第0081日目 〈王様流〈禁じ手〉の使い方━━S.キング『コロラド・キッド』に寄せて〉 [日々の思い・独り言]

 スティーヴン・キングの『コロラド・キッド』を、本日16時55分に読了。
 読んでいる間も、読み終えたあとも、奇妙な謎が晴れない物語だった。このスッキリしなさ加減がやはりキングの小説であり、それでも読後の充足をもたらしてくれるあたりも、やはりキングの小説。
 この手の小説にはカチリとした結末が求められる━━この手の小説を量産するなら結末なくして編集者には渡せない。だが、そこはキング。敢えて禁じ手を用いて、謎を謎のまま提示するのを選んだ。いみじくも終盤に至って老記者に、「こういった記事(ストーリー)が物語(ストーリー)である必要はない」(P209)と言わしめたように。〈語られる話〉には必ずしも綺麗な起承転結はいらない、ということか。しかし、これは実作者の立場にいると、なかなかむずかしいものなのである。
 巻を閉じてふと思う、〈未解決犯罪〉物語(コールドケース・ストーリー)の一つの展開の道筋を、『コロラド・キッド』は示している、と。「世界はコロラド・キッドに満ちている」(「あとがき」P223)なら、こんな〈騙し〉のテクニックを駆使した小説も大歓迎だ。
 原書〝THE COLORADO KID〟は二〇〇五年十月、“Hard-Case Crime”シリーズの一冊としてペーパーバック・オリジナルで刊行。邦訳は新潮文庫から、《ダーク・タワー》シリーズ刊行記念の読者プレゼント、プレミア・ブックとして当選者に贈られた(非売品)。(新)古書店やオークションで発見したら、万難を排してでも(もちろん、懐と相談の上で)入手すべし━━但し、合法的に。◆

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