第2738日目 〈ミステリーの日に因んで、人生ではじめて読んだミステリ小説のことを書こう。〉 [日々の思い・独り言]

 昨日10月7日は「ミステリーの日」だそう。
 ちょうど170年前の1849年10月7日、アメリカの都市ボルティモアで作家、エドガー・アラン・ポオが亡くなった(享年40)。ミステリ小説の始祖、ポオの命日に因んだ記念日が、この「ミステリーの日」である。
 Twitterにはこれを記念したツイートが、多く流れている。そんななか、こちらの目に留まったのが、「皆さん、初めて読んだミステリはなんでしたか?」という綾辻行人のツイート。おもわずリプライしかけた。しかけた、というより、実際しようとしていたのだけれど、文字数制限に引っ掛かって、諦めた。そうしてブログに転用することを思いつき、リプライの件は放棄した。
 ……そこで自らに問う、お前がはじめて読んだミステリはなんぞや?
 中学3年生のとき、図書室で赤川次郎の『幽霊物語』上下(集英社)を単行本で読んだ。クラス全体で図書室を利用していたように思うから、国語の授業の一環だったのかもしれない。当時の風潮を思えば、学校図書室に現代の小説が入っているのも面妖だけれど、とまれ、わたくしはこの小説を気に入ったようだ。借り出して、歩きながらすこしだけ読み、帰宅してFM放送を聴きながら読み耽り、夜更けに読了した記憶がぼんやりと残っている。
 高校に入るとお小遣いやあの手この手で稼いだお金を懐に、学校帰りの乗換駅の大型書店は文庫売り場で週1か週2の頻度で、赤川次郎の文庫を買い集めてゆくようになるのだが、これは本筋から逸れたお話である。
 が、先程思い出したが、人生ではじめて読んだミステリは、赤川次郎ではなかった。では、記憶をもう少し前の時代まで遡ってみよう。さて……、
 中学進学のお祝いに母方の祖父が、南極犬の本と一緒にシャーロック・ホームズの長編を贈ってくれた。コナン・ドイル『緋色の研究』。ホームズ譚がはじめてこの世に産声をあげ、ホームズとワトスンがはじめて出会い、共に事件を解決した記念すべき1作である。これをどれだけ夢中になって読んだか、小口が手垢でまみれ、ページの角が丸まったり折れたり、本体に一部割れが認められるところから、どうぞご想像いただきたい──。
 この頃は学校図書館の常連というわけではなかったし、かというて親にせがんで他のホームズ譚を買ってもらう、という発想もなぜか持たなかったので、シャーロック・ホームズの数々の冒険譚に再会するまでそれから5年ばかりの空白期が生じた(再会のきっかけは当然、NHKにて放送されたグラナダ版ホームズである)。
 が、先程思い出したが、人生ではじめて読んだミステリは、コナン・ドイルではなかった。当然、子供向けにリライトされたポオでもない。と、ここで話がいきなり脇道に逸れるが、わたくしは高校の学校図書室で暇を潰しているときに、ポオの小説を知った。名前は知っていても作品を読んだことはない、というよくあるパターンだ。旺文社文庫の作品集で、学校図書館向けに表紙と裏表紙が単行本と同じ仕様になっている。なにがどのように気に入ったのか、たぶん「赤死病の仮面」と「アッシャー家の崩壊」に惹かれてと思うが、何度となく借り出したっけ。今も図書室にその文庫があり、貸出カードが残っているならば、わたくしの名前が何行にもわたって書きこまれているはずだ。──では、本道に戻ろう。
 そうして先程思い出したのだが、人生ではじめて読んだことを記憶しているミステリ小説は、小学校の図書室の蔵書であった。断っておくが、それは江戸川乱歩の少年探偵団でもなければ(実は1冊も読んだことがありません。自慢っぽく言ってみる)、ルブランのルパンでも、況んやドイルのホームズ譚でもない。正直なところ、タイトルはまるで覚えていないのだ。物語の筋もかなり曖昧になっており、……ヒッチハイカーが誰かに殺される。それを近くの町の少年少女が調べ始めて、真相に辿り着く、というもの。
 他にもいろいろ覚えていることはあったが、歳月が経るのに併せて忘却の河レイテへそれらは流れ去った。哀しいことである。
 たしか背表紙にはシリーズ物であることを示すデザインが施されており、上部には鍵穴のイラストが描かれていたのではなかったか。紙質はいまに較べて厚く、ざらついている。ページ数は、たぶん300ページぐらいはあったか。挿絵はある。
 進学して神保町・本郷・高田馬場の古書店街、中央線沿線の古書店を定期的にほっつき歩くようになると、特に児童書やミステリを扱う古書店に足繁く通ったり、古書目録へ目を通すようになったのも、心のどこかでその本を探し出して、もう一度読んでみたい、と思うていたからだろう。
 が、うすうす読者諸兄はお気附きかもしれぬが、未だわたくしはその、人生初のミステリ小説を入手できていない。それどころか、タイトルや著者さえ不明である。死ぬまでにこの手に持つことが叶うといいなぁ。◆

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