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第3506日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第12話(最終回)を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 遂にこの日を迎えてしまいました。『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第12話最終回、「私を叶える物語」が先日10月09日に放送。例によってしばらくはLLSSロスが続きそうです。
 本話の軸は、前話から持ち越された澁谷かのんの留学問題。「かのんちゃんには留学してほしい」なる嵐千砂都らしからぬ衝撃発言で終わった第11話でしたが、今回はその解決編となる重要なエピソード……のはずが蓋を開けてみれば「なんじゃ、こりゃ!?」と、疑問符が頭のなかを埋め尽くすような内容になっていました。

 結果をいえば、かのんはウィーン国立音楽学校への留学を決めた。学校へ残ることに決めていたかのんでしたが、本話にてLiella!メンバーと母親の説得に背中を押されてようやく自分の気持ちに従うことができ、一度は辞退した留学を決めたのであります。
 マルガレーテが突然入ってきた場面から推測して、それはお客さんのいない時間だったのでしょう、かのんは実家の喫茶店でお母さんと話し合い、留学の話は「誰にでも来るものではなく、あなたにだけ来た話」と諭された。
 どうしてこの場面に父親がいなかったのか、不思議でなりませんね。不自然に感じるのであります。娘の留学について両親が膝を交えて本人と話し合うのが本来でしょう。なのにどうして父親はいなかったのか。仕事が忙しい、とはいえ、あれだけの家族仲を作りあげている澁谷家に於いて、家で仕事をしている父親がその場にいないというのはどう説明されるべきか。どれだけ忙しくても、手を休めて家族会議に列なるのが親であろう。シリーズのお約束を踏襲して、背中でも顎下ショットでも良いから、この場面にかのんパパは描かれて然るべきだった。できればお約束を破棄して顔見せ、或いは喋らせるなどあっても良かったんですけれどね。

 これまでと違ってLiella!は、メンバーの1人が脱けることでその名を冠したグループの活動を停止する、という選択は取りませんでした。そう、かのんが脱退してもLiella!というグループは存続するのです。
 ラブライブ!大会で優勝したグループが、しかも優勝時のメンバーが殆ど在籍するなかで、名前を変えて活動してゆくのは不利でしかありません。知名度はゼロに等しく、事実上イチから再出発することになるのだから。一度は築いた栄光を反古にするも同然なわけです。それでも澁谷かのんという絶対的センター不在のハンデを背負って活動を継続すると決めたLiella!は、かなり強いメンタルを持ったグループといえるでしょう。
 過去にも、代々名称が継承されてメンバーを常に新しくしてきたグループがあるのは知られています。が、それはあくまでモブ・グループであって、主人公グループのそれではない。『ラブライブ!サンシャイン!!』のAqoursはどうかといえば、浦の星女学院がなくなって静真に移ったあとも新生Aqoursとして活動していることがわかっているが、本来の学校とグループが切り離された関係であるため、Liella!と同列に扱うことはできない。
 そんな点でも『ラブライブ!スーパースター!!』はシリーズに新機軸を打ち出した、と感じます。

 かのんが留学しても、Liella!は活動を継続してゆくことに決まった。かのんの留学準備は着々と進んで荷造りも済んだ。春休みだろう、部室に集まっているメンバーが、数日後に出発を控えたかのんがいることに違和感を感く。かのんは何だ彼だと理由をつけられて、「あ〜あ、つまみ出されちゃった……」(21:38-39)とボヤキながら独り、トボトボ帰宅する。──と、そこに現れたのは結ヶ丘女子高等学校の制服に身を包んだマルガレーテ。
 なんでここに? その格好は一体? 伊達さゆりの至芸の一端を堪能できる<動揺かのんちゃん>ですが、普通に考えれば年度替わりを控えた時期ですから、インターナショナル・スクールからの転入でありましょう。そんなマルガレーテがかのんに告げた一言は、そう、衝撃的でしたねぇ(それが視聴者を戸惑わせ、非難されることになる)。「え、こんなのアリですか!」と思わず口走ってしまった。
 かのんの留学先として設定されたのは、ウィーン国立音楽学校でしたね。数多の有名な音楽家を輩出してきた、実在する学校です。かのんが留学する際は、ウィーン・マルガレーテも一緒という。これは、マルガレーテの家が彼女に出した条件であって、音楽学校から出された条件ではなかった。マルガレーテはいわば、かのんのバーターであります。
 そのマルガレーテが独り下校するかのんに曰く、「留学は中止になった」と。自分たちの都合によって留学の話はなくなった、留学を辞退した、という意味では勿論、ない。「学校から連絡が来ているはず」という続く台詞からそれが、ウィーン国立音楽学校からの通達であることがわかります。事実、直後の場面でかのん宛エアメールがウィーンから届いている。この封書の中身が、留学取消を伝える文面であることは最早疑いようがないでしょう。
 ではなぜ、ウィーン国立音楽学校は澁谷かのんの留学を取り消したのでしょうか。それについては(現時点では)想像するより他にありません。もしかすると、ちぃちゃんや恋ちゃんパパが裏から手を回したのかもしれない。勿論、冗談であります。
 真面目にいえば、この点は第12話ラストで勃発した話題なので、そのまま放送が決定した第3期で理由は触れられるはず。「定員オーバー」とか「ステイ先の都合が悪くなった」とか、そんな取って付けたような理由になるのは目に見えていますが。
 ただ可能性として否定できないのは、4月からのかのんの受け入れはできなくなったので、当校の新年度が始まるタイミングで来てくれないか、という内容であることもじゅうぶん考えられることであります。
 真相は未だ藪のなかですが、この留学取消の報はマルガレーテとかのんだけでなく、結ヶ丘女子高等学校の理事長宛にも出されていなければ可笑しい。こうした書状が別日に投函されるとは考えにくいから、かのんとマルガレーテ、結ヶ丘女子高等学校に届いたのはほぼ同じタイミングであった、と考えて良いでしょう。それにどうやら、春休みの間も理事長はちゃんと学校に来て執務をこなしている様子(当たり前なんだけど)。
 然らば理事長が直接かのん自身に確認等しても良さそうなものですが、この件について理事長がまったく動いていないのが、なんとも解せぬのであります。本人のためになる、喜ぶことであれば直接伝えるけれど、そうでない場合は関知しない、とでも? 恋ちゃんママが願った結ヶ丘女子高等学校建学の理念、願いを踏みにじるような行いではないか。……この理事長不関与は、尺の問題とかそんな現実的な話で済まされる話ではない。せめて説明的な台詞の一言でもあればねぇ。
 余談ですがこのエアメール、未開封状態です。宛名面にウィーン国立音楽学校の名称が住所と一緒に印刷されている。かのんの名前に付された敬称は「An:Frau」とドイツ語である(22:13)。これを見てかのんママが、「お母さん、ドイツ語わからないわ」と呟き、ありあが(翻訳してもらうために)父親を呼ぶのだけれど、いや、これちょっと可笑しいでしょう。敬称だけなら意味も察しがつくだろう。開封していないのにドイツ語わからない云々は変だろう。よしんば開封せられて書面を見ていたとしても(倫理的にどうか、という問題はさておき)こうした海外に宛てた正式通知ってたいてい英語で書かれるものではあるまいか。いやはや、面妖であります。

 留学に関して、ここで脚本の弊に話題を移します。
 μ’sで物議をかもした留学騒ぎ、これがいまに至るも事ある毎にネットで話題になることを勘違いして花田十輝氏は、「よし、今回も留学問題を起こして最後の最後で卓袱台を引っ繰り返してみるか! しかも今回は主人公の留学だ。これは話題になること間違いなし!!」なんて脳天気で天邪鬼な気持ちになってしまったのだろうか? 結果、(放送された)第12話は『ラブライブ!』シリーズ屈指の仰天エピソードとなり、最悪の流れをもたらすことと相成った。賛否両論どころか紛糾続々の状態です。
 留学中止がもうすこし綺麗にまとめられていれば他の言い様もあるが、放送されたアレを観てしまったら、なにをどういうこともできない。その義務はないけれど、擁護できる要素が1つもないのでは、もう突っ放すしかないのです。アバタもエクボというけれどこの場合、アバタはアバタなのだ、と嘆息せざるを得ないのです。
 うーん、これね、第11話放送時から思うていたのですが、例えば『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期ラストの上原歩夢のように、(取って付けたような)短期留学で済ませることは出来なかったのかな。それとも先々の目算が既に「完成」していて、その上で斯く処理したのかな。マジでその程度のお茶濁しで良かったのでは、と疑問でならぬのであります。
 叶うならば、いちばん最初に書かれた第12話のシノプシスや脚本の第一稿を読んでみたい。そうすれば、なにが省かれ、なにが加えられ、当初の段階からアフレコ用台本までの間で物語がどのように改変されたか(改悪されたか)を、この目で確かめることも出来ようから。
 およそ此度の第12話を観ていて、「留学」という話題の扱いが軽すぎるように思えます。荷造りを済ませている、出発間近である、ということは、既に澁谷家は少なからぬ額の金額をこのために工面している、振りこまねばならぬものは振込済みである、ということであります。
 旅費や交通費、向こうでの生活費や学費、etc.etc. 劇中ではしっかりと語られなかったけれど、学業にかかるすべての費用を学校が負担するとしても、結構な額を準備しておかねばならぬことに変わりはない(そう考えると、可可の家はかなりの富裕層に属していることがわかりますね)。生活面のすべてに於いても学校側が負担するわけではないのである。
 かつてドイツはデトモルトの音楽学校に留学して帰国したいまはプロ奏者として活躍している知人に拠れば、学費は免除されていたが生活に関してはアルバイトしないとならなかったそうです。
 ホント、花田氏の社会感覚というか、その浮世離れっぷりと無知蒙昧ぶりには呆れてしまいます。この人は原作附きアニメのシナリオだと無類の力を発揮するのに、そこで培われた技術や知識をオリジナル作品に粒の一欠片も活かすことができないとは、なんとも哀れと思うのであります。
 あと、オプチャで「こんな中途半端に留学するか?」と書込みがありました。これについて、頼まれてもいないのに付言すれば、留学するタイミングは人それぞれ、留学先によって異なる。かのんの場合、日本の年度替わりにオーストリアに行くのはむしろ自然なことと考えます。
 外国語も満足にできない人がいきなりカリキュラムについてゆくのは、ほぼ不可能というてよい。たとい音楽学校で実技を伴う講義が中心を占めるとはいえ、加えていえばかのんがどの学科に籍を置くことになるのか不明ですが、座学の講義も当然あるわけです。音楽史とか音楽理論とか、ですね。それに実技メインの講義も教授のいっていることがわからねば、ただのお金と時間の盛大なる無駄遣いでしかありません。
 そのために、外国人学生には語学習得の研修カリキュラムを用意している学校もあるのです。確かウィーンにも、学校の別なく留学生を受け入れるそうした語学学校のような場所があったはずです(そういえば外務省もそうしたカリキュラムを持っているそうですね)。今度ウィーン在住の友人に訊いて、その結果をここに盛りこみましょう。
 唐可可の帰国問題はラブライブ!大会優勝したことで解決したのですが、欲をいえばそれに一言でも二言でも、可可自身や平安名すみれ他の口から劇中で語られてほしかった、と思うのは、わたくし1人だけなのでしょうか。優勝イコールであったのは承知していますから、むしろこの欲求は追認、であります。あらためて劇中でそれに触れてもらい、ああ良かったね、と安堵したかったのであります。
 さて、脚本への疑問と愚痴と悪口雑言はここまでにして。

 LLSSを過去シリーズと較べたとき、1話分削られることのどれだけ物語全体の構成に支障を来すか、その例をLLSSで知った気が致します。
 そのためか、各キャラクターの深彫りがされず、時にストーリーも行き当たりばったりな、力任せで済ませた展開が目立ったように感じるのであります。第2期に関していえば、果たして第06話の<恋ちゃん、ゲーム沼に嵌まる>エピソードは他の形で、つまりゲームというアイテムを用いず他の手段を以て語るべきを語ることはできなかったのだろうか。生徒会長はポンコツ化しなくてはならない。それは綾瀬絵里から連綿と受け継がれてきた、神聖不可侵の伝統である。とはいえ、此度の恋ちゃんポンコツエピソードが果たして(放送された形で)必要だったのか、わたくしは疑問でしかありません。空気と化しつつあった恋ちゃんを表舞台に立たせるためにむりやり用意された、(不要の)寄り道エピソードにしか捉えられないのであります。
 逆に1話減ってなお上述のような寄り道をするくらいなら、むしろ千砂都の心情の変化──かのんとの関係性と立ち位置の変化、それに伴う心理の揺れ動き──にエピソードを割いてほしかった。そちらの方が余程ストーリーの根幹に関わると思うからであります。そうすれば、かのんの留学を後押しして独り日本で頑張る、という第11〜12話の彼女の言動はより理解できるようになり、共感できるものになったのではないでしょうか。
 1話分削られたことの弊害に目を向けましたが、そんななかで可可とすみれの関係性がきちんと結着できたのは良かった、と思います。周囲の(熱い)要望もあったと思うが、百合とかなんとかではなく第1期のいがみ合いに始まって、すみれセンター事件(ノンフィクション騒動)、可可の帰国問題、鬼塚事件、東京大会は2年生だけで歌うか問題を経て、神社境内で結ばれた2人の本当の絆を見せてもらえた場面(そうして第11話での可可の悠然たる嫁っぷり!)に至るまで、じっくりゆっくりその変化と進展が描かれたことは、全体を通して1、2を争う見所にもなった。時にあまりの過ぎたるいがみ合い(罵倒)ゆえ誤解や非難を招きもしましたが、まァ、落ち着くべきところに落ち着いたな、というのが正直な感想であります。
 全体的に第2期は、単純に人数が増えたこともあって、全体像とピントのぼやけたものになってしまったというのが、わたくしの現時点での結論である。
 
 ※かのん留学補記;彼女の留学が中止になっても、学内でそのことを(表立って)非難する生徒はあるまい、斯様な人物あらば即、結ヶ丘女子高等学校版KGBによって消されることは必至。なぜならば、結ヶ丘女子高等学校は、澁谷かのんを絶対的頂点に、現人神に戴く組織なのだから。そんな意味でもやはりかのんは、高坂穂乃果の唯一無二の後継者といえるだろう。

 さて、第12話放送終了後に配信された「ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 〜TVアニメ2期完走記念 拡大SP〜」で第3期の制作が発表された。それに伴い、新キャラクター1名の声優一般オーディションの開催も。いずれも第1期開始時点で決定していた既定路線といえましょう。主人公が2年生ではなく1年生、しかも新設校の1年生ということで当初から、かのんと可可、すみれ、千砂都、恋の5人が卒業するまでスクールアイドルLiella!の物語を描くことは織りこみ済みであった──第1期開始の段階で”黄金の3年間”の青写真は出来上がっていたのであります。
 ただやはり気になるのは、かのんたちが3年生に進級した時点で、いったいどんな人物がLiella!3期生として加入するのか、ということかもしれません。現行Liella!9人+マルガレーテ+澁谷かのんありあ+新キャラクター(新キャスト)の12人体制になるのか、「レジェンドスクールアイドルが築いた“9の奇跡”」は発展的破壊に留まらずもはや『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が示した12人にもこだわらないのか、そのあたりは不明だ。しかし、オープンキャンパスの折やって来たありあに可可がぶつけた台詞──「姉妹でスクール・アイドル、熱いです!!」──が伏線になっていたら、と考えると、ありあの加入は不可避事項になりましょう。すみれ妹の年齢や学年が定かでない以上、ありあは最有力候補といえます。マルガレーテは加入ではなくソロで活動する可能性もある──そもスクールアイドル部にスクールアイドルは1組しか認められないわけではあるまい。
 とまれ、不安と諦念と期待が入り混じった気持ちで第3期を待つと致しましょう。
 後日、もしかするとこの第3期についての短文と、書こうと思ってずっと後回しにしてきた結ヶ岡女子高等学校に関する疑問二、三を箇条書きした短文を、ここでお披露目できればな、と企んでおります。

 最後になりましたが、『ラブライブ!スーパースター!!』第2期に命を吹きこんだ全キャストの皆様、製作に携わった製作スタッフと放送に携わったNHKスタッフのすべての方々に、感謝の花束を。素敵な物語を届けてくださって、ありがとうございました。◆

第3487日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第09話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 そろそろ『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第09話「勝利のために」の感想を……と思い、ようやっと今日(昨日ですか)腰をあげたところです。
 しかし、──普段なら感想文第一稿があがるまで閲覧を禁じている感想サイト(動画含む)なのですが、偶さか開いてしまったオープンチャットで、気にかかる文言を見てしまうた。
 それが此度の感想の一部を成す話題と被る部分あったので、他の話題は後日にまわして急ぎその点についての自分の考えをまとめてみたのが、本稿であります。
 後日お披露目する正本では文体をいつもと同じくする作業を施し、誤字脱字・誤変換、記憶違い等訂正を要す箇所を直し、段落の順番を入れ換える等以外、下記本題に於ける当方の考えは些かの改変もないはずです。



 前提;「調べれば神津島は品川区扱いで」(Twitter→オプチャより)
 疑問;「品川区扱い」という発言のエビデンスは? ラブライブ!の地区予選は、選挙区や陸運局の扱いに準じるのか。
 おさらい/東京都;23区、即ち特別区を指す「区部」。26市3町1村から成る「多摩地域」。2町7村から成る「島嶼部」。以上3エリアで構成される。

 これまで地域単位の大会については『ラブライブ!』以後度々触れられてきたが、より具体的でより詳細な設定が起こされたのは、『ラブライブ!スーパースター!!』からではないか。
 μ’sとA-RISEが覇権を競った時代、推定5年後の世界にいるAqoursの時代、ラブライブ!大会は夏冬の2回開催されていた。翻ってLiella!とSunny Passionが活動する『ラブライブ!スーパースター!!』の時代は冬季大会のみ開催となっている。
 スクールアイドルが大量増殖したこととそれに伴う玉石混淆が進んだこと、そうして動画視聴サイトの整備とウェブ投票環境の構築が成されたことで、μ’s/Aqours時代の何次にも渡る選考作業そのものを簡略化できたという背景があったろう。それは参加スクールアイドルの負担軽減(地元と会場の往復や宿泊費等々)になったろうが、同時にすべてのスクールアイドルに対してパフォーマンスの向上のみならず撮影や編集の技術の向上を強いもした、といえるのではないか。
 『ラブライブ!スーパースター!!』になってようやく、というか遂に、「オンライン投票によって地区大会通過者が決まる」と明言された(第2期第08話 鬼塚)。いい換えれば、パフォーマンスは勿論、動画撮影や編集技術も生半可なレヴェルでは視聴者の心と(クリックする)指に働きかけられなくなった時代に突入したことも意味する。第08話にて表参道で歌うLiella!を撮影する機材がプロ並みのそれであったことも、こんな話を裏附けるだろう。
 さて、話が逸れたようだ。軌道に戻そう。
 「神津島、品川区扱い」の件だ。今一度オプチャの投稿者に問いたい(正確にはオプチャ投稿者が紹介したTwitterのツイート主に、だが)。これのエビデンスはなにか?「調べれば神津島は品川区扱い」とツイートした根拠は、その典拠はどこにあるのかを知りたい。教えてほしい。
 疑問だ。
 神津島の行政は大島支庁が管轄し、ここには神津島出張所が置かれる。が、あくまでこれは島嶼部としての行政管区であり、選挙区や陸運局の扱いはこれと異なる。選挙区でいえば神津島は品川区と大田区の一部同様東京第3区にあたり、車輌のナンバープレート発行など登録関係は関東運輸局東京運輸支局本庁舎のある品川で行われる(神津島始め島嶼部の自動車のナンバープレートが殆ど品川ナンバーなのはこのせいか)。
 しかし、ラブライブ!の地区大会は行政や選挙区と同じブロック割を採用しているだろうか? 第1期第10話のアキバリポーター(シブヤレポーター、か)の台詞から推測すれば、それはどうも怪しい話だ。
 無印時代・Aqours時代とは名を変えて登場した彼女は、Liella!メンバーを含む説明会参加スクールアイドルたちの前で斯く発表する。曰く、「毎年盛り上がる地区予選ですが〜! 今年は出場校が多く、全てのグループに歌ってもらうのは困難と判断したため、(中略)各地区ごと歌に課題をつけることになりました! (かのん;課題?)出された課題を歌に盛り込んで大会で披露してもらうことになりま〜す! ここ東京南西地区は渋谷を含む流行の最先端地区! (後略)」と(03分20秒-04分02秒)
 これは渋谷区を含んだ地域を対象にした、東京南西地区予選の説明会。つまり、『ラブライブ!スーパースター!!』の時代では最小規模の、いわば1次予選だ(※)。第2期ではSunny Passionがウィーン・マルガレーテに敗北を喫した予選である(第09話)。運輸局の括りでは渋谷区と品川区は同じ品川ナンバーエリアになるが、選挙区をベースにしたらば第3区と第7区でまったく別のエリアだ。為、わたくしはラブライブ!大会の地区予選/地区大会は、これとは別なエリア設定がされている、と考える。
 では、どのようなエリア設定になっているか、と訊かれるだろうけれど、万民を納得させられる解答や推論は持てずにいるのが悩ましい。
 ただ、島嶼部と23区を一緒の予選エリアであるならば、参加スクールアイドルの過疎化ゆえに大会運営がエリア合併に踏み切った可能性は否定できない。裏を返せば、島嶼部だけでじゅうぶん予選エリアとして成立する(数的に)だけのスクールアイドルの参加が見込めれば、エリア合併させる必要は生じないことを意味する。そんな風には考えている。
 これを突き詰めてゆけば、(大会実施年度の)初回エントリー〆切後に判明したエントリー総数によってブロック割が決定するため、それは一律固定化されるものではなく多分に流動的である、ということにもなるだろう。極めて他愛ない結論に辿り着いたが、まぁ世間で実施されるイヴェントとは得てしてそんなものであろう。

※但し、23区各区に存在する高等学校(定時制・高専含む)の総数を考慮すれば、1区だけでじゅうぶんに地区予選は成立するような気もするが、そこはやはり数区を一緒にして作業を簡略化したいという大会運営側の思惑が隠されているのだろう。視聴者(投票者)の負担を軽くする、という名目──大義名分──の下に。



 無印時代からずっとモヤモヤしていた、ラブライブ!大会運営サイドにも踏みこんだ内容は初めて書いたかもしれません。
 この点、考えれば考える程、突き詰めれば突き詰める程悩ましくなってきて、困ってします。でも、知的愉楽を堪能できるという意味でもわたくしは『ラブライブ!スーパースター!!』を偏愛している……そうでなければ娘の名前をここから採ったりしないよっ!!!
 にもかかわらずわたくしがアニメ作品をネタにこんな、現実とリンクさせた検証を感想文にかこつけて書いているかといえば……恩師が東京サザエさん学会代表だったせいかなぁ。学生時代はかなり感化されたからねぇ。わたくしの、アニメや漫画をタネにした検証癖のルーツは、たぶんここだ。意味のわからぬ人は『磯野家の謎』、『磯野家の謎 おかわり』及び『磯野家の危機』(いずれも飛鳥新社)を、どうぞ。
 それはさておき、残る第09話感想の柱は、ウィーン問題と可可とすみれの件ですね。鬼塚と四季の悪ふざけ(……か?)も取りあげたいけれど、文字数は200字程度にしかならんだろうなぁ。しかし「ウィーン問題」、こう書くとまるで国際問題ですね。世界史用語集に出てきそうだ。◆

第3482日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第08話を観ました。〉(メモ) [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 あっという間の1週間であった。メモのある安心が感想文へ集中するのを後回しにし、斯様な事態に相成った。
 本稿は過日も触れた第08話のメモである。重複したり飛んだ内容もあるが、いまは敢えて殆ど手を加えることなくお披露目とする。勿論このまま放置ではなく、ちゃんとした感想文の体裁に整えることだけは決めてある。




『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第08話「Chance Way」

○ようやく生徒会新体制。→きな子の緊張しつつも足を運んでゆく姿が初々しい。ちょっとの間に成長したなぁ……。ナナミって七草ナナミっていうのがフルネームなのね。なにげに神モブのフルネームが設定、登場したのは彼女が最初ではないか。

○結女の疑問→私立にしては校則ゆるゆるだな、という印象。自分も私立で、海軍の気風漂わせた高校(驚愕になったその年から「甘〜い」学校に成り下がった。ここが現在では高校野球県大会の強豪校なんていわれているんだから、最早世も末である。)だったからけっこう校則は厳しく、体罰や居残り説教とかも茶飯事だったので、女子校とはいえこんなに校則ゆるゆるな学校を見ると羨ましくなってしまう。
 メイはリボンをブラウスに着けたことが1度もないし(確認できる範囲では、制服を着崩しているのはメイ一人で、余計に目立つことから注意対象になるはずなのだが……)、ソックスについてもカラーや長さではなく履く履かないのレヴェルで特に指定はない様子。校内を自走式シューズで移動したりなど、生徒の自主性を重んじているなんて範疇の話ではない。それとも、21世紀の私立校なんてこれが正常なのかな。
 そういえば生徒会任命式に、音楽科の制服着た子たちがいましたね。席次は相変わらず音楽科が前列のようだけれど、全体の場面では普通科の制服と音楽科の制服が混じっている。それが隣り合っているシーンなんて、第1期を振り返るとまさに胸が熱くなりますな……感慨深い、という奴である。

○ありあとかのん。オープンキャンパス。劇中では10月である。無印で雪穂と亜里沙が着ていた中学の制服が、第1期に続いて登場する。
 ありあは休みの日はたいがい本を読んで過ごすインドア派らしく、そこはお父さんに似たのかな、とはお姉ちゃんの弁。
 妹がふと呟いた「なぜこの場所に結ヶ丘が創られたのか?」が、かのんのなかで地区予選ステージ選定の旅の回答へのヒントになった。と同時に、わたくしの上述の疑問を更に深めることになった。
 でも、かのんが案内した部屋が図書室だとしたら、……ちょっと狭くない? スチール棚を並べただけのかつての物置小屋、といわれても素直に頷いてしまいそうな程なのだ。創立2年目とかそういうの、関係ない気がするんだけれど……。

○挿入曲「Chance Day, Chance Way」 お祭りテイスト。元気でわくわくさせられる曲だ。
 そういえばウィーン・マルガリータ、久しぶりに登場したな。相変わらず含むところある、尊大な表情を見せておった。来週は波乱のエピソードが用意されているのだろうか?
 かのんが突然走り出して到着した先は、銀杏並木の美しい表参道。
 山車を造ったのは可可? 構造計算もできちゃう才媛か!? 山車の天辺にいたマンマルとチビ(の人形/ハリボテ──適切な言葉が思い浮かばない)がイイ味出してる!

○第1期のわちゃわちゃ感というか密感が薄れてきたな、という印象あり。クーカーの縁は薄くなり、可可はすみれに急接近して漫才コンビになり(最近の傾向;可可は噛ませ犬)、かのちぃという或る意味シリーズでいちばんヤバい幼馴染みコンビのダークさも背景に押しやられた感じ。変わらぬはただ、恋ちゃんの影の薄さ、狂言回し的役割のみである。
 その分、2期生が非常に(早くも)良い味を出してきた。四季メイは相変わらず公然たる百合路線を突っ走っているし、きな子は1期生と2期生をつなぐ接着剤役・部内の潤滑油役を果たし、時に迷走するLiella!の背中を押したり、本道に立ち戻らせる役を果たしている。鬼塚は……もうアレはギャグ枠以外の役は不可能ですな。良い意味でいっているか否かは読者諸兄が深読みしてくださればよろしかろ。
 きな子については、そうした面があるからこそ、生徒会書記なんて大役に就いたのかもね。2年生と1年生をつなぐパイプ役、窓口として。

○結女の疑問;生徒会→前話、かのんが恋を心配して理事長のところへ行ったときである。理事長は、恋の生徒会の仕事がオーバーワークだとわかっていながら、大丈夫だからという恋の言葉を盲目的に信じこんで本話に至るまで一切の措置を講じてこなかった。生徒会長しかいない生徒会の不自然さ、歪さ、を理事長は本当に理解していたのか? 
 本当に理解していたのであれば、定例の職員会議や緊急の会議を開いて、副会長や会計、書記のいる、きちんと機能する生徒会の設置を決めて、恋に通達しなくてはならなかったのではないか。それとも、職員の決議をはねつけられるほど、生徒会長は月恋の権限は旧お題だったのだろうか? ならば、第1期第1話でかのんが懸念したように、学校は葉月恋の思い通りにすることができてしまうのでは。それは生徒が職員以上の権限を持ち、独裁体制を敷くことも可能で或る、というに等しい。
 「恋が、学校創立者の娘だから」なんて理屈は、この場合全く意味を成さない。「理屈と膏薬はどこにでも付く」を地でゆくことになるではないか。

○今週の「かのんちゃん可愛い」枠は、屋上での練習風景から。千砂都と恋がペアストレッチで、フレームインしてくるところ。このフレームイン、まるで意味のない行動(と思われる)だが、このときのかのんちゃんの表情や動きがなんとも愛らしいのである。

○次回予告。すみれの制止を振り切って走り去る可可の場面があった。遂に可可の帰国(強制送還)問題が来週の軸となる? あとは──四季ちゃんの悪党ヅラが気になるな。◆

第3475日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第07話を観ました。〉【一部加筆版】 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 どさくさのうちに、というか、なかば強引な方法で、〈鬼塚夏美問題〉は解決された模様であります。その背景を根掘り葉掘り詮索、検証するのは本稿の目的でないから止めとして、とまれLiella!は「レジェンドスクールアイドルたちが遺した”9”の奇跡」を継承する資格を得た様子。
 まさかこの台詞をいわせたいがために、2期生の加入を決めたわけではあるまいが、いまは溜飲をひとまず下げて、正式に9人体制となった新星Liella!の出発を祝うことに致しましょう。



 『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第07話「UR 葉月恋」は、前話にてすっかりゲームに嵌まった恋ちゃんが、沼から抜け出そうとメイに縋ってもがいて、挙げ句にメンバー全員の力を借りて更生(ん?)するお話でした。
 と、その一方で米女メイと若菜四季を核にする百合公認の世界観が提示された、貴重なエピソードでもあった(その百合世界、もはや全シリーズで突出している)。そうして澁谷かのんの、「やさぐれ」とはひと味違う「すねた」表情と声音を堪能できる場面もありましたね……いやぁ、アレは鼻の下伸ばして繰り返し再生する価値あるシーンだった。

 残念ながら当方にいまのゲームや筐体に関する知識がないので、恋の部屋のテーブル上に、整然と置かれていた懐かしいものから最新(何だろうな、きっと)のゲーム機がずらりと並んでいる場面を観ても、正直心騒ぐところはなにもない。
 が、アーケード・ゲームまでが何台も壁に沿って置かれているのを目にしたら、住宅販売に携わり注文住宅の施主でもある当方にしてみれば、床の耐荷重、どれくらいあるんだよ!? と突っ込みたくなってしまいます。幾ら葉月家にグランドピアノが置かれているからとて、それはピアノ設置場所だけ床下を補強したり、床下の根太の間隔を他よりも狭くしたりしているから可能なのです(※)。
 果たして葉月恋の部屋の床は、グランドピアノ級の重量物が置かれる想定で工事されていたのか。或いは、第1期最終話で恋ちゃん父が学校存続の資金援助を開始し、また第2期05話で恋がゲームに嵌まったことをサヤさんから訊いた恋ちゃん父がなかなか会えない娘のため、いろいろ苦労をかけてしまったせめてものお詫び代わりにか、事ある毎にゲーム機を贈ってくるようになったことを考え合わせると、アーケードゲーム機を贈る前にリフォーム業者を手配して、娘の部屋の床が重量に耐えられるよう工事させたのか……。どちらにせよ、第1期中盤まで「お金がないのです……」と一人娘にいわせていた家の当主のお金の使い方とは思えません。なんだかね、葉月家の最早待ったなしの財政危機、その原因は父親にあるのではないか、とさえ勘繰ってしまうのであります。
 いや、それにしても恋ちゃんのゲームへの集中力と依存度は、すみれの言葉を借りれば「いつもの恋じゃないわね」といわざるを得ません。あすこで四季がメイを問い詰めなかったら、もしかすると恋ちゃんはゲーム廃人になって、Liella!の活動を継続できなくなってしまったかもしれないのですよ(生徒会長退任劇に発展する可能性もあった!)。つまり、あれ程可可とメイが(夏美加入で)狂喜したレジェンドスクールアイドルの系譜に列なる資格は剥奪される、ということでもありました。くわばら、くわばら。
 でも、恋ちゃんがすごく楽しそうにしている姿を久々に観られたこと、青山なぎさの演技をシリアスからギャグ、崩壊に至るまで存分に(これまでになく)堪能できたこと、この2点だけでも第07話視聴の価値はありそうです。

※新築建売戸建(※※)にピアノを置く場合、床補強する必要はない、という意見があるのは、事前にリビングのこの場所は既にピアノが置かれることを想定しているから。
 「ここに置くのであれば特に補強の必要はありません。但し、置かれるピアノはアップライトピアノを想定しており、それでも恒久的に床の丈夫を保証するものではありません」=「築年が古くなるにつれて床が沈むことはじゅうぶん考えられます。しかし、弊社が保証する範囲ではありません」という意味です。勘違いしないように。
 加えていえば、アップライトピアノの平均的重量を基に構造計算されてあらかじめ根太の間隔を詰めるなどの工事をしているため、演奏者の体重や演奏用の椅子、その他諸々の各重量或いは総重量については配慮するものではありません。
 え、グランドピアノを置きたいんです? しかも、ベーゼンドルファー? 引き渡し後に専門業者にご依頼下さい。対応してあげたいけれど引渡し前にはできませんよ、検査の目は逃れられませんからね。
 でも日本の湿度にベーゼンドルファーは耐えられない、って聞いた覚えがあるけれど……ホールなんかにこの〈ピアノの帝王〉が鎮座坐していられるのは、ちゃんと湿度や温度等々の管理がされているからであって、日本の家屋にベーゼンドルファーを置くと維持費に結構なお金が掛かると、ピアノメーカーに勤める親戚がいっていたことを、そのままお伝えしましょう。
※※建売戸建、とわざわざ断ったのは、注文住宅ならばそもそも「床補強する」以前の話でしょう。打ち合わせ時にその話をしなかったのなら、それは9割方施主に問題があります。

 そうして、百合、であります。
 『けいおん!』のいつかの回で琴吹紬(ムギちゃん)が、「女の子同士がキャッキャッしているところを見るのが好き」と発言しておりました。が、そちらには仄かな百合要素こそ漂っていても個人の趣味の範囲を超えるものではなく(『THE IDOLM@STER』の小鳥さんと、そのあたりは同レヴェルか)、『ラブライブ!』シリーズ程ガチなものではなかった。
 百合は『ラブライブ!』シリーズの基調低音の1つであります。それはμ’sが始動し始めた当初から、ファンの間では囁かれてきたことであり、それゆえにその類の同人誌が後を絶つことはなかった。SSでしっかりとそのあたりを描いた作品があるのも、シリーズがどうしてもその要素を払拭できなかった証しといえるでしょう。
 とはいえ、公式がそれを認めて前面に押し出すことは、流石になかった。公式絵師たちが描くイラストやコミックに〈それ〉を思わせる部分ありと雖も、あくまで仲の良さを描いたものであって、そうした意味では事前回避がじゅうぶんに可能だったのだ。
 しかし、──遂に回避できないシーンが、ライバーの眼前に突きつけられた。他の解釈が無理矢理であったり、色褪せてしまうような、決定的なシーンが『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第07話で描かれてしまったのでありました……。
 その決定的なシーンを演じたのが、2期生の米女メイと若菜四季。かのんと千砂都の、中学の後輩コンビであります。
 勿論前兆はありました。否、予告、というた方が良いやもしれぬ。番組スタート前の自己紹介で、四季は「好きなもの:メイ」と明言していた。四季がメイを想う心は第01話から描かれ、第04話で方向性は確立した。が、そこまでであれば、これまでのシリーズ先行作と変わるところはなにもない。
 「新しい『ラブライブ!』を作る」という意気込みは、イレギュラーながら正道を歩んだ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』を如何にして越えるか、あらゆる意味で原点にして頂点の地位から揺らがないシリーズ第1作『ラブライブ!』を越えるか、暗中模索の裏返しだったのだろうか。その模索が袋小路に陥ったとき、スタッフの脳裏に起死回生の作戦が生まれたのかもしれない。即ち、──
 仄かな百合要素を最初から漂わせ、既に二次創作では既定路線となっていたあの2人、四季とメイをくっつけよう、という。
 恋の部屋でゲームに打ち興じているメンバーたちのなかで、四季1人がゲームの進行状況に興味を向けていなかった。(恋が)ゲームでなかなか攻略できないところがあるって(メイから)聞いた、と、選抜メンバーでその箇所の攻略に挑むきっかけを作った本人が、ゲームの展開にまるで興味なく、メイの感謝の言葉に頬赤らめて生気(精気?)を抜かれたような表情になり、仕舞いにはメイにおんぶされて帰る羽目になる。時間にすれば僅かだけれど、四季の台詞がもう恋する乙女で、可愛いんだよなぁ。

 百合の件で序にいえば、学校の中庭から部室に至るシーン、その台詞をじっくり考えてみると、Liella!メンバーのなかで好き合う女の子同士がカップルになるのは当たり前だ、という認識が共有されている様子であります。
 学校の中庭で恋が、メイにこんな相談をしていた。封印したゲームの続きが気になって作曲がはかどらない、と。それがあまりに深刻だったせいか、メイが助け船を出して曰く、自分もテスト勉強をしているとスクールアイドルの動画を観たくてたまらなくなるときがある、と。それに喰らいついてメイの手を握ってにじり寄り、目を見開いて迫る恋。
 その様子を茂みのなかから観察していたのが、可可、すみれ、きな子、四季、夏美であります。ただならぬ気配の2人を観察して出された仮の結論が、「恋」だった。そのワードにびっくりして息を呑み、発言者の四季を見やる4人の表情が面白く、なかでも可可ときな子は口許まで描かれているせいか、その驚天動地な表情がよりコミカルに感じてしまうのですが、この直後、5人は部室に駆け戻る。
 可可;どうするのですか!?
 すみれ;ショウビジネス的にアイドルに恋愛は御法度。止めなさいったら止めなさい!
 鬼塚;いや、ここはいっそ、炎上させる方法も……!
 すみれ;止めなさい!
 四季;……禁止。
 そこに疑惑の中心、メイが来て四季に尋問され、更に脳天気な表情で「うぃっすー!」の声朗らかに部室に来たちぃちゃんの、空気を察してキョトンとしたり、ととにかくこの僅かな時間で描かれたメンバーの言動はコミカルかつ個性的でありました。
 ──このあたりの台詞の掛け合いや動きがなんともいえぬのですが、こうした台詞からも、上述の共有された認識を窺うことができます。
 いずれにしましても、公式が遂に作品でキャラクター間の百合関係を認定した、記念すべき会であったことは間違いないでしょう。

 これ以上の増量は避けなくてはならない。寄り道したせいだ。でも、そんなこと恐れる必要もないので、続けよう。Go Ahead.
 そうして……あぁん、かのんちゃん! この子、メンタルはシリーズ主人公のなかで最弱クラスなのに、どうしたわけかドSを巧みに使い分けられる稀有の存在であったことが判明しました。
 ゲーム依存を告白した恋に向かって、「それじゃあ、黙ってた罰として〜」とか、メイに、ゲームのある部屋の鍵はかのん先輩に預かってもらえば、といわれた際の恋の妄想でかのんがぼやいた「ゲームに興じる生徒会長のいる学校が〜?」、或いは「恋ちゃん──きらい」てふ台詞。この「嫌い」っていうときの声が本当にゾクゾクするんだよなぁ、というのは余談として──
 なんだかね、メンタルはシリーズ主人公最弱クラスながら、声の表情は最も幅広くドスの利いたやさぐれ声から天井知らずの上機嫌な声まで、すねた声のふて腐れた感じからいたずらっ子めいた感じまで、現実にいたらたいていの女の子が知らず発しているであろう喋り方がリアルに再現されてしまったことに、わたくしは驚いているのであります。否、驚いている、というよりも、深く心に印象的であった、という方がより事実に近いかな。
 昨春までリアルJKであった伊達さゆりをキャストに得た強みが、案外とこうした澁谷かのんの表情豊かな声に反映しているのかもしれませんね。
 くだくだしく述べていますが要約すると、誰がなんといおうとこの場面に於けるかのんの台詞は、とっても可愛らしいのです。

 ──本話のかのんについては、自発的に生徒会副会長に立候補したことにもびっくり。
 もっとびっくりしたのは、新1年生も入学して生徒数も増えたことからじゅうぶんに体制は作れるはずなのに、未だ恋ちゃん1人が生徒会の全仕事を請け負っていることと、それについて学校側が特になんの措置を講じなかったこと。
 本稿ではくだくだしく物をいうたりしないが、明らかに結ヶ岡女子高等学校の運営は常軌を逸している。この点については改めて別稿を設けて、お話しせねばなるまい。いまここでいうておきたいのは、そりゃあ恋ちゃん、ゲームに嵌まって没入したくもなるよね、ということであります。



 COVID-19感染拡大の影響により製作スケジュールに支障が出た関係で放送は1週間、お休みとなったが『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第08話「Chance Way」は今日、09月11日19時から放送予定となっている。
 この間のスパスタS2ロスを補う目的でか、YouTubeの公式チャンネルはLiella!メンバー全員の朗読動画を配信した。現在も視聴は可能。
 御多分に洩れずS2ロスを補うために視聴した口だ。各メンバー平均3回程度しか観ていないが、忙しいなかを縫っての視聴と考えれば、平均3回はじゅうぶんに「観た」と胸を張ってもよろしかろう。が、スパスタS2ロスはますます深刻化した。
 オリンピックを間に挟んだ昨年S1よりは良しとしても、なぜか禁断症状は今年の方がずっと強い。原因は定かでない。が、事実は1つだけ、深刻化したということ。
 その深刻なロスを解消するため、明日は録画視聴ではなく、リアルタイム視聴を実現させられるよう努めることに致します。◆

第3471日目 〈忘れているわけではない。──LLSS-S2-#07感想文を巡る一問一答。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 進行役;皆様、大変お待たせ致しました。それでは只今より本ブログ運営者、みくらさんさんか氏への質疑応答の時間を設けさせていただきます。話題は、『ラブライブ!スーパースター!!』に関することに限らせていただきます。──それでは、どうぞ。
 記者A;『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第07話の感想文はもう書かないのですか。
 みくらさんさんか;書きます。
 記者B;いつ公開されますか?
 みくらさんさんか;第08話放送直前までには公開できるよう、お約束します。
 記者B;第08話の放送は09月11日、とNHKからアナウンスされています。通常とは異なって1週間、間が開くわけですね。今回の感想公開が遅れているのはそうした点も関係しているのでしょうか?
 みくらさんさんか;率直に申しあげますと、仰る通り、関係していますね。
 記者B;それゆえに「はやく書かなければ」という緊張感と内圧がゆるんで、書いたり公開するのが遅くなっているのでしょうか?
 みくらさんさんか;仰る通りです。そこに付け加える言葉は、1つもございません。
 記者A;脇から失礼します。それでは第07話感想は、09月11日放送予定の第08話が放送されるまでに、貴ブログで公開される、と考えてよろしいのでしょうか。直截なお答えをいただけますか。
 みくらさんさんか;勿論、そのようにお考えいただいて構いません。これは、わたくしから読者諸兄並びに記者団の方々へお約束することであります。
 記者C;約束が実行されなかった場合の、貴兄の去就について教えてください。
 みくらさんさんか;約束が果たされないということはございませんので、去就についてのご質問にはお答えしかねます。
 記者C;進退問題には発展しない、ということですか?
 みくらさんさんか;どのような意味で「進展問題」と仰っておられますか?
 記者C;最終的にブログの閉鎖にまで至るのか、という意味です。
 みくらさんさんか;どうしてそこまでの問題に発展させようとしているのか、こちらか逆に伺いたい。本ブログは『ラブライブ!スーパースター!!』感想だけで構成されているわけではありませんので、閉鎖問題を持ち出してきた真意を伺いたい。
 記者C;……楽しみにしている読者がいます。
 みくらさんさんか;それはおおきに、ありがとな。(記者団から苦笑、洩れる)しかし『ラブライブ!スーパースター!!』感想はあくまで本ブログの氷山の一角でありまして、たかだか現時点での最新話の感想が未だ公開されていないという一点を以てのみ閉鎖問題に発展させる、貴兄の心情がわたくしには理解できません。ただ、第2期の特定回以後、感想文を書く意欲がかなり低下しているのは事実です。過去回感想の公開日からわかるように次の放送回直前に公開されることがこの2週間ばかり続いているのは、そうした理由がいちばん大きい。先にお断りしておきますが、「第2期の特定回」がいつの回であったのか、お話する予定は本会見を含めてございません。……他にご質問のある方は?
 記者A;過去に公開された感想文のなかで、台詞の再現がされていないものがありましたが、いま仰った意欲の低下が絡んでいるのでしょうか。
 みくらさんさんか;100%ではありませんが、絡んでいるのは事実です。
 記者B;先程、第07話「UR 葉月恋」の感想は09月11日(日)19時までに公開、というお答えでしたが、公開がそこまで延びるのは、意欲の低下だけが理由なのでしょうか。
 みくらさんさんか;そうではありませんね。うん、そうとばかりはいえません。自分がゲームに疎い、ということも、今回の遅延の大きな理由です。なので、第07話のゲーム以外のどの部分についての感想を膨らませるか、回避策をいま検討しているところです。
 記者B;よくわかりました。ありがとうございます。
 進行役;それでは只今を持ちまして、本日の記者会見を終わります。皆様、お疲れ様でした。◆

第3458日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第06話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 日曜日から月曜日に変わる頃、録画していた『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第06話「DEKKAIDOW!」を観ました。あまり気乗りしないまま、観ました。



 前回、集中的に糾弾した鬼塚の件に関しては──第1期の恋加入回程ではないにせよ、予定調和的かつ矛盾を脇に押しやって無理に整合性を整えた感を微量に漂わせて(物語上は)、解決しました。要するに、肝心な回であることをじゅうぶんに承知しながらも視聴者たるわたくしには「捨て回」としか映らなかった、ということでもあります。
 ただ、鬼塚のマニー信仰がどこから来たのか、その由来を知ると、この子をヒール役とかどうとかいえなくなってしまうのも事実。たいていの人が1つの夢を実現させるためひたむきに努力して、見事それを実現させられるわけではない。挫折しても新しい夢を見附けて、実現のための第一歩を踏み出すことを繰り返してゆくばかりである。
 第01話で鬼塚がきな子に掛けた台詞に曰く、──

 向いていないことを幾ら頑張ったって、ダメなものはダメです。
 でも、やってもないのに向いているかどうかなんて、わからないでしょ?

──と。
 これを第06話の段階で顧みれば、鬼塚が過去に描いてきた夢の数々と、同じだけ経験してきた挫折──というよりも「諦め」が、かの台詞の背後にあることを、否応なしに痛感させられます。咨、わたくしはもう少し鬼塚夏美の過去について、想像力を逞しうするべきであったかもしれません。そうすれば前話での姑息な手段にも寛容になれたろうものを。
 鬼塚は鬼塚なりに自分の当面の目標を達成するために、あるいはゴールと設定した場所へ少しでも近附くために、彼女なりの努力をしていたのです。夢は、きな子に問われて答えたように、”いまは”ないのかもしれない。しかし、鬼塚を動かす原動力は、なにも他の子たちや、なによりもむかしの自分が描いていた「夢」ばかりではない。
 思い出そう、彼女が配信した動画のなかに、「【禁断】夏美のオニ辛口徹底追及〜時事ネタ編〜Part1」なるタイトルがあったことを。第05話時点での再生回数は221、公開は2週間前(5月中旬から下旬? 第05話で学生たちは夏服だった。既に衣替えは済んでいる様子なので、そこから2週間前であれば、少なくともGWは終えているはずだ)でした。
 ここでは時事ネタ篇を謳っているが、高校1年生の女の子がなぜこんな「手に余る」ネタを取りあげたのだろう。憶測の域は勿論でないが、彼女のマニー信仰に起因するのではあるまいか。いつから動画配信を始めたのか、会社の設立がいつだったのか、定かにする資料は供されていません。
 しかしながら、株式会社を設立し、曲がりなりにも代表取締役を務め、CEOを歴任すると自称する以上は、社会の動向に注視せざるを得ないでしょう。ネットニュースや新聞社のサイトに載る記事、或いはテレヴィのニュース番組や鬼塚商店に毎日配達されているだろう新聞に触れて、社会の動きが経済へ直結することを学び、自分でもたとえば某動画投稿サイトや初心者向けのブログやホームページで勉強したりしたのだと思います。でなければ、「日経平均全面安」という台詞も、ただ「いってみただけ」のそれになってしまいます。
 「【禁断】夏美のオニ辛口徹底追及〜時事ネタ編」はそうした勉強の賜物であり、経済の流れや経済用語が或る程度わかってきた証左にもなっている、とわたくしは考えるのであります。──前回から一変して、かなり好意的な見方になっていることは承知しております。然れど変節に非ず。以前は見えていなかった部分が見えてきたために、意見に修正を加えたに過ぎません……という弁明。

 本話にていちばんわたくしの胸を貫いたのは、熊のパーカーを着て、きな子実家近くへ姿を現した、澁谷かのん嬢でありました。東京にいるときは、1年生部員が突然別行動を宣言・旅立ったことで顔を覆って放心する程曇り、かと思えば1年生の練習風景を撮影した動画を観てそのパフォーマンス・レヴェルの成長ぶりに手を叩いて喜ぶなど、メンタルの乱高下が確認できた。久々に針が両極端に振り切れた情緒不安定ッぷりを披露してくださったかのん嬢ですが、そんな彼女もと或る事情で北海道へ。
 屋外の五右衛門風呂で鬼塚ときな子がシリアスな会話を展開している最中に、森のなかからふらりと現れ、鬼塚が1人になると草を踏み荒らしながら木陰からぬっと姿を見せる。熊のパーカーが殆ど着ぐるみにしか見えないぐらいサイズが大きいものだから、そりゃあ鬼塚でなくても「クマーッ!?」と叫びます。幸い事は、そこに猟銃を持ったきな子やその親御さんがいなかったこと。もしいたら、いま頃は……第07話からまったく違う話になっているか、NHKから強制打ち切りを通達されるか、でしょうね。むろん、どこからでも湧いて出る抗議団体は、放送終了直後からクレーム活動を展開するでしょうね。
 まぁ、そんなブラックな話はともかく。
 この、熊のパーカーを着たかのん嬢が、とても可愛らしいのです。うん、愛おしいですね。叫ぶ鬼塚を宥めるためにフードを取る過程のかのんの表情、その1つ1つもスクリーンショットで保存したくなるぐらいの可愛さだ。「可愛い」の連呼ばかりで語彙力不足を実感している。勘弁してほしい。だって本当に可愛いんだから、仕方ないじゃん。
 どうして「熊」と「澁谷かのん」はこんなに親和性が高いのだろう。というよりも、このパーカー、偶々北海道に出掛けていたお父さんの忘れ物を届けた際、お土産に、って買ってくれたものであるとのこと。
 娘に、長女にこうしたプレゼントを贈るぐらいだから、親はわかっていたのだろう、熊とかのんの親和性を。或いはその愛好の深さを。案外とかのん、幼い頃は家で仕事をしている両親の邪魔にならぬよう、時には妹と一緒に(ちぃちゃんも一緒?)『クマのプーさん』シリーズのDVDでも繰り返し観てたのかもしれない。……かのんの年齢で流石に『テッド』はブラック過ぎるし、『パディントン』も──これは観ている可能性あり、か。
 なお、『クマのプーさん』シリーズでは、定評ある劇場用長編『クリストファー・ロビンを探せ!』が屈指の名作である。クリストファー・ロビンを想って夜中、1人(1匹……1頭か)歌うプーさんの淋しげな姿にかのん嬢の涙腺が崩壊していたかも、と想像すると──済みません、書いているこちらもヤバいんですけれど。
 父親がお土産に買ってくれたパーカーを着て、後輩たちに差し入れするなんて、なんとまぁ茶目っ気たっぷりなLiella!のリーダーではありませんか。もっとも、先程お話ししたように場合によっては命の危険もあったわけですが。
 それにしても澁谷父子の仲の良さは羨ましいな。親子仲が良好なのは良いことであるよ。
 でも、翻訳家のお父さんは、北海道でなにをしていたのでしょう。録画したものを最初に観たときからずっと、仕事かな、と思うていた。翻訳家仲間、出版社や編集プロダクションの担当者、そうした人々との勉強会や懇親会(実態はともかく)であったのかもしれない、と。
 しかし、実際はスクールアイドルの練習で忙しい長女は不参加の、家族旅行であったかもしれない、と思い始めた。そうなると差し入れの提案やアドヴァイスは母親から出たかもしれないし、きな子実家までの交通機関の料金は両親が出してくれた可能性だってある。澁谷家程父親が物語の表層に現れて、展開に関与するファミリーも珍しいが、これも1期で家族のつながりや関係性を端的ながらきちんと描いて見せ、家庭のあたたかさを想起させる部分を見せていたからこそでありましょう。

 ──多少の問題は残しつつも、鬼塚夏美はLiella!9人目のメンバーになった。可可いうところの、「スクールアイドルの“9”は絶対数。レジェンドスクールアイドルが残した“9の奇跡”!! これでLiella!もレジェンドスクールアイドルの仲間入りをする資格を得た」わけですが、鬼塚は是非、可可とメイのスクールアイドル講義を受講して9人目になったことの意味をしっかり理解してほしい。
 9人になって初めての曲、「ビタミンSUMMER!」はアイドル鬼塚夏美のデビューを飾るに相応しい、活発で健康的な作品でした。早くフルサイズで聴きたいものであります。
 もっとも9人体制は今期のみで、3期では12人になる気もしているのですが。……江東区の某虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会を参照のこと(2期)。かのんの妹ありあや、年齢不詳ながらすみれの妹が入部したら面白いとは思うけれど、これはこれで予定調和の域を出ませんね。

 実は本話に関してはちょっと、どうしても見過ごせない問題が1つ、あるのですが、それはまた別の機会にお話ししましょう。ネタの温存を図っているのではありませんよ、いや、マジで。




 第07話「UR 葉月恋」は08月28日放送予定。
 それにしても「UR」とは。本話で可可に借りたゲーム端末ですっかりゲームに嵌まった恋ちゃんの、ポンコツ・エピソードふたたび……? また開けなくてもいい扉を開いたのか、恋ちゃん。
 あれ、キャラクターのフルネームがサブタイトルになるのは、これが初めてな気がする……。◆

第3453日目2/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第05話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 既にお伝え済みではありますが、初見の方もおられようゆえ、これまでの第05話に関する発言要旨を述べた上で、本題に入ろうと思います。
 第01話から第04話までの平均登場時間、約2分強というシリーズ屈指のレアキャラ化していた鬼塚夏美。会社経営者である彼女が如何にしてLiella!に加入することになるか、それがようやく描かれてゆく第05話だったのですが、これを観てわたくしは胸糞悪くなった。斯くも人格の破綻した愚人がこれまでシリーズに登場した例しがなかったからである。
 正直なところ、〝コレ〟の卑しさに呆れて、視聴を止めようかと考えたことは二度や三度ではない。が、第1期に引き続いて最終話まで感想を必ず書くと決めてしまった以上、事務的であっても書いてお披露目するが義務と荒ぶ気持ちを宥めて、筆を執っている。当然録画したものを観ながらの感想執筆となるので、再び腸煮えくり返ることもあるだろうけれど、能う限り抑えて書いてゆくつもり──。怒り荒ぶることあらば、読者諸兄よ、どうぞお許し給へ。
 それでは──、



 要旨をまとめると、鬼塚夏美のイカレっぷりと平安名すみれの頼もしさ、1年生トリオの実力差に対する悩みの深さ、この3点が『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第05話「マニーは天下の回りもの」の柱となる部分であった。もう少し具体的に述べれば以下の通り。

 まずは鬼塚夏美の件。
 「オニナッツチャンネル」のチャンネル登録者数は68人。動画コンテンツは上から順番に「【現役JKが歌う】スクールアイドルメドレー アカペラで歌ってみた!」(723回再生 3日前)、「【激ヤバ】22時間ぶっとおしで寝てみた!」(102回再生 2週間前)、「【禁断】夏美のオニ辛口徹底追及〜時事ネタ編〜Part1」(221回再生 2週間前)、「【大食い】おにぎり100コ作って食べてみた【超過酷】」(118回再生・3週間前)。00分58秒〜01分01秒他の画面で流れた。
 それにしても……主体性なきアホ企画満載のチャンネルらしい。日経平均を気にかけていたのは「オニ辛口徹底追及」のネタとして観測していた可能性も出て来た。いずれにせよ高校生レヴェルの時事ネタ徹底追及である。他人のフンドシ借りて……が精々であろう。
 しかもこの直後の場面で判明するが、スクールアイドルメドレーの動画をあげていながら自分の通う学校のスクールアイドルのSNSをチェックしていなかった模様(01分14秒〜01分19秒)。いつの間にかこんなにフォロワー数が(増えていた)……というていたので、鬼塚がLiella!をチェックしたのは入学して間もない時期であったろうと推測できる。そうしてその後はまったくチェックしていなかったことも、推測できる。
 さて。
 いよいよ鬼塚がLiella!に接近した。なぜ、どのようにして? 目的はやはり、自身の動画コンテンツの再生回数増、いいね増、チャンネル登録者数増、であった。つまり、スクールアイドルLiella!の人気(この場合はフォロワー数と再生回数)に便乗して、これを巧くたらし込んで陣営に引きずりこみ、営利目的に活用する、というのが「なぜ」への回答。これは大方予想した通りであった。
 「どのようにして」に関しては案外と正攻法で接近した印象である。Liella!の人気を更に高めるため=ラブライブ!優勝を確実に視野に入れるため、自分の会社とタッグを組みませんか? あなたがたの広報役を務めますわよ。それが鬼塚の言い分。結構ストレートかつ包み隠さずの交渉だったので、視聴するこちらは却って拍子抜けした程だ。
 鬼塚の提案に、Liella!リーダー澁谷かのんは生徒会長たる葉月恋とスクールアイドル部部長嵐千砂都に助言を仰ぐ。恋はやや不安そうな口調ながら「そうした役を担ってくれる人がいてくれた方が、私たちは練習や作詞作曲に集中できますが……」と留保附きの同意を示した。一方で千砂都はかのん信仰が足許を掬ったか、「良いんじゃない」と一言で鬼塚の提案を受け入れることに前向きな発言をした。
 疑問なるはなぜここでかのんは、すみれと可可に意見を求めなかったのか、だ。少なくともすみれはどれだけネタにされてしまっていようと、ショービズ界を経験している唯一の人だ。かのんはそれをすっかり忘れ果ててしまっていたのだろうか。彼女はもう少し慎重になるべきだった。すみれに意見を仰がなかったこと、契約締結にあたってすみれを重用しなかったこと、この2つが鬼塚の台頭を許し、後に触れるLiella!分断を演出させたのだ。「チョロいですね」という鬼塚のかのん評も殊この件に関する限り誤りではない。
 本音をいえばもはや定例となっている会話の再現すらしたくないのが、検証のためには必要なので作業に取りかかろう。──鬼塚夏美の人格を、その言葉から考えたい。
 ○01分24秒〜01分32秒
  (Liella!のSNSをチェックしていて、)
 鬼塚;そうですわ。これを利用すれば……。(下心丸出しの表情で)にゃは〜。マニーですの。マニーですのー!!
 ○05分24秒〜05分52秒
 鬼塚;(ぼやく1年生トリオを盗撮して)くっくっく。あの3人がスクールアイドル部に入ったことで、1年生からの人気が急上昇中。私ともあろう者がさっさと利用すべきでしたの。Liella!のフォロワー数と動画の再生回数、そこにオニナッツのプロデュースによって起きる効果を加えると──にゃは〜ん。マニーですの、(下心丸出しの表情で)この世はすべてマニーですの〜!
 ※この直後、鬼塚はスクールアイドル部の部室を訪ねているのだが、驚いたり喜んだりするメンバーのなかで唯一、四季だけが疑惑というか厳しい目で鬼塚を見ているのが印象的である。本章を察するぐらい人間観察に優れた能力を持つのか、四季は。
 ○12分29秒〜12分53秒
  (自室にて。スマホ画面に「リエラ!とあそんでみた〜!(51,312回再生 チャンネル登録者数3,620人)」)
鬼塚;(自室にて)にゃは〜ん。マニー。来ましたの。再生数が、再生数が、どんどんマニーになってゆく〜! (自室の窓を開けて。鬼塚商店の看板、その横に(株)オニナッツの看板)マニーは天下の回りもの。遂に私に回ってきたんですの〜!!
 ○13分44秒〜13分56秒
  (学校屋上、1年生トリオ相手に撮影を始める鬼塚)
 きな子;今日も1日、撮影するんすか?
 鬼塚;勿論ですの。この前のゲームの動画であれだけ稼げたんですのよ。練習となれば……。
 四季;稼げた?
 鬼塚;うわっ、いやいや──
 かのん;遅れてごめーん!
 15分45秒〜16分13秒
  (夏休み明けの地区大会と学園祭でのステージについて、両方とも8人になったLiella!で臨むべきだと主張してそれに皆が同意した様子を見て)
 鬼塚;成る程。そういう構図になっているんですのね。
 すみれ;──どうかした?
 ※このときのすみれは既に何事かを見抜いている様子である。
 可可;ではランニング行きましょう!
 かのん;夏美ちゃんはどうする?
 鬼塚;あー、では撮影しながらついていきますの。(ランニングについてゆくが息切れしてバテそうになる。走りながら)だがしかし登録者数のため、マニーのため、Liella!は使える……。
 ○19分59秒〜22分15秒
 鬼塚;では、本当に怒っているわけではないんですのね?
 きな子;はいっす。明日もよかったら来てほしい、って。
 四季;いってた。
 鬼塚;──思ったよりチョロかったですの。
 きな子;チョロ?
 鬼塚;いえいえ、では明日からも普段通りに。
 ○21分54秒〜
 鬼塚;(部室の外で、1年生トリオの別行動が許可されたことを盗み聞きして、)くっくっく。上手くいきました。上手くいきましたの。分断成功。あとは夏美の思うがまま。(屋上に飛び出して)マニーですの。マニーですの〜!
──如何であろう。
 アニメだからとて許容されて然るべき範囲を超えている。これ程『ラブライブ!』シリーズの世界観をぶち壊して傲然とのさばっているキャラクターも、珍しいのではないか。『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の鐘嵐珠や三船栞子は、スクスタ版からアニメ版へ移行する際設定が大幅変更されて、人気度など赤丸附きで急上昇していった(回復した?)人たちだった。しかし鬼塚夏美にスクスタ版という、仮に黒歴史であってもアニメ化で設定変更されて相殺される履歴はない(Liella!メンバー全員対象者ではあるけれど。というかそもそも、『ラブライブ!スーパースター!!』がスクスタに参加していない──これを幸運と取るか否か、わたくしにはちょっと判断できない)。
 前稿にて結構糞味噌に罵倒したが、その思い、残念ながら本稿執筆の現在でも変節する様子がない。やはり何度観返しても鬼塚夏美は畜生で、愚人で、人格破綻者で、思考回路と精神構造に重篤な欠損のあるキャラクターという印象は維持されている。次回第06話「DEKKAIDOW!」での言動次第でまだこちらの印象、変わる余地はあるけれど、期待するは殆ど無駄であろうか……?

 第1期から第2期で格段に成長したのが、平安名すみれである。第1期では事ある毎にショービズ界の経験を鼻にかけていた彼女であったが(※)、殊本話に関してはプラスの方向に働いた。
 論より証拠。2つの場面での会話を再現しよう。曰く、──
 ○08分10秒〜08分25秒
  (部室で鬼塚のプロデュース案を聞いた後、可可宅前の歩道にて)
 すみれ;(かのんのスマホに転送された(株)オニナッツの契約書を読む)報酬は受け取らない……但し制作費の実費として、動画収入を株式会社オニナッツが受け取ることとする……。
 って、これをOKしたの!?
 かのん;うん。別にわたしたち、お金儲けしたいわけじゃないし。
 すみれ;でも──!
 ○17分31秒〜18分29秒
 すみれ;(オニナッツチャンネルのサイトを鬼塚に突きつけて)これについて話があるんだけど?
 恋;エルチューブ、ですか?
 可可;急になんの話デスか?
 すみれ;これ、この前の動画とか確認したんだけど、結構再生数稼いでいるみたいね?
 鬼塚;うあっ……それはよかったですの……(冷や汗を垂らしながら)。
 すみれ;あんた、プロデュースとかなんとかいいながら、私たちを利用してお金儲けしようとしているんじゃないの?
 鬼塚;い……。
 可可;なにをいい出すかと思ったら、すみれみたいな卑しい考えといっしょにするな、デス。
 千砂都;そうだよ。今日だって──
 四季;実は、私も調べた。このまま行くと、将来的な収益は──
  (四季、推定数値を可可、恋、千砂都に見せる)
 恋;こんなにですか!?
 可可;知らなかったです!
 千砂都;私たちに内緒で──。
  (鬼塚に鋭い眼差しを向けるすみれたち5人)
 鬼塚;いや、これはですね……
 すみれ;ちゃんと説明してもらえる? ショービジネス的にはあり得ない話なんだけど?
 鬼塚;むうー。(逃げる)
 ○18分37秒〜18分44秒
 かのん;夏美ちゃんが?
 恋;すみれさんの話が正しければですが……。
 可可;お金に関しては流石、カンが鋭いですね。
 すみれ;言い方!
──と。
 Liella!メンバーのなかで契約書なるものといちばん親しんでいたのは、他ならぬすみれであった。子役時代(グソクムシ時代)、実際に製作サイドと契約を交わす役は保護者やプロダクション関係者であったろうが、それでも契約書というものがどういう性質の書類か、隅々まで読んで署名捺印しないと時に意に反した仕事をこなさねばならぬ場合もあること(ex;『青春ブタ野郎』シリーズ桜島麻衣のケース)、ギャラに関わる一切の文言を読み落とさぬこと、なによりも自分たちが未成年者(制限行為能力者)であるがゆえに保護者やそれに準ずる立場の成年者を法定代理人としてその同意なく締結された契約は無効となること、など業界経験を通して肌で味わい、身を以て経験し、事務所や保護者から聞かされてきたであろう。
 それゆえに上記かのんに見せられた契約書の内容について驚き、かのんに「この内容にOKしたの!?」と詰問したのだ。それでもすみれは鬼塚の行動と人によっては聞き漏らしかねない発言に不審を抱き、オニナッツの動画サイトを視聴してLiella!を取りあげた動画の再生回数と他の動画の再生回数の極端な差に着目し、Liella!動画再生回数と1回の投げ銭上限を掛けて鬼塚の懐へ入る収入額を計算し、(明確な知識の有無にかかわらず)民法6条に抵触する可能性をチラつかせたのは、すみれでなくては決してできなかった行為といえる。
 このあたりの反撃はあらかじめLiella!メンバーについて知識を仕入れていれば、対策を講じることができたはずである。それができていなかったというのは、単に鬼塚の準備不足であり、相手を見くびっていた証左に他ならない。鬼塚はかのんを指して「チョロい相手だ」と発言したが、それがそのままブーメランとなって返ってきたわけである。鬼塚を指して愚人というは専らこの点を指しての言だ。商取引相手のリサーチを怠るなんていう商売の基本を欠くようでは、鬼塚夏美の経営者能力に大いなる疑問を呈さざるを得ない。本話に於ける鬼塚最大の誤算は、Liella!メンバーに芸能活動の実績を持つ平安名すみれがいたことである。
 それにしてもなぜかのんはすみれになにも相談や助言を仰ぐことがなかったのであろう。もっとも過去の(第1期の)すみれの(かのんへの)対応──たとえば第05話に於ける学園祭問題を巡る普通科内の説得など──を見ていれば、相談相手とするには考えてしまうことあるかもしれないけれど、それでもLiella!1期生はすみれの履歴に敬意を表して相談等するべきであった。そうすればすみれ自身では解決できなくとも、これまでの人脈や親御さんを通して解決の糸口を見出すことができたかもしれない。そも鬼塚の提示してきた契約内容に疑い有りや無しやを訊ねることができたはずだ。
 勿論主たる原因は鬼塚に帰せられるが、かのんたちLiella!側にも此度の争動の一因はあるといわざるを得ない。未成年者であっても法的書面を交わすことに危険は伴うのだ、とはおそらくすみれのみが知ることであり、そのすみれに相談を仰がなかったことは彼女を除くLiella!側の失態としか言い様がないからだ。
 厳しくも真面目なことをいうたが、これが本件に関するわたくしの見解であり、感想である。

※但し9割方は可可に粉砕される。なお、2人の秀逸なるボケツッコミが回を重ねるごとに夫婦漫才化したことと、第1期第11話以後見せた素直になりきれない友情の育みと秘密の共有が、絆を強固にしたのだ。その結果、”くぅすみ”かぷという、或る意味『ラブライブ!スーパースター!!』最強クラスの萌えの温床を提供することに。このお陰でファンの脳味噌はいつも蕩けさせられている。

 そもLiella!の日常と練習に潜りこんだ鬼塚が、本話終盤で2年生と1年生の分断を実現させたのは、練習帰りの1年生のぼやきを盗撮したのが発端であった(05分04秒〜05分54秒)。
 ではそのぼやきとはどのような内容だったか。練習していて否応なく感じざるを得ない先輩メンバーとの圧倒的な差について、であった。どれだけ練習しても追いつけない、却って足を引っ張っているだけではないか、2学期に控えるラブライブ!地区大会と学園祭のステージで自分たちはLiella!メンバーとして恥ずかしくないパフォーマンスができるのか、エトセトラ、エトセトラ。
 どれだけ嵐部長が「練習メニューも少しリニューアルしてみたよ。1年生も増えたし、それぞれに合ったところから始められたらいいかな、って」(03分21秒〜03分28秒)と配慮してくれても──それでも1年生にはキツかったのだ。きな子は(予想通り)倒れこみ、メイもそれに続き、一人平然と汗を拭いているように見えた四季さえ「私も結構ギリギリ」という始末(03分39秒)。
 無理のない話だ。既に1年の歳月が経過しているのだから、先輩メンバーとの間に差はついて当たり前である。入部して2ヶ月3ヶ月程度ならば、その差は多少なりとも埋まったとしても比肩して見劣りなしと万人が認められる程にパフォーマンスが仕上がっていることは、まずあるまい。
 それに顧みるまでもなく2年生メンバーと1年生メンバーには、スクールアイドルを始める以前から、それぞれが持つスキルに圧倒的差異が生じている点を忘れてはならぬ。かのんの堂々たる歌唱力と伸びやかな声と豊かな声量(肺活量)。千砂都のダンスと恋のバレエ、即ち2人とも身体能力の高さと基礎体力が備わっている。すみれの芸能界経験で培った適応力と吸収力の高さ。可可の……可可の……苦手を克服して夢を達成させる意志の強さとブレのなさ。既にメイからきな子に伝えられたことを、ここでは変奏させてみた。1年生組には予めわかっていたことであろう。
 しかし、それでも彼女たちは先輩メンバーに追いつかなくてはならない。なんとなればいま自分たちが所属しているスクールアイドルは、次回ラブライブ!の優勝候補で多くのファンや関係者から注目されているLiella!なのだ。それに恥ずかしくないパフォーマンスをすること、それが(過程はどうあれ)Liella!に加入したきな子、メイ、四季3人に課せられた使命だ。
 でも、本話にて1年生トリオの特技というか隠れた才能も徐々に披露されてきた(03分40秒〜04分49秒)。四季は「ダンスやってたの?」と千砂都に訊かれて否定するもスクールアイドルの動画を観て踊っていたことがあるようだし、メイは、四季が暴露したことでピアノが弾けるという特技を皆の前で披露した/させられた。弾いた曲は、シリーズ史上屈指の名曲と思うクーカーの「Tiny Star」であった。そうしてきな子はノートに歌詞を書き溜めていることが先輩メンバーたちの知るところとなっていた。
 理想と現実のギャップに悩むのは10代であれば誰しも経験あること。それを彼女たちはいま、部活動で経験した。先輩たちのパフォーマンス、そのクオリティに自分たちは歌もダンスも到底及んでいない……そりゃあ、帰り道に3人並んでベンチに坐って、「はあ……」と溜め息を吐きたくなるよな(05分04秒〜05分23秒)。わかるわ、この感覚。部活ではないけれど、様々な場面で味わってきたから。
 そこに鬼塚に付け込まれた3人は不運であったかもしれない。彼女たちの口惜しさや失望感を利用した鬼塚。夏休みの間は先輩メンバーと別行動して、自分たちを見つめ直してみたい=自分たちのパフォーマンスを向上させるべく自主練したい、と嘆願したメイたち3人の言葉のどこまでが鬼塚の入れ知恵で、どこからが彼女たちの本心であるのか、経緯が説明されていないため判別は付きかねる。
 ただ、ヒントはある。20分14秒から21分03秒の場面である。曰く、──
 メイ;ってことは、これからも動画を公開するのか?
 鬼塚;勿論。それが私の仕事ですので。──ん? なにかあるんですの?
 メイ;いや、事実だから仕様がないんだけどさ。もし日常だけじゃなくて、歌やダンスの動画をLiella!のファンが観たら、1年生と2年生で実力に差があるって、はっきりわかっちゃうよな、って。
 鬼塚;それは……
 きな子;笑われるっす。
 四季;間違いない。
  (困り顔できな子たちを見る鬼塚。なにかを思いついた表情で)
 鬼塚;にゃは〜ん。思い着きましたの。わたしたちは全員、1年生。皆さん、ちょっとご相談がありますの。
──と。
 鬼塚は確かにLiella!を、2年生と1年生に分断した。が、その分断はLiella!に向けられた黒い感情ではなく、むしろ1年生の技術向上のための分断であった、と考えられるのが、上記に再現した1年生カルテットの会話である。むろん、鬼塚とて無償の協力ではあるまい。1年生たちの自主練の場を提供する代わりに練習風景を撮影させてほしい、と交渉でもしたのであろう。ギブ・アンド・テイク。資本主義の原理に則った、極めて妥当な行為である。
 それをふまえた上で次回第06話予告を観ると、鬼塚がストーリーラインを作ったとしても、それは案外と建設的なそれであったようにも思うのだ(あくまで表面上の話)。
 というのも、3人の練習風景を撮影する鬼塚の表情や、わざわざ北海道までやって来たのか、かのんの鬼塚に対する慈母の如き表情などからして、鬼塚も流石に露骨な提案はしなかったであろう。しかもそれは、公園に居合わせたメンバーから鬼塚の企みと収益を聞かされたあとなのだ。確かに部室での曇った様子のかのんは気になって仕方ないが……。救いというか期待したいのは、予告の最後に流れた1年生カルテットの笑顔である。これが予定調和といわれようと幸福な着地点となってくれることを望みたい。
 正直なところ、第05話から第06話までどのような(視聴者が納得できるような)ブリッジが架けられ、どのようにして鬼塚に対するメンバーの不信が解消されてLiella!加入に落ち着くのか。まったくその流れが見えない。第1期に於ける恋のLiella!加入の流れよりも不透明で、考える程にモヤモヤした気分に襲われる。
 かつてすみれに関する考察を第1期放送中に書いて、本ブログでお披露目した。そのなかで述べたことの言い直しになるが、今後の展開で鬼塚への新章が回復するようなことがあればいいな、と心の底から希望している。
 ──ふと思うのは、鬼塚はLiella!メンバーとしてパフォーマンスするよりは、邪念を棄ててその広報に徹した方が良いのではないか、ということ。振り返ってみれば、それは恋ちゃんの希望でもあった。その方が鬼塚も自分の能力をフルに発揮して、様々な面でLiella!に貢献できるのではないか。難しいかなぁ。
 ……そういえば、シリーズ先行作に似たようなポジションの方がおられましたな……その名を、高咲侑、っていうんだけれど。そっか、侑ちゃんか……成る程。この2人が接触したら瞬く間に鬼塚は侑ちゃんにマウント取られて、その色に染めあげられるんだろうな。え、その色ってどんな色、って? だって『ラブライブ!』じゃん。



 追加で申しあげることがあるとすれば、レジェンドスクールアイドルが創りあげた〈9の奇跡〉で可可とメイが大騒ぎした場面(06分02秒~06分32秒)と、可可の部屋でゲーム機を見附けてそれに夢中になる場面(10分28秒〜11分35秒)ですね。特に恋ちゃん、皆の会話そっちのけでゲームに興じている横顔、とっても可愛いです。生徒会や音楽科の生徒はこうした恋の姿、知っているのかなぁ。◆

第3452日目2/2 〈『LLSS』S2#05感想文について。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 標題の件、以下のように申しあげます。
 本来なら既にお披露目されているはずの『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第05話感想文ですが、明日中に公開致します。
 鬼塚夏美の愚人ぶり人格破綻者ぶりに腸煮えくり返る思いを抱くも、数日かけてどうにか抑えられるようになりましたので、上記のように申しあげる次第。
 感想執筆等のため観返して再燃する可能性極めて濃厚ながら、最終話まで感想を書くと決めてしまった以上、今回(とおそらく来週の第06話も)は事務的にであっても片附けてしまおう、というわけであります。文章は感情を暴走させる、といいますのでその点はくれぐれも自重して。
 単なるヒール役ではない、ただの精神構造と思考回路に重篤な欠損あるキャラクターを『ラブライブ!』シリーズでお目に掛かるとはね……。
 うーん、かのんたちは株式会社オニナッツに対して法的措置を講じて、契約撤回を申し出ることはできないのかな……別のアニメになってしまうよ、という意見はこの際無視で。◆

第3446日目 〈シー・イー・オー、鬼塚夏美、〉【改訂・補筆版】 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 まさか『ラブライブ!』で「日経平均」という単語を聞く日が来ようとは! 正直なところ、あの瞬間は耳を疑い、違うアニメを観ているのか、と錯覚もし。──むろんそんなことはない、07月24日放送の『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第02話「2年生と1年生」からの一コマだ。
 さっそくではあるが、件の発言が飛び出した状況を確認しておこう。きなこが四季に促されて、メイをスクールアイドルに誘う場面でのこと。時間にして09分12秒-09分32秒の場面。曰く、──
 きな子;ほかの1年生かあ。
 夏美;ナッツー!
 きな子;あ……?
 夏美; (涙目で)これは想定外ですの〜。このままでは今月の目標が……。マニー、マニー、マニィー〜!
  (横目で夏美を見るきな子。「この人はないわぁ」というような眼差しがなんともいえぬ風情を醸している)
 きな子;──あっ!
  (メイをスクールアイドルに誘え、と四季が目で支持してくる)
 きな子;本当に……行くんすか〜?
──と。
 特に反応した生徒がなかったということは、まだこの世界に於いて結ヶ丘女子高等学校や生徒の出身中学(概ね渋谷区・港区・目黒区を中心としたエリア)では、金融リテラシーについての金融機関や弁護士たちによる出張講座は開催されていないと思しい。ゆえに誰の耳目も引かなかった、可哀想な「日経平均」であった。
 そもそも「日経平均」ってなに? という話になる流れなので、調子に乗ってこのまま話を続けたい(「日経平均」って、それ、美味しいの? とかバカを露呈するようなテンプレ反応を返す輩は、わたくしは大嫌いだ。どうしてそんな頭の悪そうな返しをするのだ。そんなことして自分が可愛いとか、無様なことでも考えているのか?)。日経平均はどんな株式や経済学の本にでも載る経済と投資の基礎用語である。その定義とは、こうだ、──

 日本の代表的な株価指数の1つが日経平均株価(日経平均)です。東証第1部上場銘柄から流動性や業種のバランスを考慮して225銘柄を選び、これらの株価の平均値を計算するのが基本です。

──と。引用は、『やさしい株式投資〈第2版〉』P66(日本経済新聞社 2014年02月)から。ついでにいえばこの225銘柄、年に1回定期的に見直されて入れ換えられる。なお日経平均の説明はWebであれば岡三オンラインのそれがわかりやすい。
 既に新聞や報道で御存知のように、市場区分の見直しが実施されて現在、長く耳に馴染んだ「(東証)第1部/第2部」や「JASDAQ(スタンダード・グロース)」、「マザーズ」という名称は廃止された。今年2022年4月4日からは「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの市場に再編されている。
 斯様な相違あると雖もこの本はとてもわかりやすく市場の原理を説明し、為替相場や株価推移の背景と分析方法、株式投資の手順や投資に役立つ(日本経済新聞社の)経済専門紙誌を紹介している。それに正直なところ、第1部、第2部等が廃止されてプライムやスタンダードなどに再編されても、これから投資する側にさしたる影響はない(というか、再編のため大混乱未だ継続中とか投資の手続きが変わるわけでもないから、こうした歴史があった、ということを認識しておけば良い)。
 マンガであったりもっと噛み砕いた内容の本もあるけれど、天下の日経が本気で書いてきたこのレヴェルの入門書を読みこなせる力ぐらい、投資をする人なら備えておいていほしい。或いはこの本を読むことでその力を鍛えてほしい。読み手への期待値も込みで、一言でいって、オススメかつ必読必携の1冊。
 話が脱線した。好きなことであるからつい口が過ぎてしまった。
 さてこの夏美の台詞(「日経平均全面安!」)、キャスト一同もびっくりであったらしい(というか、なんの意味なのか、どんな単語なのかも理解していなかった様子……)。07月31日配信の『ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 〜TVアニメ2期放送開始記念! 夏もみんなでスーパースタート!!〜』にて鬼塚夏美役の絵森彩が証言している(44分28秒−45分24秒)。同じ場で彼女はこうもいう、「唯一喋った言葉がこれっていう。もうちょっとなにかあったでしょ、ぐらいの感じだったので」と。
 わたくしもそう思う。が、考えようによってはこれ以外になかった、とも思う。花田氏が意味を理解して夏美の背景に相応しいから斯くいわしめたのか、或いは単に「それっぽいから使っちゃえ〜」なんてノリで書いたのか不明だが、少なくともこの台詞こそ未だ片鱗だに明らかとならない夏美の「マニー信仰」の根っこを考える突破口になるように思えてならないからだ。
 ここで思い出すべきは第01話、夏美が初対面のきな子に名刺を渡す場面である。そこにはなんと書かれていたか? ──「株式会社オニナッツ / 代表取締役社長 CEO / 鬼塚夏美」である。
 株式会社オニナッツの主要事業は? いつ作ったのか? 資本金は? その出所は? 他に社員はいるか? 専従社員として親兄弟等を社員として登録したのか、それとも本物の社員(従業員)がいるのか? ならば年商はどのぐらい?
 ──同じく会社の経営者として、まず単純にこんな疑問が思い浮かぶ。そして夏美と語り合いたい、設立趣旨や今後の見通し(業績予想)、書類一式が正式に受理されるまでどのぐらい時間が掛かったか、特に書き直した書類はなにか(察しは付くが)、などなど……。まァ、前半は銀行でもさんざっぱらヒアリングされたろうが、後半に関しては同じ経営者同士、腹を割ってムカついたことも含めて話し合おうではないか──と、結構本気で夢想してしまう。
 そういえば、きな子にとって夏美はダメ元でもスクールアイドルとして先輩たちと一緒にやってみよう、と背中を押してくれた人(それを更に後押しして一歩を踏み出させたのが、メイだった)。そんな或る意味で恩人の1人たる夏美を、きな子はこう呼ぶ、「CEO」と。そのいい方、敢えて文字に起こせばアルファベットの「CEO」ではなく、片仮名の「シー・イー・オー」なのだ。このいい方が格別に可愛らしく聞こえるのだが、それはともかく。
 その度に「夏美でいいって」と律儀に訂正するあたり、つし……沼津の自称〈堕天使〉ヨハネを思い出しますね。あちらはヨハネというか善子さんというかが「ヨハネよ!」とキレ気味にツッコんでくるのがお約束ですが、こちらはどうなのでしょう。きな子が「CEO」呼びする毎に、「だから夏美でいいって」と律儀に返してくるのでしょうか。
 まだこのやり取りが1度だけしかないのでなんともいえぬところではありますが、今後2人の接点は増えてくることと思います──第01話から第04話まで本編合計約92分(アバン、Aパート、Bパートの集計)中、登場時間のトータル約2分11秒!──。夏美のLiella!加入は確定なのですから、どんな経緯であろうとネタにならない程度にナチュラルに、きな子と夏美のこのやり取りが継続されたらうれしいな、と思うている。
 これで夏美のあだ名が「CEO」で定着したら、きな子の功績といえましょうね。
 ──それにしても、夏美の出身地はどこなのだろう? 「だから夏美でいいって」という台詞のアクセントにどうも引っ掛かってしまうのだ。引っ掛かるというのは耳に障るとか不自然というのではまったくなく、いつかどこかで日常的に耳に馴染んでいたアクセントのように感じるからだ。絵森彩と同じく山梨県なのか。公式サイトのプロフィール等にそのあたり、なにも書かれていない。咨、このアクセント! 彼女の出身地、或いは両親の出身地、彼女が子供の頃どこで育ったか、気になって仕方ない……!──
 さてこの「CEO」なる単語も、キャスト側を混乱させた様子である。前述した『ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 〜TVアニメ2期放送開始記念! 夏もみんなでスーパースタート!!〜』にて視聴者からのコメントを紹介したペイトン尚未が、「CEOってなんの略なんだ」と疑問を呈した(46分17秒-46分20秒 その視線は自ずと絵森彩に向けられた)。
 絵森は収録前であったかに意味を調べたそうである。流石に気になって、ググったのだろう。調べ方はともかく、良い心がけだと思う。しかし──漢字7文字ぐらいが並んでいて、などしっかり調べた形跡が確かめられる発言に好感を持ったが、どうやら日本語訳は記憶に定着しなかった模様。うん、まぁ、すぐには覚えられないような訳語だよね。しかも同じような表記で同じような訳語の肩書きもあるし。たぶん、一緒に調べてしまって混乱してしまったのだろう。自分でもやたら好意的な解釈であるのは承知している。
 「CEO」とはどんな意味か? 絵森は「(確か)最高責任管理者(とかなんとかだったと思う)」という(46分20秒-46分23秒)が、惜しい。正解は「最高経営責任者」”Chief Executive Officer”でした。
 では、どの仕事の内容は?
 日本のCEOとは社内向けの役職に過ぎない。最高経営責任者として会社の経営方針全体の責任を負う立場であるが、むしろ日本企業に於けるCEOとは、代表取締役社長とほぼ同義で使用されているケースが目立つようだ。従って夏美の名刺に「CEO」と印刷されているからとて、彼女が取締役会の方針に従って「株式会社オニナッツ」の経営方針を打ち出したり、事業戦略のプランニングや決定等に関して責任を負う、というわけでもない。
 CEOなんて凄そうな肩書きが付いているけれど、ビビるに及ばず。実は日本企業に於いて会社の代表権を持つのは、代表取締役と取締役、代表執行役(委員会設置会社の場合)なのだ。CEOやCFO(最高財務責任者)、COO(最高執行責任者)等の名称の役職者に会社を代表する権限や責任に法的裏付けはないのである。……実はこれ、本稿を書くにあたっていろいろ調べている過程で初めて知ったことなんだよね。いや、マジ勉強になった。ふーん、そうなんだ。
 むしろあの名詞に記載された肩書きで、夏美が意識せねばならぬのは代表取締役社長の方であろう。
 代表、というからには他にも取締役はいるわけだ。会社法では、株式会社は1名以上の取締役を置かなくてはならず(326条1項)、株式公開する取締役会設置会社は3名以上の取締役を置かなくてはならない(331条5項)。未成年が起業する場合の多くと同様、(株)オニナッツも(おそらく)発起人であろう夏美の他は親が取締役に名を連ねている可能性が高い。片方なのか両親なのか定かでないが、殊未成年が会社を設立しました、というときって大概親が社員として名を連ねる(なお、未成年の商業登記に関しては、商法5条未成年者登記・商業登記法35条から37条を参照のこと)。
 それはなぜか、というと、税金対策である。個人事業で自分の仕事を手伝ってくれる家族や肉親を専従社員というが、専従社員に支払う給与は実は経費として申告できたり(青色申告)、最高86万円を控除できる(白色申告。ただし専従者が配偶者の場合)。実際にこれをやると、かなり違うのだ。過去の申告書に記載された数字の数々を思い出し、実感を込めて力強く頷く。
 それはさておき。
 株式会社オニナッツが取締役会を設けているのか不明であり、株式公開をしているのかも不明だ。でも、株式公開はしていないと思うんだよな……公開しているならば、会社の事業内容がもう少し明確に、たとい片鱗であっても夏美の台詞や名詞の情報からこちら側へ伝わってきそうなものだ。そも代表取締役社長がアルバイト(副業)をしている時点で、会社経営が軌道に乗っているようには映らない。それは第04話に於ける夏美の台詞からも容易に窺えることである(引越トラックの荷台でバカになりそうな腰をいたわりつつ、「このあと配信用の動画撮影と編集があるんですの〜!」と呻くのだ)。
 きな子訊ねて曰く、鬼塚さんあなたエルチューバーって奴っすかあ!? と。自己紹介コメントにも「人気エルチューバーとして活躍していた私ですが、この度、スクールアイドルとしてデビューすることに致しましたの」とある。
 このあたりから推測して、どうやら株式会社オニナッツの主要事業は動画製作と配信にあり、設立目的も本音は税金対策であると考えられる。どれぐらいの投げ銭があるのか、エルチューバーとしての実入りがどの程度のものか、未だすべて想像の域を出ないけれど、あの年齢で会社設立を思い立ち、かつそれを実行したのは単に企業熱に浮かされたのではなく、課税対象になるぐらいの収入を得られるようになったためだろう。趣味の世界ではよく聞く話です。
 「大金が必要でないならば株式投資にまで手を出す必要はないだろう」旨発言している人のあるのを、どこかのオプチャか掲示板で見掛けた。夏美がLiella!に加入する流れを予想する流れだったと記憶する。
 うーん、この人、根本的に投資というものを理解していないのではないか。或いは、──株式投資で大金稼ぐなんて、この人はバブル期に大変美味しい思いをされた経験がある方なのか? だとしたらわたくしよりも年上になるが、もしこの発言者が若い人であるならば、株式投資はお金を大量に生み出すこと可能な錬金術かなにかと幻想を抱いているのでは。
 前者なら斯様な発言の出ることも理解できる。記憶がそれを忘れさせてくれないんだね。よくある話だ。が、後者であるならば……最前わたくしが日経平均の引用をした本をお買いになって熟読の上、投資を実践された方がよろしいのではあるまいか。むろん、後者であっても株で大金を得た実体験があり、それを継続しているならば話は別だ(もっとも「大金」の定義をどうするか、に問題が残りますが)。
 ──未だLiella!加入の流れが見えない夏美でありますが、加入の動機はなにか。自己紹介コメントを敷衍すればチャンネル登録者増と再生回数増、「いいね」増、の3点に集約できる。ただもしこれを動機として堂々とLiella!メンバーの前で披露したらば、……夏美の前には2人の巨大な壁が立ちはだかる光景は目に見えている。勿論、可可とメイである。この2人をどういなして加入するのか。まさか今更、スクールアイドルLiella!の活動に興味を持って……なんて順当な段取りは望めないだろう。
 主たる疑問の解決は、間もなく放送される第05話「マニーは天下の回りもの」と続く数回で明らかにされよう(と願う)。いよいよ鬼塚夏美のプロフィールが白日の下に曝される──「日経平均全面安!」以来どうにも無視できぬ存在となった彼女の今後に期待、である。
 なお、経営者は実はあまり日経平均の行方に、一喜一憂していない。下がり続けて歯止めが効かない場合は別だけれど。最後にそれだけお話して、さらば。◆

第3445日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第04話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 遅ればせながら『LLSS』S2#04「科学室の2人」の感想文です。だいぶ日数があいてしまった。
 悪質な夏風邪のぶり返しもあって書こう、書こうと思いながら気怠さや疲労を理由に日1日と先延ばしにしてきましたが、流石にもうこれ以上の延滞は難しいと判断。次回第05話放送を前にした今日、まだ若干熱っぽさと倦怠の残る身体に鞭打ってキーボードに向かっている次第です。
 なお本稿は買ったばかりの有線キーボードの慣熟テストを兼ねているため、いつもより分量がちょっとだけ少なくなることを、あらかじめお断りしておきます。



 今回は前回予告通り、米女メイと若菜四季のLiella!加入回。
 初登場時から限界オタクぶりが噂され、回を追うごとにその素顔が視聴者の前に露わとなっていったメイですが、一方でスクールアイドル好きを若菜四季以外の誰かに察せられるのを厭うて、きな子とクラスメイトがスクールアイドルについて話したりしていると睨めつけてきたりしました。その理由は本話にて解明されますが、メイの加入過程は(最後の加入者鬼塚夏美のそれと同じく、)極めて興味深いものでありました。
 観終わったいま、第04話「科学室の2人」はメイと四季という、互いに不器用で似た者同士な、歪んだ鏡が見せる相似形の2人がたがいの気持ちをおそらく知りあって初めて、ストレートにぶつけ合って絆を深めるのと一緒に、気持ちに正直になって新しい一歩を踏み出した<新しい2人>の物語であった。こちらのフィルターが掛かっているせいかしれませんが、憑きが落ちたかのようなその後のメイと四季の笑顔はとても純粋で、ほんの少しだけ成長した2人を見るような思いがするのであります。
 第2話でしたか、メイは、スクールアイドルをやってゆけるか不安だったきな子に向かって、「自分がやりたい、目指したい、って思ったことを信じてみろよ。周りの声なんて──気にするな」と諭しました。それはきっと、自分への言葉だったのでしょう。スクールアイドルに興味があるどころか憧れていて、しかも同中の2人が所属するLiella!の熱狂的ファンで匿名で差し入れしちゃう程の愛と行動力を持っていても、見た目がそれっぽくなく言動もまた然りゆえに自分にスクールアイドルは向いていない、と自分で分析、結論附けたメイ。その世界から一歩引いていた自分だったからこそきな子に、あたかも希望を託すかのようなあの台詞を手向け、同時に自分のなかに残るスクールアイドルへの逆巻く愛を宥めていたのかもしれないな──本話まで観たあと改めて過去回を観直すと、思うのであります。
 そういえばメイは<代々木アイドルフェスティヴァル>(第03話「優勝候補」)で撮ったLiella!の写真を休み時間、恍惚とした表情で眺めておりました。これまでクラスメイトはメイのスクールアイドル好きを本当には知っていなかったかもしれませんが、それはいい換えれば本話00分43秒で見せた件の表情を見たことのない人が1人もいなかったことの証左。
 これはメイ側にしてみれば巧みな隠蔽工作の賜物なのでしょうか。否、そうではあるまい。
 ここで改めて公式サイトのメンバー紹介に戻りたい。米女メイの発言である。曰く、「小さい頃からいつも目つきが悪いって、友達にも怖がられてきたんだし。大体、好きじゃないんだよ。そんな風に自分のこと話すのって」と。また運営がキャラ紹介文として付けたプロフィールには、「斜に構えた、一見とっつきにくい不良っぽい女の子。そのせいか、周りから怖がられることも多いが、若菜四季とは不器用な者同士、つかず離れずの関係を続けている」と。加えて、本話ではきな子の証言(?)も飛び出した。曰く、「それで、クラスでちょっと怖がられているんっすね」(12分24秒-12分27秒)と。
 ここから想像するにクラスメイトたちは、同じクラスということで表面上は無難に付き合いをしていても、四季とばかり関わって他のクラスメイトは基本的にシャットアウトしているように映るメイと、どんな話題を、どんな風に切り出せば良いか、考えあぐねているのではないか。それが、きな子が四季に促されて姪をスクールアイドルに誘った際のあの、一見過剰とも思えるクラスメイトたちの反応である(第02話)。
 もしかすると彼女たちは、いま学内で話題のLiella!へ加入した(=スクールアイドル部に入部した)きな子を触媒に、スクールアイドルの話ができると思いこんだ……もとい、期待したのかもしれない。まだ年度も改まってそう経っていない時分であるから(GWにはまだなっていない?)、皆が皆、同じクラスの生徒について知っているわけではあるまいし、結ヶ岡女子高等学校は中等部を併設しない高等部のみの学校であるのだ。いい方は悪いかもしれぬが、全く以て未知の存在たる生徒も多かろう。「あの子はどんな子なんだろう?」「あの子となにを話したら良いかな」と胸中、いろいろ思うところもあろう。
 ましてや米女メイ、その外見と目つきの悪さゆえに人を遠ざけてしまっていること、上に引いたプロフィールと自己紹介コメントから推察することは容易でありましょう。今回、ぶじLiella!へ加入したことで、クラスメイトたちとメイの会話する場面が増えることを祈ります。

 外苑西中学から結ヶ岡女子高等学校へ進学した生徒は、第1期だけで7人が確認できました。かのんと千砂都、ナナミ、ヤエ、ココノ、第01話冒頭でかのんと会話していた音楽科に進学した2人、であります。新設されたばかりの結ヶ岡女子普通科1年に何クラスあったか、定かでありませんが、画面に映った普通科の制服を着た生徒の延べ人数から推測しても、精々が2クラスでしょう。
 現在の高校の1クラス平均人数がどれだけなのか知りませんが、親戚や友人の子供などに訊くと35-40人程度はいそう。まぁ35人としても内4人が同じクラスにいるって、なかなかの比率だと思うのでしょうが、どうでしょうか。
 なにがいいたいかというと、外苑西中学は立地の関係もあって、これまでとあまり生活圏の変わらぬ、しかも卒業生がスクールアイドルとして活躍している近隣の結ヶ岡女子高等学校を、進路指導の際に奨めることは自然な流れであり、第2期に於いて最終的にどれだけの外苑西中出身者が結ヶ岡女子へ進学したかわからぬけれど、そのうちの2人が他ならぬ米女メイと若菜四季であったことが今回判明した新事実である、ということをいいたかったのだ。
 そう、4人は同中だったのです。米女メイと若菜四季2人の中学時代の回想場面を観ていて、見覚えのある制服だな、と思うていたらそれが、第1期第01話冒頭でかのんが着ていた外苑西中学の制服でありました。すみれは違う中学出身であることが既に明らかとなっておりますが(第1期第04話)、恋の出身中学はどのようなところだったのだろう、とはたしかそのとき、脳裏をかすめた疑問でありました。
 それにしても、……『ラブライブ!スーパースター!!』の世界では学校の制服に、学年毎の差異を付けるということはしないのでしょうか。音ノ木坂学院も浦の星女学院も、虹ヶ咲学園も、ブレザーやセーラーの違いこそあれ、リボン・タイで学年の識別ができるようになっていました。現実的に考えても、そのあたりで区別するものでありましょう。
 しかし、なぜ結ヶ岡女子高等学校は? 外苑西中学は? 識別するためのアクセサリーがデザインされなかったのか。不要であるならば、その結論に至った理由は? スタッフは誰一人、その点について疑問を抱かなかったのか。デザインするのが面倒臭かった? 斯様に細かな部分への目配りが作品世界を堅牢なものへ近附ける、と、どうしてわからないのかな。──わたくしが気が付いていないだけであったら、どうぞご指摘ください。

 これまでスクールアイドル部に、部長はいなかった! 1年間活動してきたのに!? 或る意味でこれが本話、もう1つの柱となるトピックでありました。
 初年度は生徒数も少なく部活の数はともかく部員が少ないことで、風通しも見通しも良く、下世話な話をすれば予算配分もそう難しいものではなかったでしょう。が、創立2年目、普通科も音楽科も生徒数が増えれば既存のクラブは人数が膨れあがるところ発生し、新設される部活・同好会の類はどれだけの数になるか予想が付かない(虹ヶ咲学園程ではないでしょうけれど)。
 全体を把握するという生徒会の目的を果たすため、恋は部長会のようなものを開こうと思いまして……と、屋上での練習中にメンバーに伝える。その過程で、ではスクールアイドル部の部長はは誰にするか、という話になり、かのん以外のメンバーは当然かのんが部長に相応しい、といい出す──半分責任回避である。
 それを承けての06分05秒-06分19秒、久しぶりに描かれた千砂都のバイト先でのかのんと千砂都の会話です。曰く、──
 かのん;だからこそ、新しくなろうとしているLiella!の部長は、自分じゃない人の方が良いと思う。たとえば……ちぃちゃん、とか。
 千砂都:私!? 私はムリだよぉ。
 かのん;どうして?
 千砂都;だって、そういうの向いてないし……。
 このあと、若菜四季がかのんたちを訪ねてきてこの話、一旦中断となるのだが、或ることをきっかけに千砂都が立ちあがる(Chisato is rising,)。
 15分57秒-15分59秒
 メイ;だからいってるだろ。私は向いてないって。
 16分12秒-16分15秒
 千砂都;……向いてない……。
  (千砂都の回想)
 (秋の公園、池の畔。幼少期のかのんと千砂都、並んで坐っている。泣きじゃくっている千砂都)
 かのん;できるよ。ちぃちゃんはなんだってできる! 
 千砂都;……できないよ……。
 かのん;(千砂都の手を両手で握って)ちぃちゃんは、自分ができないって思いこんでいるだけ。だから大丈夫!
 千砂都;かのんちゃん……。
  (現在に戻る)
 (若菜四季を見送るメイを見る千砂都)
 16分56秒-17分12秒
 千砂都;向いてない……
 かのん;え?
 千砂都;決めちゃってたよね、メイちゃん。
 かのん;えっ──うん。
 千砂都;できるって思えばできるかもしれないのに。
 かのん;んあぁ……
 千砂都;かのんちゃん、あのね──!
 17分15秒-18分01秒
  (黒板に「結ヶ岡女子高等 第一回部長会」)
 恋;ではこれより、結ヶ岡女子高等学校第一回部長会を始めます。 
 四季;科学愛好会部長、若菜四季。
 千砂都;──スクールアイドル部部長、嵐千砂都です!
  (その様子を扉の影から見ているLiella!4人)
 かのん;──ちぃちゃん!
  (そのまま時間遡り、部室)
 恋;千砂都さんが!?
 可可;部長を!?
 千砂都;迷惑かけるかもしれないんだけど、自分にもできるんじゃないかって。チャレンジしたいんだ。
 可可;素敵デス!
 きな子;付いてゆきます、先輩!
  (可可、すみれ、恋、頷く)
 千砂都;みんな……。
 こんなに長々と台詞を引用してきたのは。10題は可能性の塊だ、という古臭くて小っ恥ずかしいことを敢えていうためでありました。社会人になっても大同小異ですが、やらぬ内からできないと逃げ道を作って、いつでもそこへ逃げこめる準備をしておくのは最低であります。過去に失敗したトラウマがあるならまだしも、新しい世界を見るチャンスを自分から潰しに掛かるのは、単なる腰砕けというて宜しいでしょう。自分自身の体験も踏まえて、そう思います。
 そんな次第で、斯様にできないと泣いていた千砂都が、部長、という立場を経験してみようと思い立ってそれを実現させたことは、千砂都自身にとっても大きな前進の一歩であったろうし、『ラブライブ!』シリーズが掲げる〈みんなで叶える物語〉の一変形であるように感じられるのであります。
 また、07月31日にライブ配信された『ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 〜TVアニメ2期放送開始記念! 夏もみんなでスーパースタート!!〜』にて嵐千砂都役岬なこが第2期第01話と第02話の放送を振り返っての見所3つを挙げた際、3つ目に「安心と信頼のちぃ」と書き、Liella!メンバーを一歩引いたところから見ているような、とコメントしている(24分30秒付近)。
 わたくしは本話の千砂都の部長就任までの流れや皆とのやり取りなど観ていて、ふとこの配信を思い出し、これ以上望むべくも難しい形で実現したことを喜ばしく思うている。



 準備不足は否めない。あれを書こう、という気持ちが先走りすぎて、盛り沢山になるのを理性を以てそれを御し、時間が許せば本話の感想文は2回に分けたいとさえ思うた。が、それはできない。臥せっていた間に溜まったことの処理や役所と病院・銀行通いを最優先で片附けなくてはならないからだ。
 というわけで、本話についてはメイのことばかり語ってしまったけれど、機を見て同じぐらいの比重で若菜四季のことも語るつもり(特に20分40秒から20分45秒の四季ちゃんな!)。これが本稿への増補になるのか、独立した若菜四季についてのエッセイに組みこむかは未定。でも、書きますよ。四季のことを語らずしてメイのことは語ったことにならず、メイのことを語らずして若菜四季のことを語ったことにもならず。というわけである。
 ただこの段階で1つだけいうておきたいのは、若菜四季と米女メイ、この2人が同じ中学で出会い、親友になり、同じ高校に進学できたことに感謝したい、ということ。この2人はですね、断ち切ってはならん2人ですよ。因みに本話のED歌唱はこの2人でした。
 8人で「Song for All」やったの、良かったね。
 次回第05話はようやく鬼塚夏美メイン回(加入回はいうていない)、「マニーは天下の回りもの」。第01話を除いて登場平均時間1分の夏美がバイトに明け暮れる理由や、そもそも「株式会社オニナッツー」がなんの事業を行っているのか、など片鱗だけでも説明されたらいいのですが……夏美の部屋に積まれた10万円貯金箱(画面で確認できるだけで6個!)も気になりますね。それにしてもLiella!メンバーで「日経平均」とか「CEO」の意味を知っている人がいない、っていうのも、なんだかなぁ……である。◆

第3437日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期03話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 神回となることが宿命づけられた感のある第03話「優勝候補」。『ラブライブ!スーパースター!!』第1期第03話はかのんと可可が初めてステージを踏む回、換言すればかのんが過去のトラウマを乗り越えてふたたび歌を取り戻した<復活>の回でした。
 それでは昨日の第2期第03話はどうであったか?
 正直なところ、神回、の定義がよくわからないのですが──個人の嗜好で左右する部分もありましょうからね──、第2期にさしたる期待を抱かぬまま観始めてそのまま、やっぱり追っ掛けよう、と決めたわたくしには、紛うことなき<神回>たり得た回でありました。
 では、どのような点に触れて、斯く思うたか? まずなによりもタイトル回収がされた点、1年生にスクールアイドルの愉しさが伝わった点、メイがスクールアイドルに入れこんでいるというよりはLiella!の熱狂的隠れファンたることが白日の下に曝された点、すみれと可可の掛け合い漫才そのクオリティが殆ど頂点に達してきている点、恰もライヴァルの世代交代の如きストーリーでもあった点、鬼塚夏美を巧く狂言回しに使って代々木アイドルフェスティヴァルの場面へ移行させた点(Lber eats……会社運営の資金稼ぎか? 俺もやったなぁ)、などなど、であります。
 今日は時間がないので1点1点について詳細に触れてゆくことができませんが、これだけは話しておきたいてふ点あるとすれば、やはりタイトル回収の件と新ライヴァルの件、でしょうか。

 まずタイトル回収ですが、これはLiella!メンバーではなく、クライマックスの学内ライヴ(挿入歌「Go!! リスタート」)で往年の神モブ(μ’sと虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に於ける)に劣らぬ行動力と統率力と技術力を発揮した神モブの1人、ヤエの口からもたらされた。代フェスの結果を承けて部室まで有志を率いて押し掛けてきた支持者たちに、かのんはいった;まだなにも結果を残していない、まだ1度も勝っていない、と。
 そんな、S2#1の恋の発言ともリンクする発言に神モブたちは、部活の入賞トロフィーなど飾ってある一角にLiella!を連れてゆく。そこにはまだ空間がたっぷりある。「仕方ないよね、去年は1年生だけだったんだし」とフォローされるが、それでも、と彼女たちはいう。まだ結果が──トロフィーや盾のように見える形で──残されていなくても、Liella!は結ヶ岡女子高等学校の希望であり期待であり、そうして<スーパースター>なのだ、とヤエはいう。
 第1期放送前に当初の『ハロー! ラブライブ!』から現在の『ラブライブ!スーパースター!!』に決定された旨『LoveLive! days!!』で発表されたとき(あれ、『G’s』だっけ?)、なにが「スーパースター、なんやろか?」と小首を傾げて、結局第1期ではそのあたり解決されることなく、心のずっと片隅でモヤモヤしていた件が、まさか第2期第03話という神回を宿命づけられた回で、よもやあんな風にさりげない台詞で回収されるとは思わなんだ。
 然り、これまでのストーリーで、多少危なっかしげな部分あったと雖も無難に、然れど折ある毎に、短い時間であっても、特にかのん(と恋)を媒介に普通科や音楽科生徒たちとの関わりが描かれてきていたからこそ、此度のタイトル回収が極めて自然な形で、すんなりと行われたのだ、とわたくしは思うておりますし、信じてもおります。

 新ライヴァルの話に移る前に、メイが隠れて行った差し入れの件。
 果たしてメイはいつ、ジュースやお菓子を入れた紙の手提げを学校アイドル部部室前に、あたかも献げ物の如くに置いていったのか? むろん、かのん&きな子が屋上で練習を始めてから千砂都が部室にやって来るまでの間、であります。どれだけの時間が経過していたのか定かではないけれど、精々十数分が限界でしょう。屋上で2人が行っていたのは練習開始前のストレッチです。身体をほぐす運動から実際の練習開始までそれ程の間隔があくとは、自身の経験を顧みても、ジムでの周囲の動きを思い出してみても、考えられません。為、精々が十数分の間隙ではないか、と申す次第です。むろん、根拠が薄弱であることはじゅうぶん承知しております。
 さて、千砂都が屋上に現れて差し入れがぶら下がっていた旨かのんたちに伝えた、それを承けてきな子がきっと1年生からに違いない、競争で屋上まで階段を駆けあがってきた可可とすみれに後輩たちの想いが詰まったジュースと説明してペットボトルを渡す千砂都……ちょっと待て。幾らアニメだからとて、幾ら学内だからとて、普通に受けとってなんの疑いもなしに飲むのか、平安名すみれ?
 否、責めているわけでも疑を呈すわけでもない、単にこの様子を向かいの棟にあると思しき科学室から双眼鏡で覗いていたメイが、「受け取ってくれた〜〜〜!」とアヘ顔を躊躇なく曝してジュースを豪快に飲んで「プハアッ」とやる姿、それをなんともいえぬ表情で眺める四季が、ああ可愛いな、と思うただけのこと。

 本話で本名(…………?)が明らかになった、第02話EDでは「謎の少女」とクレジットされていたウィーン・マルガレーテ。芸名であるにしても、センスの悪さを疑ってしまう。由来はウィーン出身のマルガレーテ・なんとかさん、なのだろうか。なんとかさん……すみれとちぃちゃん、出番だよ!
 それはさておき。
 「優勝候補、なんて騒がれてたけれど、あの程度のパフォーマンスならラブライブ! なんて大したことなさそうね」なんて意味の堂々たる嫌われキャラの台詞を吐いておりましたな。咨、これ、明確なヘタレ&ポンコツ化確定の台詞ではありませんか。過去に幾らでもいたぞ、同種の台詞を吐いて強キャラ扱いされたが、なにかの拍子に墜ちてしまったキャラクターたちが。
 しかし、まだ中学3年生。かなりイタイ人ですが、それ以上にヤバさを感じさせるのが、粘着質なストーキングぶりです。かのんの名前を呼ぶはいいが、なんのために呼んだのか? 呼んでみただけ、なんて反応はきっと誰も許さないだろう。名前を呼ぶぐらいは幼稚園児もできる。なぜ呼んだのか、それを片鱗程度でも説明しろよ。
 しかも、そのストーキングぶりは、殆ど犯罪者のそれです。いつの間にかかのんの家を突き止めているのみならず、かのんの部屋の位置まで精確に知っていたり、挙げ句にカーテンの隙間を狙って緑色の光点信号(モールス?)を送ってかのんを外へ呼び出すとあっては、たとい中学生であっても警察のお世話になったってまるでおかしくない。中二病全開キャラよりも遙かに現実的なHORRORを感じさせる狂暴凶悪なるサイコパスが、いよいよ本格的に『ラブライブ!』シリーズに登場か……。
 ……まぁともあれ、本格的登場を祝して極めて儀礼的に。代フェス優勝おめでとう、と無表情かつ棒読みでお伝えしておきます。あれ、ちょっと待って……-中学生ってラブライブに出られたっけ?
 サニパが学園ライヴに集中して、次回ラブライブ!で2連覇を達成すると宣言しているため、その登場は前期程多くはないと思われることから、必然的にウィーン・なんとかさんの言動とLiella!に与える影響は今後の注目ポイントといえるでしょう。この点は期待して良いか、と思われます。



 今更ながら気が付きました──台詞の書き起こしとタイミングのチェックをしていないだけで、こんなに早く感想文が仕上がるんだね。
 感想文の書き方、作業工程を見直す必要がありますな……。前述の台詞やタイミングの件を含めて、もしどうしても必要な補足があれば後日本稿に追記してゆくなり、別稿を著せば良いのですから。
 全く以て、やれやれ、であります。
 次回第04話は「科学室の2人」、メイと四季の加入回である様子。屋上で体操着姿で誰か(おそらくメイ)を手招く四季、かのんに手を握られて理性崩壊しそうなメイ、たこ焼きを前にしたちぃちゃんのご満悦な表情、などなど……気になります!
 ……そういえば今日の第03話は、今期初めてすみれが「ギャラクシー!」を発し、また自然災害の警報が表示された回でしたな。◆

第3432日目2/3 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第02話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 「杞憂」という言葉がある。古代中国にあった「杞」の国の人が、もし天が落ちてきたらどうしようと憂えたのに由来する語で、「取り越し苦労」の意味。
 然様、取り越し苦労であったようだ。『ラブライブ!スーパースター!!』第2期を最新の第2話「2年生と1年生」まで視聴した限りでは、「杞憂であった」と率直に申しあげられる。スタート前に様々懸念と会議の言葉を並べたが、それが裏切られたことに嬉しい思いを抱いている。
 が、問題はこれからだ。全12話の脚本がすべてアフレコ稿として仕上がっているわけではあるまい。中盤までは暫定稿が出来上がっていたとしても、肝心の〆はまだ、良くても粗稿の状態であろう。
 第1期第06話で──アフレコ・スケジュールへ間に合わせるための突貫作業であったのか──それまでの「良い雰囲気」で進んできた『ラブライブ!スーパースター!!』は途端、失速・難破座礁の黄ランプが点った。その悪夢はまだまだ拭い切れていない。
 第2期の物語は未だ出帆して間もなく、まだ海洋にさえ出ていない状態だ。われら視聴者(と書いて「ラブライバー」と読む)は徒にその展開に一喜一憂するのみならず、各エピソードの、シリーズ全体を俯瞰しての、クオリティと整合性と発展性を監督して事の推移を見守ってゆこう。



 本話にて桜小路きな子の体力ゼロ、運動神経に難あり、な描写があって、刹那既視感に襲われた方、あったのではないでしょうか。そうです、1年前──第1期での唐可可の体力ゼロ、運動神経絶望的な描写が、きな子のそれと重なり合う部分、多々あったのであります。
 しかし、そんな可可も、代々木アイドル・フェスティヴァルでかのんと初ステージ(もはや伝説の、クーカー!)を踏む頃には基礎体力もつき、ストレッチやジョギングも人並みには出来るようになっていた。千砂都のスパルタ・トレーニングとかのんのトレーニング・ハイに巧く乗せられた部分もあったでしょうが、短期間であれだけのダンスや発声力を身につけられたのは立派。可可のスクールアイドル愛とかのんへの崇敬にも似た感情が背中を押し続けた、賜物ともいえるでしょう。
 そんな可可と重なる部分あるきな子が、今後どのように化けてゆくか。非常に楽しみなところでありますが、では一体きな子はどのようにして己の体力不足を解消してゆくことになるか。──きな子向け特別レッスン・メニューが千砂都主導で組まれるかと思いきや、自分の体力不足を悲観するきな子に手を差し伸べたのは意外にも可可自身なのでした。
 われらはここで思い浮かべねばなるまいか;S1#04ですみれを勧誘する際、千砂都がかのんにどう口添えしたか、を。つまり、ショービジネスに於ける挫折を経験したすみれの痛みや悲しみや口惜しさを理解してあげられるのは、同じように挫折を経験したかのんしかいない、と、そういって幼馴染みを送り出したのでした。
 それと同じことが、此度のきな子と可可にもいえるように思います。
 体力ゼロ・運動神経も良くないきな子に、その面で何事かを助言できるとしたら、それは可可を措いて他にありませんでした。結ヶ岡女子高等学校に於けるスクールアイドル設立の言い出しっぺでありながら、自分自身はダンスのステップはおろか持久力も筋力も人並み以下な可可。が、可可は千砂都のトレーニング・メニューを着実にこなして、その成果を代々木アイドル・フェスティヴァルの初ステージで見事に披露しました。そうしてそれがモティベーションとなって、その後のステージでの堂々たるパフォーマンスにつながったのであります。
 そんな風にゼロからの成長を経験した可可だからこそ、きな子の落胆と焦慮に寄り添うことが出来たのでありましょう。そうしてそこには、初めて後輩を迎えた先輩としての優しさやあたたかさ、世話好き、わずかとはいえあっただろう優越感など感じられるのです。
 練習終わり、帰り際のきな子を呼び止めてでしょう、可可はきな子に1枚の紙を手渡します。それは、可可の台詞を借りれば、秘密の(練習)メニューを記したA4サイズ(たぶん)の紙でした。このときの2人、可可ときな子の会話です(04:59-05:21のシーン)。曰く、──
 可可;どうぞ。(上述の紙を手渡す)
 きな子;(手にして)強化メニュー?
 可可;可可が体力ゼロだったときの、秘密のメニューです。きなきなにあげます。
 きな子;──午前5時起床、柔軟の後ランニング3キロ……。すごく事細かに! ありがとうっす!!
 (2人のやり取りを部室から見ているかのん、恋、千砂都)
 かのん;でもムリしなくていいよ。あくまで自分のペースで!
 きな子;はいっ!
──と。
 練習メニューの内訳が知りたくなりますが、それは画面から読み取れる限りでは、以下のようになります。即ち、──
 ☆可可の☆/秘密の練習メニュ〜!!
 朝5時起床 まずは柔軟!
 ・ランニング 3㎞!
 ・基礎体力強化!
   腕立て伏せ   背筋
   腹筋      スクワット
 ・体幹トレーニング
   キープできる時間をのばせるように頑張ろう!
 ・発声練習
   ロングブレス・表情筋・滑舌それぞれ大切に!
 ・ストレッチ
   運動後のストレッチを忘れずに〜
     上半身
     下半身
     手首足首 しっかりと!
 体力づくりを/しっかり頑張ろう〜!!
──以上。イラストと中国語表記のパンダの台詞は省いた。その可愛らしいイラスト、可可の直筆は05分06秒のシーンで確認可能。
 実際にジムでパーソナル・トレーニング及びフリーで筋トレ等行っている身にいわせれば、この可可のメニューはそのまま、ジムに入会した運動初心者もしくは久々に身体を動かす人々向けのメニューになる。というか、これを毎日器械的に実行していれば早晩、体幹は鍛えられ、一定時間の体力保持は可能となろう。
 一点だけ難あるとすれば、漠然としか書かれていない体幹トレーニングだけれど、これを実際にやる場合にはきちんとしたジムで、トレーナー/インストラクターについてもらってトレーニングするのがお奨め。筋トレの本あまた市場に溢れると雖も本を頼りにトレーニングするのは自己本位かつ却って身体に悪い結果をもたらすだけの場合もあるので、止めた方が無難であろう。動画については本以上にピンキリであり、またわたくし自身が手本と思うに足る体幹トレーニングの動画と未だ出合えていないこともあり、ここでは私見を述べるのを控えます。
 とまれ、可可が差し出した練習メニューはきな子にとって最良の福音となっただろうこと、想像に難くありません。
 斯様に体力面や、単身来日/上京して一人暮らししているなど境遇の面でも似通ったところある2人ですが、既に画面に現れた部分で決定的な違いがあるとすれば、自室が整理されているか(荷物が片附けられているか)否か、でありましょう。
 来日/上京からどれぐらい日数が経過した後、2人の部屋が最初に描写されたのか──。これは検証を要すかもしれませんが、しかしS1#03時点で劇中時間は、入学から1ヶ月以上は経過しているものと考えてよいでしょう。それでも可可の部屋はダンボール箱が山積みであることを考えると……うん、ずっと勉強最優先だったから、こうした日常処理スキルが足りていないだけなんだよね。だからダンボール箱が減った様子がないんだ。或いは中国の家族からどんどん荷物が送られてきていて、片附けても片附けても追いつかないだけなのかもしれない──とは相当に好意的な見方であることは承知している。
 翻ってきな子は、元々荷物の少ない子だったのでしょうね、S2#01にて既に部屋は片附けられていて、生活環境はきちんと整えられていましたから。もしかするときな子は上京したばかりの頃(=荷物が北海道から届いたと思しいタイミング)は外へ出るのを恐れて、居住エリアの勝手がわかるまで遠出は避けて、引越荷物の整理に勤しむことを最優先していたのかもしれませんね。第1話冒頭で街を彷徨い歩くきな子の姿を思い出して、そんな風に考えたりしてしまうのであります。

・初めてLiella!新メンバーが発表された際、わたくしのなかで米女メイは鬼塚夏美と並んで第一印象の良くない、為に期待も低い人物でありました。が、やはり喋り、動くところを見ないと駄目ですね。メイはとっても愛らしい人物と、いまのわたくしの目には映っております。夏美は……まだ判断保留、というか、判断材料が殆どない状況です。但し彼女に関しては後日、ちょっと話題にしたいことがあるので、後日の別稿で述べるつもりでおります。
 その米女メイ、実は誰よりもスクールアイドルに憧れているフシがある(というか、ほぼ確定)。本話でその片鱗が明らかになりました。
 メイにはなにかしらの秘めた想い、抑えこんだ夢がある。だから、クラスメイトに誤解されて挫折しかけているきな子に、夕暮れの学校中庭の池端ベンチで「周囲を気にすることなく、自分がやりたいと思った夢(の実現)に突き進め」と諭したのでしょう(17:45-18:20)。正直なところ・初めてLiella!新メンバーが発表された際、わたくしのなかで米女メイは鬼塚夏美と並んで第一印象の良くない、為に期待も低い人物でありました。が、やはり喋り、動くところを見ないと駄目ですね。メイはとっても愛らしい人物と、いまのわたくしの目には映っております。夏美は……まだ判断保留、というか、判断材料が殆どない状況です。但し彼女に関しては後日、ちょっと話題にしたいことがあるので、後日の別稿で述べるつもりでおります。
 その米女メイ、実は誰よりもスクールアイドルに憧れているフシがある(というか、ほぼ確定)。本話でその片鱗が明らかになりました。
 メイにはなにかしらの秘めた想い、抑えこんだ夢がある。だから、クラスメイトに誤解されて挫折しかけているきな子に、夕暮れの学校中庭の池端ベンチで「周囲を気にすることなく、自分がやりたいと思った夢(の実現)に突き進め」と諭したのでしょう(17:45-18:20)。そのときの2人の会話を再現すると、こうなります。屋上の練習を見学に来たのか、きな子を呼び出しに来たのか、たぶん目的は両方であったろうけれど、曰く、──
 メイ;桜小路はさ、やってみたいと思ったんだろ。
 きな子;え!?
 メイ;だから入ったんだろ? 優勝目指してて、練習も厳しいって、知ってて入ったんだろ?
 きな子;それは……そうすっけど……。
 メイ;だったら、そのまま突き進んでくれよ。
 きな子;え?
 メイ;自分がやりたい、目指したい、って思ったことを信じてみろよ。周りの声なんて──気にするな。
 きな子;……んっ!
──と。
 正直なところ、メイのこの台詞にはグサッ、と来ました。突き進むことなく諦めた夢、突き進んで挫折や放棄した夢なんて、この年齢まで生きてくれば掃いて捨てる程ありますからね。これ、実はS1#01で可可がかのんにいい放った台詞(「好きなことをがんばることに、終わりなんてあるんですか!?」)と同じぐらいの生々しさと瑞々しさ、古傷抉られたような苦さがありますよ……。
 ──メイの台詞に後押しされて、きな子は一念発起した。このままじゃ駄目だ、と。SMAP「Take Off」の歌詞の一節でもありますが、わたくしは心の底からきな子にこの歌をささげたい。「このままじゃダメだ I gotta keep my head up baby / 今からでも遅くない 新しい自分探しに行こう / 過去の弱さに SAY GOOD BYE!!」 ……。
 きな子の一念発起は、裏を返せば、夢や憧れを実現するために前進することは茨の道と隣り合わせであることを覚悟したことでもある。最終的にこれが、新入生獲得のために練習メニューを削ったり、楽な内容にしていた──それゆえ1期生たちは内心もやもやを抱えていた──かのんたちを前に、これまでの練習メニューで先輩たちと一緒に夢に向かって突き進みたい、ときな子にいわせたのです(19:19-21:40)。
 メイが現時点で他人に知られないようにしているLiella!への憧憬の念がどのような形で先輩たちの知るところとなり、如何なる経緯、如何なる葛藤を経てLiella!加入へ至るのか。第4話から第7話までのどこかで”ある”と想定されるメイ加入回に、いまから期待です。一緒に四季も加入するのでしょうね。花陽と凛、真姫たち1年生トリオが加入する回へのオマージュみたいなエピソードになるのかなぁ。
 と、まぁ、殊程斯様にきな子にスクールアイドルとして活動してゆく、Liella!のメンバーとしてラブライブ!優勝を目指してゆく覚悟を固めさせたのは、かのんたち1期生に「目の前のことに気を取られ過ぎていました」(可可)といわしめたのは、直接的間接的にメイのお手柄というてよい。逆を返せばメイが如何にスクールアイドルを愛し、また夢を実現することの大変さと苦しみを思い知っていたかを、一端なりとも表した台詞に感じられました。
 メイは過去にスクールアイドル絡みでなにかしらの挫折や失敗、恥ずかしい想いを経験したのかもしれません。その容姿と言動ゆえにでしょうか、誤解されること多々あったことでしょう。それを垣間見させるやり取りが10:17-10:19、きな子がメイをスクールアイドルに誘った場面でクラスメイトたちが囁き交わしたシーンにありました。曰く、──
 クラスメイトA;え!? 米女さんが──!?
 クラスメイトB;スクールアイドル!?
 クラスメイトC;好きだったんだぁ……(うっとり)
──と。クラスメイトの姓名は不明、為、表記はNHK Eテレの字幕に従った。
 この前後のメイの表情が誠、観ていてまるで飽きないのですが、それはともかく。
 クラスからきな子を外へ連れ出してメイが、去り際にいった台詞と上のクラスメイトたちの台詞を重ねあわせると、メイの複雑な内心を想像することができませんか。曰く、──
 メイ;あと、みんなでいるときにスクールアイドルの話を私にしてくるな。私はスクールアイドルなんか興味はねーんだ。
──と。10:54-11:02のシーンです。
 この短いやり取りだけから察せられるのは、Liella!情報をきな子にレクチャーする程スクールアイドルに詳しいにもかかわらず、スクールアイドル好きを匂わせることなく過ごしてきたからこそ、きな子に誘われたメイを見て意外に思えども、やっぱり、と首肯できるクラスメイトたちが多かったのかもしれません。所詮、嗜好を完全に封印して外に出さないようにするなんてのは、不可能なのですから(実体験)。
 ──なかば友情なかば策謀できな子を説き伏せ、メイを勧誘するようお願いした(お膳立てした)四季については、メイ(とおそらく四季も一緒の)加入回で触れたく思います。

 ところで、──
 最後に現れて、かのんの名を口にした少女は誰ぞ? EDテロップには、「謎の少女」とあった。
 彼女は今後、どのようにストーリーに絡むのか?
 あの台詞の裏に隠された感情が「……澁谷……かのん……!」なのか、或いは「……澁谷……かのん……?」なのか、で今後のストーリー展開予想は異なってくるでしょう。
 前者であれば、かのんとは過去になにかしらの因縁あった人物と想定でき、それは小中学校で同窓だったというよりも結ヶ岡女子高等学校音楽科受験の折知己となった、と考える方が自然であるように思えます。
 後者であれば、かのんの評判と結ヶ丘の生徒であることは知っていても、その為人(容姿含めて)は知らない、という予想が立ちます。単に結ヶ丘女子高等学校の新入生同様、動画や地元の評判、ラブライブ!やスクールアイドルが好きな少女、というに留まり、ああした台詞が出ることにまるで違和感はない、ということ。われらが有名人をちらと見掛けたとき、それがあまり確信が持てないときの台詞も、大なり小なり似た風ではありますまいか。
 もしや──シリーズ初、2組目のライヴァル・スクールアイドルの登場か!?
 メインで登場するライヴァル的スクールアイドル(メインで)は、1シリーズ1組でなくてはいけない規定があるわけもなし。むしろそちらの方が或る意味不自然か。しかし作品世界に於けるキャラクターとストーリーの整理、という観点からすれば、1組であるに越したことはない(『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』はこの点、別扱いとなる)。
 μ’sにはA-RISEが、AqoursにはSaint Snowがあったように、Liella!にはサニーパッション(正式表記は片仮名で良かったんだっけ?)があった。もしサニパに替わる、しかも本土在住のライヴァル的スクールアイドルが必要となって「謎の少女」が登場したのならば、これは今後のストーリー展開に、大いに期待が持てるというものであります。Liella!との接触は神津島のサニパ以上に繁くなるでしょうからね。脚本の乱高下に起因する不安は脇に置いてでも、そう、これは期待できることのです。
 もしかすると、こんな構図が考えられているのでしょうか。即ち、サニーパッションはLiella!の良き相談役として、「謎の少女」は純粋にLiella!のライヴァルとして、それぞれの立ち位置を占める、と。同じ東京都民とはいえそうやたらと、1日かけて神津島から竹芝客船ターミナル-浜松町経由で原宿まで、サニパを来させるわけにもゆかないものね。
 それとも……第2期アフレコスケジュールの間でサニパを演じる声優2人(両方、或いはいずれか)のスケジュールの調整が難しくなったのかしらん。ゆえに新しくライヴァル的スクールアイドルを登場させる必要が生じた? まさか、とは思うが、完全否定できる論拠もない。もっとも、柊摩央役の結木ゆな、聖澤悠奈役の吉武千颯のスケジュールをオンオフ含めて掌握している人ならば、論破も可能だろうけれど。
 ──この「謎の少女」の立ち位置、Liella!との人物相関図が不明な現時点に於いて、上記はすべて妄想でしかありません。が、彼女の存在が『ラブライブ!スーパースター!!』第2期の、今後のストーリー展開にどんな活性をもたらすか、不安を心の片隅で飼い慣らしながらも楽しみにしたいのであります。



 第2話感想はお披露目までかなり難儀した。適宜改訂の筆を加えてゆく予感もしている。書きたいことが無尽蔵にあって、それゆえに収拾がつかなくなり、最初のお披露目から本稿(現時点での完成稿)のお披露目まで紆余曲折したのは、そのせい(ということにしておく)。
 取り敢えず第2話感想から派生するものとしては、エンディング曲(なにもかもが皆、可愛すぎる!!!)と鬼塚夏美についての考察、がある。鋭意準備と執筆を進めて、そう遅くないタイミングでお披露目できるよう心掛けよう。
 第3話「優勝候補」(2022年07月31日)の感想はもう少し集中して取り組めるといいな、と思います。まだなにも片附いていないから、実際のところどうなるかわからんけれど。◆

第3425日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第01話を観ました。〉2/2 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第1話「ようこそ! Liella! へ!」の感想、その続きです。
 推薦入学などは別にして、1月から2月は高校受験シーズンであり、3月は合格発表と2次試験の時期、でありましょうか。学校によっては(みくらの出身校がそうであったように)3月中に入学前のオリエンテーションを実施する高校もありますが、それは考慮に入れないとして。
 この3ヶ月(=3学期)の間、Liella!と結ヶ岡女子高等学校はどのような注目を世間から集めたのか。それに伴い、学校側からのアクションはなにかしらあったのか。まずはそれを考えたい。
 受験生が最後の追いこみに必死になっている時期、Liella!と結ヶ岡女子高等学校への注目のされ方は、第1話での新入生やLiella!メンバー就中葉月恋の台詞からおおよその輪郭を再現することが出来そうです。即ち、──
 葉月恋;普通科が3クラスに増えた分、今年は音楽科の設備を普通科に開放することに決めました
 嵐千砂都;新しい部活も増えるんでしょ?
 葉月恋;ええ。いままでよりも多様な活動を行ってもらえたら、と。とはいえ、他の高校に較べたらまだまだこれから。部員集めはみんな、苦労しているようです。(13分43秒〜14分03秒)
──或いは、──
 桜小路きな子;優勝候補!?
 米女メイ;この学校に来てそんなことも知らなかったのか? (Liella!は)今年のラブライブ!は決勝進出間違いなし、っていわれてんだぞ。Liella!は結ヶ岡の期待の象徴、スターなんだよ。(16分13秒〜16分25秒)
──など。
 ちょっと横道に逸れますが、──ちなみに米女メイは、入学前にきな子が結ヶ岡女子高等学校の前の歩道で出会った子。スクールアイドルのファンのようで、Liella!のメンバーについてもよく調べている様子です。Liella!が練習する屋上を遠くから見るその姿は、外見に比してすっかり「乙女」で、その属性、どことなく黒澤ルビィを思わせる部分、無きにしも非ずであります。自己紹介コメントに曰く、「スクールアイドル始めるのも最初は気が進まなかった。そういうの向いている方だとは思わなかったし。も、もちろん好きだったよ。輝いているし、ステージ上のスクールアイドルはみんな笑顔で、夢があって、だから私も……って」と。ますますルビィちゃん……。然れどオープニングではとっても愛らしい表情を見せるのですよ、この米女メイ。是非ご確認いただきたく存じます。
 では、本題。
 3クラスに増えた、ということから、以下2点の作中現実が想像されます。つまり、①新設時の普通科は1〜2クラスであった、②新年度の入学生は110名程度である、ということ。②に関しては1クラス約35名という計算を基にしております。いずれにせよ在校生の数は一気に倍以上になったことは間違いなさそう。
 S1にて恋が「来年の入学希望者も増えてきている」旨発言したのは、ラブライブ!東京大会前のことでしたので、その頃から既にLiella!の知名度、必然的に結ヶ岡女子高等学校の知名度も広まっていたのでしょう。受験を控えたJC3のなかには進学希望校のリストに、結ヶ岡女子高等学校を載せる者も相応数あったであろう、と考えられる。
 それが東京大会でのLiella!の躍進と賞歴、その後の注目のされ方が後押しになって、結ヶ岡女子高等学校が受験願書の募集を開始するやその数、前年比を遙かに上回り、合格枠の設定と見直しがされて(会場問題については後述)無事、入試も合格発表も終わり、クラス数は昨年よりも増えた、という流れであったろう。
 もしかすると願書を提出したJC3のなかには、(ラブライブ!優勝──”LoveLive! overall victory”──の)サニーパッションのインタヴューに触発されて、結ヶ岡女子高等学校の受験を決めた人もあったろう。Liella!が次回ラブライブ!の優勝候補と取り沙汰されるようになった要因の1つに、サニーパッションの発言が影響していることも無視は出来まい。
 これに関しては、驕った発言のすみれを制すようにして他ならぬ澁谷かのんの口から、「これは、優勝したサニパさんたちが(インタヴューでLiella!の名前を挙げてくれたから)」と出た台詞からも想像できましょう。
 このあたりの会話を、再現してみます。03分16秒〜03分51秒の、屋上でのシーンです。可可の中国語の台詞部分は省いて、曰く、──
 可可;フォロワーが倍になりました〜。
 かのん;ええっ!?
 可可;一部のサイトでは、Liella!は次回の優勝候補とも──
 すみれ;ま、当然よね。
 かのん;違うよ。これは、優勝したサニパさんたちが──
 (神津島でのサニパ、優勝インタヴュー)
 聖澤悠奈;始めに、この大会に参加したすべてのスクールアイドル、そして、応援してくださったすべての方々に敬意を表したいと思います。
 柊摩央;いちばん強かった相手? みんな、素敵なグループでした。
 悠奈;でも、私たちがいちばん心踊ったグループは……
 (サニパ2人、目を合わせて)
 悠奈&摩央;Liella!です!
 (結ヶ岡女子高等学校、屋上)
 可可;ありたがき(ありがたき)幸せ〜!!
──と。
 こうした連関が作用して、結ヶ岡女子高等学校は新たに1年生を100人以上迎え入れることが出来、おそらく来年度の存続は約束されたも同然、と申せましょう。斯様にLiella!と結ヶ岡女子高等学校は早くも一心同体、良くも悪くも運命共同体となったのであります。シリーズ構成が途端に破綻して、或いはとち狂って、沈没必至の泥船とならぬことを祈ります。
 上記に連動して、後輩を迎え入れたかのんたちの喜びぶりが第1話でもっとも鼻の下を伸ばした場面となりました。喜びと喜びと、……という語彙不足に過ぎる発言はともかくとして。
 後輩を迎える、とはどれだけ喜ばしいものであったか。残念ながらわたくしは高校時代のそうした感情を殆ど忘れている者だけれど、此度第1話での、きな子を前にしたLiella!の弾むような喜びはあったかな、と疑問です。
 それはさておき。
 かのんたち5人が入学前のきな子と会ったときの、あの喜び様、そのはしゃぎ方ときたら! 単に、進級して自分たちの下ができた、という単純なものではない。感慨一入というに相応しい反応でした。
 結成のきっかけなどは別として──学校がなくなるかもしれない、そんな危機感を背景にLiella!は結束を深め、パフォーマンスの向上をひたすら自分たちに課して、活動してきたのでした。その結果の東京大会2位である。──廃校という『ラブライブ!』シリーズのお約束(テンプレ)が放送中葉で突然、突きつけられたことで視聴者間では侃々諤々、一部で紛糾しもしたけれど、Liella!の物語は(同様に廃校阻止に成功した)μ’sの物語以上に胸アツな展開になりました。終わりよければ……の類ではありますが、これが必然的に入学希望者/受験者/新入生の増加につながったことは祝って良いことでしょう(千砂都;新入生にファンがいっぱい……。恋;びっくりです……。11分57秒〜12分01秒)。
 そう、Liella!は優勝こそ逃しはしたものの、その圧倒的な歌唱とダンスで人々の心を捕らえてファン層を拡大し、かつ前述のサニパの発言も後押しになって、新入生が増えた=かのんたちにしてみれば、実現が危ぶまれていた後輩の誕生が現実になった。
 常識と良識と人望を備えたかのんと恋が制御役になったであろうこともあり、驕り高ぶり唯我独尊に走ることことこそなかったけれど、後輩の誕生は結ヶ岡女子高等学校の存続が決定したからであり、その存続にLiella!のラブライブ!大会での活躍が一役買っていたことに異論を呈す者は、メンバー内にも在校生にもまさかあるまい。況んや視聴者をや。
 「廃校阻止」という、或る意味これ以上ないドラマティックな物語を経て実現された後輩の誕生……一時は不安視もされていたそれが、いまや現実のものとなった。Liella!メンバーにしてみれば、たぶん他の在校生以上に喜ばしい出来事だったのでは?
 そうしてその後輩たちの数は、思うたよりも多かった、と考えられます。それを端的に裏附けるのが、上にも引いた恋の、「今年は普通科が3クラスに増えるので、音楽科の施設も開放しようと思っています」てふ台詞といえるでしょう。
 そんな学校存続/後輩誕生を喜ぶLiella!メンバーが、入学前にふらふら校内に入りこみ(Liella!の練習の掛け声に導かれてのことですよ)屋上までやって来たきな子を前にした場面。その台詞がこちら、06分32秒〜07分28秒のシーンです。曰く、──
 きな子;(扉が開いて倒れる)はにゃ!
 5人;(物音と声に気附いて)ん?
 きな子;……は……しまった……。
 (千砂都以外の4人、振り返る。千砂都は扉と正対する位置に立っていた)
 かのん;あなたは……。
 きな子;えっと……。
 かのん;もしかして、新入生!?
 きな子;あっ、えっ、えーっと……(目をかのんから逸らし、片手をあげて)はい……。
 5人;うわーっ!!
 (可可、かのん、すみれ、千砂都、恋、きな子に詰め寄る)
 可可;後輩? 後輩デスよね? 可愛いデッス〜。
 (壁に背中を付けて怯えるきな子。中国語できな子に迫る可可。割って入るすみれ)
 すみれ;待ちなさいよ。なに先に話しかけているのよ!?
 恋;まずは、生徒会長のわたくしが──
 千砂都;もしかして、スクールアイドル部に入部希望?
 きな子;え……スクールアイドル?
 千砂都;だって、新入生でしょ? スクールアイドル部はれっきとした部活だよ?
 かのん;(千砂都からきな子に目を移して)この子が……。
 きな子;え!?
 恋;(目を拭いながら)ありがとうございます……。
 千砂都;ずっとこの日を待ってたよ……。
 可可;一緒に光を追い求めましょう。
 きな子;ええっ!?
 すみれ;素直じゃない子ねぇ。
 かのん;(目に涙を溜めて)ようこそ、Liella! へ!
 きな子;違う。違うっすよ〜!!
──と。
 そうしてもう1つ、きな子と、彼女を家まで送ることになったかのんのやり取りです。もうこの場面、かのんちゃんが悶絶するカットがもうたまらなく可愛くて、スクショしたい欲望に駆られましたよ。08分19秒〜09分19秒のシーンです。曰く、──
 (桜舞う校舎前にて)
 かのん;あ、名前、きな子ちゃん、っていうんだ。
 きな子;はい。桜小路きな子と申します。都会に憧れてやって来ました。
 かのん;私、かのん。澁谷かのんっていいます。
 きな子;(急に真面目な顔つきになり)よろしくお願いします! かのん先輩!!
 かのん;──えっ!? ……かのん……せん……ぱい……!?
 きな子;はい、先輩!
 かのん;(身悶えしながら)そっか〜、私、先輩か〜。
 きな子;はい!
 かのん;そっか〜、え〜? 先輩〜? え〜? 私が〜? フハッ!
 きな子;はい!!
 かのん;え〜?
 きな子;はい、先輩です!
 かのん;え〜? (かのん、きな子の前に戻ってきて)あの〜、もう1回……。
 きな子;え?
 かのん;もう1回、呼んでくれる? (期待に満ちた眼差しできな子を見る)
 きな子;──かのん先輩!!
 かのん;くあ〜! なんかムズ痒いけど、いいよね〜、その響き! さあ、行こう! 先輩の家も案内しちゃうぞ〜! レッツ・ゴー! アハハ!
 (得意満面に歩いてゆくかのんの後ろ姿を茫然と見送りながら、)
 きな子;変わった人っすね……。
──と。
 「変わった人」、確かにそうかもしれない。が、きな子よ、いま君の目の前にいる人物がシリーズ屈指の<たらし>であり、やがてその軍門に降る未来しか君には待っていないのだ。とはいえ、きな子もなかなかの持ちあげ上手でありますな。ちょっと羨望してしまうことであります。
 そうして改めて、澁谷かのん役に伊達さゆりがキャスティングされたことの〈幸い〉を喜ばずにはいられないのです。彼女なくして澁谷かのんに魂がこもることはゆめ無かったはずでありましょうから。
 さて、では最後にもう一丁、「先輩」かのんのドヤ顔を一瞬ながら愉しめる場面を。自宅喫茶店のいつもの席、妹ありあとの会話です。09分30秒から
 ありあ;(姉に)新入生の方?
 かのん;(ありあを見て)私、「せん・ぱい」だから。(ドヤ)
 ありあ;うえ……。(顔を刹那しかめて立ち去る)
──と。
 いいなぁ、こんな姉妹のやり取りが交わされるなんて、第1期開始当初は想像も出来なかったものなぁ。
 ──Liella!が後輩を初めて前にしたときの各人の反応、「先輩」呼びされたかのんの1年前と同じ人物かと目を疑いたくなる態度を並べてみました。
 やっぱり同じ「先輩」呼びされるのでも、中学や会社とでは全然その喜びの度合いや濃度っていうのは違うものだったのかな。高校のときって。加えて女子と男子とではその喜びの性質も異なるんだろう。
 先輩、といえば、きな子が部室で、道に迷った旨白状して実は東京にまるで馴れていないことが彼女の言動から発覚したときのLiella!メンバー、殊すみれと可可の表情の変化にわたくしは思わず目を引かれました。すみれの場合のそれは、彼女の内的成長を見た気がしました。
 可可の場合のそれは、同じように一人で東京にやって来たきな子への親近感、だったでしょうか。可可は帰国問題が第1期の終盤で発覚しました。結局それは、ラブライブ!東京大会での活躍を上海の家族から認められて猶予が付いたようですが、依然異国の地に彼女が一人住まいしていて、そばに肉親がいない環境であることに変わりはない。そんな自らの境遇ときな子の境遇が重なって見えたがゆえの、慈しむ様な笑顔であったのかもしれません。
 新たに後輩を迎えた喜びは各人それぞれで、でもそれは決して単に進級したからというのみでなく、学校を存続させることが出来たがゆえのものであったこと。そうしてLiella!がそれに一役買った形になり、新入生の中には米女メイや名前を与えられていないJK1が多くいたのだ、ということは、繰り返しここで触れておいて良いことでありましょう。
 あ、OP「WE WILL!!」と挿入歌「Welcome to 僕らのセカイ」のこと、書くのを忘れてしまいました。こちらは別の機会にしましょう。
 ──以上、第2期Blu-ray全巻予約をどこでするか、真摯に検討中のみくらさんさんかでした。◆

第3423日目2/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第01話を観ました。〉1/2 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 遂に、というか、ようやく、というか、ともかく始まったのである。今年いちばん待ちかねたアニメ作品、『ラブライブ!スーパースター!!』第2期が。過去にいろいろ批判、苦情、懸念等々述べることあったけれど、さて、そうした<疑惑>は一掃されたか? 払拭は出来たか?
 結論をいうてしまうと、一掃されぬまでも払拭は或る程度までされたかな、と思うている。
 他の作品もそうだが、第1話を観て今後の視聴を続けるか考えることにしていた。殊『ラブライブ!』に関しては『ラブライブ!サンシャイン!!』というわたくしのなかで著しく評価も好感度も下落して未だマイナス値の作品があることで、尚更見極めが必要だったのだ。
 そうして、その懸念は、まずは払拭されて、このあとも観てゆこう、という気持ちになった。やはり動いて喋っているところを観ないと、推せるかどうかの判断は、批判の矢を収めて期待に転じるか否かの判断は、出来ませんな……。



 第1話は桜小路きな子がスクールアイドルを知り、Liella!に勧誘されるお話でした(入部するまで、ではない)。
 北海道から高校進学を機に東京へやって来たきな子。なぜ結ヶ岡女子高等学校だったのか。きな子は如何にして結ヶ岡女子高等学校を知り、地元ではなく東京の高校を受験したのか。真意は明らかでない。いまはまだ「都会の生活に憧れて地元ではなくわざわざ上京してきた」という彼女の台詞を信じるよりないでしょう。
 第1期第12話での東京大会ステージが話題になった、というよりは、第1期終了から第2期開始までの時間軸のなかでサニーパッションが優勝者インタヴューを神津島で受けた際、いちばん心に残ったスクールアイドルはLiella!でした、と話す場面が動画やSNSで拡散されてその知名度・その活躍は全国区になったであろうこと、中国上海に住む可可の家族が知っていることも踏まえれば疑いなきこと。
 実際、結ヶ岡女子高等学校に新しく1年生として入学してきた生徒のなかにも、Liella!のことを知っており、その活躍を羨望視する人がいる様子。その最右翼は、後にLiella!に加入する、とされている赤髪口悪の米女メイを措いて他にありません。
 メイは入学以前からLiella!のことは知っていた。
 自宅を捜して東京を彷徨うきな子が偶然にも結ヶ岡女子高等学校の前に至ったとき、向かいの歩道から隠れるようにして校舎を見、屋上でLiella!が練習していると想像して、蕩けたような表情をしていました。
 入学からしばらく日が経ったと思われる或る日、きな子にLiella!がどれだけのグループなのか、結ヶ岡女子高等学校にとってどのような存在なのか、と説明していました(「ま、私はよく知らねーけど」と〆括るあたりは、シリーズ専攻作品の同じ赤髪のこのツンデレを)。
 スクールアイドル部の部員募集ポスターを見入っている自分の後ろに現れたきな子から、「かのん先輩からスクールアイドル部に誘われたっす」と聞かされたときの反応は、まさしく彼女にとってLiella!が、それを構成するメンバーが崇め奉るに等しい存在であったことを意味しましょう。終盤のLiella!のステージリハーサルを垣間見てしまったときの台詞からも、それは窺えます。
 そんなメイであれば、結ヶ岡女子高等学校を受験する理由は明白。が、きな子は?
 どうしてわたくしがこんなにまで、きな子が上京してきた背景と経緯等々を深く掘りたがるのは、──いやぁ、正直に白状しちまいますが、動いて喋るきな子を見た途端、「この子、おもろいやん!」「この子、かわええわぁ」「この子、推すわ!」となった次第でありまして。
 当初、公式サイトの自己紹介や動画で気になって気になって(≒気に障って)仕方なかった口癖、「〜っす」も実際に本編で見てみると、さして気になるものではなかった。考えてみれば、われらの世代は「〜っす」って普通に口癖だったこともあるから、そんな風に感じたのかな。『LLS』の国木田花丸の口癖「〜ずら」が、自分も子供の頃伊豆にいたから耳馴染みで懐かしく聞いていたそれだったので、同じような感覚だったのかもしれないね。
 きな子の上京に関してずいぶんと書いてしまったようなので、ここらで止めにしたく思いますが、その前にこれだけ。──きな子はどうやって結ヶ岡女子高等学校を受験したのか。オンラインで高校受験できる時代なの、現代って? 受験のために東京に出て来るのが常道だろうが、北海道から出たことがないと推測される彼女がそれを行ったとは、どうにも考え難い。まさか結ヶ岡女子高等学校、Liella!の活躍で知名度向上させたのを良いことに、全国各地から生徒を集めるために北海道にも受験会場を設置した? いやぁ、それもどうなんでしょう。残念ながらわたくしの周囲には高校受験を控えていたり、その苦労から解放されて間もないような子を持つ親がいないので、昨今の高校受験事情を調べてみて、この〈きな子がどうやって結ヶ岡女子高等学校を受験したか〉問題に或る程度までの決着を付けたく思います。
 さて。話題を変えましょう。
 第1話はきな子を中心に進んだので他の新メンバーに尺が振られることは余りなかったけれど、それでも個々に爪痕は残したようであります。メイに関しては既に上で述べてしまったので、残る2人、若菜四季と鬼塚夏美を見てみましょう。
 若菜四季;公式サイトの紹介記事からは、この子がいちばん物静かそうで、クールな印象を受ける……が、第1話を終わったいまはいちばん印象の変わった子となりました。クールではあるのだが、たぶん物静かではない。というよりも、可可と同じぐらいに、ぶっ飛んでる子。そうして、可可と同じぐらいに手先が器用な子。
 根拠はこうだ、ワトスン。スクールアイドルに誘われたがLiella!の凄さを人から聞いて入部を迷うきな子に、鬼塚夏美がアドヴァイスを与えている。その隣りに突然、なぜか白衣姿で現れて、自分の左足首ときな子の右足首を謎のアイテムで固定する。本人曰く、「足関節神経ブロック」だそうですが、要するに二人三脚で互いの足首を結わったハチマキ代わりです。その直後から2人は階段を、殆どあり得ぬぐらいの全力疾走で駆けあがってLiella!が練習している屋上近くまで疾走する。その勢いがどれだけのものかといえば、階段を3階まであがったところで「足関節神経ブロック」を切り離されたきな子が、雄叫びをあげながら止まること出来ぬまま(器用に踊り場を曲がり、屋上への扉前を90度ターンして)走ってゆく、というあたりからもご推察いただけましょう……。20分57秒から21分06秒までのシーンです、──。
 (「足関節神経ブロック」を切り離されたきな子、後ろの若菜四季を振り返りながら)
 きな子;若菜さーん!
 四季;ファイトー。
 きな子;止まれない〜! と〜ま〜れ〜な〜い〜っ!!
 (階段を駆けあがってゆく)
 きな子;のわああああ! (4階到着、屋上への扉前で90度ターンして屋上へ飛び出す)アンギャー! ぐわ〜、死ぬう……。
──と。そうして顔をあげたきな子の前にいたのが、きな子の到着を待ってステージリハーサルを始めようとしているLiella!というオチ。
 ……なんだろう、この四季の得体の知れなさ。一人遊びが好き、ミステリアスな雰囲気で感情を口にすることは少ない、と公式からアナウンスされ、かつ自己紹介コメントでも「メイからは、発明や実験が得意だねといつも言われている。スクールアイドル部以外に科学部にも入っているし」とはいっているだけに、此度の二人三脚用「足関節神経ブロック」は彼女らしさが最初に視聴者に伝わるアイテムとなって、良かったのではないでしょうか。
 そうしてなによりも……あんた、かなり体力と持久力あるな! 凛ちゃん、曜ちゃん/果南ちゃん、愛さん並のアスリートっぷりではないか。むろん、この場面だけで判断するのは危険だけれど(こんな彼女もまさかのポンコツ堕ちの可能性があるのだ)、千砂都の体力と可可の物作りの両方を備えたキャラであるならば、今後の活躍が楽しみだ……脚本の不安はあるが、それはさておき。
 もう1点、加うるところあるとすれば、第2話予告、か。ランニングするきな子の後ろにチラリと四季の姿が映る。かなりスムースに横移動していることから自作のマシンにもで乗っているのだろうか。否、そればかりではない。同じ場面で四季が装着しているゴーグルの如き、どこかの映画で見たようなメガネ(?)が気になって仕方がない。んんん、なんだかこの子、マッドサイエンティストみたいだな。似合っているし、可愛いから良いけれど。
 鬼塚夏美は「オニナッツー!」にどうしても拒絶反応が起こるのだけれど、やがてすみれの「ギャラクシー!」と同じように聞き流すことの出来る騒音となってゆく日が来るのだろうか。自己紹介からしてもう受け入れられない要素がたっぷりな彼女だったが、今後多少なりともその印象がプラスに転じることを期待したい……きな子に諭していた台詞だけではまだその印象、プラスには転じないのだ。良い台詞、いってるんだけれどね。曰く、「向いていないことを幾ら頑張ったって、ダメなものはダメです。でも、やってもないのに向いているかどうかなんて、わからないでしょ?」と。
 まぁ、彼女に関しては今後の展開を静観して、改めて述べてゆくことに致しましょう。──それにしてもきな子がエルチューバー(Ltuber)を知っていたことに吃驚です。



 遂にかのんたちも先輩になった。その喜びの程(「先輩」と呼ばれて身悶えるかのんちゃん!!!!)、ちぃちゃんの謎発言、相変わらずの可可とすみれの掛け合い(可可の帰国問題を含めて)、OPと挿入歌など、Liella!メンバーに関してお話ししたいのですが、それはまた改めて。本稿を改稿するか、別稿にするかはまだ決めていません。
 現時点でいいたいことはただ1つ。第2期は思ったよりも良かったので、やっぱり継続視聴することに決めました。
 第2話「2年生と1年生」は来週07月24日(日)19時から放送予定。◆

第3422日目 〈すべての未来をこの子に託して──澁谷かのん嬢への頌歌(オード)。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 澁谷かのん、という女の子がいる。新設されて半年足らずで早々に廃校の危機に遭うもどうにか回避できた、東京都渋谷区(推定)にある結ヶ岡女子高等学校普通科の1年生──否、2年生、であったな。スクールアイドルLiella!のリーダーを務めている。
 かつてここまで心を奪われた女の子はいなかった。かつてここまで未来への希望を重ねられる女の子はいなかった。かつてここまで心底愛おしく思える女の子はいなかった。
 表題通り、『ラブライブ!スーパースター!!』の主人公、澁谷かのん嬢への頌歌である。
 これまでの『ラブライブ!』歴代主人公のなかでも類例なきイレギュラー中のイレギュラー。いい換えればシリーズ史上最強スペック&初出スペックを誇る女の子が、この澁谷かのんであった。第1期放送中に作成していたメモを、精査や並べ替え等せず転記すると、──

 01;作詞・作曲の両方に優れた(経験ある)主人公は、かのんが初。グループ全体でも然り。
 02;楽器が演奏できる主人公は、澁谷かのんが始めて。
 03;歌唱力のレヴェルの高さは歴代主人公を遙かに引き離して、もはや孤高の極みにある。
 04;S1#09から推測できる様にフランス語・中国語他の語学に堪能(※)。祖母はスペイン人、父は翻訳家(こちらがハーフか?)なる設定が影響するか。勿論こんな主人公、いた例しがない。【※但しS1#01での可可の言葉が理解できなかったことから、読解に支障なしと雖も会話は不得手なパターンかもしれぬ。】
 05;S1#01にて物語が始まる以前に挫折を経験している主人公は、シリーズ初。
 06;メンタルの弱さとヘタレ度はシリーズ最弱クラス。これは太鼓判が押されるはず。
 07;自発的にスクールアイドルを結成していない主人公は、かのんの前に前例なし。
 08;幼馴染みではない人物と初ステージを踏んだのは、かのんが最初。
 09;やさぐれ度はナンバー・ワン。というか、他シリーズにそんな主人公、いなかった。
 10;スペイン人の祖母を持つクォーター。前述したようにおそらく父親がハーフか。
 11;主人公がグループの名付け親になったのは、意外にも『ラブライブ!スーパースター!!』が初めて。
 12;キャストが一般公募で選ばれており、これがデビュー作となっている件(そうしてこれが結果的に、大成功であった)。

──以上。
 これらの要素をわれらは放送開始前の雑誌や公式サイトからの情報で薄々察し、テレヴィ・シリーズが回を重ねるにつれてまざまざと見せつけられることになる。その度毎にかのん嬢への気持ちは昂ぶってゆき──本当に10数年振りでアニメの同人誌にまで手を出してしまったぜ。
 それはさておき、いや、ホント、こんなに現実味と人間臭さがてんこ盛りなキャラクター、というか主人公はこれまでの『ラブライブ!』にはいなかったですね──穂乃果は音ノ木坂の生徒のみならず全国のスクールアイドルを短時日で掌握、動員し、時に天候まで操ってしまう殆ど<神>の領域にある人だった。千歌は廃校を喜び大会ルールを無視する非常識人で、歩夢は高咲侑への依存だけで生きているような超弩級の(偏った)愛の持ち主であった──、一面しか見ていぬあまりに偏向した意見とは承知している。
 では、この歴代主人公たちと較べて澁谷かのんとは、果たして如何なる人物か。……というところで話は上述したシリーズ最強スペック&初出スペックの持ち主、という話へ戻る。
 やはりかのんを特徴付けるのは、音楽面とメンタル面だと思うのですね。上の箇条書きでいえば、音楽面は1から3,メンタル面は5と6,9、であろうか。
 もう既に当該回の感想で検証等は済ませているはずなので、ここでは繰り返しを省くが、これらを念頭に置いた状態でシリーズの先行3作品を思い出す、もしくは視聴してみると、澁谷かのんという主人公のイレギュラーぶりが際立ってくることだろう。
 これまで作詞はしても作曲は他の人或いはその逆もしくはなにもしない(できない)、楽器の演奏経験は他のキャラクターで分担する、という構図が固まっていた。然るに『ラブライブ!スーパースター!!』ではそれらがいずれも皆、主人公たる澁谷かのん嬢に委ねられていたのだ。これを知ったときの軽い衝撃、……どなたか一半なりともご理解いただくのは難しいだろうか。
 そうしてメンタル面で付言、或いは言を新たにしていうことあるとすれば、こんな感じになろうか。曰く、──
 思えばLiella!の物語は、かのんが原宿の裏道で思わず口ずさんでしまった自作の歌を、可可が耳にしたことから始まった。かのんの歌声に惚れた可可がめげることなく彼女をスクールアイドルに勧誘していなければ、きっとかのんは、結ヶ丘女子高等学校音楽科の受験に失敗してやさぐれたまま、また小学校時代の合唱コンクールでの気絶や前述の受験失敗から来るトラウマを克服するための第一歩を踏み出せぬまま高校生活を過ごすことになったことであろう。Liella!の物語は、『ラブライブ!スーパースター!!』第1期の物語は、他ならぬかのんが過去の呪縛を断ち切って新しい自分へと生まれ変わってゆく物語でもあった。
──と。
 また、これは当該回感想文の繰り返しになることでもあるが、当時といまとでは、これを書いているわたくし自身の役割がまるで違う。つまりわたくしはこの間に、人の親となったのだ。生まれたわが娘を見るが如く澁谷かのん嬢を見れば、この子がどれだけ親の愛情を存分に注がれて成長してきたかがよくわかるというものだ。穂乃果の家庭も随分とあたたかで、老舗の娘らしくきちんと躾けられて育てられたかを窺わせる場面があったが、かのんに於いても同様なことがいえるのだ。
 それが殊によく現れていたのがS1#09「君たちの名前は?」のBパート、かのんが新曲の作詞を進めると共にグループ名を考える一連の場面だ。彼女は作業を進めるにあたって、当たり前のように父親の書斎に入り、各国語の辞書を持ち出して、扉を出たところで出喰わした父親に向けて(それまで家庭内の描写では観た覚えのないぐらい)満面の笑みを浮かべるのだ。
 挿入歌「Dreaming Energy」が流れている場面なので当然かのんの台詞も(これまた当然……『ラブライブ!』世界のお約束として……)父親の台詞もないが、ほんの数秒のこの場面にかのんと家族の普段からの関係性を垣間見るのである。あれはね、父親を避けるとか毛嫌いとかしていたら絶対に出ない描写であり、普段からのコミュニケーションがきちんと成立していて、父親への愛情や尊敬が根っこにあるからこその笑顔だ。このさり気ないシーンがいつまでも心に残っているのは、なぜか? 父娘の関係の美しさがここにあるからだ。ヲタク的な意味でなく、人の親として、わたくしは澁谷父子の関係を羨ましく、憧れのように思う。
 同様のシーンは、S1#03「スクールアイドル禁止!?」にもある。可可から託された歌詞ノートを基に、後に「Tiny Star」に結実する歌詞と曲を作るかのん。それを行っているのは、おそらく閉店後の自宅喫茶店のカウンターである。カウンター内には母親がいて、食器を洗っている。カウンターで作業している娘を見て母の曰く、「宿題? そんなわけないか」と。そのときかのんは、慈母のようなやさしげな表情で、「ううん、宿題だよ。友だちからの」と答えるのだ。
 さり気なくも普段の娘の行状をよく知る母親ならではの台詞であったが、それをかのんはやさぐれて返事するのではなく、慈母としかいいようのないやわらかな顔で親に応じる。短い間でのかのんの内的成長の見事さを讃えるべきだが、ここではむしろ母と娘のやり取りのなかに埋めこまれた情趣を汲み取るべきだろう。これもまた家庭内コミュニケーションが普段から確立されていないとできぬやり取りであるに相違ない。
 昨今、人が感情を抑えきれず、或いは孤立して話す相手もないことは原因の1つと考えられる犯罪が目立って跡を絶たない。けれどもわれらが澁谷かのん嬢が斯様な犯罪に手を染めることも、人の気持ちを軽んじたり弱みにつけ込んでマウントを取るような行為に走ることも、ないであろう──澁谷家がきちんと、かのんのみならず次女ありあも育て、躾けてきたことがじゅうぶんに見て取れるがゆえに。うん、人間形成の根幹は親の愛情と教育であるな、とつくづく感じさせられたことである。
 大袈裟かもしれないけれど、ここでは省いたかのんとありあの関係も含めて、『ラブライブ!スーパースター!!』から一種の家庭論、子育て論を構築することはじゅうぶん可能であるようにわたくしは考えているのだが、如何であろうか? もしラブライバーのなかに子を持つ親がいるならば、同様に「是」とする人も多いと思うのだが……。
 ──書き終えてみればかのんと両親の関係に比重が掛かってしまい、アンバランスなものとなってしまった。ご寛恕願えれば幸いである。
 わたくしは澁谷かのんに未来の希望を託す。われら夫婦はそれがゆえにこそ、その名前をもらったのである。◆

第3417日目2/2 〈重度の幼馴染み病患者 → Liella! になくてはならぬ船頭役、嵐千砂都について。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 ──顧みれば嵐千砂都は、第1期放送開始前からミステリアスな存在であった。果たして他のキャラクターに較べて一体われらは彼女のなにを、どこまで知っているのか。
 知るところあるとしても、公式からの発表に基づくものではなく、状況から想像される様々なピースを掻き集めてムリヤリ整合性を付けて創りあげたものでしかあるまい。
 果たして彼女の戸籍抄本はどのような内容か。下に書き出してみたが、一目穴だらけであることが注目される。曰く、──
 嵐千砂都、現住所;東京都・以下不詳、出生地:不明、両親:不詳(職業共)、兄弟:不明。生年月日;2006年02月25日(生年は推定。令和04年07月現在;16歳)、血液型;B型。
──以上。
 顧みれば嵐千砂都は第1期放送開始前からその人物像、未知なる部分が多かった。
 新シリーズ告知当初から中国からの留学生キャラクターが登場するとアナウンスされていたせいで、当初はヴィジュアル的に彼女がそのポジションを担う者と推定されていた。が、各キャラクターの自己紹介動画が公式サイトにアップされるや大方の推測はまったく裏切られ、まさかのテヘペロ・グレーヘア(パープルメッシュ入り)娘たる唐可可が上海からの留学生であることがわかると、ライバー界隈の一部からは「えーっ」というなんともいえぬ類の声があがったことを、いまよりはまだ熱心なライバーの1人であったわたくしにも聞こえたことである。
 加えて主人公と幼馴染みと判明するや、過去シリーズの幼馴染みたちがさっそく引き合いに出されて、その重症度の度合いを測られる始末ともなった。──当初は並み居る幼馴染みたちを撥ね除けるにはパワー不足と思われていた彼女であったが、豈図らんや、番組がスタートして回が進むにつれて幼馴染みとしてのポテンシャルはシリーズ最凶クラスたることを印象附けることに成功した。
 ……彼女が幼馴染みジャンルのトップに立てなかったのは幸いであるやも知れぬ。ナンバー・ワンを不動とする上原歩夢(『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』)の上を行くとなると、それはもう治癒不能のガチキチであり、或る意味でサイコパス予備軍というてもよい程だからだ。逆に、このジャンルに於ける最弱は『ラブライブ!サンシャイン!!』の曜ちゃん。童貞と陰でいわれるだけの押しの弱さとヘタレぶりは、周囲に比して極めてノーマルかつ愛くるしいがゆえにこれから先ずっと、誰からも寵愛されることであろう……。
 但し、幼馴染みへの依存、或いは自分の行動原理が幼馴染みへの愛、という点では千砂都も歩夢と同列だ。
 ことりは? と訊ねる向きあろうけれど、この2人に較べればまだまだ可愛い方だと思います。なぜって……ことりは歩夢のように幼馴染みが自分以外の人と親しくしていたり、幼馴染みが抱いている夢を自分以外の誰かよりも先に伝えていることを知っても、あくまで冷静を装い、内に抱えこんで独り病むのがオチであろうから。
 歩夢の場合は冷静を装うことを早々に放棄して、病むとかそういう段階をすっ飛ばして殆どレイプまがいに相手を押し倒し、自分の重い愛を吐きまくる。
 千砂都は、押し倒すこともその序でに自分の愛をぶちまけることもなかったけれど、すべての行動原理がかのんに結びつく以上、ヤバさこそ歩夢に一歩を譲ると雖もその重症ぶりは歩夢と同列というてよい。ただ千砂都のかのんへの気持ちがどちらかといえば畏怖、信仰に傾くに対して歩夢の侑へのそれはまるで性愛──体も心も独占希望なように映るのだな。
 既に第1期当該回の感想でも書いた(ような気がする)けれど、幼い頃に苛められていたところをかのんに助けられた千砂都は、「わたし、かのんちゃんができないことをできるようになる!」と宣言してダンスと出会い、有言実行して見せたことでかのんの尊敬を勝ち得る。
 この、「かのんちゃんができないことをできるようになる」が千砂都の最大の原動力となった。それゆえに千砂都はダンスの実力を磨いてゆき、後述の如く大きな大会に初出場して優勝するまでになる。それを達成するとせっかく受かった結ヶ丘女子高等学校音楽科からあっさり普通科に転科し、かのんや可可、すみれと共に、Liella!4人目のメンバーとしてスクールアイドル活動に専念するようになるのだ。
 神津島で初ステージを踏んだ千砂都は初めてとは思えぬ堂々としたダンスパフォーマンスで他を圧倒し、ステージ裏でその様子を見ていたサニーパッションの度肝を抜くのだ。そう、われらはきっと、いつまでも覚えているだろう、Liella!が4人体制で初めて披露した「常夏☆サンシャイン」における、千砂都のすべてが吹っ切れたような笑顔と自信に満ちたパフォーマンスのハイ・クオリティぶりを。サニパの摩央だったか、「これが4人の力……」と曰うたのは。
 その千砂都のダンスの才能は誰しもが認めるところで──S1#1でかのん母も「あの子、ダンス頑張っているみたいね」と娘にいっている──、大きな大会に初出場して優勝できるだけの実力とパフォーマンスの華があった。
 それを知るがゆえに澁谷かのんはスクールアイドル活動に誘いたくても自重するところがあり(当時千砂都がまだ音楽科に在籍していたことも影響していよう)、可可はかのんの本音と建前のせめぎ合いの解消と体力作りとダンスのコーチをしてくれる千砂都自身のポテンシャルに期待するところあって、Liella!への加入を幾度となく打診した。
 それらいずれもやはり、根本にあるのは嵐千砂都が持つダンスの才能、に他ならない。サニーパッションの2人も、千砂都とかのんに、別々の時にそれとなく千砂都のダンス能力の高さを評価し、(まだ千砂都が加入していない時期の)Liella!に不足しているものがなにかを指摘したことがある。
 最後に、Liella!にける彼女のポジションを確認しておこう。
 既稿にて彼女は、メンバー間の潤滑剤である、と書いた(第3416日目1/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期放送開始を前にして。〉)。そこに一言註記をするならば、その潤滑剤とはメンバー間のコミュニケーションに関わるものではむしろなく、停滞したグループ活動の前進に寄与する類のそれである。いい換えれば、自分が信じるものに絶対の信頼を寄せる場面で発揮されて、不安がる他メンバーを結束させる〈まとめ役〉の任にあるのが、嵐千砂都という女の子である。
 「わたしは信じてる。澁谷かのんを」とはS1#9で、「Liella! が始まったのは、かのんちゃんがあのとき歌ったから。可可ちゃんの想いに応えたから。──(東京大会の課題である独唱ができるのは)かのんちゃん以外いない」とはS1#11で、Liella!メンバーと澁谷かのんを励まして、背中を押した千砂都の台詞。これらの、またこれら以外の言葉なくしてLiella!が結束し、かのんがトラウマを完全克服して〈ラブライブ!〉東京大会にコマを進められたか、疑問なぐらいの説得力と愛情と気配りに満ちた、嵐千砂都一世一代の名言であった……。
 が、この嵐千砂都一世一代の名言は、第2期でも開始早々に披露される様子なのである。第2期予告PV(ロングヴァージョン)での千砂都の台詞、──

 あんまり根詰めない方が良いよ、次勝てば良いんだし。(にっこり)

──と。時間にして00分27秒から00分31秒まで。
 このなにげなく、さりげない台詞が勇将に固執するかのんの気持ちを、若干成りとも変えるのかもしれないと考えると、うーん、<嫁>ならではの台詞である。
 千砂都はどうやら第2期に於いて幼馴染みとしての重症度の描写は軽減して、更にかのんとは違う形でのLiella! の陰の船頭役を勤めることが、このPVからは期待することができそうだ。
 第2期は彼女たちが進学して2年生となり、新たに1年生を迎える春の描写からスタートする。部活勧誘ではかのんがさっそくアタフタする可愛らしい顔が拝めるけれど(「誰も、来ない……え!? え!? どうして!? どうして!?」)、それはさておき、如何にして新メンバーが加入して千砂都が彼女たちをどうやって導いてゆくのか、ここも見所の1つとなろう。
 そうか、もう放送まであと7日を切っているのか……。早く日曜日にならないかな、と子供のようにその日が来るのを待っているのである。勿論、成長した(はずの)Liella! メンバーに会いたいからでもあり、千砂都の変化というのも見てみたいからである。
 ところで、嵐千砂都役の岬なこ、髪を下ろした姿は狂的なまでに可愛いですね。あれで関西弁でツッコみまくる、っていうのが、またいい。某同人作歌描くLiella!ライヴレポの嵐千砂都/岬なこも、方向性の違う可愛さにあふれている……。◆

第3416日目1/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期放送開始を前にして。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 然り、前稿で吐露した気持ちは事実であり、真実である。が、その一半でしかない。不安値/絶望値よりはむしろ期待値の方が高い──嘘に聞こえるかもしれないが、本当なのだ。
 顧みれば第1期でさえ、最初のディザーイラスト、メインキャラクターが居並んだイラストからは、「なんだ、これ?」と思い、さしたる期待を抱くことはなかったのである。何作も開始が予定されている2020年夏アニメの1つ、というぐらいでしか認識するのを止めていた。もう『ラブライブ!』は1作目のμ’sだけでいいや、と思うていたのである。特にμ’s原理主義者というわけではないけれど。
 ついでにいえば、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は毛色の違いからシリーズ本来の流れに位置附けるべきなのか、或いは壮大なる番外編なのか、悩んだ。結局新田恵海の「虹ちゃんは3代目、孫」発言が効いて前者に傾き、かすみんイチ推しでいまに至ってい。『ラブライブ!サンシャイン!!』は──まぁ、いうのはやめおきましょう。「沈黙は作品への最大の批判」とは生田先生のエッセイの一節だったかな(※)。
 早々に脱線してしまった。軌道を戻そう。
 『ラブライブ!スーパースター!!』第1期開始前のわたくしであったな;当時を知る周囲の人は一様に疑問を呈してきた。曰く、「あんなに否定していた作品を斯くも推すようになったのは、なぜか?」と。理由は簡単だ。動き、喋るところを観たからだ。公式サイトで披露された予告PVを視聴して、即座に宗旨替えしたことを、わたくしはなんら恥じていない。
 ならば、第2期に於いてもそうなるのではないか。本稿執筆の段階(2022年06月03日)で、新キャラ4名の自己紹介動画は既に公開されているが、アニメ第2期の予告PVはまだ披露されていない。どれだけ自己紹介動画が優れて人の心を摑み得るものであったとしても、作品を観るか観ないか、特定の新キャラを推すか推せるか、を最終的に判断する材料は、実際のアニメのなかから切り出される場面で構成される予告PV以外にはあり得ぬ、とは常より思うていること。そういえば『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のときも、かすみんについてはあまり良い印象って、持っていなかったなぁ……むしろ歩夢や彼方さんだったな、推せそう、と思うたのは。
 とどのつまり、1日も早くアニメ第2期の予告PVを観たいのである。然らば『ラブライブ!スーパースター!!』第2期にどれだけの期待を寄せられるか、どれだけのめりこめるか、が朧ろ気であってもわかるだろう。先代──じゃない、オリジナルメンバーとの絡みや距離感、人間関係等々が或る程度ではあっても判断できるだろう。
 さて、気苦労過多気味なわれらがLiella!のリーダー、澁谷かのん嬢が新しいメンバー相手にどんな脱力&やさぐれの表情を見せ、グループ運営に腐心し、シリーズ最強スペックを備えた主人公/グループリーダーとして宿願となった感のある〈ラブライブ!〉優勝を目指して行動してゆくか。
 どこでその言葉を覚えてきた、と訊ねずにはおけない上海からの留学生、唐可可ちゃんがすみれのみならず他メンバーたちとどんなボケツッコミのコントを披露し、魂揺さぶる発言で誰彼の気持ちを後押しし(S1#01「好きなことをがんばることに、終わりなんてあるんですか!?」)、なにより、第1期の終わり際で発覚した帰国問題にどうケリを付けることになるか。
 シリーズ2位、3位を争う重度の幼馴染みの位置を占めることになって、或る意味で視聴者を驚愕のどん底に叩きこんだ嵐千砂都が、そのダンスの才能を如何に発揮してLiella!に更なる貢献を果たしてゆくか、これまでメンバー間の潤滑油役を担ってきた彼女が新しいメンバーが加わることで如何な変化を遂げてゆくか。
 一旦スポットライトを浴びた人間はなかなかそのときの栄光と快感を忘れられないことを体現して見せた平安名すみれが、進級して後輩を迎えて先輩になることでその弄られキャラぶりにどれだけ磨きがかかるのか(わたくしとしてはかなり好意的にいうております)、可可とのコンビに如何な発展を見せてくれるか、Liella!の陰のセンターとしての実力と魅力をどう発揮してゆくか。
 シリーズ中最も重い過去と使命を担う生徒会長葉月恋が、<お約束>としてどこまでポンコツぶりを発揮してゆくか(但しこれは一息入れるための描写であるべきで、それがメインとなってはけっしてならぬ。やりたいなら二次創作でやろう)、ステージで1、2を争う見栄えの良さにどこまで磨きをかけるか、安定した歌唱をどこまで伸ばして別の一面を開拓してゆくか、そうしてなにより学校運営の重責を実質的に一半なりとも担う者として行動してゆくか。
 そうして新キャラクターたち……道産子がLiella!の活動に共鳴して東京の創設2年目の学校にわざわざ入学してきたという理由が本当なのかひたすら知りたい(=気になる)桜小路きな子、どっかで見たことあるような既視感たっぷりの性格&口調だけれど名前はいちばん好みな若菜四季、まるで以て摑み所がないゆえに却って動いて喋っているところを一刻も早く観たい米女メイ、すみれの超絶劣化Ver,加えて旧来の政治家タイプな鬼塚夏美(「オハナッツー!」って、白痴か)……彼女たちがどんな希望や目的を持ってLiella!に加入し、活性剤となってゆくか。これはまさしく期待すべき事柄である。第2期の成功の可否はもはや(表向きには)彼女たちの双肩に掛かっている、というてよい。
 新加入は精々が2名が限度じゃないか? と思うこと未だあるけれどそれを払拭させるだけのものが提供されると信じている。この4人が加わったことでLiella!の物語が瓦解するようなことがあったら、もうわたくしは2度と『ラブライブ!』を観ない。正直なところ、5人から9人に増えることは大反対なのである。此度の新加入=増員が大炎上の因とならぬことを祈りたい(5人のLiella!の方が良かったな、なんて意見を封じこめられるだけの説得力があれば良いだけである)。
 第2期放送開始は来週07月17日(日)19時から、NHK Eテレにて。愉しみに待とう。◆

○ちょっと一言
過去日の執筆につき、一部表現が過去のものとなっていること、及び加筆してあることを註記致します。本文には書いてあるけれど、読み落とす人幾許かある様子なので、ここで一言する次第。□

※「批判の最高の形式は沈黙であり、一冊の書物にたいする、一人の著者にたいする最高の批判形式は「読書の中絶」にあるからだ。」
「虚妄の「戦後」」(生田耕作評論集成Ⅳ「滅びの文学」P273 奢灞都館 1996/01)より。

第3415日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期ヘの期待値は、ゼロである。言い換えれば、いまから失望と絶望しか感じない。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 9人よりは5人。古今の例を顧みて9人という奇数の収まりの良かった試しはない。5人体制で巧く運用できていた集団が、途端に本人たちの意思と関係なく増員されると道は2つ──空中分解か馴れ合い、いずれかである。否、という者あらば挙手を乞う。
 むろん、間もなく放送開始の『ラブライブ!スーパースター!!』第2期の話である。
 Liella!はSMAPやTOKIO、(結成時の)モー娘。の如く、5人体制を維持すべきだった。5人……咨、その収まりの良さよ、ヴィジュアルにしても曲にしても、キャストの居並ぶショット(生配信含む)にしても。
 4月、Liella!に新メンバーが加わることが公式から発表された。デザインを見た途端、「これではないっ!!」と反発しか覚えなかったのはわたくしだけではない、と知っている(いまに至るも、なお)。正直なところ、作品にそぐわぬキャラデザ、担当キャスト、口調……いったいどこのガールズ・バーだ。
 そも、9人体制にする必要はあったのか。いつまでμ’sの偉光に縋るつもりだ。その遺産を劣悪なリメイクを繰り返して再利用する気だ。思考停止にも程がある。
 第2期が当初から予定されていた以上、新入生の登場は必至。が、Liella!に加入させる必要はあったのか? 同じスクールアイドルとして活動する別グループとして、同じ学校内の同じ部活内で時に反目したり時に協調したりして切磋琢磨することは考えられなかったのか。
 一体全体、花田氏の実力で9人の物語を捌くことができるのか? まぁ、無理でしょう。できているなら、『ラブライブ!サンシャイン!!』はもう少しまともなストーリーになっていたはずです。少なくとも、千歌が「廃校だよ、μ’sと同じだよ!!(やったー)」と飛びあがって叫ぶような”キチガイ”ストーリーにはならなかったろう。
 はっきりいう、μ’sの物語は時間と運が味方した、まぐれ当たりの作品であり、脚本を最後まで練り、ディスカッションするる時間があったから生み出された奇跡の作品だったのだ。柳の下にドジョウは何匹もいないことをとくと知れ。
 無理か? ストーリーラインを担当する連衆が花田氏ごと一新されない限り、それは流石に期待できぬことか。運営はわかっていないのだろうか、花田氏がメインを張る程の実力が欠片もないライターであることに? 花田氏のオリジナル脚本のクオリティが乱高下するのは『ラブライブ!』が始まる前からのことだから、今更目くじら立てるのは間違っているのかもしれない。その程度の能力の持ち主であったのだ、そう見限るのが最善であろうか。所詮は花田十輝の脚本である。運営側に此奴の脚本をチェックする能力のある者はないのか、と嗟嘆するのが妥当であるのか。
 それはさておき、Liella!に新メンバーを加入させたのは、既定路線とはいえ余りに安易であった。もっとも、如何なる形で、如何なる流れで加入してゆくのか、次第であるが、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期と呉越同舟、同じ穴の狢、という結果を見せられるが精々ではないか。このあたり、京極氏はどんな考えを持って、或いはどんなヴィジョンを抱いて新たに4名を、Liella!に加入させる愚断を下したのか。とくとお伺いしたいものである。
 Liella!を川迫いる現在の5人は、この構成がどれだけ音楽的にもヴィジュアル的にも結束としても完成されてこれ以上の発展を望むべく出ないことを知るべきだ。
 放送直前とはいえ未だ情報公開に制限のある現段階で、『ラブライブ!スーパースター!!』第2期をこれまで通り支持してゆくか、見棄てるか(「あの人はもういいです、ダメになりました」)を決めるのが危険な行為であるとは重々承知。しかし、これまで運営やキャストらから提供されてきた情報では、なんとも判断できない、というのが運営側とはなんの利害関係も持たぬ一ライバーとしての、偽りなき真情吐露だ。
 既成の枠組みのなかに新たな要素を混ぜこんで化学反応を楽しむ猶予は、少なくとも現段階で公にされている『ラブライブ!スーパースター!!』のなかには、ない。少なくともわたくしは放送も始まっていない現段階から、オプチャの面子のように、手放しで、無批判に新メンバーを受け入れる気にはなれない。再三いうているように、如何なる形で、如何なる流れで加入してゆくのか、次第である。
 本心はどうあれ、シリーズの展開に併せて肯定的な発信をし続けなくてならぬ方々は皆が皆、Liella!新メンバー加入に両手を挙げて讚成しているのか? 誰1人、それに「?」は抱かないのか? まぁ、いわないよね。自分たちの利益に直結する話題でもあるから(こうまで書いたわたくしの脳裏にはいま、と或るキャストの名前が脳裏に浮かんでいるけれど、敢えてその名は伏すことにしたい)。
 5人、というのが不吉であった──トリガー次第で結束もすれば活動停止にも解散にも、なり得る。われらは既に、少なくともわたくしは間近で、SMAPとTOKIOという5人体制の完成形とその終焉を見ている。果たしてLiella!は……雲散霧消した後ファン以外の誰の記憶に残るだろう?
 ──御門違いと揶揄されるのを覚悟でいえば、彼女たちが人前にサプライズで出た数分で、その場に居合わせた人の心に思い出を刻み、感涙させる程になってほしい。否、人前に揃って立つだけでそこにいる人が幸せを感じられるような存在になってほしい。むろん、ここでいう「人」というのはライヴ会場に足を運んでくださったファンではなく、一般的な意味での日本国民である。彼女たち5人にはそれだけのパワーもスキルも伸び代もメンタルもあると思うのだ──歴代『ラブライブ!』に登場したスクールアイドルたちに欠けていた、それが。或る意味でLiella!は、われらが見てきたスクールアイドルの理想的完成形である。それを打ち崩して再構成するメリットと勝算はあるのか?
 運営にお願いしたいのはただ2つ。人生の最期までキャストが自分の過去の仕事に『ラブライブ!』を挙げられるようにしてやってくれ。そうして、これがいちばんいいたいことなのだが、娘に希望を託して授けた名前が失望の作品の代名詞とならぬことを、祈る。◆

第3337日目 〈Liella! 2nd LoveLive!, 於大阪城ホール。行ってきます!!〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 Liella!の2nd LoveLive!、結ヶ丘ガールズバンド(軽音部!!)といっしょに06月04日と05日、大阪城ホールにて。YouTubeにて告知動画、視聴可能。
 ……ちょうど業務の引き継ぎでその頃は大阪にいるな。奥方様と生後2カ月の娘と母には申し訳ないけれど、仕事にかこつけて参戦するか。
 耳が心配だけれど、たぶん最初で最後のLiella!ライヴだろうから、心ゆくまで愉しんでくる!◆

第3270日目 〈本放送時の『ラブライブ!スーパースター!!』が見舞われたもの。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 先週から『ラブライブ!スーパースター!!』の再放送が始まっている。間もなく始まると噂の『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期と、今秋かとこれまた噂される『ラブライブ!スーパースター!!』第2期を視野に入れてのことと思われる……否、思いたい。
 昨年7月から放送が始まった『ラブライブ!スーパースター!!』は、自然災害に翻弄された番組であった。放送されるたびに感想文を綴っていた頃、サブタイトルや放送日、Liella!とサニーパッションが歌う曲、キャストや主要スタッフのリストをテキスト文書で作成していた。
 いまそれを見ると、第2話「スクールアイドル禁止!?」(07月18日放送)でさっそく東北地方で発生した地震の速報が流れている。19時13分頃だ。会津と檜枝岐村で震度3、マグニチュード4.4。第8話「結ばれる想い」(09月19日放送)では東海地方で発生した地震の速報が、19時06分頃に流れた。飛騨地方と高山市で震度3,マグニチュード4.6、という。
 澁谷かのんと唐可可、平安名すみれがサニパの招待で神津島に渡った第5話と第6話も例外ではない。第5話「パッションアイランド」(08月22日放送)では15分53秒が経過した後、大雨警報のテロップが画面上と左にあらわれた。場所は、栃木県那須塩原市。第6話「夢見ていた」(09月05日放送)では18分07秒経過後に、大雨警報のテロップがあらわれている。この日の場所は、長野県川上村・南牧村である。
 他回でも同じようなことがあったかもしれないが、残念ながらメモに残されてはいない。放送されたものをBlu-rayに焼いてあるから、今度気の向いたときに探してみよう。
 また、『ラブライブ!スーパースター!!』はオリンピック中継で放送が中断されたこともあった。第2話と第3話「クーカー」(08月08日放送)の間は3週間も開いた。メモによれば第3話はオリンピック閉会式の日に放送予定が組まれていた様子で、時間繰り下げが何度か行われた結果、次週放送となった。このときのTwitterは大荒れに荒れて放送局に罵倒し非人間的な言葉を吐いた衆もあれば、放送局の判断を冷静に受け止めて大人の対応に努めた人々もあった。図らずも人間性が浮き彫りになった出来事であった。
 そうしてNHKは08月08日の第3話放送直前に、第1話と第2話をリピート放送するという粋な計らいをしてみせた。
 ああ、斯くも自然災害と人類の祭典に翻弄されたシリーズがあったろうか。無印第1期から追いかけてきたけれど、そのような出来事があったことを覚えていない。地震速報ぐらいはあったでしょうけれど、流石に記録は残していない。
 先週から始まった再放送が自然災害に見舞われることなく、最終回まで完走されますように。それにしても、「リエラのうた」も流してくれたのは、うれしかったな。パッケージといわれれば返す言葉もない。
 <スバラシイコエノヒト>にしてシリーズ随一の歌姫たる澁谷かのんと、歴代生徒会長のなかでいちばん重荷を背負わされていた葉月恋。この2人のどちらかについて、来週中に書いておきたいな。◆


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第3194日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』の感想文に思い悩むこと。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 はじめた当座は続けられるか不安であった『ラブライブ!スーパースター!!』の感想文ですが、拙いながらも最終回分まで書きあげられたことに「サンキー・サイ」と一言申し述べて、こんなことをお話させていただきます。
 昨日と本日(一昨日と昨日、ですか)第1話の感想文から、なにやら考察めいた文章も含めて第12話の感想文2/2までざっと読み返してみましたところ、分量についてはともかく、いろいろな点で手直しが必要だな、と溜め息してしまいました。
 文章表現にしても、感想それ自体についても、まぁホント、様々な点で、時間が経つとアラが見えてくるものでありますね。もう少し練りあげて、もう少し掘りさげて、もう少し慎重或いは大胆に、書いていっても良かったのではないか。そう思うのであります。加えて、当時は「これで良い」と判断した事柄であっても(表現とか言葉とか、筋運びなど)、時間が経つにつれて意に満たぬものと感じられてりして──困ってしまいます。
 当該回の感想文を書きあげてお披露目するまで、なるたけ他の方が書かれたり、YouTubeに投稿された動画等は目に入れないようにしていました。自分の感想が被る部分があるのは致し方ないにせよ、影響されて──悪くいえば自分の感想が他人の感想や考察によって歪曲されてしまったり、自分の感想が他の人の感想に上書きされるのを、恐れたためであります……然り、わたくしはそのあたり、弱い人間なのです。正直なところ、一部を除いていまでもそうしたものは拝見、拝読しておりません、と、この機会に誓って申しあげたく存じます。
 それは徒し事として済ますにしても、目立ってしまうアラを覆い隠す必要はありますね──要するに、今一度の推敲もしくは改稿が必要だな、と思うわけです。気附いてしまったらもう一刻も早く手を着けてゆきたい、というのが正直なところ。
 ひとまずはBlu-rayの発売にあわせて改稿もしくは推敲に着手してゆき、新装なった感想文をお披露目したい。これらを、新たな日附を冠してまったくの新稿としてお披露目するか、旧稿の改訂版というスタンスで差し替えるか、なにも考えておりません。ただ、どちらへ転ぶにしても全12話分の感想はまとめてお披露目してしまいたい、とは思うております。となると、どんなに早くてもお披露目は来春か(Blu-ray第6巻は2022年02月25日発売予定)。
 既に「第3192日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第12話(最終回)を観ました。〉2/2【改訂版】」で実施済みですが、まずは誤字脱字と変換ミスだけでもいまのうちに直しておくか……。Macで書いているとホンマ、このテの誤りが多いんだよなぁ。むろん、自分の不注意、無造作、等々は棚にあげての発言です。かというて再びWindows/一太郎での作業に戻るのもいろいろ難儀がありまして……。DELLの17型ノートパソコンなんて、重くて持ち運べません、って。しかもなんですか、あのバッテリーの無粋さ、デカさ、重さは!? まったくもう……。◆

第3192日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第12話(最終回)を観ました。〉2/2【改訂版】 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 「まだまだ書き残したことはある。この最終回に関しても書き切れていないことは幾つもあるのだ。東京大会進出が決まったと知った澁谷ファミリーの喜びようとか、Liella!の面々が会場に向かうときの様子とかね(とりあえずここでは、すみれ、名前を呼んでもらえて良かったね、とだけ涙ぐみながらいうておきましょう)。形の上では第12話最終回に関しては前編後編みたくなるのかもね、この感想文」(第3185日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第12話(最終回)を観ました。〉より)

 終わってしまって今日で10日目。新しいドラマが提供されないことに虚脱感を覚えていた或る日、先日のことだが、悦ばしいニュースがさっそく入ってきました。確定事項ではあったけれど、まさかこんなに早く、その報道が為されるとは……!
 いうまでもなく、『ラブライブ!スーパースター!!』第2期製作決定の報であります。具体的にいつから放送、とは(『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期と異なって)アナウンスされていないが、まぁ、早くても来年2022年の秋口からの開始、なのかな。いずれにせよ、こちらはただおとなしくして、妄想と想像を膨らませて新しい情報の開示を待つのみ……。
 第2期製作決定の報に触発されたためではないが、前回なにげなく予告していた『ラブライブ!スーパースター!!』最終回感想の補遺となる文章を綴ってゆきたく思います。短く終わらせるので(たぶん)、しばしお付き合いの程を。
 ──前稿ではかのんの気持ちの移ろいに注目したので触れる機会を逸してしまったのが、東京大会出場を知った澁谷ファミリーの喜ぶ姿でした。
 お母さんの台詞からすると、どうやらかのんは東京大会出場の件を誰にも話していなかった様子。両親と妹ありあから「おめでと〜っ!!」とクラッカーを鳴らされたときのかのんの表情、御覧になったでしょうか。第1話のときからは想像もつかないような、自信とはにかみと心底からの喜びとありがとうの気持ちが混ざった顔でした。あんなにやさぐれていて、大丈夫なのかしら、この子が主人公で……と不安にさせたかのんは、もうここにはいません。回を重ねるにつれて、彼女は着実に成長した。
 基本的に『ラブライブ!』シリーズは登場人物の成長を描いてきましたが、かのん程成長著しいキャラクターはいなかったのではないか。
 そも小学校時代のトラウマが尾を引いて結ヶ丘女子高等学校の音楽科受験に失敗した、それゆえに希望する道へ進めなかった、というのが、われらが初めて目にした澁谷かのんであった。そんな女の子が、ひとりのクラスメイトの言葉に動かされて前に一歩、新しく踏み出すことができた。
 それ以後はゆっくりと、1歩進んで2歩下がるような事態に直面したこともありと雖も、周囲に支えられて、または周囲に応えようと、精一杯の力を尽くして、そのときの自分にできることを悔いのないように行って、最後には「ラブライブ!」東京大会の大舞台へ立つまでになった。──うむむ、これを成長といわずに何というや。
 むろん、かのんばかりではない。千砂都はかねてからの希望通りかのんの隣りに立って彼女の役に立てることをやることを実現したし、すみれは子役時代からの不遇と周囲との間にあった見えない壁をスクールアイドルを始めることでぶち壊し、恋は両肩に重くのし掛かって誰にもいえない学校存続の使命から解放されて本来の自分を取り戻しました。可可に至ってはスクールアイドルをやりたいという夢をかのんとの出会いによってかなえることができ、その類い稀なる行動力と熱意で体力ならびにスタミナ(殆ど)ゼロてふ圧倒的ハンデを克服し、かのんたちLiella!メンバーと一緒にステージを重ねていった。帰国問題が第2期にどんな形で引き継がれるか、可可に関して問題視されるのはそこのみ、か。
 メンバーの数が5人というのが、最終的には功を奏したというべきなのでしょう。1人1人の内面描写をどれだけ掘りさげ、影の生活を作品に滲み出させることができたか。そのあたりは放送回数と1話の尺の制約もあって難しい挑戦だったろうが、概ね吉と出たのではないか、とわたくしは思うております。第2期では後輩加入の可能性が濃厚だけれど、安易なキャラクター造形とプロットはやめてほしいな──そうした意味では、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期が1つの試金石になるか……でも、脚本も監督も違うからなぁ……どうだろ? ←第3話のかのん風に。
 澁谷ファミリーにも長女の成長は嬉しいことであったろう。娘の成長をその目で確かめられるのは、偏に喜び以外の何物でもない。<歌で皆を笑顔にしたい>という夢を受験失敗で見失い、自暴自棄になってしまった娘が(事情がどうあれ)入学早々クラスメイトを家に連れて来、スクールアイドルの相談をしている光景を見たとき、お母さんはあんな反応を取っておりましたけれど、内心ではきっと相当嬉しかったんだろうな。親というのはそういうものです。
 無印第1期第4話で真姫の家に花陽が訪ねてきたとき、真姫ママが「高校に入ってから友達を家に連れてくることがなかったから、友達がいるってわかって嬉しい」旨話しておりましたが、かのんパパ&ママも同じような気持ちだったに相違ないでしょう。
 それはおそらく、或る意味で両親以上にかのんを近い場所で見ていた妹ありあにもいえることでなかったでしょうか。最終話に於けるありあのかのん評は、確かこういったものでした。曰く、「熱い、ウザい、暑っ苦しい」と。加えて、浮き沈みが激しくて、いつまで過去の失敗を引きずっているんだろう、早く立ち直ってほしいな、そうしてお姉ちゃんの歌をまた聴きたいな、なんて想いもその背景にはあった、と考えます。
 雪穂と同じ立ち位置といってしまえばそれまでですが、顧みれば雪穂ってμ’sの全体評は口にしていても、姉穂乃果個人について特に発言したことがないのですね。その役はμ’sメンバーに奪われていたのが実際ですが、もし、雪穂が自分の口から穂乃果評が出ていたら、ありあと同じような内容になっていたのでは? ──穂乃果が陽で、かのんが陰、そうして妹が両者をシームレスにつなぐ役割を担っている、というのが、高坂家と澁谷家の姉妹の構図なのでしょう。
 顧みて、かのんはあたたかい家庭に生まれ育ったな、と感じます。両親の愛と妹との間も良好、この調子であれば、物語には登場しませんでしたがスペイン人の祖母からもかわいがられている様子は、容易に想像できてしまうのです。
 ふと思い出すのは、かのんが可可の詞をアレンジし、曲を付けるにあたって、父の書斎から各国語の辞書を借りだして廊下で父と鉢合わせする場面であります。そのとき、父は後ろ姿からでもわかるぐらいちょっとびっくりした様子を見せていました。それにかのんはどう応対したかといえば、取り繕うようなそれではなく、心を許した相手だけに見せるような屈託のない笑顔で応じたのでした。あんな笑顔を見せられてはねぇ、パパとしてはもう心を蕩けさせられるばかりでありますよ。
 どちらにせよこの関係性は、仲睦まじい親子でないと見せることの難しい点であるといえましょう。前述の澁谷ファミリーのクラッカー鳴らしてかのんを祝う場面に、パパも真正面から描かれていたのが自分的には高ポイントかな。うーん、良いな、羨ましいな、こういう家庭。いやぁ、かのんパパ、幸せ者ですよ。
 ──ああ、会場へ向かうときの光景について触れるのを忘れるところだった! わたくしが前回、いいたかったことは、煎じ詰めればただ1つなのであります。即ち、斯くもあざとく、ストレートな無印第2期第9話の<スノハレ>リスペクトの流れにもかかわらず、まったく違う印象を覚えさせられたのは、『ラブライブ!スーパースター!!』こそが『ラブライブ!』正統後継作であると宣言したも同然のように感じたためかもしれません。他の視聴者、ライバーの方々はどうだったのだろうか。

 さて、今後について。
 新しいエピソードの供給はしばらく止まる。が、告知された第2期の情報解禁を待ちながらわれらは、第1期のBlu-rayの初回特装盤を──或いは放送時に録画してたものをDVDなりBlu-rayに焼いたそれを──繰り返し視聴して、Liella!の音盤、番組のオリジナル・サウンド・トラックを耳タコになるまで、否、なってもなお聴き返し、(時に『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に浮気しながら時間を過ごすのを自分に許して、)YouTubeの「ラブライブ!シリーズ公式チャンネル」で配信される「ラブライブ!スーパースター!! 結女放課後放送局 リエラジ!」」と「ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送」を楽しみながら、<その日>の訪れを坐して待つことに致そう。

 ……あ、サニパのこと書くの、忘れた。体育館を覗いたときのかのんの打ちひしがれた姿とヤエを睨みつけたときの場面についても書くのを、忘れた……あれ、もしかしてこの感想文、「3/3」がある?◆


付記;本稿を第12話最終回の感想「2/2」とするにあたり、第3185日目の感想を「1/2」としてタイトル変更致しました。なお、上記理由により今後、分母が「2」から「3」になる可能性があることをお伝えしておきます。□

第3185日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第12話(最終回)を観ました。〉1/2 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 第12話最終回を迎えるにあたって、第1期Liella!の物語は存外と綺麗な形で幕を降ろしたように思います。『ラブライブ!』及び『ラブライブ!サンシャイン!!』のように未回収の伏線をむりやり詰めこんで欲求不満にさせる終わり方を迎えるのではないか、と若干不安だったのですが、結果的にそれは杞憂に終わった様子。
 改めて全12話を回顧したとき、わたくしの胸へ、いの一番に飛来する思いは、『ラブライブ!スーパースター!!』がLiella!メンバー各自の成長物語であったということであります。就中その傾向は主人公の澁谷かのんに顕著で、否、『ラブライブ!スーパースター!!』は彼女の成長物語であった、といい直すべきかもしれません。第1話ではあれだけやさぐれて、この子が主人公で大丈夫なのかしら、と親のように心配してしまったのですが、回を重ねるごとにかのんは確実に自分のトラウマを克服し、メンバーの想いをつなぎ止め、グループをまとめ、地に足着けながら成長していった。なんだか娘の成長を見守るような父親のような気持ちでありましたよ、いやマジで(ホレイショ風に)。
 「バーカ、歌えたら苦労しないっつーの」、現在の時間軸にてかのんがいちばん最初に発した台詞がこれでした。幾ら受験失敗した引け目はあると雖も、おい、これから始まる新しい『ラブライブ!』の主人公としていったいどうなのか、と不安になり、この子がどうやってスクールアイドルを結成してゆくことになるんだろう、と小首を傾げてみたりしてね。
 それがどうでしょう、第12話最終回となった「Song for All」ではもはやトラウマは影も形もなく、最後にかのんが発した自分の想いは、「優勝したい!」でした。それまですっかり自分に自信をなくし、歌えるようになっても勝敗にこだわる様子もなく、ただ皆で楽しく歌えたら、私たちの歌を聴いて笑顔になってくれる人たちが一人でも多くいれば、という気持ちの方がが彼女には強かった。それが地区大会を突破して東京大会を目前にしたときからかのんの意識に変化が生じた。
 ──それは即ち、勝負の世界で勝ってこそ見えてくる世界がある、わかるものがある、そう知ったからでした。
 彼女にそれを教えたのは、大会を控えて本土へ買い出しに来たサニーパッションの2人だった。彼女たちの役割はLiella!のライヴァルよりも助言役という方が相応しいようです。
 既に第12話開始早々からかのんの本気は全開でした。嵐千砂都をトレーナーにした練習のあと、可可がすみれがへたばっていたのを尻目に、あたかも全員を鼓舞するかのように放った一言一言が彼女の本気具合、歌うことの楽しさを取り戻した彼女の喜びがはち切れんばかりに描かれておりました。01分58秒からの場面です、──
 可可;うわぁ、足が棒です。
 かのん;まだまだ。かなり良くなってきてる。良い感じ。この調子でランニング、もうワンセット行こう!
 可可;うえー。
 すみれ;あなた、力みすぎじゃない?
 かのん;だって東京大会が近いんだよ!? なんか頑張った分だけ出来るようになってゆくのって、楽しいな、って思って。
 [すみれ、それを聞いて微笑む]
 かのん;よし、行こう!! [かのんの背中にへばりついていた可可、中国語で悲鳴をあげながら弾き飛ばされる]
 すみれ;また外苑?
 かのん;5セットぐらい、いっちゃおう!!
 すみれ;ええっ!?
 恋;[傍らの千砂都に]かのんさん、以前よりだいぶ変わりましたね。前向きになった、というか……
 千砂都;そんなことないよ。これがかのんちゃん……私が知ってる!
──以上。
 呼応するようにして、東京大会の結果が2位で終わったあとの練習に於いても、具体的なメニューには触れませんが他の4人が練習を始めようとしているとき、かのんは1人部室に残ってホワイトボードに次の目標を書きこんでいました(シリーズ定番の演出となりましたね)。曰く、──
 「目指せ! ラブライブ! 優勝!!」
──と。優勝の言葉は赤字で、二重のアンダーラインを引いて(22分22秒)。
 なんだかこの場面まで来て、ジーン、と胸が熱くなりましたね。たしかに結果は残念でしたが、それを発憤材料にしたかのんの奮起、Liella!メンバーの<もう一度、頂点を目指して>という想いが一体になった場面と感じたからです。いやぁ、なんだか隔世の感がありますよ。勝負事にこだわらないスタンスに見えたかのんちゃんがまさか誰よりも強く「優勝」にこだわって、再スタートを切ることになるなんてね。
 その場面のかのんたちの台詞だけ、再現しておきましょう。20分30秒からの場面です、──
 かのん;そっか、こういうことなんだ。
 千砂都;かのんちゃん……?
 かのん;ちぃちゃん、私、くやしい。せっかく皆が協力してくれたのに、なにもお返しできなかった。皆が協力してくれたのに、なにも返せずお終いになっちゃった。[かのん、俯いて悔し涙をこぼす]
 可可;かのん……
 すみれ;また、全力で挑みましょう……
 れん;そうです。
 かのん;……勝ちたい……私、勝ちたい! 勝って、ここにいる皆を笑顔にしたい。やった! って、皆で喜びたい。私たちの歌で、Liella!の歌で、結ヶ丘の歌で、優勝したい! いや、──優勝しよう!!
 すみれ;当たり前でしょう!
 可可;Liella!はこんな所で終わりません!
 千砂都;私は最初からそのつもり。
 恋;結ヶ丘はいちばんの学校です。
 [円陣]
 かのん;結ヶ丘女子高等学校スクールアイドル、Liella! これからもっともっと沢山の人に歌を届けよう。Song foe me, Song for you,
 全員;Song for all!!
──以上。余計な説明は加えません。胸の熱くなる言葉でした。このあとに流れるエンディング「未来は風のように」のLiella!5人の調和の取れた、ある意味神々しいとさえいえるハーモニーがまた聞き惚れてしまうぐらいに美しいのですよ。
 「優勝しよう」──これはμ’sでもAqoursでもいわれてきた台詞ですが、やはりLiella!の場合がいちばん心にグサッと突き刺さりますね。名言であります。
 万全の体制で臨んだ、その東京大会。結果は残念ながら第2位に終わりました。正直なところ、放送前から東京大会突破はないだろうな、と思うていました。残り1話でそれをやったらかなり中途半端な終わり方となるだろうことは想像する以前の話であり、かというて正式アナウンスもされていない第2期へ持ち越すような演出なんて愚行としか言い様がありません。それは過去シリーズのように全13話で構成すべきであり、全12話で片附ける内容のはずであります。
 まぁ、結果的に放送回数が1話減ったことで、枝葉末節を切り棄て夾雑物を紛れこませることなく、綺麗に物語をまとめられた、と申しあげることができるでしょう。過去シリーズで大いなる瑕疵を刻みこんだ前例あるゆえに脚本をはじめとするスタッフ陣の暴走、迷走、独りよがりが不安視されていた『ラブライブ!スーパースター!!』でしたが、終わってみればじゅうぶん満足のゆく終わり方であり、また物語全体としてもじゅうぶん愉しめるものであった、と思います。
 第1話の冒頭から『ラブライブ!スーパースター!!』は多くの素晴らしい歌に彩られてきました。1曲1曲がメンバーの個性を映し出した、そうしてキャラクター/キャストの声質を活かした耳に残るもので、それは常に前に披露された曲のレヴェルを飛び越えたものであったのが更なる驚きを与えてくれました。どの曲がクライマックスで歌われたって、なんの不思議もないぐらいのクオリティ……歌も衣装も演出も。
 とはいえ、終わってみればやはり最後に歌われるのは、「Starlight Prologue」を置いて他にはありませんでした。かのんの伸びやかで澄み渡る歌声、可可の甘やかな声、すみれの芯の強い歌声、千砂都のリズミカルな声、恋のすべてをつなぎ止め包みこむような歌声、それらが調和したLiella!史上最強の曲賭して用意されて、最後の最後で披露されたのが、「Starlight Prologue」だったわけです。
 冬の場面で披露されたせいか、冬ソングとして受け止められている様子の「Starlight Prologue」ですが、μ'sの「Snow halation」の流れを汲むというよりはSaint Aqours Snowの「Awaken the power」の系譜に位置する曲、といえそうであります。おそらく曲の雰囲気やテンポがそう思わせるのでありましょう。とまれ早く音盤で聴きたいものであります。たぶんしばらくの間はヘヴィーローテーションすることになるのでしょう。
 それにしてもこの曲で優勝できないとは、なんたることか。可可や悠奈の口からも過去語られていたように、近年のスクールアイドル人気はうなぎ登りで数も以前に較べればかなり増えている由。それに伴って実力も飛躍的に向上してきており、ちょっとやそっとのことでは「ラブライブ!」大会を勝ち抜くことは困難であるという。
 それだけにこの曲を持ってしても破ることのできなかったサニーパッションがどれだけ高い壁になっているかを窺わせますが、わたくしはこれに納得のゆかない者であります。勘違いなさらぬように! わたくしが申しあげたいのは、サニパの歌もパフォーマンスも披露されることなく(誰かが観ている、という描写だけでもよかった)、また然にあの実力の程や人気の程を客観的に伝える情報が劇中にて皆無だったからであります。まるで存在しないものに戦いを挑んで、その相手を見ずして敗北の結果だけ聞かされた、いわばシャドーゲームに付き合わされたような気分なのであります。
 どうしてスタッフは、サニパのお膝元である神津島で、どれだけサニパが地元から支持されており、島興しにあたって期待をかけられているか、そうした描写を一切しなかったのであろう。ステージも学校の皆と一緒に作っている、という割には、かのんやすみれたちにステージを披露した際誰一人その場に居合わせなかった。それはなぜか。要するに納得させる材料がまるでない状態で、結果だけ知らされても「なんだかなぁ」なのである。学校の生徒とかのんたちを二言三言でも構わぬから接触させるとか、サニーフルーツのアイスを食べている店或いは宿にイヴェントのポスターが貼ってあるなどの演出があれば、どうにか溜飲もさげられようものを……。
 それだけ勝ち上がるのは大変なんですよ、ということをいいたかったのだろうが、まったくサニパ側の描写を欠いたのは偏に失敗であった。A-RISEやSaint Snow程頻繁でなくても構わないから、もう少しサニパのパフォーマンスを或る程度の尺で拝見したかったものであります。その点だけが、最終回で頗る不満に思うた点でありました。
 さて、今回の結果を承けて、第2期の存在が遂に確定した。このままオワコンにするつもりはないだろう。
 第2期ありきで物語が進んでいたのは途中から明白であったが、とりあえず胸を撫でおろしたのは、限られた話数でむりやり可可の帰国問題が詰めこまれなくてよかったな、ということ。これまでのシリーズが1期13話で構成されていたのが今回に限って12話構成になった理由は寡聞にして存じ上げないが、理由がどうあれ1話減ったことで枝葉末節を斬り捨てて幹だけ残し、ストレートな物語展開が出来ていたのではないか。可可の帰国問題はグループ存続を根本から揺るがす、即ち物語全体の方向性を決めてしまう大事な要素である。それを1話で解決しようとしなかったのは、英断であったろう。無印第1期最終話のことり留学の反省から来ているのかもしれない(あれがいちばんファンタジーなエピソードであったように思う)。第2期は可可の帰国問題を中心にして進んでゆくのだろう。
 とりあえず、第2期製作は決定でしょうね、そのスタートは来春『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期の終了から数ヶ月後、3年生になったLiella!を描く劇場版は再来年の春……は難しそうだから夏とか秋かな。引っ張って2023年正月とかになるかもしれないけれど。
 嗚呼、これで『ラブライブ!スーパースター!!』は終わってしまった。これから先は完全にフルハウス……ではないが、しばらくは虚脱状態に襲われそう。とはいえ、まだまだ書き残したことはある。この最終回に関しても書き切れていないことは幾つもあるのだ。東京大会進出が決まったと知った澁谷ファミリーの喜びようとか、Liella!の面々が会場に向かうときの様子とかね(とりあえずここでは、すみれ、名前を呼んでもらえて良かったね、とだけ涙ぐみながらいうておきましょう)。形の上では第12話最終回に関しては前編後編みたくなるのかもね、この感想文──但し、明日のお披露目は期待しないでください。
 また、結ヶ丘女子高等学校のその後判明した事実や新たに生じた疑問(恋ちゃんのお父さんが必要な金額を寄付してくれる! なにより入学希望者数が格段に増えて存続が決定!!)、あとこれは実際に書きかけたが迷走を始めたので切除した「ラブライブ!」大会運営への疑問とか、様々書きたいことはあるのであります。それらをこれからも書いて、お披露目してゆきます。
 愉しくて素敵な時間をありがとう、『ラブライブ!スーパースター!!』!!◆

第3178日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第11話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 「えーっ!?」
 第11話を鑑賞し終えていの一番に口をついて出たのが、この叫びでした。かのんのトラウマ克服回であることは前稿にて予測し、大方の予想通りでもあったのですが、まさか、ねぇ……。いや、なにが、って、歌う会場のことですよ。
 本話のサブタイトルの一部になった「あの場所」が第1話にてかのんが気絶したあの場所、合唱コンクールの会場となった場所であったことは、予告映像を観れば一目瞭然でした。わたくしだけかもしれませんが、そこが渋谷区内にある公共ホールである、と思いこんでいた……『ラブライブ!スーパースター!!』の舞台となるエリア、NHKホールを想起させるステージの様子と席数、等々により、そんな風に思うてしまうのは無理からぬところであろう、というのがわが弁明。
 がっ! まさかあのステージが一公立小学校の講堂であろうとは!! うーん、想定外でありました。現実味とか荒唐無稽とか、そんな言葉を口にするつもりはありません。良くも悪くも予想を裏切る斜め上の設定であった、と嘆息するに留めます。
 さて、第11話「もう一度、あの場所で」は前述の通り、澁谷かのんのトラウマ再発及び克服回となりました。
 第3話で解消されたかに見えたかのんの<人前に立つと歌えない>という、一種の強迫観念とも取れる症状は、たしかに本話で可可がいうように、「かのんは可可とステージに立って歌いました。あのときから一度だって歌えなくなったことはありません」でした(08分19秒〜08分26秒)。しかし、それは歌うとき、誰かが一緒にいたから。誰かが一緒にいることでかのんは「独りではない」と自分に暗示をかけて、ステージに立ってきたのがこれまでのステージ活動だったのです。
 それを劇中で指摘したのは、嵐千砂都でした。「ラブライブ!」東京大会の課題が「独唱」と知ったLiella! の面々(かのんを除く4人)がいっせいにかのんを見た(12分10秒)のは、過去回で作詞も作曲もグループ名も押しつけたときとは異なって、偏にかのんの歌唱力を評価してのことであり、「Liella! が始まったのは、かのんちゃんがあのとき歌ったから。可可ちゃんの想いに応えたから。──かのんちゃん以外いない(よ、歌えるのは)」(12分29秒-12分45秒)と千砂都が背中を押して、それに可可や恋、すみれが頷き、かのんもそれに応える覚悟を決めたからでありました。
 でも、それだけではトラウマの解消にはつながらなかった。それにはあと数段のステップをのぼらなくてはならない、しかも自分の足で。
 子供の頃からかのんのそばにいて、例の合唱コンクール事件もその様子は客席で見ていたであろう千砂都。それだからこそ、他の3人に較べてかのんが抱えた闇の底深さを知っている。これまで歌えてこれたのがなぜか、その理由にも心当たりがある。そこで千砂都が取った行動は──よっしゃ、ここは嫁のワタシが一肌脱ぐか、って具合です。実際のところ、第6話「夢見ていた」がかのんが千砂都を支える回であったのに対して、第11話は千砂都がかのんのために動く回となり、その点で好一対のエピソードとなったように感じられます。
 こういうとき、誰かがそばにいてくれる、って幸せです。それまでのことを知っていて、見守ってくれていた誰かがそばにいることは、強みになります。励みになります。勇気を与えられます。誰にでもそういう人はいると思う。いないよそんな人、という人であっても、案外と自分が知らないだけだと思います。千砂都にとってのかのんがまさに斯様な存在であり、かのんにとっての千砂都がまさしくそうした存在だったのです。
 必然的に他の3人の描写が薄くなってしまったことは否めませんが、その分論旨がすっきりして、展開もスピード感あり、かつ相応に説得力を持った第11話であった、というのがわたくしの率直な感想であります。
 かのんが独り、ステージへ向かう直前の場面は、とても印象的なシーンでした。千砂都との電話を終えたかのんが子供時代の自分をそこに見、皆を励ましているけれどその実、あのときの自分も不安を抱えこんでいたことを思い出し、むかしの自分から最後の一歩を踏み出す力をもらって、ステージへ歩んでゆくシーンです。
 17分48秒から19分40秒の場面です。曰く、──
 千砂都;(スマホが鳴っている)ん? かのんちゃん?
 かのん;ちぃちゃん。
 千砂都;どうしたの?
 かのん;ありがとね。私、みんながいたから歌えてた。それで良いと思ってた。でも、それじゃ駄目なんだよね。誰かを支えたり、力になるためには、ちぃちゃんが頑張ったみたいに、1人でやり遂げなきゃいけないんだよね。
 千砂都;うん……それに、1人じゃない。
 かのん;え?
 千砂都;いるはずだよ、あの頃のかのんちゃんが。──歌を全世界に響かせようとしていた、かのんちゃんが。
 かのん;私が……?
 小学校時代のかのん;みんな!
 [かのん、振り向くと、合唱コンクール直前のかのんが、みんなを励ましている]
 小学校時代のかのん;大丈夫だよ。歌は怖くない。楽しいものだよ。歌うのはとっても楽しいものだよ。みんなが頑張って練習してこられたのは、歌うことが楽しかったからでしょ? だから歌おう! 楽しく!
 小学校時代の合唱部メンバー;うん!!
 [メンバー、ステージに向かう。小学校時代のかのん、途端に不安そうな表情になり]
 小学校時代のかのん;……怖い……
 かのん;あっ……
 小学校時代のかのん;なんでだろう、怖いよ。
 [かのん、小学校時代の自分に歩み寄って、その前にしゃがみこむ]
 かのん;そう……怖かったんだ、あのときも。
 [小学校時代の自分の頬を撫でるかのん。不安で震えている小学校時代のかのん]
 かのん;それでも私は……大丈夫。大好きなんでしょ、歌? えへっ。
 [震えるのをやめた小学校時代のかのん、ステージへ向かって歩いてゆく。それを見送るかのん。そのあとを追うようにステージへ出てゆく、高校生のかのん]
──以上。
 そんな過去の自分との向き合いと、<嫁>嵐千砂都の内助の功あって──そこには当然、秘かに可可たち3人を呼び出しての根回しがあり、かのんを1人でステージに立たせて歌わせる、という荒療治があったわけですが──澁谷かのんは再び、トラウマ発祥の地に降臨(いや、言葉が相応しくない、というのはじゅうぶん承知しているんだ)してその透明感と安定感のある、そよ風のように耳を撫でる歌声を響かせるのでした。
 余談とはなりますが19分27秒のかのんの表情は、笑顔は、もう国宝級であります。無形文化財に指定しようぜ。慈悲と愛情にあふれた顔ですよ。第1話の時点ではこんな顔、見られるとは思わなかっただけに、この表情を見たときは胸のなかがじわっ、と温かくなってゆくのを感じましたね。スクリーンショットを撮ったのはいうまでもありません(どやっ)。
 かのんの独唱を聴くのは第1話、第2話以来のことですが、ここでかのんが独り披露したのは「私のSymphony 〜澁谷かのんver,〜」(20分00秒〜21分35秒)。これはLiella! のデビュー・シングル「始まりは君の空」のカップリング曲でした。わたくしにはこのタイミングでかのんがこの曲を歌う、ということに、なにかしらシンボリックなものを感じました。
 現実世界に於いてはLiella! が最初の一歩を踏み出した曲の1つを、劇中では本当の意味でかのんが歌えるようになるきっかけの歌として採用する──それは完全に過去のトラウマを千砂都の後方支援を受けながら自分の足で克服したかのんの、歌うことの喜び、1人だけど1人じゃない幸せを代弁した歌であった。或る意味で本話に於ける「私のSymphony」は女神ムーサの来臨、もしくは復活を告げる歌であった、ということができ、敷衍すればLiella! をμ’sの再来と擬えることもできそうではありませんか……勿論、相当に大袈裟な譬えになっているのは否定しません。
 これはわたくしの短評となりますが、南ことり、渡辺曜、上原歩夢、という、重い幼馴染みの系譜に列なるがゆえに、闇堕ち不可避と目されていた嵐千砂都でしたが、これまでの放送を追ってきた限りそんな心配はなさそうです。比較してみてもずいぶんとそのあたりの感情はバランス良く配分している、という印象を受けます。先達の3人が特殊事例のような気もしますが、いずれにせよ、このあたりのことも含めて千砂都については1回、別稿で書く必要がやはりあるなぁ。
 むろん、最後の最後まで気を抜けない=楽観視できないのが花田氏の脚本でありますから予断は許しませんが、まぁ残り2話で千砂都のかのんへの想いが急転直下することはありますまい。逆にこれをやったら或る意味、シリーズ最深の爪痕を残す所業と申せましょう。ストレートに暴挙と捉えるか、偉業と揶揄するか、そんな場面に遭遇してみないとなにもいえませんが──。
 さて、どうしても書いておきたいことが、あともう1つ。……恋ちゃん、貴女、いったい部室のパソコンでなにを見たのです? サイト自体は「Ladies’s wear store」でしたが、まるで人を誘うかのように貼られた特大のバナー、そこには「禁断のセカイ」の文字が(04分33秒)。
 バナーに描かれたその魅惑的なイラストに、葉月恋も年頃の女の子らしく興味が湧いたのでしょうか。生徒会長という立場、学校創立者の娘、Liella! のメンバー、等々の公的な顔と制服を脱いだ16歳の女の子による秘密の花園への抗いきれぬ関心がせめぎ合ったのでしょう。が、その拮抗は後者の勝利に終わった。だんだんと鼻息荒くしてゆき、指先を伸ばす恋は、一線を越えてバナーをクリック。その先にある世界を覗いてしまった……。
 嗚呼、果たしてそこにはどんな世界が広がっていたのでしょう。理事長からの呼び出しに怯える程のコンテンツが、そこにはあったのでしょうか……千反田えるではありませんが、わたくし、気になって仕方ありません。
 それはそれとして、このときの青山なぎさの演技はとっても良いですね。「ラブライブ!スーパースター!! Liella! 生放送」でお馴染みとなったぶっ壊れぶり、ポンコツぶりが本編で堪能できる日が来るとは! 2021年4月10日の配信にて平安名すみれを演じるペイトン尚未が、「なぎちゃんがどんどんわからなくなってゆく」と嘆いておりましたが、それを踏まえていえば、葉月恋がだんだん歴代生徒会長の色に染まってきている、と喜びもし、悲しみもし、今後に期待したくもなり、でもそうなってほしくはないなぁ、と思うてみたり。複雑であります。
 03分54秒から05分03秒の場面です。曰く、──
 [教室]
 理事長(校内放送);スクールアイドル部の皆さんにお伝えします。スクールアイドル部の部員は放課後、理事長室に来てください。繰り返します。スクールアイドル部の部員は放課後、理事長室に来てください。
 かのん;ん?
 ナナミ;もしかして表彰!?
 ココノ;だと良いけど……なんだか怒っていた気も……
 千砂都;なんだろう?
 恋;……はっ!!
 [廊下、階段下]
 恋;わたくしのせいです……。
 かのん;恋ちゃん……
 すみれ;恋が? なにしたの?
 恋;実はこの前部室に入ったら──
 [恋の回想、部室] 
 恋;パソコンが点いていまして──
 [恋;もう……ん?(パソコンの画面似目をやる。「Ladies’s wear store」のサイト、「禁断のセカイ」のバナーに目を留める)
 恋;ああ……(頬を赤らめて画面の前に屈みこみ、凝視する)
 だんだんと恋の顔にズームアップしてゆく。同時に恋の鼻息が荒くなってゆき、唇が引き結ばれてゆく。遂に意を決してバナーをクリックする恋。途端、羞恥が弾けて短い悲鳴(きゃあっ)をあげる。机の前でうなだれる恋]
 恋;興味本位で、つい……生徒会長ともあろう者が、あんなものを……(階段下の柱から崩れ落ちる)失格です停学です退学ですわたくしの人生終わりです……
 かのん;いや、流石にそれはバレてないんじゃ
──以上。
 このあと理事長室に5人が赴き、恋の杞憂は誤解とわかり(誰かにどんなページを見たのか、訊いてほしかった……)、かのんと千砂都の卒業した小学校からステージの依頼が来ていることを知らされる、という流れになります。
 さて、次回第12話「Song for All」でいよいよLiella! は東京大会に進出し、「ラブライブ!」本選へとコマを進めてゆく様子。残りの話数から逆算して決勝へ進み、結果を出すまでの描写はされないかもしれない。『ラブライブ!サンシャイン!!』第1期のように地区予選、今回であれば東京大会ですが、そのステージでのパフォーマンスが描かれて、そこでなにかしらの結果を出すことが想定されます(23分45秒からの澁谷ファミリーの祝福の場面を見ても、その想像は容易に立つ……かのんのお父さんって思ったより、あの、頬がふっくらしていませんか? 在宅の職業柄、そうなっても仕方ないか……リアルだな)。
 『ラブライブ!サンシャイン!!』を引き合いに出したのは偶然に過ぎませんが、そうしたことで悪夢が同時に甦ってきたことを告白いたします。その悪夢は『ラブライブ!サンシャイン!!』第1期最終話、「ラブライブ!」東海大会の会場にて出来した。Aqoursは絶対にミスが許されない、認められない舞台で、極めて非常識なことをやらかした……即ち、規定時間無視の寸劇を始めたり、動物が会場の客席に堂々といたり、突然応援団が席を立ってステージ前を占拠、ブレードを振りまくる、といったぐあいの、十中八九、大会規定から逸脱して叩かれるのも納得な行為をやらかしたのでした。演出、というひと言で片附けられてよいものでは断じてありません。
 嗚呼、どうかスタッフ諸氏よ、過去の失敗から学んでいてくれ。あの演出がどれだけバッシングを受けたか、あの演出ゆえにどれだけの人が『ラブライブ!サンシャイン!!』を見限ったか、反省していてくれ。そんな演出に頼る程、また安易にその程度しか思いつかない程、あなた方の脳ミソは枯渇してしまっているわけではあるまい。『ラブライブ!サンシャイン!!』の失敗から学んでくれ、『ラブライブ!サンシャイン!!』と同じ轍は踏まないでくれ、と、わたくしはそれだけを望んでいます。
 ちと暴走しちまったが、残り1週となった『ラブライブ!スーパースター!!』を愉しもう! 愛してるよ!!◆

第3171日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第10話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 前口上というわけではありませんが、まずは一言だけお話させてください。──いやぁ、まさかお披露目直後の放送回で認識を改めさせられるとは、思いもしませんでした、と。
 「第3168日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』;平安名すみれ、という人物について。〉」にてわたくしは、彼女のことをずいぶんと辛辣に書いてしまいました。まったく悪気も含むところもなく、ただこれまで思うていたことを隠さず書き留めただけなのでしたが、けっして後味の良いものではなかった。いつか書いてお披露目することを予定していたとはいえ、です。たぶん、すみれへの辛辣な調子は同類意識の為せる技であったのでしょう。
 すみれはどんなときでもショウ・ビジネスの世界への復帰を諦めていなかった。もういちど、かならずあの舞台に、あの世界に戻ってやる、──その揺るぎなき信念は見習うところがありました。すみれのしぶとさと諦めの悪さには脱帽であります。自分が似た経験を過去にして、いっときかいま見た世界への復帰を夢に描いて生きてきたわけですから、すみれを応援こそすれ、反発する気持ちを持つ必要はなかった──にもかかわらず斯様な文章を書いたのは、心のどこかですみれの強さに憧れを抱いていたからなのかもしれません。
 そんなことを考えさせられましたよ、今回の第10話「チェケラッ!」を観て。サブタイトルから完全に今回はギャグ回と思いこんでいたのに……油断してしまいました。でも、あのタイミングで件の原稿を出しておいて良かったな、という気持ちも一方にはあって、なんというか、うん、複雑な気分です。
 ──第4話もそうでしたがむしろ今回の方が、事実上の<すみれ回>というて良いでしょう。本話にて、すみれの挫折の根深さ、夢がかなわないことへの苛立ちと諦念、それでもわずかな希望を実現させるためにたゆまず続けてきた努力を描いて、まさしく──あまり好きな言葉ではないのですが──<神回>と称すに相応しいエピソードとなりました。
 本話を斯く呼ぶ理由はもう1つあって、それはすみれと可可の歴史的和解が描かれたことに起因する。大袈裟な表現でしょうか? 否、わたくしはそうは思わない。これは大きな前進でした。可可はどんな相手であっても、認めるべきは認めて接してきた;スクールアイドルへの真摯な気持ちと活動への姿勢があれば。
 すみれに対しても同じでした。加入時はいろいろありましたが、その後は減らず口をたたきながらもすみれの能力の高さには、常に一目置いていた様子も窺えました。それが円滑なスクールアイドル活動を営むためとだけは、到底思えない。たしかにスクールアイドルをアマチュアと言い切り、なにかにつけてショウ・ビジネス界での活動を鼻にかけたような発言が目立つすみれには可可、目の敵のように接していました。が、気持ちのどこかではすみれの存在を認めていたように思えます。
 それが今回、センター問題で一気に表面化し、可可の感情も爆発した。それはきっと、すみれの気持ちにわかるところがあったから。同時にそれは、すみれと可可の直接対決(減らず口ではない、本気の言い合い、と受け取っていたけると嬉しいな)の勃発をも意味しました。
 どうせ今回もダメなんだ。どれだけ頑張っても努力も夢もかなえられることはないんだ。これまでの自分を顧みればそんな風に思うてしまうても、致し方ないところでありましょう。そんなすみれの真情が吐露された台詞が、今回は2箇所ありました。ピックアップしましょう。
 1つは、新曲の衣装を着たすみれをセンターに置いて撮影された動画の評判が芳しくない、とかのんと千砂都が話しこんでいるところに現れたすれみが、その場を走り去る場面での、可可と交わす会話です。中庭にての場面、時間にして、13分30秒となります。曰く、──
 可可;なに逃げようとしてるですか?
 すみれ;え……。
 可可;可可は反対です。いちど決めた以上、あなたがセンターをやるべきです。
 すみれ;は?
 可可;聞こえなかったのですか? 衣装も作ったのですよ? 誰がなんというと関係ありません。センターはやるべきです。
 かのん;可可ちゃん……。
 すみれ;無理よ。──そんなこといってもわかってるの。どうせ最後はいつも私じゃなくなるんだから!
──以上。
 可可に行く手を阻まれる直前、中庭の階段を駆けのぼるすみれの横顔が映し出される。その絵を観て、ドキッ、としましたね。あの気丈なすみれが唇を引き結びんで泣くのをこらえて、悔しいという気持ちを露わにしていたからです。この描写1つですみれの挫折感の深さ、積み重ねてきた努力が報われてこなかったことから生じる無念が、伝わってくるように感じられたからでもあります。ああ、この人は本当に夢に向けて日々努力を積み重ねてきて、そのときそのときを全力で生きてきた人なんだ、と伝わってきました。白状すると、わたくしが宗旨替えをしたのはこの場面を一見したからなのであります……。
 「どうせ最後は私じゃなくなる」てふ台詞には、思わず嗟嘆してしまいます。深い溜め息をついてしまいます。こんな台詞、16歳の女の子がいっていい台詞じゃぁないですよ……。
 もう1つは可可の帰国問題に絡んだものですが、こんな大問題が出来しなければ可可とすみれの和解はあり得なかったかもしれない、とはなんとも哀しいものを感じます。16分57秒からの場面です。曰く、──
 可可;あなたのスクールアイドルへの想いはそんなものなのですか? 「ラブライブ!」で光を手に入れるのではなかったのですか!?
 すみれ;勝たなきゃいけないんでしょっ! (可可、たじろぐ。すみれ、涙を浮かべて可可に)あんた、絶対勝たなきゃいけないんでしょ?
 可可;……まさか……
 [走り去るすみれ]
 かのん;すみれちゃん!
 可可;待って!
 [あとを追う可可。正面玄関で追いつく]
 可可;待って!
 すみれ;うるさいわね、もう話は終わったでしょ?
 可可;さっきの可可の電話、聞いていましたね? 盗み聞きとはやはり、根性が曲がっています。
 すみれ;かのんたちは知ってるの?
 可可;……いいえ。
 すみれ;なんでいわないのよ。
 可可;可可のことを気にして、スクールアイドルをやって欲しくありません。
 すみれ;でも、勝たなきゃいけないんでしょ? 結果を出さなきゃ。だったら──
 可可;そのために、あなたがセンターが良いといってるのです。
 すみれ;なに意地になってんのよ。
 可可;意地になどなっていません。
 すみれ;なってるでしょ。本当は嫌なのに、かのんが勧めるから、とか、なんだかんだで練習しているから仕方なく、とか、可哀想、とか、練習しているところもこっそり見てたでしょ。全部わかってんのよ、あんたのことなんて。
 可可;なにもわかってませんよ? そんなことで可可が神聖な「ラブライブ!」のセンターを任せると思ってるのですか?
 すみれ;任せたでしょ、実際。
 可可;可可があなたに任せたのは、あなたが相応しいと思ったからです。練習を見て、その歌声を聞いて、Liella! のセンターに相応しいと思ったからです。それだけの力があなたにはあると思ったからです。
──以上。
 どうやらすみれは自己憐憫の度が過ぎるようであります。が、既に『ラブライブ!スーパースター!!』をここまで観てきたわたくしにはこの姿がナルシズムには映らぬのであります。仕方のない感情なのです。すみれはこれまで、この若さで幾つもの挫折を味わってきた。中心に立つことを夢見て、特別な意味合いを持つスポットライトを浴びるため自主練習を欠かすことなく、今日までやって来た。それは同時に周囲の声にならぬ声を聴き取り、ともすれば自分は望まれていない存在なのかもしれない、とまで思い詰める程になっていたのかもしれません。この頑ななまでの自己肯定感の低さは、そうしたあたりから出ているのかもしれません。
 とまれ、本話にて平安名すみれと唐可可の和解は果たされた。
 喫茶店でかのんに諭され、その夜こっそり神社へ足を向け、自主練中のすみれを観察する可可──夜に自主練していることは、すみれから聞いていたのかもしれませんね。あんがい神津島に渡っていたときに──。すみれの姿に思うところあり、可可はすみれがセンターに立つための衣装を用意した。
 その際の台詞こそそれまで通りの減らず口、けんか腰の口調だが、どこかすみれを認める調子が含まれていました。自主練風景を見たからなのか、第4話以後時折見せられていたすみれのポテンシャルの高さを不本意ながら認めていたゆえか、この時点ではまだ視聴者側には憶測でしかなかったけれど、終盤に於いてそれは可可の口から明言されました。それが上にも引いた、「可可があなたに任せたのは、あなたが相応しいと思ったからです。練習を見て、その歌声を聞いて、Liella! のセンターに相応しいと思ったからです」てふものでした。
 この台詞には胸を打たれました。シンプルな言葉なのに、心の奥にぶっささってくる強さといったら! 可可は誠、名言の宝庫であります。同時に迷言の宝庫でもありますが。この瞬間を以て可可とすみれの環はつながれ、互いを認め合い、初めて互いの名前を呼び捨てにし、そんな過程を観るから、エンディングでの2人の掛け合いもこれまでとは違った気持ちで観ることになるわけであります。
 まぁ、そんなこんなでLiella! は「ラブライブ!」東京南西地区予選に出場した。そこで披露された、すみれセンターの新曲「ノンフィクション!」はこれまでの曲調から一転してアダルトな曲でありました。平安名すみれという人の個性や表現力を引き出した、なかなかの名曲と思えます。
 これまでLiella! が披露してきたどの曲と較べても、趣の異なる曲といえましょう。Liella! のメンバーが皆、それぞれ違う意味で克服すべき過去(可可の場合は克服しなくてはならない、と現在進行形になるが)を経験しているだけに、このアダルトな曲がいっそう相応しく感じられるのであります。要するに、意外とLiella! に似合った曲なのだ。これは早いところ、是非にもフルヴァージョンで聴きたいな。
 16歳(15歳もいるが)という大人なんだか子供なんだか微妙な年頃の少女たちならではの危うさ、不安定さをプラスの方向に持っていった、戦略勝ちの1曲といえましょう。
 しかし、あのぉ……ですね、「ラブライブ!」東京南西地区予選の地区大会説明会で発表されたテーマのラップ要素は、いったいどこに? そもセンター;すみれでゆくと決まったきっかけは、部室で即効で披露したすみれのラップにメンバーがびっくり、「すみれちゃんで行こう!」となったのではなかったか? まぁ、どちらにせよ、すみれにぴったりな曲でありましたね。
 なお、本編では触れられていませんが、次回予告の一コマから判断する限り、Liella! はぶじ地区大会を突破して本戦にコマを進められた様子。Liella! と書かれた黒板を前に5人が「いやぁ、どうもどうも」なんてしている顔を見ていると、そうとしか思えません。
 すみれには妹がいた! とか、『ラブライブ!』と『ラブライブ!サンシャイン!!』に登場したアキバリポーターが本作ではシブヤリポーターとして登場! とか、「ラブライブ!」エントリー校のなかに国立音ノ木坂学院によく似た名称の学校があったなぁ、とか今回も様々なネタを披露してくれましたが、感想文の筆を擱く前にこの話だけはしておかなくてはなりません。
 残り3話となった『ラブライブ!スーパースター!!』が抱えて表面化した問題、即ち可可の帰国問題についてであります。
 兆しは第3話からありました。可可のマンションにて可可とかのんの他、千砂都がいて代フェスの打ち合わせをしていたときであります。
 上海にいる姉から電話がかかってきて、なにやら深刻な顔で話しこむ場面があった。鋭敏な視聴者(鍛えられている視聴者、ともいう)はここに『ラブライブ!』第1期最終話に於けることりの留学問題の影を感じて、まさか可可帰国するんじゃね? との憶測を交わしたのでした。その後、この類の描写がなかったことですっかり忘れていましたが、嗚呼、今回第10話に於いて遂にそれは現実のものとなって表面化した。
 どうやら可可が日本へ来るにあたっての事情は、そう単純ではなかったらしい。すくなくとも『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のエマ・ヴェルデのように家族から応援されての留学ではなかった様子。
 或る日、学校からの(塾からの?)帰り道、街角の大型ヴィジョンでサニパの歌い踊る光景を観て、日本にはこんなに素敵な人たちがいるんだ、スクールアイドルとはなんて素晴らしいんだろう、と感激した;それを回想しながらの、第3話での可可の発言を思い出してみましょう。曰く、「可可の家は厳しくて、勉強さえしていれば良いという家庭だった」と。
 このような環境で育った可可であります。必死になって両親を説得したとは想像できますが、その両親がすぐに折れて娘の希望をかなえたとは、ちょっと考えにくい(可可は末娘でありましょうか)。断固反対を続ける両親が娘の熱意と頑なさに根負けして、条件を出してきていたに違いありません。スクールアイドル活動を行うために日本へ留学することは構わない、但し一定期間内に結果を出すことが出来なかったらその際は、可可の意思や希望に関係なく中国へ帰国すること。そんな、条件。
 過程はともかく可可の留学は実現した。そこには姉も関与していたでありましょう。姉が両親と可可の間に立って、調停役を務めたフシはじゅうぶんにある。可可に連絡を取っているのが、ストーリー上現れた限りでは姉だけという事実が、それを証明しているのではないでしょうか。
 第10話での電話の相手は特定できませんが、翻訳アプリでの口調(「①うん。わかってるよ。」②「結果が出なかったら帰るって約束でしょ。ちゃんと覚えてるよ。」「③うん、じゃあ、いま練習で忙しいから切るね。」)から推測するに、これもまた姉でありましょう……上述の経緯が実際にあったとすれば、両親から連絡を入れてくるとはあまり考えられないし、可可の口調ももうちょっとトゲのあるものになるのではないかな。
 アニメ放送前にリリースされた「始まりは君の空」の特典Blu-rayでは、東京到着直前の可可の笑顔が映っていた。この笑顔の後ろには、憧れの日本に来た、という喜び以外に、背水の陣を敷いて母国をあとにしてきた可可の決意の固さもあったかもしれない。第10話を観てしまったいまは、この映像を観るときの気持ちがこれまでと変わってまいります。
 可可のスクールアイドル愛とスクールアイドル活動へ賭けるひたむきさの裏には、こうした<不退転の決意>があったのだ。そう考えると、これまでの可可の発言の数々──就中スクールアイドル活動を甘く見ている、軽く見ている(ように映る)すみれへの態度は、十分に納得できるものになってくるように思えます。
 ──次回第11話は「もう一度、あの場所で」。いよいよ本戦の様子。その会場の下見に訪れたらしいLiella!。5人の視線の先にあるステージは紅白や各歌番組、或いはN響の演奏会でお馴染みなNHKホールを想起させます──というか、NHKホールそのものであります。
 さて、『ラブライブ!スーパースター!!』に於いてこのステージはどんなエピソードを伴って出てきたか。「もう一度、」とはかのん目線での表現でありましょう。となると……第1話で小学生のかのんがソロパートを歌おうとして気絶したあの場所が、まさかの次のステージ? トラウマ発祥の地への帰還=トラウマ完全克服が次回の要、となりましょうか。
 かのんのトラウマ完全克服はどこかで明確に描かれなければならない課題でありました。すくなくともこれは、第1期で解決しておかねばならぬことです。これを解消して遂に立つ決戦のステージなんて、最高に熱い展開ではありませんか。嗚呼、どうか、可可の帰国問題と併せて性急かつ安易な解決策だけは採られませんように。◆

第3168日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』;平安名すみれ、という人物について。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 どんな世界にあっても、自分がかかわり合いを持つ集団のなかにはかならず1人は、気の合わない/性に合わない/ムシの好かない/どう頑張ったり努力しても好きになれない人物がいる。ホラ、自分の身のまわりを見回してごらん。1人、2人はそんな顔が思い浮かぶのでは? リアルな世界でなくても構わん。フィクションの世界にまで対象を広げたってよい。どうだろう?
 こんな書き出しで始めた以上、お前にはそうした人物がいるのか、ですって? 嗚呼、モナミ、いるなら白状してしまえ、と仰る? ──ならば告白しましょう、勿論おりますよ、と。
 既にタイトルに書いてしまっているので、これ以上名を伏し、先延ばしをし続けるのも限界と思うので白状しちまうが、その者の名は平安名すみれ、という。『ラブライブ!スーパースター!!』の登場人物、Liella! の一員である。
 本編は次の日曜日の放送回で第10話を迎える性質上、彼女の人物像はほぼ視聴者の知るところとなっている。要約すれば、近所の神社の一人娘で、幼少期は子役としてメディアへの出演敬虔ありと雖も徒花に終わり、とはいえその経験と挫折感の裏返しかプライドが高く、その言動の端々に周囲を見下す様子が窺える、Liella! 加入前は竹下通りでスカウト待ちに明け暮れた、「ギャラクシー!」が口癖の人。──これが平安名すみれなる人物の横顔である。
 ショウ・ビジネスの世界に身を置き、スポットライトを浴び、顔と名前が不特定多数に知られる喜びを味わい、長じて後も未練を抱いているすみれに、わたくしは同類の匂いを感じてしまう。ああした世界で知った快感は、なかなか忘れられるものではない。病みつきになってしまうのだ。いちどその味を知った快感を求めてやまぬ状態は、ドラッグやセックスにも相通ずるものがある、と、そう断言してよいだろう。すみれが希求してやまぬ「ショウ・ビジネスの世界でもういちど」は、つまるところそうした気持ちの表れである。
 過去に経験した法悦から逃げきれていない彼女に同類の匂いを嗅いでしまう、といま書いた。わたくしは、その一点に於いてのみ平安名すみれという人物を好く。言い換えればそれ以外の点は「NG」ということだ。
 ……それ以外の点、とは?
 そうね、たとえば場所を選ばず、誰彼構わず見下したり、噛みつくようなその態度。16才という年齢(09月28日生まれ)を考えれば現実の世界にもああした態度を取る蓮っ葉はいる。が、幾らアニメとはいえ、あれはチト異常だ。イジメをテーマにした作品ならすでにその顛末が見えているキャラクターだが、こちらはなんというても『ラブライブ!スーパースター!!』のメイン・キャラクターの1人で、Liella! のメンバーとなる人だ。斯様な人物は軒並みグループ加入後、マスコット的立ち位置を割り振られることになると、われらは過去のシリーズ作品を通じて知っている(敢えて実名は出さないが、パイセンとか堕天使とかね)。
 ──が、殊Liella! にかんしていえば、すみれをそんな立ち位置のキャラクターと捉えるのは、すこぶる抵抗を抱いてしまう。特別に理由はないが、そう言い切ることにブレーキがかかってしまうのだ。むしろ本作に於いて斯様な役割をあてがわれたのは、<異能の人>唐可可ではなかったか。そう考えるとすんなり納得できる部分なきにしも非ず、というか納得できる部分多々なのである。或いは、折衷策ではないが、その役割をすみれと可可2人で受け持っている、と考えることも可能だろう。エンディングの1コマや、第5話以後の掛け合いなど見ていると案外、こちらの見方の方が実態に近いかもしれない。
 現在『ラブライブ!スーパースター!!』は第9話まで放送済み。すみれが物語の進行に関わるようになってもう6話が経過している。この過程ですみれはどのような新しい顔を、われらに見せてくれただろうか。正直なところ、意外、とか、感心、とか、納得、とかいうような姿を目の当たりにした覚えはない。パイセンのように刺激剤となることもなければ、堕天使のような常識力を持つわけでもない、。その言動は初登場からいまに至るも変わることなく、イタイ人、である。
 ここで思い出すのは第7話の生徒会長選だ。正門前に(千砂都がバイトする)たこ焼き屋の車を持ってきて(持って来させ?)生徒たちにたこ焼き1パックを無料配布した結果、すみれは本命候補の葉月恋に130票差で大敗した。内訳は、葉月恋;110票、平安名すみれ;マイナス20票、である。
 たこ焼きのペナルティを含めての得票数だが、どちらへ転んでもすみれには勝ち目のない選挙だった。たこ焼きは追い打ちをかけたに過ぎない(すみれからたこ焼きのパックを受けとったときの音楽科の生徒の不快そうな表情を、思い出していただきたい)。票の総数と第8話での全校集会での生徒数が合わない疑問はさておき、ペナルティがなくてもすみれの有効票は精々が50票に満つかどうかで、票差はともかくとして敗北は必至であった──50票云々は普通科の1クラス全部とお義理票を上積みしてもこれぐらいであろう、という予想に基づいた数字である。
 ひらたくいえば、この数字がすみれの人望なのだ。第1話でスクールアイドルに誘われたときのかのんへの態度、第4話での駅への道を訊ねた通行人への態度がそのままクラスメイトへの態度とすれば、彼女に入れられた票は半分以上がお義理票と見做してよい。人望あり生徒会長に相応しいと衆目一致する澁谷かのんといっしょにスクールアイドル活動をしているから、人々は一票を彼女に投じたのだ。義理であって熟慮の末ではない。
 「なんでったらなんでなの!?」と結果を前に喚かれても、「いや、これが現実であり、結果はあなたのこれまでの言動が周囲にもたらした不快や嫌悪が裏返しになっただけで、いわば自業自得でしょ」としか言い様がない。元々人望のない者がいざ事を起こそう通して支持者を集めてまわっても、所詮は空振りに終わり、却って自分の不人気を思い知らされるだけと知れ。
 加えていえば同じ回、かのんが普通科生徒と教卓越しに話すシーンがあるが、かのんのサポーターのような顔ですみれは教卓の下に潜りこみ、かのんの台詞をいっしょになって考えていたが、相手に詰められて言葉を失い、加勢を求めて教卓の下を覗きこんだかのんから目をそらし、知らぬ存ぜぬを決めこんだ。この描写にはわたくしも言葉を失った。なんと好い加減な、と。そうして、わるい意味での感心もした。世渡りは上手そうだが、すぐに人が離れてゆくだろうな、この子からは、と。
 そも自分より立場が上の人、目上の人、年長者の前で腕組みしたり仁王立ちしていたりタメ口叩いているって、人としてどうなんだ。この子、常識がないな、とか、礼儀をご存じないのか、とか、天上天下唯我独尊を絵に描いた人だな、とすみれに感じるのは、まさにこうした描写に出喰わしたときなのである。斯く思うてしまうのがわたくしのさもしいサラリーマン根性のゆえばかりとは思いたくない。むしろ家庭でどう育てられたか、躾けられたか、ではないか。この、どう育てられたか、はこれまでのシリーズ作品でもそれを想像させる場面は幾らでも出てきた。
 翻って平安名すみれはどうであるか。地元に根附いた神社の娘であれば、手伝いなどで氏子の前に出ることあり、最低限異常の常識や礼儀は身に付きそうだが、どうも彼女を見ているとそんな気配は1ミリたりとも感じられない。厳しく見ているつもりはまったくない──にもかかわらず、なのだ。いずれにせよ、幼い頃から「ショウ・ビジネスの世界で生きてきた」ことが彼女の人間的成長を阻み、礼儀と常識を欠いた人に育ってしまったことは間違いなさそうである。
 ──平安名すみれは果たしてこの先、残りの4話でどのような行動を取るのか、どのようにグループへ貢献し、ショウ・ビジネス界での経験をグループへフィードバックしてゆくのか(そも彼女は当初、そんな期待を担わされていたはずだ。ex;第4話の可可の発言/但しお試し加入時)、或いは通常運転でいまと変わらずの存在であり続けるのだろうか。
 今後、すこしでもすみれを好きになれる要素、描写があるといいな。◆

第3166日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』の音盤と円盤を引き取ってまいりました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 興奮しております。鼻の下が伸び、鼻の穴が広がっています。むふぅっ、と鼻息荒いです。
 ようやっとコンビニで引き取ってまいりました。『ラブライブ!スーパースター!!』のオープニング「START!! True dreams」、エンディング「未来は風のように」、挿入歌第1弾「未来予報ハレルヤ!/Tiny Stars」と第2弾「常夏☆サンシャイン/Wish Song」の各音盤をそれぞれヴァージョン違いで、そうして忘れちゃならねぇBlu-ray第1巻の特装限定盤を。
 クタクタになって帰宅する途次の引取だったゆえ、開梱することなく寝てしまったのですが、今度の休みに──むりやりもぎ取った貴重な連休!!──誰にも邪魔されることない環境を整えて、視聴に臨もう。チェリビダッケに倣って、冷蔵庫からアルコール、チーズを少々。奥方様もご一緒に。
 その日の訪れが待ち遠しい。ふたたび鼻息荒くなってくる。鼻の下伸び鼻の穴広がり、その日が来るのが待ちきれない。◆

第3164日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第9話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 なんだか第9話「君たちの名前は?」は予定調和の展開になりましたね。グループ名を決めるとなれば、相応のテンプレ・ストーリーにならざるを得ないのかな。いや、むろんそれがまったく悪いわけではなく、むしろ今回はテンプレに徹してくれたお陰で脚本が暴走しないで済んだ、という、皮肉というか「なんだかなぁ」な結果になったことをわれらはひとまず良しとすべしでありましょう。
 前回予告で発覚した葉月恋の普通科制服問題、これはあっさり解決してしまいましたね。そうか、その手か、と。転科に伴う制服変更かと思いきや、まさか自由選択制とは……。すみれと恋の台詞(04分34秒〜04分45秒)から、──
 すみれ;まさか、あんたまで普通科に移ってこようって?
 恋;いえ、科によって制服で区別するのではなく、自由に選べるようにした方が良いと理事長から提案がありまして。
 ──以上。
 恐れ入った、の一言であります。
 でも、これはこれでアリか、とも思うたりして。考えようによってはいちばん現実的であります。学校側にしてみれば実に合理的な判断で、保護者の立場に立てば負担が軽減される最善の決定でありましょう。
 ただ、続くかのんの「私も音楽科の服、作ってもらおうかな」には、どうしてもドキリ、としてしまいます。歌えないというトラウマを完全に克服したいま、再び音楽科への未練が甦ってきたのかなぁ、と。しかしそれは杞憂だったようです。千砂都とのイチャイチャにも似たやり取りからは、未練云々というよりも単純にファッションを楽しむ、という気持ちの方が強い様子が窺えましたから。よかった、ここに至って再度のトラウマ発動なんて、シャレになりませんものね。
 制服が自由選択制になっただけで、恋までが普通科に転科して来たわけではなさそうです。いや、いろいろ想像してしまったのですよ。ホラ、音楽科の生徒たちのなかにはスクールアイドルを好きではない、良く思うていない、という人たちが不特定多数いるらしいことをわれらは、第1話での千砂都(15分25秒〜)の発言から知っているではないですか。実際、そう捉えられてもおかしくない口調で会話をしていた音楽科の生徒も、第4話にはいたでないですか(18分11秒〜)。
 そんななかにあって葉月恋、学校の運営事情も相俟って音楽科の生徒たち(の一部)から冷たい視線を浴び、四面楚歌に等しい状況に陥ってしまい、救いをかのんに、普通科に転科するという手段を講じて求めたのかなぁ、なんてね。想像してしまうたわけです。
 でもそうではなかった。良かった、良かった。安堵して胸を撫でおろします。
 ──さて、本題のグループ名考案から決定までの経緯を、以下に。
 そも始まりは「ラブライブ!」へのエントリーからだった。OP明けのAパート、可可による「ラブライブ!」講座が始まり、会場が近所でもある神宮競技場であることが判明。ではエントリーを、というときでした。ここでようやく彼女たちは気附くのです、自分たちのグループにはまだ名前がないことを。え、いまさら? とか思うのはやめましょう。
 06分12秒からのシーンです、──
 可可;あっ──あ、あ、あ、あ……。
 かのん;どうしたの?
 可可;あわわわわ……
 [椅子から立ちあがって可可のスマホを後ろから覗き見る4人]
 4人;ん?
 [可可のスマホの画面が映る。「ラブライブ!」エントリー画面、学校名には「結ヶ丘女子高等学校」とあるが、グループ名〔必須〕がブランクである]
 可可;結ヶ丘スクールアイドル部は……
 かのん;グループ名?
 恋;そういえばわたくしたちって、……
 すみれ;なんてグループ名なの?
 [5人の後頭部に、サブタイトル記載]
──以上。
 さあ、どうする? 今回は、というか『ラブライブ!スーパースター!!』に東條希はいない、先代グループもいない。名付け親になるべき存在はいないのだ。が、そこは流石に可可でありました。過去の有名スクールアイドルたちの事績はつぶさに知っている様子。だってあろうことか、この場で可可が引き合いに出したのが(名前こそ出していませんが)、すべての道を切り拓いた”あの”スクールアイドルだったのですから。
 08分18秒からのシーンです、──
 可可;思いつきました! たしかレジェンドスクールアイドルはかつて──
 [場面変わり、廊下。「おなまえ、募集シマース!」とかのんの似顔絵入りカードがスプリングで付けられた「結ヶ丘女子スクールアイドル部 グループ名募集箱が設置されている]
 可可;──こうして名前を募集したのです。[全員が一様に疑わしげな表情を浮かべているなか、一人可可だけが勝ち誇ったような顔でいるのが面白い。可愛らしい]
 かのん;本当に集まるかなぁ?
 すみれ;入ってもマトモなのはなさそうだけど。
 可可;大丈夫ですよ。こうしておけば週末には、──
 [数日後、からっぽの箱をかざして泣き顔の可可]
 可可;ゼロ~
 すみれ;すっからかんったらすっからかん。
 可可;うるさいです!
──以上。
 いやぁ、この様子を穂乃果が見たら大喜びし、海未は嘆息し、ことりは苦笑いし、希は大笑いするんだろうなぁ。
 余談はともかく、『ラブライブ!スーパースター!!』の時代、μ’sは「レジェンド」として語られる存在になっており、その活動、その練習、その歴史は──おそらくAqoursの時代以上の情報と逸話が、フェイクも含めて公になっていると想像できます。
 グループ名についても然りで、如何にして決まったのか、その発端、過程、結果までが知られているというのはそれだけμ’sの存在が「ラブライブ!」の根幹をなし、神聖視されていることの証左というてよいかもしれません。
 第4話で可可がいみじくも発言していた通り、「ラブライブ!」は国民的祭典に等しいイヴェントとなっており、スクールアイドル活動をしていなくてもその存在ぐらいは知っている大会であるのでしょう。実際、グループではいちばんそういうものから遠いところにいた恋までが、第9話時点で最低限の情報を把握しており、かつての出場校のことまで知っていたわけですから、過去情報へのアクセスはかなり容易になっていると考えるべきでしょう。
 このたび可可がμ’sというレジェンドスクールアイドルに触れたことで、μ’sメンバーの誰彼とかのんたちの邂逅を、かなわぬ夢と知りつつますます期待してしまうのでありますよ。むろん、それが実現してはならぬ夢物語であるのは承知しています。それでもわたくしはいまもう一度、μ’sメンバーが動き、喋るところを見てみたい。悲しいことに、いつまでもそんな夢の実現を願ってしまうのですよ。そういえば今回もかのんの背景に映っておりましたな、「COFFEE HONOKA」(19分24秒)。
 閑話休題。
 けっきょく、グループの名付け親はかのんであった。紆余曲折を経たとはいえ、やはりこの人に決めてもらわなければ締まりがつかない。
 作詞もグループ名も、メンバーやクラスメイトたちと話していてヒントを摑んだかのんが、帰宅して作業に取り組む一連の場面の核となるのが、かのんが父の書斎から辞書を見繕って部屋にこもり、作業に勤しむ場面──19分32秒からの場面です。
 父の書斎からフランス語辞典・新版や独和辞典、西日辞典、英語大辞典、現代中国語辞典(出版社名の下に中日辞典の文字あり。これはかつて第2話でかのんが作詞に使ったと同じ辞書である)を見繕い、夜っぴて作業して作詞と命名の両方をこなして見せたかのん。そのヴァイタリティと想像力と、体力と精神力は、たといアニメの描写とはいえわたくしも見習わなくてはならない。そうしてなによりも着目したいのが、その語学力なのであります。
 語学力? 然り、語学力である。ドイツ語とスペイン語は上述の通り独和辞典と西日辞典ゆえ問題はないが、フランス語辞典・新版(FRENCH dictionnaire Nouvelle édition)と英語大辞典(ENGLISH LANGUAGE ENCYCLOPEDIC DICTIONARY)はおそらくフランス語と英語で書かれた辞書である。それをいちおう使いこなせるだけの力量を持っているのですね、澁谷かのん嬢は。父の職業が中国語の翻訳家であることに加えて祖母がスペイン人という設定を持つかのんならではの辞書処理能力と申せましょう。わたくしは辞書オタクだから、こうした描写がなにより嬉しい。三度の飯よりも好きだ、美味い、というては家人にドヤされるけれど、ああ、こうした娘が欲しいや。
 また話が脱線しかけたが、かのんは外国語が或る程度はできる、と、そう考えてまったくおかしいところはないでしょう。スペイン人の祖母を持ち、おそらくは父がその血を引く。祖母がどこに住んでいるのか明らかにされていないが、存命ならば幼い頃から祖母宅に遊びに行ったりして、スペイン語のみならず欧米言語に馴染む機会はあったと考えてよいのではないでしょうか。
 父の蔵書とはいえ、それを読みこなし、使いこなすかのんは、外国語に関しては優秀な部類に入る人のように思います。こうした点からも澁谷かのんという人物が、歴代主人公の系譜を汲みつつも決定的に異種な人物であることが認められるのではないでしょうか。
 この一連の場面でちょっぴり嬉しかったのは、父の書斎に入って数冊の辞書を担いで出てきたとき、父と会って笑顔でなにか話していたときのかのんの表情。家族関係の良好なところが窺えたし、かのんの行動に父が理解を示している様子、応援している様子すら察することができます。これはなかなか良い描写、そうして珍しい描写でありました。娘と父が直接接して会話を交わす場面というのはこれまでに見られなかったものであるがゆえ。
 ──グループ名「Liella!」の意味はかのんの口から「結ぶ」という意味のフランス語だと説明された。それが葉月花の想いを汲んだ命名であることも同時に。
 20分30秒からのシーンです、──
 かのん;それでね、グループ名も思いついたんだ。
 [部室のホワイトボードにの文字]  恋;リエラ……ですか?  かのん;うん。フランス語で「結ぶ」って意味の言葉から作ってみたの。ほら、恋ちゃんのお母さんって学校を通して一つに結ばれるって想いから、「結ヶ丘」って名附けたでしょ?  恋;ええ。  かのん;私たちもそれと同じで、スクールアイドルを通していろんな色の光で結ばれてゆくといいな、って思ったんだ。  千砂都;光かぁ……。  [かのん、ホワイトボードの前を離れて窓へ歩いてゆく。それを見送りながら、]  恋&千砂都;ん?  [かのん、部室の窓を開けて]  かのん;赤だったり、青だったり、緑だったり、つながったり、結ばれてゆくなかで、私たち自身、想像しないような、いろんな色の光になってゆく。それはまだ何色でもない、私たちだからできること。始まったばかりのこの学校だからできること。  千砂都;私たちだから……  すみれ;[髪を指で巻きながら……って真姫ちゃんかいっ!]悪くないんじゃない? Liella!  恋;Liella!  千砂都;Liella!  可可;Liella!  かのん;Liella! ──以上。  ああ、なんと貴い光景、なんと貴い言葉たち。  このあと、可可によって命名記念の横断幕が校舎におろされ、無事「ラブライブ!」へのエントリーを果たすことになります。挿入歌「Dreaming Energy」は「ラブライブ!」出場に際して作られた曲ですので、まだそのステージ風景を見ることはできませんが、かのんたちの想いが詰まったこの歌を早く観てみたいものであります。  斯くしてかのんたち結ヶ丘スクールアイドル、もとい、Liella!は正式に始動し、「ラブライブ!」への舞台目指して本格稼働を始めたのです。その様子は来週の第10話で描かれるのでしょうが……次回「チェケラッ!!」の内容がまるで予想できない……。  今回のエンディング「未来は風のように」は、かのん抜きの4人で歌われておりました。いつもと違い、浮遊感と透明感のある、美しいハーモニーを聴かせていただきました。◆

第3158日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第8話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 遂に5人が揃った。まだグループに名前はないけれど、今宵ここに葉月恋が合流して、5人体制のグループ活動が幕を切って始まった。
 第8話「結ばれる想い」は第3話に匹敵する神回と称すべきエピソードで、新メンバー加入エピソードとしては歴代最高の感動をもたらしてくれた。恋推しにはこれ以上望むべくもない記念回で、おそらく『ラブライブ!スーパースター!!』全エピソードを通してもっとも記憶されて然るべき転換点であったろう。
 もし録画している人がいて、過去回を保存していて、時間が許すならば、第7話と第8話は連続して観るのが宜しい。両方を合わせて1つのエピソードと捉えるのがいちばん自然で、かつ全体像も細かな仕草や台詞も有機的につながっていることに気附かされるだろうから。Blu-rayでもDVDでも1巻2話収録という原則が崩されなければ、この第8話は、第7話と一緒に収められるはずだから、リリース後に観直したって勿論構わない。
 昨日の予告編でも書いたように、観進めるうちに胸のうちが熱くなってきて、同時に心も目も潤んできて、5人揃っての初ステージ終了後の青空に浮かんだサブタイトルが映し出されるときには、もう涙腺は決壊してこれまで経験したことのない感激に打たれたことを改めてここで、ご報告しておきたい。うぅん、アニメを観てこんな風な気持ちに襲われたのって、映画館で『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』以来ではないかなぁ……なんだ、この対極っぷり。
 それはさておき、第8話は前回ラスト、葉月邸での恋の告白から始まる。ここで恋の母、葉月花が学校創立にかけた想いの一端が娘の口から語られ、門前にて「このことは他の皆には話さないでほしい。不安にさせたり、入学したことを後悔させたくないから」とかのんたちにお願いするのですが、まだこの時点で、全校集会での発言への反省こそあれ、それによってより深まった溝、音楽科と普通科の対立を融和させる打開策は、恋のなかにはなかったと考えてよい。それがための発言であったろう。
 絵里同様に恋は1人で抱えこむタイプであるようだが、絵里と決定的に異なるのは、絵里に於ける希のポジションに立つ人物が恋にはいなかったことだ。もっとも、創立から数ヶ月の新設校、できたてほやほやの生徒会とあってはそれも宜なるかな、というところではあるが。
 ──ああ、それにしてもチビという名の恋の飼い犬がかのんにばかりじゃれついて、懐き、別れを惜しむのはどうしたわけだろう。第9話の予告でも、かのんの背中にもたれかかるチビの姿が確認できる。かのんの頬に汗が浮かんでいること、スマホで自撮りしている様子が気にかかるけれど、想いはチビの一方通行のようである。動物を飼ったことのある人なら覚えがあるかもしれないけれど、どうもそうした人の体にはペットの匂いが染みついている様子なのだ。具体的な臭いとして残っている、という意味ではなく、動物の鼻にはそれが感じられる、という意味での臭いが染みついているというのである。
 むかし、10代から20代前半までウサギを飼っていたことがあった。庭に放し飼いしていたせいで、ミニウサギとしてはずいぶんと長寿を保ち、周囲の人々に愛され、また賢くかつワイルドに育った子であるが、それが身罷って翌年かその翌年か、白樺湖へ旅行に行ったとき、湖畔のレジャーランドで一頭のポニーをあやす機会があった。家族の者が他にいたにもかかわらずそのポニーは、わたくしにだけ懐いてきて、離れるときは数メートルと雖も後についてきたのだ。そんな経験を持っているがために、かのんがコノハズクのマンマルを飼っていることでチビは彼女に特に懐いたのではあるまいか。過去の経験から、そんな風に思う。
 脱線した。
 このあとかのんたちは対立が激化する普通科と音楽科の生徒双方への折衝を試みたがあえなく撤退、予想以上に溝が深いことを否応なくわれら視聴者も知ることになりました。部室で見えないトンネルの出口を探るかのんたちの前に現れた、恋。そこで恋の口から衝撃の告白が飛び出す──かつて神宮音楽学校には廃校阻止を目的に創部された「学校アイドル部」があり、葉月花が学校アイドルとして活動していた、そうして自分も入学したらスクールアイドル活動を通して結ヶ丘女子高等学校の存続を図るつもりであった、と。
 まさに「えっ!?」である。学校アイドル部のプレートの謎は解け、花がそこで活動していた裏附けも取れた。「えっ!?」とは恋自身にスクールアイドル活動を始める意思があったことに対してである。可可ではないが、「あんなに嫌がってましたですのに?」だ。
 にもかかわらず、恋はどうして自分でスクールアイドルアイドル活動をすることなく、むしろかのんたちの活動を牽制し、水を差すような行為を続け、その一方で独り彼女たちの活動を複雑な表情で見守っていたのか。
 自分で活動しなかったのは、花がなに一つ、当時の記録を残さなかったことから、活動そのものを後悔していたのではないか、と邪推した結果である。かのんたちを(本人の言葉を借りれば)「邪魔をし続けてしまった」のは、これはわたくしの想像でしかないが、「好きだから」「やりたいから」「歌いたいから」という気持ちだけで活動開始をすることのできたかのんと可可(クーカー)への憧れと羨望は隠しきれず、またそうやって自由に活動をして結果も出している彼女たちへの嫉妬も、同時にあったのかもしれない。
 葉月恋は、とんでもなく重いものを背負わされた生徒会長であった。絵里にもダイヤにも菜々にもない重圧を、葉月恋はその細い肩に背負って、周囲の誤解を甘んじて受けながらひたすら学校のために毎日を生きてきた。或る意味で恋は、殉教者である。母の想い、母への想いを支えにして、茨に覆われたと映る道を歩こうとした。
 が、それを救う存在が現れた。勿論、澁谷かのんである。かのんとスクールアイドル活動を共にする唐可可と嵐千砂都、平安名すみれである。彼女たちが手を差し伸べたことで、恋は救われた。見えないトンネルの出口を探していたのはかのんたちばかりでなく、恋も同じだったのだ。かのんと恋が出会ったことで物語は大きく動き始め、道は交わり、出口を示す光が彼女たちの視界に映ったのである。そうして彼女たちは1つになり、新たな一歩を踏み出した──。
 恋の心を動かした、全校集会でのかのんの台詞を、以下に引用する。12分38秒からのシーンである、──
 かのん;葉月さん、私から話したいことがあるんですけど。
 恋;澁谷さん……
 理事長;良いでしょう。壇上に。
 かのん;[壇上に上がり]……うう、すごい注目されてる……。
 [「神宮音楽学校アイドル部 Diary」と表紙に書かれたノートを、恋にささげて見せるかのん。マイクを手にして]
 かのん;さっき、スクールアイドル同好会の部室でこのノートを見附けました。この学校ができる前、ここにあった神宮音楽学校学校の生徒たちが書いたものです。その生徒たちは廃校の危機が訪れたとき、アイドル活動で生徒を集めようとしたのです。そのときの日誌に、こう書いてあります。──
 『学校でアイドル活動を続けたけれど、けっきょく学校はなくなることになった。廃校は阻止できなかった。でも、私たちはなに一つ後悔していない。[恋の前に進み、ノートを開く]学校が一つになれたから。この活動を通じて、音楽を通じて、皆が結ばれたから。最高の学校を作りあげることができたから。』
 恋;お母様……
 かのん;『一緒に努力し、一緒に夢を見て、一緒に一喜一憂する。そんな奇跡のような時間を送ることができたから。だからわたしは、皆と約束した。結と文字を冠した学校を、かならずここにもう一度作る。音楽で結ばれる学校を、ここにもう一度作る。それが私の夢。どうしてもかなえたい夢。』──
 [マイクを置く]
 かのん;この学校を作った葉月さんのお母さんは、音楽で結ばれることを望んでいたんだよ。この学校は、その夢をかなえるための学校。普通科も音楽科も、心が結ばれている学校。スクールアイドルはお母さんにとって、最高の思い出だったんだよ。
 恋;最高の……思い出……[回想/第7話冒頭:恋の母;恋、スクールアイドルはお母さんの最高の思い出! かのんがいうたように、後悔していた顔ではない][母の言葉を思い出して、泣きじゃくる恋]
 可可;[ノート内写真で恋の母が着ていたスクールアイドルの制服]これも、ノートと一緒に。
 恋;お母様……[受けとって]お母様……!
 [千砂都から始まった拍手が講堂に広がってゆく]
──以上。
 これをきっかけに、普通科と音楽科の間にあったわだかまりは、おそらく完全にではないだろうけれど払拭された様子だ。というのもこのあとに続く生徒たちのシーンは、学園祭の準備に双方の科の生徒が共にあたる場面であったり、学園祭当日のステージ運営に勤しみ成功を労う場面であったりするのだから。
 その象徴のようになった場面が、かのんが「普通科も音楽科も、心が結ばれている学校」というた際に映し出される生徒が、Aパートでかのんたちに物言いしていた生徒たちであるところ。かのんの話を聞く彼女たちのなかにはこのとき、改心というわけではないだろうけれど、過去の自分たちの言動を顧みることはあったのだろう、と想像する。案外とこのときに映し出された生徒たちが集会後、率先して手を取り合って、普通科とか音楽科とかの別なく学園祭準備に励むことで、他の生徒たちが団結して事にあたるようになったのかもしれない、と考えると、とっても幸せな気持ちになる。
 いずれにせよ、恋の想いは実った。これまで記憶の彼方にあって思い出せなかった幼少時に聞いた母の言葉──アルバムを見て、「スクールアイドルはお母さんの最高の思い出!」というたときの母の表情の晴れやかな様を思い出したことで、ようやく彼女は自由に振る舞うことができるようになったと思う。そのあとに続く理事長の台詞を思い合わせると(「なにもいわないでほしい、って、ただあの子が自分で決めるのを見守っていてほしい、って(頼まれてたんだから)」)、恋は実は母の想いという名の下に理事長の掌で転がされていたような感、なきにしもあらずなのだけれど……ね。
 そうしていよいよかのんによる、恋の勧誘の場面である。シリーズで何度も繰り返されてきた恒例のシーンであるけれど、やはりこのシーンがなくては始まらないところがある。これは穂乃果による絵里勧誘のシーンと共に、メンバー加入としてはベストスリーに入るものではないか。けっして恋推しとか『ラブライブ!スーパースター!!』贔屓の気持ちからばかりいうのではない。
 17分06秒からのシーンである、──
 かのん;葉月さん。ううん、恋ちゃん。[恋に手を差し伸べるかのん]一緒にスクールアイドル、始めませんか?
 恋;いままで、澁谷さんたちの邪魔をし続けてしまったわたくしに、そのような資格は……
 かのん;私、恋ちゃんと一緒にスクールアイドルとして歌いたい。この学校のために。いや、この場所で作られたたくさんの想いのために。
 [中庭で学園祭準備をしていた生徒たちの前で、かのんたち4人に歩み寄ろうとしていったん足を止め、逡巡する恋。←この場面、好き]
 千砂都;大丈夫、できるよ。
 すみれ;素直じゃないわね。
 可可;私たちはいつでもファインファインですよ。
 [涙を拭う恋。そよ風が恋の背中を押すように吹いてくる。よろける恋、よ改めて前を見、かのんの手を取る]
──以上。
 このあたりが神回認定の絶対的根拠。神宮音楽学校と結ヶ丘女子高等学校、2つの学校を結びつけた「たくさんの想いのために」、一緒に歌おう、とかのんは提案する。もはや学校存続という目的を大きく飛び越えて、時代は違っても同じ場所で紡がれた想いをここで、私たちが1つに結び付けよう、とかのんはいう。
 それは当然、葉月花の想いを汲んだものとであると同時に、ここで音楽を通じて生まれたであろう様々な想いを受け止める大きな受け皿としての、スクールアイドルアイドル活動である。このあたりが神回認定の絶対的根拠、そうしてシリーズ全エピソードを通して最高峰の、至高のエピソードと信じて止まぬ絶対的根拠だ。
 そうして第8話では遂に(こればっかりやな)、あのシーンが再現される。ステージ前の円陣と掛け声である。ここについては四の五のいうまでもないから、手っ取り早くそのシーンの会話を再現、引用しよう。19分43秒からのシーンである、──
 恋;入学希望者、増えるでしょうか?
 かのん;正直いうと、わからない。けど、やるしかない。信じるしかない。
 恋;強いのですね、かのんさんは。
 かのん;そんなことないよ。ただ、私ね。始まりの瞬間が好きなの。
 恋;え?
 かのん;そうだ、(かのん、ピースサインを前に出す。)
 恋;なんです?
 かのん;せっかくだから、やってみようと思って。
 可可;うわぁー、もしかして! やります! 可可、夢見ていました!!
 千砂都;うぃっす、じゃ駄目なの?
 可可;スクールアイドルですから!
 かのん;この学校を、歌で結んでゆこう。
 [構図そのままで舞台と衣装が変わる。学園祭のステージ直前である。]
 かのん;1!
 可可;2!
 すみれ;3!
 千砂都;4!
 恋;5!
 かのん;結ヶ岡女子高校スクールアイドル部、ソング・フォー・ミー、ソング・フォー・ユー、──
 5人;ソング・フォー・オール!!
──以上。
 こうして披露されたのが、〈Wish Song〉。第1話の〈未来予報ハレルヤ〉、第3話の〈Tiny Stars〉、第6話の〈常夏☆サンシャイン〉と来て、またしても神品というより他ない1曲が披露された。しかも歌詞の一節、「きみにはもう、涙は似合わないよ」。これ、恋にささげるにこれ以上はないぐらい相応しい一節ではないか。
 5人揃っての初めての歌となった〈Wish Song〉は恋をあたたかく迎え入れ、これまで頑なであり過ぎて凍りついていた恋の心を溶かす、雪解を知らせ、春の訪れを知らせる歌である。この場面でのかのんの表情が慈母の如くで、非常に神々しい。これからの5人の活動は大いに期待の持てるものと思わせる場面でもあった。
 どうしてもこれだけは、と、最後に触れておきたいことがある。円陣を組んだ際の、可可の表情と台詞「うわぁー、もしかして! やります! 可可、夢見ていました!!」である。
 本話は恋の加入までが前面に押し出されて、そちらにばかり目が行きがちであったが、可可のこの台詞を聞いたとき、そうして輝かしいまでの喜びの表情を目撃して、当然の如く思い至ったことがある。
 そうだ、この瞬間をいちばん待ちわびていたのは、待ち望んでいたのは、いちばん夢に見ていたのは、われらライバーではなく可可だったに違いない。上海にいたときから可可は、いつの日か自分がスクールアイドルアイドルを結成してステージで仲間と共に歌い、踊り、喜びと苦労を分かち合うことを夢見ていた子であった。
 そのシンボルが、彼女のなかではライヴ前の円陣と掛け声であったのだ。ようやく夢が実現したことを、可可はこの瞬間、大いに実感したに相違ない。だから、上に引いた台詞であったのだ……。忘れてはならない。『ラブライブ!スーパースター!!』というこの物語は、可可の純粋で一途な(時に暴走しがちな)気持ちと行動から始まったのだ。『ラブライブ!スーパースター!!』最大の功労者である可可に、神の愛と恵みを。
 ──次回第9話は「君たちの名は?」。いよいよグループ名が決まる。Liella! というグループ名が決まる。名附け親は誰か? プロジェクト・スタートから間もなくアナウンスされた名前の由来がそのまま劇中で披露されるとなると、名附け親は恋である可能性が非常に高いけれど、勿論、かのんである可能性も可可である可能性も、ある。申し訳ないが千砂都とすみれは、その役に就くことはないだろう。まずは来週の放送を待ちわびて、その発端と過程を楽しもう。
 予告では既に恋は、普通科の制服を着ていた……これまでの確執を過去のものにするため、格差意識の象徴ともいえた音楽科の制服を撤廃して、普通科の制服に統一した? それとも単純に、千砂都同様恋も普通科に転科してきた? 音楽科の廃科はまずあり得まい。こちらも来週のお楽しみ、か。
 メンバーが5人揃った以上、次週からは「ラブライブ!」エントリーに向けての、いわば第2章の始まりとなることは必至。いよいよである。途中でμ’sやAqoursが言及されたら嬉しいね。◆

第3157日目2/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第8話;その予告編のようなもの。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 タイトル通りの予告であります。第8話「結ばれる想い」は鑑賞していて、徐々に涙腺が緩み、最後のステージ後の青空に現れたサブタイトルにいたって涙がポロリ、ポロリ、と零れ落ちてしまいました。なんという神回!!!
 学校創立者の娘であり、母の思いを直接汲み取ってきた立場ゆえに、葉月恋は苦しめられた。その苦しみ、呪縛から解放されるまでの表情と、かのんの差し伸べた手を取ったあとの表情は、まるで違う。独りで背負いこまなくて済むようになった分、これからの恋に、期待。
 シリーズ過去作を持ち出すことは控えたいが、それでもこれに関してはいわねばならない。即ち、歴代の誰よりも学校というものに囚われ、自由になれない気持ちを抱き続けてしまったキャラクターが、この葉月恋である、と。
 5人揃っての初めての歌、「Wish Song」はそんな恋をあたたかく迎え入れ、これまで頑なであり過ぎて凍りついていた恋の心を溶かす、雪解を知らせ、春の訪れを知らせる歌でありました。◆
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