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第1652日目 〈いろいろな声が聞こえる〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 今日というか昨日ですね、職場の男子で呑んできました。管理職になった者も他部署へ異動になった者も含めての会だったので、明日があることも忘れて酒食を愉しんできました。やはり気心知れた仲間同士は良いですね。同じ釜の飯を食った戦友と、愚痴一つ洩らさず一丸となって修羅場をくぐり抜けてきた絆で結ばれている。──なかなか得られぬ絆ではありません。
 来月はいまの事業所での業務が始まって一周年。一期生は殆ど誰も欠けることなく、今年になって新たに加わった二期生、三期生も遜色なく業務に励んでいる。今度はそんな仲間たちと、座を借り切って一年の労をねぎらおうと思う。その次の日からわれらは再び普段と変わらぬ日常に戻る。これからもいろいろなことがあるだろう。が、もう大丈夫。われらはいちばん困難な時期を乗り越えたのだ。
 one for all,all for one.
 つまりはそういうことだ。

 呑んで帰ってきた。わたくしはもう眠い。ゆえに本日の聖書読書ノートはお休みとさせていただきたい。明日再開、そうして明後日で「マカバイ記二」を読了しよう。
 梅雨の中休みであった昨日同様、本ブログも本日は中休みとさせていただこう。……え、今日が初めてのことではないだろう? これまでもなかば確信犯的に行ってきたではないか? まぁ、そう言われてしまっては返す言葉もありませんね、モナミ?◆

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第1640日目1/2 〈天下布武、ならず。──総選挙を観終えたあとの気持ち〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 こうした文章を書いても足を停める人が少ないのはわかっている。去年に比べて今年は、今一つ気持ちが盛りあがっていないのだから、本当は書くべきではないのかもしれない。
 しかし、気持ちが盛りあがらないなりにも結果については何かしらの発言をするべきと思うのだ。従って今回は特別に、AKB48G選抜総選挙について一稿を認めることにした。

 まずは5位の総大将れなひょんこと松井玲奈さん、会場のファンへのあたたかな労いの言葉、ありがとうございました。数日前宣言したように多摩川の向こうにある会場へ出掛けることはなかったけれど、この寒雨降りしきるなか何時間も野外会場でグループを応援し続けた人たちへの言葉は、夕食を摂りながらスカパー!と地上波を交互に観ていたわたくしにも、「じん」と来ました。
 屋内に在ってテレヴィ越しに様子を観ている者でさえそうだったのだから、会場にいて推しメン以外へも声援を送り続けた人たちの心をあたためたに違いない。あなたがSKEにいてくれて良かった。あなたは栄を応援するわれらの良心です。われらの誇りです。

 そうしてなによりも教祖さまこと大矢真那さん、おつかれさまでした。30位。おめでとうございます。今年も信者は団結しました。
 総選挙では無駄に強い、と何年も前から揶揄されておりますが、お茶の間への知名度はあっても圏外なメンバーもいるなかで、メディアへの露出が殆どない教祖さまが5年連続でアンダーガールズ入り、しかも順位の変動が殆どないという、奇跡というか偉業というか開いた口がふさがらないというか、まぁなんていうかその、アレな点で、やはり教祖さまは大宇宙の真理を司る方ではないのか、あらゆる宗教や人種や文化や言語を超越した全能神ではないのだろうか、との疑いが濃厚になってきたりして、それなりに長くみんなみんな教にお布施してきた者としては今後の身の振り方に悩んでしまうわけです。
 今年2014年も(恒例の)あなたの肉声が聞けて良かった。こちらこそ、ありがとうございました。非常に楽しい時間を過ごさせていただきました。さぁ、来年の総選挙に向けて真那コミュニティ、始動しましょう! あなたはそこにいてくれるだけで良いのです。

 そうして絶対的エースにして不動のセンター、松井珠理奈さん、速報3位に期待しましたが、上位3人に食いこむことがどれだけ困難なのことなのか、今年のあなたは身を以てわれらに教えてくれたました。
 あなたのスピーチを聞いて、われらは俄然奮起することでしょう。「来年こそはっ!」と。必ずわれらは来年、あなたを総選挙1位にする。じゃんけんセンターとの2冠を達成しよう。そうして、<玲奈ちゃんと天下布武!>を期待したい。

 ──もし向田茉夏が在籍していて、総選挙に立候補していたらどうなっていただろうか? 卒業直後の流出事故(本当に事故だったのかしら?)により一気にファン離れを加速させた彼女だが、それがいったいナンボのものであろうか。もう彼女は卒業して一般人になったのだ。事情がどうあれ経緯がどうあれ、市井の幸せを全うしてくれればそれでいいではないか。残像にしがみつく程哀れで残酷なことはないぜ、と、25年前に失った婚約者を未だ思うわたくしは自己の経験を踏まえて、斯く言うておく。
 歴史に「if」は禁物である。が、人間は想像する生物である。ゆえに、もし在籍していて立候補していたら、と夢想する。教祖さまと同じくアンダーガールズ入りしていたかもしれないな。選抜16人のなかへ入るのはたぶん無理だろうけれど、そこそこ妥当な順位に収まっていたのではないだろうか。名前を呼ばれてマイクの前に立ち、スピーチする向田茉夏をもう一度観たかったな。

 ……2014年の選抜総選挙が終わった。
 顧みれば多くのSKE48メンバーが80人のなかに名を連ねた。昨年の同様記事と異なり、一人一人の名を列記することはしないが、それでも選抜入りした須田亜香里さん、柴田阿弥さん、当方としては意外な順位であった木本花音さん、AKB48へ完全移籍してしまうがいつまでも「SKE48魂は失わない」木﨑ゆりあさん、初入閣した矢方美紀さん、古畑奈和さん。おめでとうございました。
 その他のメンバー全員、そうしてグループから立候補して入閣したすべての人々、残念ながら圏外であったすべての人々に、「おめでとう」、「おつかれさま」と声掛けしよう。2015年もがんばりましょう。

 ※入閣したメンバーについては敬称を付けた方が良い気がしたので、敢えて「さん」付けした。微妙に違和感があるのはどうしてだろう?◆

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つなぎの言葉;悠久の希望にすべてを託して。 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 なんの予告もなく再度の中断をしてしまっていて、ごめんなさい。いろいろ考えたいことが積もり積もって耐えきれなくなり、更新停滞という事態を招いてしまっています。
 体のこと、仕事のこと、家族のこと、プロバイダを変えようかと思うこと、今週日曜日に購入したMacBook Air(Apple公式サイトより整備済み商品を購入)のこと、その他いろいろ。
 外にいても家にいても憂いたり悩んだりすることばかり。もはや恋をしようとは思わぬが、安らげる場所と時間が欲しい。
 「マカバイ記一」の原稿はそれでも進み、予定に狂いさえなければ擱筆の予定は明後日。数日後にはブログも再開し、そのまま何事もなかったかのような涼しい顔で完結に漕ぎ着けることでしょう。
 もう少し待っていてほしい。悠久の希望にすべてを託したい。◆

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第1620日目 〈今宵の街角の光景〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 安息日と云いつつなぜか更新しています。ふしぎですね?
 さて、事実とも創作ともつかぬ<街角で見かけた光景>シリーズ(!?)、最新記事です。

 ブログ原稿を執筆していた県内某所の上島珈琲店に自称<コテコテ大阪人>、自称<浮浪老年>来襲して店員に訓戒を垂れる。
 曰く、ええか、大阪ではな、こんな風に接客するんや。あんたらも俺の前ではそうせいや、と。
 それを聞き、失笑したる客何人も居たり。かれらに向かって言うに、大阪が世界の常識なんや、と。東京になんて来とうなかったんや、借金して首回らなくなったんで仕方なく来たんや、とも。
 往々笑解。
 でもな、ここ、東京ちゃうで。横浜や。一緒にせんといてな。頼むわ、マジで。同じ関東でも東京と横浜、似て非なるものですので。
 それと裏通りに暴力団の事務所ある町で、己の履歴大声で喚いて明かすはただの阿呆やで? 阿呆ってそちらでは褒め言葉かもしれんが、こちらでは罵倒でしかないからね? おまけにあんたの後ろに並んでいる人、消費者金融の人でっせ。
 いろいろな意味で気ぃ付けた方がええ思いますな。

 明日は予定通り、「マカバイ記一」第7章です。
 第10章のノートが難儀して2日かけてようやく半分……。第10章は4日ほどに分割掲載する可能性が濃厚になってきました。嗚呼!◆

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第1619日目 〈今日と明日は安息日〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 本来なら「マカバイ記一」第7章の読書ノートをお披露目するはずですが、お休みします。もう体がついてゆかない……。
 モバイルPCがあれば事態は若干改善される(はず)と思うのは、軟弱者、<言い訳屋さん>の発言かな。
 でも、とにかく、ごめんなさい。今日と明日は月に二度の安息日とさせていただきます。
 これぐらいの間隔で休みを設けないと継続不可なぐらい諸事、立て込んでおります。まぁ、忙しいのは良いことだ……たぶんね。◆

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第1616日目1/2 〈また地震……〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

今朝(2014/05/05)5時半頃でしたか、また強い揺れがありました。
首都圏では震災以後初めての震度5以上の揺れであるという。
不安です。
今朝の揺れで目を覚まし、揺れ続けるまだ暗い部屋にいて、覚悟決めましたね。
ああ、遂に来たか、と。
ベッドから出て扉を開けようとしても、体が動いてくれず、逃げ遅れるかもと思ってしまった。
さいわいなことに被害というべき被害もなく、数分続いた揺れは収まった。
そうして先程も、数瞬とはいえ揺れがあった。
0時30分頃、震度1。震源地、神奈川県東部……、え?
Twitterを見ていると、1日数回はどこかで地震が起こっている。
あの日から敏感になってしまった。
首都圏直下型地震は数年以内に起こるとも、10数年以内とも様々言われる。
でも、確実に来るらしい。それはどうやら確定事。
覚悟をしつつ、そのとき自分たちは分別を守って、落ち着いて、避難できるだろうか。考えよう。
あの日の同胞の姿を心に描こう。◆

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第1553日目2/2 〈楽しみにしていた旅行をキャンセルしなくてはならないのは、……〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 楽しみにしていた旅行をキャンセルしなくてはならないのは、とっても残念な出来事であります。それが当日の朝になってのことであり、かつ今年に入ってから計画して宿の手配などもすべて済ませた、年に一度の家族との旅行とあれば、尚更です。いまさんさんかは降り続ける雨の音を聞きながらiMacに向かってこの原稿を書いています。
 1人で昼ご飯を食べ、テレビを観て、1人で夕飯の食事をして食べるなんてこと、馴れていないのですよ。家族がいつも一緒にいる光景が当たり前になっていたから。昼ご飯はともかく、夕飯はね、一人分を作るのってけっこう難しいことなんだ、とお米を研ぎながら溜め息し、おかずを作りながらまた溜め息し。そうして食べるのは、なんだかとっても空しくて、淋しいよ。
 そんな自分の頭のなかでリピート再生されているのは、山崎まさよしの〈One more time,One more chance〉。これが途切れることなく再生されて、一軒家に1人いて体調宜しからざる我の心の孤独を更に深くし、冷たくする。この家、こんなに広かったかな?
 あと何日かすれば、みんな帰ってくる。煩わしくもなににも代え難い家族が、帰ってくる。災難に巻きこまれることなく、事故を起こしたり怪我をすることなく、盗難に遭うこともなく、無事に、「楽しかった」という顔で<ここ>に帰ってきてくれれば、まずはそれで十分。
 わたくしは祈る、愛する家族の無事を。無事の帰りを。土産話を聞かせてくれるその瞬間の訪れを。◆

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第1525日目 〈更新再開に向けて――文章が書けなくなって、困ります。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 アバド逝去の特別編を最後に今日まで更新が滞ってしまい、たいへんご迷惑をお掛けしております。申し訳ない気持ちでいっぱいなさんさんかです。
 この間ちょっと体調を崩しておりまして、ずっと自宅で安静にしておりました。時節柄、インフルエンザかノロ・ウィルスかと疑いましたが然にあらず。実際は別なのだけれど、<然にあらず>とだけ、いまはいわせておいてほしい。
 こんな風に何日かぶりでペンを執ると、どうも文章がすんなりまとまってくれないで困る。情けないが目を背けられぬ事実、ここに出来。一段落が終わるよりも前に集中力は低下し、殺がれてしまう。この先なんて書こうとしてたのか、わからなくなってしまい、途方に暮れた挙げ句、その文章を削ることもしばしばで。
 実をいえば、本稿もこれで4回目、細部の加除を含めれば6回目の書き直しになる。いったい本調子に戻るにはあとどれだけ書き捨てればいいのだろう?
 しばらくはリハビリと称して600字程度の短いものをひたすら書いてみようか、と誘惑に駆られることもあるが、正直なところ、どうしようか、と迷っている。律するか、委ねるか。いずれにせよ、猶予は1年。進むか否か。
 時間が解決してくれるなど、ゆめ思うてはいない。◆

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第1524日目 〈クラウディオ・アバド氏が亡くなりました。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 今日はちょっと違うことを書かせてください。本来の読書ノートは休みます。

 2014年1月20日、指揮者クラウディオ・アバド逝去。享年80。
 出勤直前に斜め読みした新聞一面のトピックスでそれを知り、休み時間に情報収集。嗚呼、遂に来るべき瞬間が訪れた、という感あり。
 昨年に予定されていたルツェルン祝祭管弦楽団との来日公演がキャンセルされ、また、欧州でも出演予定の演奏会がキャンセルされることしばしばと仄聞しており、もしかすると……という黒い不安を覚えていた頃に接した訃報であった。
 まだまだじゅうぶん精彩あふれる生命の輝きに満ちた演奏が聴けると思うていただけに、心のなかに覚える落胆と虚無は、自分でもたぶんそれと気附いていないぐらい大きい。
 敬愛する指揮者がまた一人、永遠の旅路に就いてしまった。なにかをいおうとしてもどんな言葉を紡げばよいかわからない。決まりきった哀悼の言葉以外に、いまはなにも。
 とにかく今夜は、明日寝不足になるのを覚悟の上で、これからヴェルディ《ファルスタッフ》と《レクイエム》を聴こう。いや、ラヴェルのピアノ協奏曲とマーラーの交響曲のどれかの方が、弔意を示すに相応しいか?◆

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〈ごあいさつ〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 或る事情から失速を余儀なくされてしまったけれど、明日から再びいつもの調子で毎日書いてゆきます。でも悔いはない。この10日間で自分にできることはすべて行い、若干の自己満足も込みで知己の人を見送ったからだ。
 みんな、後悔する生き方だけはしないようにしよう。いつ死ぬかわからないんだからな。生きることに命かけて明日を迎えようぜ!! 笑う奴がいたら、そいつは蹴飛ばして君の人生から追放すればいいよ。◆

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〈お知らせです。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 大変申し訳ありませんが、しばらくお休みさせていただきます。ただいま病院のため、多くの時間を割くことが難しくなっております。ご容赦ください。
 閑散としたブログで恐縮です。
 面白いと思うか否かは個人差があると思いますが、今後もこの調子で続いてゆきますので、支えてくださる皆様にはよろしくお願い申し上げます。◆

第1448日目 〈きのうのこと〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 「まだわたしと結婚したい?」同じ台詞を彼女はホテルのベッドの上でもう一度いった。
 「あんな仕事を裏でしているわたしだよ。そんな女を配偶者にできるの?」
 半分落ちた目蓋の下で、ぞっとするぐらい透き徹った瞳がまっすぐ僕の顔に向けられている。そらすことのできないぐらい力のこもった眼差しだった。目で訴えかける、というのは、きっとこんな様子をいうのだろう。
 つながったままだった体を離して、彼女の体を抱きしめた。力が少し強かったか、彼女の口から喘ぎ声が洩れた。――夢であってほしい。定かでない理由からもう一つの仕事に手を染め、それを辞める意思がないことが。
 「AV女優を妻にする勇気があなたにはあるの?」僕の肩へ置かれた彼女の指に力がこもり、爪先が皮膚に食いこんだ。鋭い痛みがあったけれど、気にする程ではない。「それも昔やっていたけれど、現在(いま)は足を洗って堅気に戻ってます、ってわけじゃないんだよ?」
 正直なところ、自分がどうしたいのか、いまではさっぱりわからなくなっている。彼女への想いは未だ自分のなかで確かに残っている。終生ずっと一緒にいたい。婚約したあとも遠距離恋愛を続けている間にやり取りしたメールは結構な数になるが、いつだかのメールに記したその言葉は、いまでも変わることなくわたしの希望であり続けている。
 ――気が付けば胸板が濡れている。彼女はどんな気持ちで(どんな意図で、ではなく)僕に自分の過去を告白し、過去を知ったいまでもわたしと結婚できるのか、と問いかけるのだろう。僕の気持ちが変わることなどないとわかっていながら……。

 読者諸兄はお察しいただけるだろうが、この日、僕はありきたりな返答しかできなかった。おそらく彼女は失望して、実家のある九州へ帰ったものと思う。再び彼女のなかに入って済ませたあと、僕は羽田空港まで彼女を送っていった。幸いだったのは欠航になっていなかったことだ。
 彼女の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。そうして婚約という確かな絆を得て充足しているはずなのに、宙ぶらりんな気持ちを抱えて決断を先延ばしにしている自分に情けなくなりながら、踵を返して地下の京浜急行の乗り場へ向かった。
 いったい僕はいつになったら彼女との間に存在するこの問題を解決できるのだろう?
 どうして彼女は僕と結婚したあとまでもAV女優を続けると決めているのだろうか?
 僕らはいつの日かこの障害をクリアして2人が一緒にいる未来へ進めるのだろうか?

 ……わかんねーよ、だって好きなんだもん!!(もん、って、オイ)◆

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第1447日目 〈きょうのこと〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 今日の休み程ありがたく、仕事しなくて済むことをありがたく感じたことはない。もうね、潰れちゃいそうなんですよ、あまりのネガティヴ・ワーキングに。うん、マジでそうなんだ。
 で、偶然にも今日は昼間にかの婚約者と会う予定が入っていた。以前なら喜び勇んで、疲れたからだとへし折れそうな心をよそに置き、ただ彼女と逢えることに浮かれて待ち合わせ場所へ向かうところだが、……彼女のもう一つの仕事を知ったいまでは、そこへ向かう足取りは決して軽くはない。
 おそらく普段なら食事したり買い物したりしたあとは、普段の流れからホテルへ入ることになるのだろうが、いまの自分に彼女を抱くことはできない。以前のような愛情を感じられないからだ。

 それでも待ち合わせ場所に立っていた彼女は綺麗だったよ。いつもの、ほんわかとした空気をあたりに漂わせる、マイナス・イオン放出中のエアコンみたいな彼女だった。見た目は少し地味目な田舎育ちのお嬢さんだけれど、それがまた却って良いのだ。
 目が合うや、彼女は思いきり腕を振って背伸びして、周囲の視線を自分と僕に向けさせた。僕は小走りに走って彼女を脇に抱えて、脱兎の如くその場を離れた。恥ずかしかったわけじゃぁない。そんな可愛らしい彼女を周囲の好奇の目に曝したくなかったのだ。
 人通りのあまりない路地で僕は彼女を下ろし、ゼイゼイいう息を整えた。彼女は僕の顔を覗きこむようにしゃがみこみ、だいじょうぶ? と訊きながら、にっこりと笑んだ。しゃがんだ拍子にスカートがまくれあがり、下着がちらりと見える。
 顔を背けたのはその光景ゆえではない、その笑顔になぜか胸苦しさを感じたからだ。
 ねえ。上目遣いで僕を見ながら、「まだわたしと結婚したい?」と彼女が訊いた。◆(続く)

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第1446日目 〈あしたのこと〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 部屋へ戻った僕はベッドへ横になった。天板に背中を預け、漫然と本を読みながらビールを読むのは昔からの習慣で、同時に至福の一時である。
 でも、その晩はちっとも本の内容が頭に入ってこなかった。目は活字を追っているのに、心ではまったく別のことを思っている。
 ――明日、婚約者と逢う。2ヶ月ぶりに逢う。わずか数時間の逢瀬なれど、胸はときめき、頬は緩み、一物は勃起する。致し方あるまい。
 逢えるのに、ときめくのに、緩むのに、勃起するのに、どうしても現実が僕を打ちのめそうと頭をもたげる。最悪だ。彼女のもう一つの職業が僕を打ちのめし、彼女が宣言した事柄が僕を打ちのめす。そうして未来は暗闇に閉ざされそうになる。復活しつつあるサウロンの陰が中つ国を暗闇で再び閉ざそうとするみたいに。
 どうして彼女はもう一つの職業から足を洗わぬ決意をしているのだろう。
 いったいなぜ彼女は僕と家庭を持つことを決心してくれたのだろうか。
 矛盾する彼女の意思に僕は煩悶する。近附く台風27号の風雨に嬲られるかのように、僕は彼女に翻弄され、そうして憔悴する。明日、僕は2ヶ月ぶりに彼女と逢う。◆i(続く)

第1445日目 〈悪いのはお前だ〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 誠に申し訳ありませんが、本日聖書読書ノートとしての本ブログは安息日とさせていただきます。
 緊急の大型プロジェクトに携わる事となり、朝は7時前に家を出て夜は24時過ぎに帰宅という、不動産会社時代以来のスケジュール。もうね、さんさんかも年なのでキツイのですよ、体が。
 でも、すごくやり甲斐のある案件で、これまで一緒に仕事する機会のなかった人たちと、朝から晩までてんやわんやの環境で働くのは貴重な経験と思う。
 これを契機に、もう一回り大きくなって本来の部署へ戻ろう。

 しばらく本ブログは不定期更新になる可能性があるかもしれないけれど、どうかご勘弁願いたく思います。
 時々iPhoneで更新するかもね。それはそれで新鮮かも。

 どうか皆さん、このブログとみくらさんさんかを忘れないで。◆i

第1437日目 〈昨日はブログお休みしてごめんなさい。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 台風一過の今日、みな様いかがお過ごしですか。
 本ブログの著者兼管理人のみくらさんさんかです。

 「創世記」読書中はお休みを設けない旨目標に掲げておりましたが、
 昨日図らずも記事を掲載できない事態に直面し、休載を余儀なくしてしまいました。

 実は14日夜、突然インターネットに接続できない状況が生じました。
 プロバイダへの確認など様々行った末、つい先程、ネット環境が復旧したところです。

 毎日更新を公約し、休載しないと宣言したところに斯様な事態が発生。
 復旧したいま、こうして慌ててお詫びの記事を書いております。

 明日17日午前2時から通常通り、聖書ブログを再開・更新してゆきます。
 読者のみな様には大変ご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。

 5周年を迎えたばかりのタイミングでこのような事故が起こったことを無念に思います。
 これからもみな様に読み続けていただけるブログであるよう、毎日更新の原則は破らず運営を続けてまいります。

 どうぞこれからも宜しくお願い申しあげます。◆

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第1410日目 〈読者諸兄へのお詫び〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 正直に告白しますと本日は「創世記」の原稿を書けなかった。為、本ブログにて新しい記事をご覧いただけることはありません。
 いつも楽しみに来訪いただく読者諸兄にはまことに申し訳なく思う。言い訳はすまい。自身の怠惰により図らずも安息日となったことは恥と思いこそすれ、けっして自慢すべきことではありませんから。
 約束しよう。何度も意図せぬ突然の休載を繰り返した男が「約束」など重い言葉を口にするな、と揶揄されそうだけれど、それを承知で敢えて斯く約束しよう。
 「創世記」を続けている間はもう二度と予告なしの休載――安息日を設けてがっかりさせることはしない。わたくしは読者諸兄に対して責任がある。義務がある。だから、もうあなた方を裏切ることはしない。◆

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第1338日目 〈目の不調のため、本日ブログはお休みさせていただきます。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 まことに申し訳ありませんが、本日のブログ更新は中止させていただきます。
 原因は目の不調のため、とだけ申し上げておきます。
 実際、本を読むことも原稿を書くことも、PC入力することも困難を感じております。
 明日になればまた通常どおり更新できるので、今日だけ安静にさせてください。

 それでは明日、必ず再会しましょう。◆

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第1278日目 〈追憶の果てに、「憧れ」という名の記憶は眠る;ワーグナー《ジークフリ-ト牧歌》〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 縁なき女性と結ばれることを望み、家庭のあたたかさを得んとして果たせぬ男がいる。信仰にも似た願いは破れ、ベートーヴェンやブラームスの生涯や芸術に己を重ね合わせてどうにか心を保ち、明日へ向かって生きてゆこうとする彼が、うすぼんやりと思い描く安らぎの未来への憧れ――。
 ワーグナーの筆からぽろりとこぼれ落ちた一雫の清水のような作品は、そんな若者の夢想を音化した旋律に満ちている。それこそが「ジークフリート牧歌」。
 妻コジマの誕生日にトリープシェンで初演された室内楽的管弦楽曲には、楽劇『ジークフリート』からのモティーフが絹の如ききらめきを放ちながら織りこまれ、一枚のタペストリーを構成している。この曲を聴いていると決まって、心の底からふわりと暖かい気持ちが浮かびあがってくるのだが、こんなエクスタシーにも似た幸福は、たとえモーツァルトを聴いていても、なかなか得られるものではない。
 安らぎや幸福を求めて耽りたいな、と思うとき、ふと手を伸ばしてしまう音楽、「ジークフリート牧歌」。わたくしの愛聴盤はロベルト・ケーニヒ指揮、「バイロイト祝祭管弦楽団のメンバーによる室内管弦楽団」の演奏である。一夏のオーケストラのメンバーたちによって奏でられる夢のように甘美で、まろやかな音のタペストリー、「ジークフリート牧歌」。これほどまでにあたたかく、幸福感に満ちた演奏が、一体あっただろうか?
 いましばらくはこのCDを玉座から引きずり落とせるような演奏とは、出会えそうもない。◆

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第1238日目 〈ようこそ、ここへ〉【小説】 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 「まだかな?」横で自分の肩を抱く長姉に、小学二年の風間絵里は訊ねた。
 「まだだねぇ」
 返ってきた姉の言葉にふくれっ面をしてみせた。と、「可愛い顔が台無しよ」と諫められた。元日の昼、初凪の海岸。ここで姉妹は父の帰りを待っている。未だ待ち人来たらず、だが、もうすぐだ。
 「鎌倉だからねぇ。きっと初詣の人たちでいっぱいだろうし」
 「愛ちゃんのお家みたいに?」
 「うん。――まあ、人はもっとたくさんいるだろうけど」
 「――ねえ。鎌吉、海怖がるかな?」
 鎌吉? 絵里はいつからこんな名前を考えていたのだろう。少なくとも梨華には初耳だった。それにしても、鎌吉とは、なんともユニークな命名ではないか。梨華は内心で、くすり、と笑ったが、それを表に出すのはやめておいた。
 「そうだねぇ……」と梨華は頬に拳をあてて考えこんだ。「鎌倉にも海はあるからなぁ。パピー・ファームって山の方だっけ?」
 「ママと一度だけバスで行ったけど、赤い電車の駅からずいぶん乗ったよ」
 「そっか。だけど、なんで?」
 「……鎌吉が海を怖がって脚がすくんじゃったらね、へっちゃらだよ、って抱きしめてあげるんだ」
 姉がクスッ、と笑んだ。「もう絵里もお姉ちゃんだね」
 「お姉ちゃんだよ」絵里は胸を張った。「玲霞もいるし、まだハイハイしかできないけど沙織だっているもん」
 そのときだ、防波堤の方から仔犬の鳴き声が聞こえる。振り返ると、鎌倉へ行っていた父が、防波堤に腰をおろしていた。ちょうど仔犬を放したところだった。二ヶ月前はまだ足許もおぼつかなかった仔犬が、いまはしっかりと砂浜を踏みしめている。
 絵里は仔犬の名を呼んで、小走りに駆け寄る。それに気附いた仔犬が、短い四肢を懸命に繰って絵里に向かってきた。
 あとわずかのところで、絵里は砂に足を取られて転んだ。呻きながら顔をあげると、目の前に仔犬がいた。絵里は身体を起こして、ぺたん、と坐りこむと、尻尾を振りながら自分を見るセント・バーナードの仔犬を静かに抱きあげた。
 「鎌吉……。やっと会えたね」
 絵里は誕生日から一週間遅れでやってきた鎌吉の鼻の頭にキスをした。
 ――来てくれてありがと。ようこそ、鎌吉。
 それに応えるように、鎌吉が絵里の頬を、涙を掬うようにぺろり、と舐めた。◆

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第1237日目 〈家族〉【小説】 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 どこもかしこも似たような内容のお笑い番組に飽きたのか、掘り炬燵に入ったまま、背中を丸めた風間絵里が欠伸した。それをうつろな眼差しで見ていた玲霞も、つられたように欠伸する。
 欠伸はうつる、ってママがいってたけどホントみたい、と玲霞は思った。うん、ママ――いまのママじゃなくて、産んでくれたママ。ちょっぴり目尻に涙が浮かんだけれども、玲霞は唇をキュッ、と引き結んでそれを拭った。約束したもん、もう泣かない、って。ほんの数十センチ離れたところでぼんやりしている同い年齢の姉と。
 と、突然絵里が玲霞の方を見て、「宿題やっちゃおう――書き初め!」といった。有無をいわさぬ口調である。彼女は障子を開け放し、ドタドタと廊下を走っていった。「ママ~、墨すってぇ!」
 風が入ってくるから閉めてってよ、とブツブツ呟きながら、玲霞は炬燵から思い切り体を伸ばして障子を閉めた。また欠伸をするとテレヴィを消して、籐皿に盛られたミカンを手にして皮をもぎ始めた。三個ばかり消化した頃、絵里が父と一緒に、習字の道具一式と古新聞の束を抱えて戻ってきた。
 父が準備をしてくれるのを見ながら玲霞は、絵里の家族が私の家族になってよかった、もし絵里と友だちじゃなかったらここにいられなかったんだからね、と来し方を回想しながら思った。そうだ、この人たちが私の家族なんだ……。
 「玲霞、なに書く?」お手本帳の頁を開いたまま、絵里が訊ねた。「絵里はもう決めたよ、これ」と指さした頁には〈はつ日ので〉とある。なるほど、お正月ならではの文句だな、と玲霞は納得した。
 彼女はお手本帳を受け取って、パラパラと目繰ってみた。最後の方の頁に、いまの玲霞が心から共感できる文句が載っている。――これにしよう。
 ……それから一時間ばかりの後、絵里も玲霞も宿題を完成させた。飛び散った墨の跡が古新聞の上に点在し、反故となって丸められた半紙が幾枚も放られていたが、いまは目を瞑ろう。それなりに――小学一年生の書いたものにしては、きちんとした字で書かれている。二人は満足した様子で左端にクラスと名前を細筆で書き入れた。
 夕食を知らせに来た母が娘二人の書き初めを眺め、「上手に書けたね」といって頭を撫でてくれたのが、玲霞にはとても嬉しかった。
 「でも玲霞、よくちゃんと書けたね。ママ、感心した」
 「え、なんで?」
 「こういう長い半紙にひらがな三文字を書く、って結構難しいんだよ。大人でもバランスよくちゃんと書ける人は少ないんだから」
 へえ、と絵里も玲霞も感心したように声をあげた。そのあと、促されて後片附けを済ませ、書き初めを長押に粘着テープで留めてもらうと、二人は母に連れられて食堂へ歩いていった。
 ――電気が消されて暗くなった和室へ、いま一度目を向けてみよう。絵里と玲霞の、生涯初の書き初めが仲良く並んで掛けられている。絵里は既に述べたとおり、〈はつ日ので〉と元気いっぱいの字で認めた。玲霞は――
 〈かぞく 一ねん四くみ かざまれいか〉◆

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第1228日目 〈帰ってきたよ。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 いや、そうはいうても、誰が待っていてくれているのかわからんけれど……。

 何度も中断(休載?)をはさんでしまって申し訳ない。
 でも、明日の午前2時からいつものように更新再開するよ。◆

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第1225日目 〈AKB48《UZA》はグループ最強のナンバーですね。その他。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 突然一週間近くも更新を滞らせて申し訳なかった。他人事のようにいうけれど、結構この一週間で色々あったのだ。語る必要のまったくないものから、語りたくても語れない古傷まで、それこそ閉店ちょっと前の百貨店のクリアランス・セール後半みたいな感じで(意味、わかんないよね。ごめん、おいらも書いていてわからなくなった)。どれだけ慌ただしかったかというと、ようやく新しくした携帯電話のセットアップも未だ出来ていない程。まったくもう、いやはやなんとも、な気分であります。
 それはさておき。
 本ブログを閉鎖するのか、とのご質問をいただきました。そう思われても仕方ない。一年のブランクからようやっと復活したかと思えば、先月になって安息日を何日も設けて更新しない日が続けば、閉鎖か、と疑われるのも宜なるかな、というところであります。そこで本日はこの場を借りて、ブログ管理者であるわたくしことみくら さんさんかより公式に回答させていただきます。なんだか内閣談話みたくなってきたな……。
 まず閉鎖するのか、というご質問ですが、閉鎖は考えておりませんしその予定もございません、と率直にご返答させていただきます。
 今回更新の出来ない日が数日発生していた理由ですけれど、ひとえにこれはわたくしの怠慢であります。既に何度か申しあげたことがあるように、本ブログはまず聖書の当該章を読むことに始まり、然るにノートを二段階で作成した上で帰宅後、PCにて清書してブログにアップする、という過程を経ております。たしかに余計な作業と思われそうな工程があることに加えて、働いていない時間の殆どを本ブログに奪われていて他のことがあまり出来ない、という嫌いはありますが、弁明させてください、わたくしはこのスタイルに馴れてしまっているのです。
 とはいえ、この方法も遅かれ早かれ改善されねばなりませんし、実はそれを検討しているところでもあります。あまり贅言が過ぎるのもどうかと思いますので(馬脚を現す、という奴ですね、まさに)、この話題についてはここらでひとまず終わりとします。
 お伝えすべきことはただ一つだけ、即ち、「なにがあろうとも、必ずここに帰ってくる」という意思。……と、煽ってみたはいいけれど、通常通り本ブログが再開するのがいつかなんて、まるでわからないんですけれどね?



 この機会に何点かお知らせ事項なんてものを書いておくとします。過日にやって味を占めたわけではありませんが、箇条書き風に。
 ・本ブログのタイトルを現状のものから変更します。予定では今週中にその作業を終了させます。また、それに伴ってタイトルの下にある惹句も変更します。現時点に於いてお知らせする程の情報は提供できませんが(なにもかんがえていないわけではないのですが、ね?)、しばらく前から折に触れ考えていたことなので、本ブログのスタート時からお読みいただいてきた読者諸兄には申し訳ありませんが、どうぞご寛恕願います。
 ・現在読んでいる旧約聖書が終わり次第、しばらく時間を設けて長編小説の連載(?)を行います。タイトルは『ザ・ライジング』。21世紀になって初めて執筆、完成させた作品で、途中であった悲しい出来事ゆえにさんさんかとしても一際思い入れの深い作品です。連載は(現時点では)約2ヶ月を予定しています。終了後、なにもなかったような顔をして、旧約聖書続編、インターヴァルをはさんで新約聖書に進みます。
 ・携帯電話を変えた、という話をしましたが、やっとガラケーからi-Phoneに切り替えました。iPodを持っているから操作自体に新鮮味はないけれど(おい)、いやぁ、これってもうパソコンですね。電話じゃないわ。これでなにが出来るのか、どこまで出来るのか、いろいろ模索しているいまがいちばん楽しいのかな……。
 ・ワーグナー生誕200年に便乗したわけではあるまいが、岩波文庫の春のリクエスト復刊の書目に、『さまよえるオランダ人/タンホイザー』と『ローエングリン/トリスタンとイゾルデ』、『ベートーヴェン詣り』の三冊がラインナップされている。期間限定でしか店頭に置かれないデメリットはあるにしても、岩波文庫を扱っている書店ならば概ね新刊として手に入れやすくなった点は、素直に喜ぶべきであろう。むろん、さんさんかも未所持の『ローエングリン/トリスタンとイゾルデ』を購入、キリンシティで黒ビールを二杯程飲みながら拾い読みしたクチであります。
・Excelでの文章入力にも馴れました。今日からはWordで書く。或る些細な出来事が原因ですっかりWord嫌いになっていたのですが、使えるようにならなくちゃね。
・遅ればせですが、AKB48の《UZA》は良いですね。ダンス・オンリーのヴァージョンとダンス&バストショットのヴァージョンがありますが。わたくしは断然、前者が好きです。統一性があって、陶酔できるよね。なによりも本作のダンスがAKB史上最高難易度を誇る、ということをほぼ問答無用で納得させてしまうカメラ・ワークが凄すぎる。次曲はきっとパステルな曲になるであろうことが確実なだけに、このダークなテイストは貴重というべきでしょう。◆

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第1212日目 〈映画『ホビット 思いがけない冒険』を観てきました。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 この世界へ還ってこられたことを心よりしあわせに思う。今日までセピア色に染まっていた中つ国はいまやあざやかなる光輝を取り戻してわれらの前へ広がり、かつてはそこの住人であったにもかかわらず訳あって離散したわれらの再訪を優しく歓迎してくれた。
 『ホビット 思いがけない冒険』が始まって早々、わたくしの胸に飛来した想いは〈歓喜〉――感涙に咽ぶような類の歓び、懐かしさに胸が圧し潰される如き歓び、生き存えたことへの感謝から生まれた歓びであった。人はこれを大袈裟といって一笑に付すだろうけれど、わたくしにとって中つ国はもうひとつの故郷であり、作者J.R.R.トールキンいうところの「回復」;曇りのない視野を取り戻すために必要な場所だった。
 夢はもう一つの人生である、というたのは誰であったか。しかしわたくしにとってトールキンが準創造した中つ国、即ちミドル・アースは夢のなかでの本籍地なのだ。ここでのみ、わたくしは何ものにも脅かされることなき時間を過ごせる。故郷を遠く離れているからこそ、曇りなき心の窓で故郷を一望することができる。

 閑話休題。公開もそろそろ終了という時分、ようやく映画『ホビット 思いがけない冒険』を観に出掛けた。
 原作と映画とでは細かいディテールの異なる部分が多々ある。が、物語の流れを良くする関係上、どうしても必要な作業であったことを思えば、大したことではあるまい。好意的なる圧縮と挿入、改変なくして映画『ホビット』が、先行する『ロード・オブ・ザ・リング』(以下、『L.O.T.R』)3部作とリンクすることは難しかっただろう。トールキンが本職の作家ではなかったがゆえに仄めかしやすっぽかし、時系列の無視など、原作『ホビット』にせよ『指輪物語』にせよ散見される。これを解決するに適役はピーター・ジャクソンをおいて他になく、かれの手になるからこそ、ファンも安心して映画館のシートでゆっくり鑑賞できるのだ。
 これは評論ではないから事例を挙げてゆくことは避けるけれど、たとえば、裂け谷にてヒューゴ・ウィーヴィング演じるエルフの長、エルロンド卿とイアン・マッケラン演じるイスタリ、灰色のガンダルフが復活しつつある闇の力に懸念を示す場面が、中盤にある。原作には存在しない場面であるが、映画ではエルロンドとガンダルフに加えて、ケイト・ブランシェット演じるエルフの女王、ロリアンの奥方ガラドリエルとクリストファー・リー演じる白の魔法使いサルマンが顔を連ねる。既にサルマンは闇の力の復活を予知しているようであり、また、加担を企んでいるようであり、また、ガラドリエルとガンダルフは意思を同じうする強い絆で結ばれた同士という印象を観る者に印象附ける。映画のこの場面あってこそ、映画『ホビット』は格段に面白くなる――すくなくとも、『L.O.T.R』の前日譚という不名誉な立ち位置からは解放されるはずだ。
 また、イアン・ホルム演じるビルボとイライジャ・ウッド演じるフロドが登場することで、映画『ホビット』のプロローグが『L.O.T.R』第一部〈旅の仲間〉につながるというのは、ディープなファンにとっても一般的映画好きにもうれしいシークエンスだ。懐かしいかれらとの再会がそのままマーティン・フリーマン演じる若き日のビルボ・バギンズとの出会いを自然な、まったく抵抗なきものとしてくれるし、と同時にわれらは同じ場面でかの偉大なる魔法使い、灰色のガンダルフと再会を果たすのだ! 続けて、新顔(失礼!)のドワーフたち、就中リチャード・アーミテイジ演じるトーリン・オーケンシールドやケン・ストット演じるバーリンらと知己となり、憎きゴブリンやオークの跋扈ぶりに憤慨しつつ連中との戦いに手に汗握る思いをし、故郷を追われて流浪の民となったドワーフたちに共感するに留まらず、遂にわれらはスメアゴルことゴラムとかれの「いとしいしと」一つの指輪と宿命の再会をすることになる。そうしてエレボールの財宝に埋もれてドワーフたちの訪れを待ち受けるドラゴン、スマウグ。
 次作『ホビット スマウグの荒らし場』ではおそらく大男ビヨルンが登場し、スマウグとの決戦の地均しがされてゆくのであろう。楽しみだ。こちらは2013年12月の公開予定となっている。なお、3部作の最終編『ホビット ゆきてかえりし物語』は翌る2014年7月公開予定の由。

 頭に思い浮かぶ想念を指の走るままに書き連ねてきたら、バッテリー切れになった。もう筆を擱け、ということか。
 が、本作については書きたくてたまらぬこと、書き足りないことが、少しばかりある。短いものになるであろうが明日、残りの感想を認めさせていただくことをお許し願いたい。
 というわけで、わたくしは久しぶりにこの文言を堂々と最後に書き加えることとする。つまり、――
 to be continued.◆

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第1153日目1/2 〈あなたの帰りを待っている。━━「椎名へきる、突発性難聴を再発する」の一報に寄せて。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 椎名へきるまでが突発性難聴とは……。
 わたくしも、実はそうです。やはり大音量に耳を曝し続けた結果(それだけが理由ではないけれど)、医者に罹ってそう判断されたのでありました。
 これはなかなか周囲からの理解を得られぬ症状のようで━━有川浩『レインツリーの国』によれば、唯一のコミュニケーション障害であるそうな。子供の頃より耳を悪くしていたわたくしには、なるほど、と膝を叩く箇所が非常に多かったわけですが━━わたくしの場合、けっきょく契約内容を変更せざるを得ず、出勤日数を大幅に減らしてクリスマス・イヴからのシンシフトを組んだばかりのところです。おまけにちょっと上司との行き違いから互いにプチ切れしたりしてね。あなたの症状なんてどうでもいいんです、提出されたシフトで出勤できるかどうかだけを俺は知りたいんです。
 それはともかく。
 椎名へきるは以前にも同じ突発性難聴を患い、そのときは投薬治療を続けて回復した由。現在のわたくしと同じですな。でも、それを知って正直なところ、わたくしは安堵した。そうか、根気よく治療を続ければ煩う前のような生活を取り戻せるのか、と。楽聖のように悲嘆に暮れて芸術に邁進する必要もないのか、と。
 でも、音楽をやっている人にとって、これはどうやら職業病の一つなのだろうか。ずいぶんと他のアーティストたちもこの病気を経験している人がいるそうだ。今回、贔屓の椎名へきるが同じ病気を再発させて、しかもそれがニュースとして配信されていなければ、いまこうした文章を発作的に綴ることもなかったであろう。
 知ったばかりでなにも感情も情報も整理できていないで、散漫になっている。ろくに推敲もなにもできていない。マグマが噴出してそのままの姿を、ここにお披露目している。読者諸兄には何卒御寛恕願いたい、そう思うている。
 わたくしが捧げられる言葉はただ一つ。椎名へきる、あなたの帰りを待っている。◆

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第1140日目 〈今年読んだ小説;樋口有介『ピース』、真梨幸子『殺人鬼フジコの衝動』、村上春樹『1Q84』他。〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 本ブログの内容ゆえ、先日報道されたパレスティナが国家として承認された絡みの話なんて出来ればよいのだが。しかし、調べてゆくにつれて一朝一夕でわたくしの手におえるエッセイの書けようはずがあろうか、と早々に断念、尻尾を巻いて遁走することにしたけれど、これは、いずれ遅かれ早かれ、かつて某SNSにて毎週火曜日にお披露目していたようなコラム仕立てのエッセイを物してお披露目してみたい、と願っている話題である。
 というわけで、再開後は徒然なるまま、行き当たりばったりで書き綴ってきた<ウォーキング・トーク、シッティング・トーク>の、いちおう最終日とした今日は、空白の一年に読んだ本、というか、小説を思い着くままに列記し、うち何冊かについて一言二言のコメントを付けてゆこう。
 まず。年末年始にかけて読んでいたのは、最近再び活気附いてきた感のある現代日本のミステリで、何冊か読み散らしたなかでは樋口有介の『ピース』(中公文庫)と真梨幸子の『殺人鬼フジコの衝動』(徳間文庫)が面白かった。
 前者は、書店の平台に置かれた、他を圧するようなサイズの大判ポップに目を惹かれて、ようやっとそれに気附き、遅蒔きながら手にした次第なのだけれど、最初はよくある地方都市で起こった殺人事件のお話しかと思いきや、実は事件の根っこにもっと無神経で残酷な、或る出来事が横たわっていたこと(<犯罪史上、最も凶悪なピース!>)に気付かされて、そうした意味ではむかしから推理小説が好んできた(=近頃は敬遠されがちな)因果応報譚というて差し支えないだろうが、淡々と、着実に包囲網を狭めていって、気が付いたら真犯人を、真相を真綿で包みこんでしまっているような、無慈悲な描写とじわじわ立ちのぼってくる人間の業の深さ、愚かさに慄然とさせられ、読んでいて正直なところ、真っ昼間であってなお身震いさせられたものである。これに味を占めて、同じ作者の別の作品に手を伸ばしてみたが、これに優る小説とはお目に掛かれなかった。この一冊でブレイクした感があるけれど、これを凌駕する作品を何年後かに読めれば一読者たるわたくしは幸せだ、と思うている。
 或る意味に於いて『ピース』に優って読書界の話題関心をさらったのが、『殺人鬼フジコの衝動』であった。些細な日常風景を切り取って一滴二滴の強烈な毒を振りかけて、読者の眉根を顰めさせる技について、作者以上に腕の立つ作家は、たぶんこの国にはいないのではないか。このさり気なくも嫌味ったらしい、殆ど悪意とも思える出来事の数々、それを支える密度の濃い描写に感化されて、<イヤミス>なる新しい推理小説のジャンルを問答無用で確立させてしまった作者の腕は、空恐ろしい程である。絶対に傍にいてほしくない人物、絶対にかかわりたくない人物を書かせて、この人の右に出る作家がもし出てきたら、もうこの世は末ですよ。『ピース』はそのあと三度ばかり読み返したけれど、『殺人鬼フジコの衝動』は読み返すことなく、でも強烈かつ鮮烈な印象を残して、段ボールのなかに放りこんだままで、年度末に出た書き下ろし短編をシュリンクした限定版が出ても、触手を動かすに至らなかった。でも、それも先達て発売された続編、『インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実』はさほど日を経ずして購入したのだから、フジコ・バンデミック、恐るべし、というたところか。こちらはまだぺらぺらとしかページを繰っていないので発言は控えるが、前作を上回る不快感と愉悦を期待している。
 他に読んだものは、というてもあと数行しかないのだが、村上春樹の『1Q84』(新潮社/新潮文庫)が文庫化されたのを機に改めて読み直した。わたくしのようにむかしから読んではいてもそれ程真剣ではない村上ファンには、いつもの村上マジックが炸裂しているにもかかわらず、エンターテインメント性も十分に発揮された、読みやすくわかりやすい、ここ数年の作物でも屈指の良品と思うた。解明されていない謎、明らかにされていない出来事が幾つもあるのは、もはや村上作品ではお馴染みであるし、これは裏返していえば、とても海外小説的である。語られるべき部分と語られない部分が薄明の如く模糊として溶けこんでいる小説を、考えてみれば村上春樹は好んで読んで来、また、ときには翻訳の労を取ったのではなかったか。それを考えれば、この小説を読んで<放ったらかし感>を味わった読者には――或いは、なんにでも解決を求めなくては気が済まない、すべてが整って提示されなければ何一つ気に入らない、という類の『1Q84』の読者には、却って本書こそが、そういった海外の小説に馴染む契機になるのかもしれない、とつらつら考えたことがあるのも事実である。……数行といったに関わらず、なんだか大幅に超過してしまったな。
 他に読んで印象に残った小説を、作者とタイトル、出版社だけ挙げれば、デイヴィッド・ロブレスキー『エドガー・ソーテル物語』(NHK出版)、『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』(河出文庫)、鷲宮だいじん『合コンに行ったらとんでもないことが起こりました』(メディアワークス文庫)、山本弘『詩羽のいる街』(角川文庫)、水島忍『湖上の公爵に攫われて』(シフォン文庫)、越谷オサム『陽だまりの彼女』(新潮文庫)、岡崎琢磨『喫茶タレーランの事件簿』(宝島社文庫)、P.G.ウッドハウス『ジーブスとねこさらい』(国書刊行会)、H.R.ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫)、東雅夫・編『世界幻想文学大全1/幻想文学入門』と『世界幻想文学大全2/怪奇小説精華』(ちくま文庫)、大森望『新編・SF翻訳講座』(河出文庫)である。順番に意味はない。小説でないものも、二冊程混じった。それにしても海外については思い切り偏っているな。
 笹本祐一の『妖精作戦』シリーズや庄司薫の『赤ずきんちゃん』四部作など、他にもあったけれど、上記に較べて圧倒的に影が薄いのは、わたくしの偏食に原因があるのであって、意図したところではない。また、ここで有川浩の『図書館戦争』シリーズと竹宮ゆゆこの『ゴールデン・タイム』シリーズを除外した理由は、特にないのだが、後日改めて書こうかな、と思うているのと、いつも課している紙幅が尽きて超過しているからに他ならない。
 明日から、聖書読書ノート、再開。まずは「エレミヤ書・再開前夜」と題して……。◆

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第1139日目 〈小説:ステップ・バイ・ステップ 最終回〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 その夜、妻と末娘二人、絵里と玲霞の作った食事を済ませると、氏は適当に用事を作って書斎へこもった。一人になると風間氏は自分が、いまの逢沙生と同じ年齢だった頃を倩思い返していた。小説を書いて生活してゆきたい、と初めて考えたのが、それぐらいの頃だった。
 逢沙生が愛を選んだことからわかるように、特にまだ趣味で小説を書いているアマチュア作家は自作の最初の読者に、往々にして身近の人物を選びたがる。
 風間暁雄の場合は、高校時代に隣の席に坐っていた男であった。なにがきっかけだったのか、まったく覚えていないが、これまでに書いた小説――正確に言うなら本や映画のダイジェストに毛が生えた程度のものでしかないショートショートが詰まったノートを二冊、見せた。自分の内面を曝した羞恥と後悔、ささやかな自負を味わいながら身を固くして坐っている氏の前で、その男は必要以上にじっくり時間をかけてそれを読んでいた。一時間以上が経ってようやく顔をあげた男は、興奮を抑えきれぬという様子で、面白いぜ、もっと書けよ、と励ましの言葉をかけた。
 それがお世辞だとわかってはいたが、物語を紡ぐ楽しさを少し知りかけ、創作の甘い毒を一度味わった氏は男の言葉に舞いあがり、心弾ませ翻然と、ときには苦心しつつ、次から次へと、徐々に読むに耐える小説をものしていった。その時期の所産こそ普段は書斎の片隅に眠る十五冊の大学ノートで、二ダースかける十倍の量のショートショートと六編の(どうにか完成させられた)短編小説、そして未完成の長編小説を一編が、高校を卒業するまでの二年半に残しされた。それは現在に至るまで、作者以外はなんぴとたりとも一読の機会を得ぬまま、静かな眠りに就いている。
 最愛の凉子夫人さえ読むことのかなわないそのノート群を、いま氏は机の上に置いてぼんやりと眺めていた。件の男とは、高校を卒業してからもしばらく休みのたびに会っていたが、或る年の或る日、ちょっとした意見の食い違いが原因で取っ組み合いの大喧嘩をし、爾来、顔を合わせることはおろか年始の挨拶さえも欠くようになったが、ふと、あの男のことを意識にのぼすのが実に約三十年ぶりであることに気附いて、愕然とした(自分でもそれは少々意外だった)。
 あの男がいなかったら、と今更ながら思う。もしかすると小説家にはなっていなかったかもしれない。妻にも会えなかっただろうし、子供たちもこの世にいなかっただろう――そう考えて思わず身震いがした。
 でも、なにはともあれ、小説を書いている身にとって、すぐそばに第一の読者がいるのはいいことだ。自分に嘗てはあの男が、いまでは妻がいるように、逢沙生には愛がいる。負けず劣らず物語が好きな愛を最初の読者に選んだのは、逢沙生にとって最良の選択であっただろう。
 だが、小説を読ませて返ってくる言葉は決して甘いものであったり、心を浮き立たせるようなものばかりではない。高揚した気分をぺちゃんこにしてくれる厳しい言葉もあるし、中傷紛いの脅迫も理不尽な言いがかりめいたものもある。逢沙生がそれらへ謙虚に耳を傾け(適当に無視したりして)、創作の喜びをいつまでも失うことなく物語を紡いでいってくれればいいな……。
 なによりも、氏はうれしかったのだ。平日だろうと休日だろうと構わず家にいて、多くの時間を書斎で架空のお話相手に格闘し、家族とあまり過ごせていないような疑心暗鬼に襲われ、子供たちは果たして父親の仕事を理解してくれているのだろうか、と不安に駆られるときがある。だが、その子供たちの中に自分の生業へ触手を伸ばしてきた者がいる。年若きライバルの出現に驚くというよりも、子供たちがちゃんと父親の背中を見て育ってくれていたのだ、という喜びの方が遥かに優った。取り敢えずは、ほっ、と一息、というところだ。
 机の上にある(家族で撮った最近の写真を収めた)写真立てに手を伸ばしかけたときだった。書斎の扉を叩く音がした。
「はあい?」
「私。……入っていい?」
 父の返事を聞くよりも前に、扉を開けて、逢沙生が顔を覗かせた。

 逢沙生がひょっこり顔を覗かせた。ああ、主役が登場したぞ、と風間氏は口の中で呟いた。
 彼女がいったいなんの用で現れたのか、一々推理するまでもない。出来たのかな、でも、黙っておこう。そう心に決めてなにも言わず、茶封筒を両手で抱きしめながら書斎へ入ってくる娘を見つめた。あの封筒の中身がきっと……。
 書棚の前の踏み台に腰をおろして、逢沙生は大きな瞳をきょろきょろさせてまわりを眺め渡している。場所が場所なら挙動不審で尋問されるのは間違いないだろう。
「この本、面白い?」
 彼女は赤い表紙の本を手にした。シャーロット・ゲストの『マピノギオン』。妻との買い物途中に寄った本屋でこれの新訳に出会ったときは興奮のあまり、しばらくその場に立ち尽くしてしまった。そして気が付くと、この本をレジに持ってゆき、財布から千円札数枚を出していた……もちろん、妻が呆れ顔でこちらを見ているのは、百も承知だった。
「逢沙生の気に入りそうな内容だと思うな。イギリスのウェールズ地方の神話や伝説をまとめた本でね。――読みたければいいよ、持ってって」
「いいの? じゃあ、借りるね」逢沙生は開いた本の頁に視線を落とした。が、眼球は動いていない。視線をさまよわせているだけで、文章を追っているわけでも挿絵を鑑賞しているわけでもなかった。傍目に見ても、心ここにあらず、という様子である。
 なにか用事じゃなかったの、と訊いてみようとしたが、実際にどういえばこの子の気持ちを傷つけずに済むものかわからなかったので、口を開いてもためらいばかりが残った。
「あのさ、お父さん――」
「うん?」
 氏は正面から逢沙生を見ることなくそう言った。
「私、あの……」
 いよいよ来たか、と父は構えた。
「あのね、えっと、……小説」
「小説?」
 遂に本題へ入るぞ、そう風間氏は口の中で呟いた。
「う、うん、小説。――……この前読ませてくれた小説って、いつ本屋さんに並ぶの?」
 ずっこけた。肩すかしを喰らった気分だった。それでもどうにか立ち直り、「十一月の下旬か十二月の上旬じゃなかったかな。でも、どうして?」
「感想をね、愛ちゃんたちに話したら、本になったら絶対読む、って言ってくれて、じゃあいつ出版されるのか訊いてくるね、って約束したの。だから」
「あ、そう。うれしいな。気に入ってくれるといいけど」
「大丈夫だよ。だってすごく面白かったもん」
 それからしばらく間が開いた。実際は一分もなかったろうが、父と娘にはもっとそれ以上の時間が流れたように感じられた。こんなときは得てしてそんなものだ。
「ところで……それだけじゃないよね?」
 とうとう我慢できなくなって訊いた。
「あ、うん……」と言って逢沙生はうつむいた。本はもう閉じられている。茶封筒を抱きしめる力が少しだけ強くなったようで、それが外側へゆるやかに反った。
「その……えーっと……。私、ね、小説……みたいなのを書いたの。お仕事一段落してたら、その、読んでほしいな、なんてね、思ったんだ……けど……あ、やっぱり今度、にする」
 やわらかく甘やかな声で途切れがちにそう言うと、彼女は踏み台から立ちあがって扉の方へ歩いていった。
 それを氏は、「逢沙生」と呼び留めた。娘の足が停まり、背筋が心持ち伸びたような気がする。「初めて書いた小説を人へ読ませるときは、不安でいっぱいだよね。お父さんもそうだったよ。――でも、よかったら読ませてもらえるかな?」
 それに導かれるように、逢沙生は父のすぐ近くへ歩み寄り、おずおずと小説の入った茶封筒を差し出した。
「これ……」
 風間氏は娘からそれを受け取って、中の原稿を取り出した。一センチ弱程度の厚さのプリンター用紙に印字された原稿だった。「ありがとう。じゃあ、読ませてもらうよ」
 逢沙生は居心地悪そうにその場に立ち尽くしていた。
「ここにいて、いいかな?」と彼女が訊いた。
「ああ、いいよ」
 逢沙生は再び踏み台へ坐りこむと、掌を合わせてうつむいた。その姿を視界の端で認めながら、彼女の書いた小説を丁寧に読み始めた。
「バロンの物語なんだね」と風間氏は言った。バロンとは風間家で長く飼われている種類不明の、ぬーぼーとした風貌をした犬の名前である。逢沙生が頷くのを、ちら、と横目で見やりながら、「僕も一度書こうとしたんだけど、他に書かなくちゃならないのがあったんで、結局手を着けられなかったんだ……」
「え、ホント? どんなお話だったの?」
「迷子になった飼い主の男の子を探しに行ったら自分が見知らぬ街に来てしまってね。しょんぼりしながら道を歩いていると、よく知っているお巡りさんに拾われて、例の男の子が迎えに来てくれた、っていうお話」
 逢沙生は小さく笑いながら、
「いまからでも書けばいいのに」
 すると父は頭を振った。苦笑の影に諦めにも似た色が刹那と雖も射したのを、逢沙生は見逃さなかった。ともあれ、それ以上訊ねるのは控えた方がよさそうだ。
「これを書くきっかけ、ってあったの?」
 ややあって風間氏は訊いた。
 逢沙生はちょっとの間、視線を天井に向けてなにやら思いを巡らす表情になったが、すぐに向き直り、
「一年ぐらい、もうちょっと前かな。確か日曜日だったと思うけど、朝、ちょっと早くに目が覚めちゃって、読みかけだった『北欧神話』を読んでたの。そうしたらバロンがベッドによじのぼってきてね、布団の上で丸まって、じーっ、とこっちを見てたの。それがなんだか、なにかを伝えたい目に見えたんだ。すぐにバロンは部屋を出てったけど、なんだかずっと気になっちゃって……いろいろ考えてたら、このお話が出来てた。その日の夕方に、愛ちゃんに、『私、小説書く』って宣言したんだけど、仲々思ったように書けなくて……。結局、書き終わるのに一年もかかっちゃった」
「そうか……でも、よく完成させたね。それだけでも立派だよ」
「お父さんと愛ちゃんに読んでほしかったし、バロンを見ていると場面やこれからの展開が自然に見えてくるの。それに――」
「それに?」
「いま、この物語を書けないと、私、もうこれからなにも書けない、ってそんな気がしてならなかった。まるで誰かが私に命令して、操っているみたいだったな」
 氏はなにも言わずに頷いた。創作する者なら誰もが必ず経験するあの霊的な〈力〉を、彼女も処女作(と言っていいのだろう)から確かに感じて、物語を綴っていたのを知ったからだ。
 それきり、逢沙生は押し黙った。外では風が出てきたようで、窓のシャッターが音をたてて揺れていた。
「バロンも喜んでるんじゃないかな」
「あ~、どうだろう、それは。今朝もね、お前を主人公にした物語を書いたんだよ、って言ったら、しばらく私を見てたかと思うと、ふん、って鼻息鳴らして和室の日溜まりの中で寝そべっちゃったんだよ、バロン」
 楽しそうに話す娘の様子につられて、父も笑みをこぼした。
 ――風間氏は娘の紡いだ物語に心躍らせる一方でその出来映えに感嘆し、逢沙生は初めて書いた小説を父が読み終え、感想を口にするのをじっと待った。
 書斎に居心地のよい空気を孕んだ静寂の時間が訪れ、ゆっくりと流れていった。◆

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第1138日目 〈小説:ステップ・バイ・ステップ 第2回〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 それから三日が過ぎた。あれ以来、聖沙生は双子の姉の話をしなくなった。風間氏も敢えてなにも訊こうとはしなかった。なにも話してこないのは、あの二人の状況が変わっていないからだろう。かといって氏の心に芽生えた不安が消えることはなく、夕飯の席でもふと逢沙生に目が行き、居間にいてもぼんやりと、彼女の方を見てしまっていたのだが。
 その土曜日、風間氏は調べ事があって図書館へ出掛けていた。逢沙生がいつも来ている図書館だった。
 帰途、ふと、キルステンへ寄っていこう、と考えた。いま歩いている路地を左に折れればすぐの所に建つ、戦後すぐから広がった住宅街の中にある喫茶店だ。氏はこの数年、ちょくちょく立ち寄っては借りてきた本を読んだり小説を書いたりしている。ついでに言えば、時折、客足の途絶えた今日のような日の昼下がりに扉を開けると――
「あ、おじさん。いらっしゃあい」
 長女の中学時代からの友だち、篠田早樹がエプロン姿でカウンターの前に坐っていた。そう、こんなことが、こんな日はよくある。
 店番をしている日に客が誰もいなくなると、早樹はたいてい自分の好きなレコードをかける。いまは、天井に吊り下げられたBOSEのスピーカーから、エンヤの〈オリノコ・フロウ〉が流れている。
「こんにちは。今日は大学じゃないんだね」
「うん。――あ、サボりじゃないよ」と笑いながら彼女は言った。「今日の講義、たまたま休講になってるんですよ。でも、梨華ちゃんはレポートの提出で行ってるはずだよね」
 うん、と風間氏は頷いた。彼の長女の梨華は土曜日だというのに朝から大学へ出掛け、昼になってもまだ帰ってきていなかった。大方、と氏は想像した。大方、デートでもしているのかもしれないな、と。
 さて、ところで――
「――早樹ちゃん、エンヤなんて聴くんだね」
 えへへ、と耳たぶをいじりながら早樹が、「なんだか最近、ケルト音楽にはまっちゃって」と答えた。「授業の空き時間とかよく中古レコード店を漁ってるんです」
「バイトで稼いだお金をほとんど注ぎこんでいるようなんですよ」とカウンターの奥から顔を出した早樹の父親が、風間氏へそう言って、顔をほころばせた。「そんなことなら、店を手伝ってくれた方がありがたいんですけどね」
「ええ!?」と早樹が抗議の声をあげた。「買ってきたレコード、こうやって店でかけてるんだから、いいじゃん。趣味と実益を兼ねた私の道楽、なんでわからないかなぁ」
 早樹が口を尖らせてぼやいた。
 いいな、と氏はゆるむ口許を抑えながら思った。自分の家でも普通に――否、普通の家庭以上に、父と娘の会話はある方だと思っていた。が、趣味に関してこうまで小気味よい、キャッチボールに似た会話をした覚えはない。あったとしてもいますぐにはっきり、いつ、と思い出せる程ではなかった。
 そのうち――坐ってもいいのかなあ、と疑問に思い始めた頃、
「あ、ごめん、おじさん。坐って、坐って」
 と早樹に促されて(ようやく!)、いつもの席――店のいちばん奥まった、二段下がったところにある、中庭に面した席に腰を下ろした。
 頃合いを見計らって早樹が水の入ったグラスを持って、オーダーを取りに来た。それを済ませて父に伝えると、彼女は「ごゆっくり」と言って、店から自宅の二階へ通じる階段を昇っていった。
 四、五分経って、主人が盆にコーヒーを入れたマグ・カップを載せて、やって来た。
「お待ち遠さまです」
 コーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。図書館から借りてきた本をいったん閉じて、マグ・カップへ手を伸ばしかけたとき、氏はまだ主人が盆を脇にはさんだまま、テーブルの向こうに立っているのに気が付いた。
 どうしたのか、と訊くより早く、
「ちょっと、いいですか?」
 そう言いながらも答えを待たずに、主人は斜め前の椅子に坐った。お客が入ってきたらすぐにわかるよう、体を半分入り口の方へ向けて。主人はしばらくお客は来そうもない、と判断したか、風間氏の方へ振り返った。なにかためらっている表情だった。きっかけを摑めず言いあぐねているのがはっきりわかったので、「どうかしたんですか?」と後押ししてみた。そして、ようやく主人は口を開いた。
「逢沙生ちゃんのことなんです」
 またか、と風間氏は一瞬思った。聖沙生が話してくれたとき以来、次女の名前が耳に入るたび、思わず、びくん、としてしまう。いまもそうだ。それもまったく思いがけない相手から娘の名前を聞くと、否応なしに不安はかき立てられてゆくのだった。
「娘が、どうかしましたか?」
 恐る恐る氏は訊ねた。
「斎宮さんとこの前一緒にいるのを見たんです」
 マグ・カップを持った手が宙で停まったのにも気附かず、斜め前に座る主人の顔を凝視した。そこに宿った不安の影を知ってか知らずか、主人は話を続けた。
「図書館の上の見晴らし公園で、いつだったかな、一週間ぐらい前ですか。藤棚の下のベンチに二人して並んで坐ってたんですよ。ただ、なんだか様子が変だったので、離れたところでちょっと見てたんです。逢沙生ちゃんはいつものように淋しげな表情を浮かべてて、斎宮さんが身振り手振りでなにか熱心に喋ってましてね。やけに興奮している様子でした。するとね、急に逢沙生ちゃんが、こう、目を拭いまして、涙があふれてきたんでしょう、きっと。なんだか見ちゃいけない場面だったようなんで、すぐにそこを後にしたんですけど、ずっと気になりましてね。話そうにもそういうときに限って、先生は来てくれませんからね。すみません、いまになっちゃって。――あ、でも気にすることはないと思いますよ。あの二人に限って喧嘩なんてこと、ないですよ。……たぶん」
 小さな溜め息をつくと、氏は弱々しげな笑みを浮かべた。「ありがとう、話してくれて」と、マグ・カップの握りを撫でながら言った。「僕もあの二人のこと、ちょっと気にしてたんですよ」
 主人はほっとした表情を見せた。
 中庭の樹木の枝を揺らし、葉を騒がせる風が吹いている。早樹が掛けっ放しにしていたレコードが終わった。店の扉が開いてドア・ベルが軽やかな音を鳴らしたのは、ほぼ同時のことだった。

 キルステンからの帰り、川べりの遊歩道を辿っていて、ふと、顔をあげると、こんもりとした木立の陰から目にも鮮やかな朱塗りの大鳥居が見えた。言うまでもなくそこは斎宮愛一家が住む神社のある里山で、この街の中心を成す部分だった。
 さっきまで吹いていた微風はやみ、やわらかな夏の残り香の薄らいで秋の気配をおちこちへ散らせた陽光が、川面のさざ波に照り輝いている。鳥居と川面を交互に眺めているうち、久し振りに参拝してゆこうかな、という気分になった。風間氏は橋を渡って反対側に出ると、羽目板造りの塀の続く路地を抜け、大鳥居へ至る参道に足を踏み入れた。
 参道には昔ながらの商店街が軒を連ね、近所に住まう人々が夕飯の買い出しに来ていた。夏祭りや七五三、年末年始になれば華やぎこそ生まれもするが、観光地でもない街の神社の参道で商いをする店には、そこそこの繁盛が性に合っているのかもしれない。生まれた頃から佇まいを変えぬ参道の景観が、あたかも時間の流れを拒否して、昔日の面影を必死になって留めているように、彼には感じられてならなかった。
 参道を抜けて鳥居をくぐり、九十九折りの階段に少しばかり息を切らせて途中休みながら、王朝の御代に創建されたと伝えられる神社の境内に出た。丹精された松と榊が、片時も緑を失うことなく社殿を囲み、参詣口の両脇に植わり、桜の老樹が、本殿に向かって左手の能舞台へ覆いかぶさるように枝を広げている。右手にある幼稚園の園舎のすぐ裏手には、折口信夫博士が自ら植樹したと言い伝えられているたぶの木が葉を茂らせていた。
 ――拝み終わって踵を返すと、斎宮愛が立っていた。思わず、どきり、とした。にこにこと笑みながら、こちらを見ている。普段着のままで、手には竹ぼうきを持ち。彼の脳裏に刹那、逢沙生の淋しげな横顔が過ぎっていった。が、すぐに表情をやわらげて愛へ近附いた。
「こんにちは。――そんなにびっくりしました?」愛が先に口を開いた。「目が点になってましたよ」
「いや、いるなんて思わなかったからね」
 愛の手にある竹ぼうきに目をやって、「掃除してたの?」
 彼女は頷いて、
「今日は幼稚園休みでしょ? だから私が掃除当番なんです」
「そうか……これだけ広いと、掃除も大変だな」境内を見渡しながら言った。「偉いね……」
 愛は笑顔のまま首を横に振って、
「神社っていっても自分の家だもん。掃除ぐらいしますよ」そこで一旦言葉を切ったが、続けて、「まあ、掃除だけで休みの日の二、三時間は潰れますけどね。午前中にやるようにはしてるんですけど、今日はちょっと寝坊しちゃって」
「でも、一人じゃきついでしょう?」
「あ、ううん。幼稚園の先生たちも隔週で出てきますし、手に負えないときは逢沙生や聖沙生ちゃんたちが手伝いに来てくれるから、あんまりきついって感じじゃないんですよ。えへへ、助かってます」
 そうか、と風間氏は心の中で頷いた。ときどき子供たちが神社に行って頬を上気させて帰ってくるのは、そういう理由だったのか。ふぅむ、日中に書斎へ籠もって小説書いているのも考えものだな。
 それにしても――またもや逢沙生だ。キルステンの主人に続いて、これで二人目。しかも同じ日に。だが、愛の口から逢沙生の名前が出るのは、とても自然なことだ。どうも聖沙生から話を聞いて以来、〈逢沙生〉という言葉へ、やたら神経過敏に反応してしまう。改めてそんな自分を客観視してみて、思わず吹き出しそうになった。眉根をひそめる愛に言い訳してから、いま思い付いた、というような風で訊ねた。
「あのさ、いまちょっと時間あるかい?」
「はあ、ありますけど……あ、もしかしておじさん、私のことナンパする気?」
「娘の恋人に手出すほど落ちぶれちゃいないよ」
「私っておじ様キラーなのかな……」
 竹ぼうきの端を掌で包み、そこに頬を押しつけながら、からかい半分の口調で愛は呟いた。そしてちょっと上目遣いに風間氏を見ると、口許へ小悪魔めいた微笑を浮かべた。
「だから、ナンパじゃない、ってのに」
「まあ、まあ、落ち着いてよ。おじさんが奥様一筋だってのは、みんな知ってるから。――で、なに?」
「うん、その――逢沙生のことでね」
「逢沙生?」愛が眉間に皺を寄せ、オウム返しに訊いた。
「ちょっと小耳にはさんだんだけどね、……愛ちゃんと逢沙生、最近仲悪いの?」
「はあ?」
 愛が拍子抜けしたような声をあげた。
 それを聞いて氏は、知らず満足の溜め息を洩らした。これで、噂は単なる噂でしかない、と証明されたようなものだからだ。
「どっからそんなデマ、仕入れてきたんですか?」
「デマ?」愛がこっくりと頷いた。「そうか、なら――よかった……」
 風間氏は愛も覚えているだろう、過去の出来事を語った。
 それは逢沙生が小学生の頃、同じクラスの子から一年近くに渡って、陰でいじめられていたことだった。年度の終わり近くになって、愛が逢沙生のクラスに転入してきた。その翌日にたまたまいじめの現場に居合わせたこと、転校してくる前は自分もいじめられっ子だったこともあって、愛は自然な成り行きで逢沙生と友だちになった。逢沙生のいじめ問題が解決したのは、その年の春、新緑の季節だった。
「愛ちゃんは逢沙生にとって初めての友だちで、いまになってもずっと一緒にいてくれるわけでしょ。そんな二人が仲違いとかしたら、嫌だからね……。でも、逢沙生を見ていてもあんまり愛ちゃんのことで悩んでいる感じはないから、いったいどういうことなのかな、って不思議に思っていたんだよ」
「そうだったんだ……ごめんね。おじさんのこと、なんだか心配させちゃったみたい」愛がぽつりと言った。
「喧嘩したとか別れるとか、そういうことじゃ、ないんだね?」と風間氏は確かめるように、愛の顔を窺いながらそう訊いた。
「当たり前じゃないですかあ。私と逢沙生に限ってそんなこと、あるはずないじゃない。もお」
 すねたような言い草で、愛はそう抗議した。
「一昨日だって……、いや、それはどうでもいいんだけど」と愛は言った。少し頬が染まったのを見たのは、気のせいだったろうか。「でも、どっからそんなデマを仕入れてきたの? ――あ、聖沙生ちゃんでしょう?」
 氏は図星を指されてちょっとためらったが、頷いて
「実はね、そうなんだ。聖沙生がさ、クラスの子からそんな話を聞いた、って心配してたから」
「仲悪い、って? ――うーん、それって、もしかすると放課後のことかな」
 中空に視線をさまよわせながら、彼女は呟いた。
「あ、そう。放課後のこと」
「図書室だよね、きっと。そっかあ……まあ、そう見られても仕方ないかもなあ……」
 愛は竹ぼうきを持ち直して相好を崩した。逢沙生とはまた違った印象の、和んだ表情が面に浮かんでいる。まだ理由は説明されていないが、それだけで氏は安心した気分になった。
「あれですねえ、――言っていいのかな。でも、なにも口止めされてないし、おじさんにだったらいいのかな。おじさん、逢沙生にも誰にもまだ内緒だよ。約束できる?」
「うん、約束するよ。誰にも言わない」
 風間氏は左手を挙げて掌を愛に見せて、宣誓するように言った。茶目っ気を見せたつもりだったが、どうやら愛には通じなかったらしい。愛は恋人の父親を(かなり意図的に)無視して話し始めた。
「あのね、おじさん。逢沙生ね、この一年ぐらい、ずっと小説を書いてたんですよ」
「小説? 逢沙生が?」
 予想外の答えに呆気にとられた。後日、愛が思い出し笑いをこらえて語ったところでは、そのときの風間暁雄の表情は、まさしく鳩が豆鉄砲を喰らったようなそれだったという。
「そう。ついこの間完成して、いま頃清書してるんじゃないかな。逢沙生、中学生の時分から短いのはずいぶんいろいろと書いてたんだけど、小説っていうよりも映画とかのあらすじみたいなものばかりでね。それで高校に入ってしばらく経った頃かな、『愛ちゃん、私、小説書く』って突然言い出して。それからずーっと書いてたんだよ。たぶんね、聖沙生ちゃんのクラスの子が見たのは、書けたものを読ませてくれてたときじゃないかな。完成したら真っ先に私に読ませてくれる、って約束してたし。それのことだよ、きっと。――安心した?」
 黙ったまま、風間氏は頷いた。そんな彼の胸中には様々な思いが渦巻いていたが、なによりもすべての話がこれで一つに結び合わさり、事実がわかって満足したのが、いちばん心を占めていた。
 ――よかった、といろいろな思いをこめて、そう呟いた。
 愛もそれを聞いて、より和んだ表情になった。
「意外なところからライバル出現だね」
「そうだなあ……ねえ、逢沙生の小説って、どういう感じなの?」
 にっこりと笑みながら、愛は唇に人差し指をあてた。「それは秘密。でもね、とっても優しい気持ちになれる話だったよ」
「そうか……。いつか、読ませてもらえるかな?」
「読んでもらえるかな、なんて言ってましたけどね。清書が終わったら、おじさんのところに持ってくるんじゃない?」
「だといいな……」という氏の顔に、喜びの色が射していた。
 何気なく愛は自分の腕時計に目をやると、「あっ!?」と声をあげた。
「早く掃除終わらせなきゃ! 夕飯の支度手伝う、って約束してたんです。ごめんね、おじさん!」
 そう言って愛はまだ掃除の済んでいない幼稚園の園舎へ向かって走っていった。
 風間氏はそんな愛の背中に、「ありがとう!」と声をかけると、本殿の脇の裏参道を通って帰宅の途についた。

To Be Continued


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第1137日目 〈小説:ステップ・バイ・ステップ 第1回〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 初秋の黄昏刻、用事を済ませて東京から帰ってきた風間暁雄氏は、自分を呼ぶ声と小走りな足音で歩みを停めた。その声の主が三女の聖沙生(みさき)であるのは、振り返らずともさすがにわかった。
「お父さん!」
 ブレザーの制服姿で肩まで伸ばした栗色の髪をたなびかせて、聖沙生が走り寄ってきた。その両頬が薄紅を散らしたように染まっている。風間氏を見上げる瞳に、父親の背後へ沈みかけた夕陽の光彩が映りこんでいた。
「お帰り」と、聖沙生は言った。八重歯のこぼれる、子供の頃と変わらぬ笑顔で。
 風間氏は「ただいま。――お帰り」いささか間の抜けた返事をして、ふと気が付いた。いつも一緒にいる相原香歩が、どこにも居なかった。「今日は香歩ちゃんと一緒じゃないんだね」
 そう訊ねて、口をつぐんだ。娘の横顔に淋しげな影が射したのを見たような気がしたからだ。訊ねてはいけないことだったのかもしれない。その場を取り繕う言葉を探したが、それは聖沙生の返事(哀しみのこもった口調と風間氏には思えた)で中断された。
「……今日はお休み。風邪ひいたんだってさ」
 オリーブの木が両側に植えられた石畳の歩道に、父と娘の影が長く伸びている。聖沙生は何気なく肩越しにそれを見やったが、すぐにまた視線を戻した。
「そう……。淋しいね」
「……うん。――ねえ、このままお見舞いに行ってもいいかな?」
 聖沙生へ視線を向けると、目が合った。駄目かな、とその瞳は語っている。そして、当然返ってくる父の答えも予期している瞳であった。
「いまから? 別に構わないけど、もう夕飯刻だから、あんまり迷惑にならないようにね」
「わかってる、ってば。もう十七なんだからさ、いちいちそんなこと言われなくたってわかってるよ」やや声を荒げて聖沙生が言った。
 反抗期なんだな、と氏は感じた。もうそんなに大きくなってたんだな……。なんだかどんどん子供たちに置いてゆかれるような気がするよ。
 刹那の間の後、
「どこかへ行ってたの?」そう聖沙生が訊いてきた。居心地の悪い思いを、彼女も感じているようだった。
「出版社へ原稿を届けに行ってたんだ。ついでに久し振りだったから、神保町にも寄ってきた」
「そうか、書いてた小説、終わったんだもんね」
 言いながら聖沙生は頷いた。「この前、プレゼントしてくれたやつなんでしょ、新作って?」
「ああ。聖沙生は――」
「私はちゃんと本になったのを読むよ。作家の娘だから、って特別扱いされるのも嫌だし」
「そんなものかい?」
「うん。――少なくとも私はね。でも、逢沙生(あさき)は半分徹夜して読み耽ってたよ」
「あれ、全部読んだの、逢沙生? 一晩で?」
 聖沙生が、うん、と頷くのを見て、氏は溜め息をついた。今日出版社へ渡した新作は、原稿用紙に換算すれば七〇〇枚近くある長編である。それをわずか一晩で……。彼は逢沙生が――聖沙生の双子の姉が、私家版として製本した新作を読んでいる姿を想像した。自然と氏の口許に微笑が浮かんだ。
 聖沙生が急に立ち止まった。父の腕を摑んで、停まれ、とも促して。
「どうした?」
「……逢沙生のことなんだけどさ」と聖沙生が、石畳に視線を落としながら言った。
 その言い方に、この双子がまだ小学生だった自分のことを思い出した。他ならぬ聖沙生から、逢沙生がこれまでイジメに遭っており、今日そのイジメっ子と喧嘩して勝った、と聞かされたときのショック。目の前が真っ暗になり、足許がふらついた。娘が――次女が発していたかもしれぬSOSを見逃していたであろう後悔と自責に苛まされ、妻とその夜遅くまで話し合った諸々のこと。その前後からは友だちもでき、徐々に明るくなり、スポーツにも打ちこむようになったことで、ずいぶん救われた気持ちになったものだった。その逢沙生について、いままた聖沙生がなにかを告げようとしている。悪いことでは、嗚呼、どうかありませんように。
「最近おかしいんだよね。学校での行動が」
「……おかしい、って?」
 努めて冷静を装いながら訊ねた。でも、どうあっても動揺は隠しきれない。
「帰りのホームルームが終わるとね、愛ちゃんとすぐに図書室に籠もっちゃうんだって」
 愛ちゃん――逢沙生にできた初めての友だち、斎宮(いついのみや)愛は風間家の近くにある神社の神主の一人娘だった。そして目下の所、唯一無二の親友であると共に、大切な恋人。まだ決して同性愛者の結婚が認められているわけではないが、氏はこの二人さえ本気ならそうさせてあげてもいいかな、と(最近はかなり真剣に)考えていた。――まあ、もっとも妻は猛反対しているが。
 その愛と図書室に籠もる。――だが、
「それって、なにかおかしいの?」
 聖沙生は頭を振った。「図書室に籠もること自体は別にいいの。逢沙生にしてみれば、カラオケにいるよりも自然なことだから。ただね、図書室で愛ちゃんと一緒にいるときの様子がおかしいのよ」
 彼は黙りこくったまま、娘の話を聞いていた。ややあって後、聖沙生に続けるよう促した。
「いつも隅っこの方で固まってね。なんか秘め事でもするような雰囲気なんだけど、愛ちゃんがさ、怖いくらいの表情で腕組みして、逢沙生はうなだれて小さくなってるんだって。――私は直接見たわけじゃないけど、図書委員やってる同じクラスの子の目撃証言」
 はあ、と父娘はほぼ同時に溜め息をついた。
「またいじめられているのかな――って、愛ちゃんが相手じゃ、それはないか」
「たぶんね。でもね、その子が言ってたけど、いつもの仲良しカップルの面影なんて、これっぽっちもなかったみたい」
「そう……」と言ったきり、また黙りこむ氏。
「誰かにずっと相談しようと思ってたんだけど、誰にしたらいいのか見当がつかなくってさ。いま、お父さんに話せてよかった」
 聖沙生は膝で鞄を、ぼんぼん、と蹴りながらそう言った。風間氏の顔にとまどいと歓びの色が同時に浮かんだ。
「ありがとう。そう言ってもらえるとうれしいな」
 今度は聖沙生が恥ずかしげに面を伏せた。この数年、こう面と向かってなにかを喋るのを避けていたような気がしたからだ。
「しばらくこのことはさ、二人だけの秘密にしておこうよ」
 そう父は提案した。娘はちょっとの間もためらわずに頷いた。
 やがて二人は相原香歩の住むマンションのエントランスのそばへ来た。立ち止まると聖沙生は、
「じゃあ、私、寄ってくから」
 と言って、開いたエントランスの自動ドアの向こうへ姿を消した。
 風間氏は、日増しに美しくなってゆく娘にしばし目を奪われ、後ろ姿を見送った。再び家路を辿り始めたものの、心の中は晴れなかった。
 ――逢沙生と斎宮愛の間に何があったのだろう?

 知りたくはあったが、訊いてはいけない気がした。それが事実だと、娘の口から告げられるのが怖かったからだ。
 夕食後、風間氏は新作を仕上げた虚脱感と逢沙生の身を案じて暴走しかける心配に気分が悪くなり、妻にそっと断って、早々に寝室へ引きあげた。豆電球の小さな灯りが、室内をぼんやりと照らしている。長い時間、天井の一点を見つめていたせいか、眼差しはうつろになり、目蓋が落ちかけていた。枕元に置いた時計が時を刻む音が、やけに耳に障る。まるで子守歌のように単調なリズムは、いつしか眠気を誘い……
 ……ふと、目が覚めた。いつの間にやら眠っていたらしく、時計の針はさっきより一時間近く進んでいた。妻か娘の誰かがその間に来たようで、薄手の布団が掛けられている。隣のベッドに視線をやったが、まだ妻はいなかった。
 風間氏は溜め息をついて、かざした掌を額にあて、次女の名前を呟いた。「逢沙生……」
 脳裏にあの子が小学生だった時分の光景が浮かんできた。彼女が初めて斎宮愛を家に連れてきたときの光景だった。まだ逢沙生がイジメに遭ってると知らず、友だちらしい友だちができて良かった、と単純に喜んでいた頃。あのときそれを知っていれば、と思うが、知っていたからどうなるというものでもない。子供の社会のいじめとは逃げ道が少ないだけに、夢想だにできぬ残酷な性質を持っている。
 他ならぬ風間氏が小学生だったとき、イジメに遭っていた一人だった。こんな変なところまで似なくたっていいのに……。氏は独りごちた。逢沙生のことを思っていたら、小学生時代のとりとめのない記憶が様々に浮かんできた。目を閉じてそれを反芻してノスタルジックな気分を味わっていると――
 ――「パパ?」
 ビクリとして目を開け、ベッドの傍らを見ると、四女の絵里とそれに付き添うように逢沙生が、そこにたたずんでいた。暗くて表情はよくわからないが、どうやらお見舞いに来てくれたらしい。
「気分、良くなった?」と絵里。
 頷きながら、氏は「ああ、絵里の顔を見たら元気になったよ」と言って、四女の頭を撫でた。ちょっと嫌がる素振りをして見せた絵里を見て、この子もいつか父親離れをするんだろうな、と淋しくなった。
 背後の逢沙生が、「なにか果物とか持ってこようか?」と訊ねた。「それとも、水の方がいい?」
「いや、いまは大丈夫。ありがとう」氏はそう言うと、そっと微笑んだ。
「今日は絵里がパパを看病する」
 唐突に絵里がそう宣言した。逢沙生が笑いをこらえるように、口許を掌でおおった。それを察した絵里が後ろを向いて、なによぉ、と頬を膨らませた。
「絵里、パパはちょっと疲れて休んでいるだけだから、平気だよ」そう風間氏は言った。「本当に病気になったときに頼むよ、ね?」
「じゃあ、仕方ないや。でもパパ、早く良くなってね」
 だから病気じゃない、ってのに。逢沙生がそんな顔で妹を見、父に視線を移した。目があったとき、彼女がなにかを訴えようとしているように感じたのは気のせいだっただろうか。――その後数日間、氏はずっと、この夜の逢沙生の表情が気になっていた。それが解決し、胸を撫でおろしたのは三日後のことである。
 でも、このときまだ氏は悩むばかりだったから――
 それから数分、三人は楽しくお喋りした。やがて氏がこらえきれずに欠伸をすると、逢沙生は絵里を連れて両親の寝室から出てゆこうと、父へ背を向けた。その後ろ姿に、風間氏は思わず声をかけた。「逢沙生」
 なあに、と振り返った逢沙生に氏は、ただ「悩みがあったらいつでも言ってよ」とだけ言った。彼女は不思議そうな顔だったが、うん、と頷くと、扉を閉めた。
 風間氏は緊張の糸が切れたような気持ちで、溜め息を洩らした。
 ――イジメか……なんで逢沙生ばっかり……。

To Be Continued


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第1136日目 〈如何にしてわたくしはSKE48を愛するに至ったか?〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 真実を告白することはいつだって大変に困難を伴うけれど、GO AHEAD、いまは不安な気持ちを抑えて新しい一歩を踏みだそう。と、いうわけで――余は如何にしてSKE48を愛するに至ったか?
 如何にして? やはり始まりにAKB48があったのは否定できない。昨年2011年末にCSでが放送された。2時間、全4回の放送をばっちり録画したなかに彼女たちの――SKE48のMVが幾つかあったのだ。あきらかにそれ以前、それ以後に流されたAKBやNMBの映像とは気分の異なるMVにたちまち目を奪われて……その後は彼女たちの映像ばかりを、馬鹿げたシフトを終わらせて帰宅した夜中、無聊を慰めようと繰り返し繰り返し、何度となく再生したのを覚えている。  「1! 2! 3! 4! ヨロシク!」、「バンザイ Venus」、そうしてわたくしの魂にトドメを射したのが、時間の都合だろうか、CMの直前にショート・ヴァージョンが放送された「パレオはエメラルド」だ。旬日経ぬうちにNHK名古屋放送局の音楽番組にSKE48が出演した回が、NHK総合にて深夜の時間帯に放送されたけれど、「パレオはエメラルド」をそのとき初めて、きちんと聴いて、健康的で伸びやかな歌だな、と素直に思うたのを覚えている。  わたくしは、決して積極的な姿勢で彼女たちのファンになったのではない。書店をぶらついていてたまさか手にした雑誌や、新聞のTV欄で偶然出演番組があるのを知って録画したり、という程度――それでもSKE48にハマってファンとなるにはじゅうぶんだろう。  メンバーの幾人かについては、顔を覚えると同時に好きになった。どんな子なのか。どんなグループなのか。これまでどんな曲を出したのか。「好き」だからこそ「知りたい」、恋に特有の好奇心を抑えられないまま知識を増やしてゆき……知れば知る程、好きになり、いまではすっかり<愛>を表明できる程にまで成長(?)した。  名古屋とはわが故郷からなかなかに遠地ゆえ、劇場に足を運んだことはない。握手会にも参加したことがない。指原莉乃いうところの在宅ヲタなわけだが、それでも遂に重い腰をあげて、今春の日本ガイシでのコンサートには万難を排してでも出掛ける準備が出来ていた――チケットも入手したのに断念した理由は述べないけれど、わたくしにとって今年一年最大の痛恨事であるっ!!  小林よしのりが鼎談本を出版したり、田原総一朗が週刊誌で告白したり、と今年も大物文化人たちがそれぞれに反応を見せたけれど、しかし、かれらが一様に推すのは、まずAKB48である。が、わたくしはどんなことがあろうとも、断然SKE48派だ。彼女たちからもらう元気と勇気に、他は足許にも及ばない。そうして、感謝! わがi-Podに入るJ-POPアーティストの内、SKE48は結構な容量を占めるが、これに並ぶのはSMAPだけなのだ。  ――やはりこれは告白せねばならないか――推しメン? 済みません、殆ど全員です。変換の都合上、フルネームで書きますが――松井珠理奈も松井玲奈も、向田茉夏も大矢真那も、木﨑ゆりあも小木曽汐莉も古畑奈和も、須田亜香里も高柳明音も秦佐和子も、古川愛李も平松加奈子も木本花音も、ここに書けなかった人も、みんな、みんな、大好きだぁ!  今後もたびたびSKE48のことは書いたりするだろう。いちばん近い未来に書くとすれば、それは恐らく、今日ようやく買いこんできた『キスだって左利き』初回限定盤TYPE-A~Cのレヴューでしょう。本稿を書きながらMVを流しているが、手が疎かになって非常に困る。しかし……はふん、茉夏は可愛いわぁ。◆

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