第3759日目 〈病床からのレポート──2024年01月16日篇〉 [日々の思い・独り言]

 化学療法の負の側面と、点滴にまつわる不安と恐怖で過ごした一日であった。絶望を一瞬でも感じた日は、入院以来正直なところ無かった。今日はそれを感じた点で、稀少なる一日にもなった……前向きに言っているつもりだが、心中穏やかならざることはお察しいただけまいか?
 負の側面とは?
 不安と恐怖とは? 
 あまりに生々しく、打ちのめされるような現実である。告白療法は無効であろう。斯く判断する。逃げているのではなく、もうすこしだけ、向き合う時間が欲しいのである。ただうっすらとした過去の記憶が、二冊の本の内容を呼び起こしてくる。〈チャーリー・ブラウンとビーグル犬スヌーピー〉シリーズのスピンオフと、アメリカのティーンエイジャーをメイン層にした安手のロマンス小説だ。……咨、確かにいまの自分と似通った部分はある。ぼんやりとした意識であっても首肯できる程には。退院できたら、さっそく書架を漁って探してみよう。

 それはさておき、シェイクスピアも当面の用事は済ませたので(突破口を開くこと!)、もう頭を使った作業は遠ざけることに決めた。純粋に読書を愉しむ方へシフトしたのだ。
 まずはキングの『異能機関』を読み始めた。読み始めた一昨日は快調に20ページ近く読めたのが、昨日今日は合わせて10ページになるかどうかの量、と来ては、もどかしいにも程がある。
 だって、キングですよ? 面白くてすいすいページを繰る指が止まらぬが当たり前ではないか。神様から下々へ与えられた福音の物語ですよ? 読み耽って当然ではないか。なのに、まぁなんという……。
 戦犯捜しは趣味でないから止めよう。しかし、わたくしはめげない。立ち止まるわけにはいかないのだ。悲しいことにわれら人間は有限の命の民なのだ。
 明日は『異能機関』の下巻を持ってきてもらう。正月休みに読もうと決めこんで買ったままなアーサー・マッケンの『自伝』と、モチベーション維持に必要な荒俣宏のこれまた『自伝』と平井呈一の年譜と作品集も。
 中村真一郎は40代の頃であったのか、神経症かなにかに悩まされて、医師から長いものを読んで療養せい、と言われた。そのとき中村が選んだのが江戸漢詩を多量に漁読、あげくには頼山陽の日記をひたすら読むことに相成って、名著『頼山陽とその時代』を(病癒えたる後に)書いた。これは、学生時代からの愛読書の一つである。
 ……その顰みに倣うつもりではない。が、今のような状態であるとき、国内作家による取り柄のない小説を読むのは却って症状を悪化させるだけだ。事実をだらだら綴った読み物の方が、余程気持ち良い時間を過ごせる。
 マッケンや荒俣をお願いした裏の事情でもある。
 
 と、もう消灯時間を過ぎている。個室とはいえ、それはいけないことだ。
 かなり中途半端であるが、擱筆とする。いちども読み返さずに来たが、いつものことだ。
 それではまた、次回!◆
2024年01月16日 22時08分

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