第0535日目 〈別れのキスは他でやれ〉 [日々の思い・独り言]

 某駅の改札前にて或る恋人たち、濃密なる後朝の接吻したり。
 人みな斯く思ひ給ふ、「おいヤメテクレよ、混んでるんだからさ」と、
 「ただでさえ人身事故で電車遅れているのに、これ以上改札混雑させないでくれよ」と。
 駅員諸氏、見て見ぬふりしつつ横目でチラ見し、
 「早く終らねぇかな」と、ほとほと参り顔したる也。
 されど、さんさんか斯く思ひき。曰く、「なんだかいいな、この二人」
 フィクションなんか束になっても敵わぬ光景ぞ、とゆめ訪れることなき幸せに憧憬頻り。
 だがな、と多くの者みな斯く諫め言したり。曰く、
 「そこの外国人、デジカメ向けるのやめようぜ。マナー違反じゃ」と。
 ゆえに件の恋人たちに、目撃者は忠告めいて斯く独り言したる、
 「別れのキスは他でやれ」と。◆

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