第0628日目 〈ヨブ記第7章:〈ヨブと三人の友の議論 一〉4/11〉 [ヨブ記]

 ヨブ記第7章です。

 ヨブ7:1-21〈ヨブと三人の友の議論 一〉4/11
 (ヨブは続ける、━━)

 思うのだが、人生とは兵役に等しいのではないか。傭兵の如く日々を過ごし、慰みばかりの報酬を得る。━━それが人生というものではあるまいか。与えられた嗣業の日々は望みもないまま過ぎてゆく。
 目覚めている間は、わが身を蝕む苦しみから逃れ得ぬ。なら、眠ってしまえばどうか? 否、なにも変わらない。眠りのなかでも神よ、あなたは、夢を以て私を戦かせ、幻を以て私を脅かす。
 神よ、あなたにとって人間がどれ程のものだというのか。殊に私ヨブが、どれだけの者だというのか。なぜ私から苦しみを取り除き、罪を赦してくれないのか。人間は塵から生まれて塵に帰る。そうしたら幾等あなたとて、私を探し出すことはできない。

 「わたしの魂は息を奪われることを願い/骨にとどまるよりも死を選ぶ。/もうたくさんだ、いつまでも生きていたくない。/ほうっておいてください/わたしの一生は空しいのです。」(ヨブ7:15-16)



 これまで既に我らはヨブの嘆きを見てきました。が、今日の章こそ「ヨブ記」に於けるヨブの告白の基調音となる。
 以後は、どれだけ激越な告白(とここでは仮に呼んでおきますが、むろん、そんな生易しいものではありません)が出て来たとしても、本章の変奏に過ぎない。その変奏の豊かさと深みは━━突飛な比較で恐縮ですが━━、大バッハの《ゴルドベルク変奏曲》やベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》を想起させます。
 別ないい方をすれば、「ヨブ記」のいちばんのポイントは本章にこそあり、ここをじっくり読んでおけばヨブを見舞った災いとそれについての彼の嘆きにまつわるカンドコがわかる、と申しても言い過ぎではないと思います。
 なお、本章には、さんさんかが「ヨブ記」でいちばん好きな文言が出て来ます。ノートを終わらせるに当たって、引いておきます。曰く、━━
 「忘れないでください/わたしの命は風にすぎないことを。」(ヨブ7:7)  



 予定通り『津軽』読了。残りの時間は梨木香歩のエッセイ集『春になったら苺を摘みに』(新潮文庫)を読む。この人の文章は、透明感があってよい。内容も、それに劣らずよい。ファンなのであります。◆
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