう暑くっちゃね、読んでいる人も長いのなんて勘弁だろうし。
客:いやいや、なにを仰る。これまでも長ったらしいのを書いてきただろう。
主人:たしかにね。けれどそれはまぁ、必要あっての分量であって、暑さとはあまり関係ないっすよ。
客:え〜、そうかなぁ。とてもそうは見えないけれどね。……で、本当のところはどうなの?
主人:あのさ、なにを根拠にそんな風に疑うのか、まったく僕にはわからないな。
客:根拠! なにをいっちゃっているのかねぇ、この人は。いまのあんたの格好、読者に見せられる?
主人:……ちょ、ちょっと待っててくれ。いま着換えてくるから……あ。
客:ほらね、作務衣の前はだけて奥さんに団扇仰いでもらって、大股広げてくつろいでいるだけじゃぁなくて、おお、寒いね、ここはいったいなんて寒さだ。クーラーの設定温度、何度だよ? テーブルの上に置いたリモコンを手に取って)24度!? 阿呆か、あんたは。
主人:だって会社から帰ってきたばかりなんだもん、駅から家まで歩くだけでたくさん汗かくんだよ。お前さんも知っての通り、おいらは汗っかきだからね。
客:まぁ、「夏は敵だ」ってビール煽りながら騒ぐぐらいだもんな。それにしても、寒いや。ちょっと上に引っかけるものが欲しいね。。
主人:で、このまだまだ暑さの残る夏の夕暮れに、お前さんはどうして家にいるんだ?
客:え? ああ、この先のスーパーまで買い物に来たついでに寄り道したわけさ。
主人:じゃぁもう帰れよ。これからこっちは夕飯なんだ。お前だって奥さんや子どもと一緒に夕食の時間だろ。ほら、帰った、帰った。
客:ところでさ、本題。さっきもいったが、ちかごろ文章の量が短いのはやっぱり暑さに参っているんだろ? 白状しちゃえよ。
主人:んんん、(と、雀の巣のような頭をガリガリボリボリと掻きながら)まぁね、けっして無縁じゃぁ、ない。もうストックはないんだ。明日も会社だって思うと、あまり長いのは書いてられないよ。
客:夜更かしはできないもんな。
主人:そうだね。憂鬱になりながらも、自分の存在理由を自分で確かめるために毎日、最低でも原稿用紙2枚分は書こうと思うんだけれど、なかなかねぇ……疲れてむりやり絞り出すときもあるんだよ。短さはもしかすると、それを欺くための手段なのかもしれない。
客:お、おい、やけにしみじみしちまったじゃぁないか。うん、でもいまのところがけっして良いところじゃない、ってのは想像できるよ。いっそのこと、こっちへ来てしまえばいいのに。
主人:うん、なんだって、いまなにかいったかい? ──まぁね、会社のことはいいんだ。お前さんのいう本題に戻すけど、長いものを書くのは簡単だよ。必要なのは、高揚感さ。そうしてなるたけ自由に心を遊ばせること。この2つが調和すれば、中身のある長いものが書けるよ。けれど、短い読み物はどんなときだって書くのは難しいね。だから暑さや仕事を理由にしているけど、実のところ、一種の挑戦でもあるよね。
客:挑戦?
主人:ああ、そうさ。以前聖書読書ノートブログを毎日書いていた頃は、最低でも1,600字は書こう、或いは1,600字以内に収めようと努めていたんだ。「最高でも1,600字、最低でも1,600字」ってわけさ。
客:どこかで聞いたような台詞だな。それは確か……。
主人:いいよ、検索しなくても。それはともかく。むかしはそうだったが、いまは最低でも800字は書こう、としか思うていないね。それでとにかく読んでもらえるだけのものが書ければ、恩の字だよ。
客:そうか。ということは、もう今日の原稿は最低基準をクリアしているから、その点では合格、ってわけだな。
主人:え、そうなの? ここまで何字書いている?
客:1,318字。
主人:ほお、それは凄いな。
客:おれのお墓だ。
主人:お墓? ……あ、ごめん、変換ミスした。お陰、だな。
……あれ、あいつはどこ行ったんだ。ちょっとよそ見していたら、いなくなっちまった。
なぁ、悠希、小倉さん。あいつはいったいどこ行っちまったんだ? え、あいつって、あれだよ、寺前の坂を下ったところの、銭湯の裏に住んでいる飲み友達だよ。──おいおい、変なこというなよ、からかうんじゃありません。さっきまで僕と喋っていたじゃないか。──え、なんだって、今日の昼間に交通事故に遭って、病院に運ばれた? そこのスーパーへ買い物に来たときだって? 病院って僕がいつも耳の治療に行っている、あの総合病院か。
そ、そんな馬鹿なことが……あれ、電話が鳴っているよ……。◆
主人:そうなんだよ、こう暑くっちゃね、読んでいる人も長いのなんて勘弁だろうし。
客:いやいや、なにを仰る。これまでも長ったらしいのを書いてきただろう。
主人:たしかにね。けれどそれはまぁ、必要あっての分量であって、暑さとはあまり関係ないっすよ。
客:え〜、そうかなぁ。とてもそうは見えないけれどね。……で、本当のところはどうなの?
主人:あのさ、なにを根拠にそんな風に疑うのか、まったく僕にはわからないな。
客:根拠! なにをいっちゃっているのかねぇ、この人は。いまのあんたの格好、読者に見せられる?
主人:……ちょ、ちょっと待っててくれ。いま着換えてくるから……あ。
客:ほらね、作務衣の前はだけて奥さんに団扇仰いでもらって、大股広げてくつろいでいるだけじゃぁなくて、おお、寒いね、ここはいったいなんて寒さだ。クーラーの設定温度、何度だよ? テーブルの上に置いたリモコンを手に取って)24度!? 阿呆か、あんたは。
主人:だって会社から帰ってきたばかりなんだもん、駅から家まで歩くだけでたくさん汗かくんだよ。お前さんも知っての通り、おいらは汗っかきだからね。
客:まぁ、「夏は敵だ」ってビール煽りながら騒ぐぐらいだもんな。それにしても、寒いや。ちょっと上に引っかけるものが欲しいね。。
主人:で、このまだまだ暑さの残る夏の夕暮れに、お前さんはどうして家にいるんだ?
客:え? ああ、この先のスーパーまで買い物に来たついでに寄り道したわけさ。
主人:じゃぁもう帰れよ。これからこっちは夕飯なんだ。お前だって奥さんや子どもと一緒に夕食の時間だろ。ほら、帰った、帰った。
客:ところでさ、本題。さっきもいったが、ちかごろ文章の量が短いのはやっぱり暑さに参っているんだろ? 白状しちゃえよ。
主人:んんん、(と、雀の巣のような頭をガリガリボリボリと掻きながら)まぁね、けっして無縁じゃぁ、ない。もうストックはないんだ。明日も会社だって思うと、あまり長いのは書いてられないよ。
客:夜更かしはできないもんな。
主人:そうだね。憂鬱になりながらも、自分の存在理由を自分で確かめるために毎日、最低でも原稿用紙2枚分は書こうと思うんだけれど、なかなかねぇ……疲れてむりやり絞り出すときもあるんだよ。短さはもしかすると、それを欺くための手段なのかもしれない。
客:お、おい、やけにしみじみしちまったじゃぁないか。うん、でもいまのところがけっして良いところじゃない、ってのは想像できるよ。いっそのこと、こっちへ来てしまえばいいのに。
主人:うん、なんだって、いまなにかいったかい? ──まぁね、会社のことはいいんだ。お前さんのいう本題に戻すけど、長いものを書くのは簡単だよ。必要なのは、高揚感さ。そうしてなるたけ自由に心を遊ばせること。この2つが調和すれば、中身のある長いものが書けるよ。けれど、短い読み物はどんなときだって書くのは難しいね。だから暑さや仕事を理由にしているけど、実のところ、一種の挑戦でもあるよね。
客:挑戦?
主人:ああ、そうさ。以前聖書読書ノートブログを毎日書いていた頃は、最低でも1,600字は書こう、或いは1,600字以内に収めようと努めていたんだ。「最高でも1,600字、最低でも1,600字」ってわけさ。
客:どこかで聞いたような台詞だな。それは確か……。
主人:いいよ、検索しなくても。それはともかく。むかしはそうだったが、いまは最低でも800字は書こう、としか思うていないね。それでとにかく読んでもらえるだけのものが書ければ、恩の字だよ。
客:そうか。ということは、もう今日の原稿は最低基準をクリアしているから、その点では合格、ってわけだな。
主人:え、そうなの? ここまで何字書いている?
客:1,318字。
主人:ほお、それは凄いな。
客:おれのお墓だ。
主人:お墓? ……あ、ごめん、変換ミスした。お陰、だな。
……あれ、あいつはどこ行ったんだ。ちょっとよそ見していたら、いなくなっちまった。
なぁ、悠希、小倉さん。あいつはいったいどこ行っちまったんだ? え、あいつって、あれだよ、寺前の坂を下ったところの、銭湯の裏に住んでいる飲み友達だよ。──おいおい、変なこというなよ、からかうんじゃありません。さっきまで僕と喋っていたじゃないか。──え、なんだって、今日の昼間に交通事故に遭って、病院に運ばれた? そこのスーパーへ買い物に来たときだって? 病院って僕がいつも耳の治療に行っている、あの総合病院か。
そ、そんな馬鹿なことが……あれ、電話が鳴っているよ……。◆