第1054日目 〈これを踏み台とし、高みへ昇られたし;DSCH特集〉 [日々の思い・独り言]

 ショスタコーヴィチはピアノ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲をそれぞれ2曲ずつ書いた。録音も、20世紀生まれの作曲家としては最もある方の部類に入るだろう。今回は、この協奏曲を聴く。チョイスしたのは、意外な掘り出し物を含んでいたBRILLIANTの2枚組。先にデータを記しておくと━━
 ピアノ協奏曲は両作品とも、ソロにクリスティアーナ・オルティッツ、伴奏はベルグルンド=ボーンマス響(1975年。EMIからのライセンス音源)。
 ヴァイオリン協奏曲はオイストラフのソロは同じで、第1番がムラヴィンスキー=レニングラード・フィル(1956年11月)、第2番はロジェストヴェンスキー=モスクワ・フィル(1968年9月。ライヴ)。
 チェロ協奏曲は両作品とも、アレクサンドル・イヴァンシュキンのソロ、ポリャンスキー=モスクワ響による演奏(1997年。オード・レコードからのライセンス音源)。
 で、さっき掘り出し物と書いたのは、このチェロ協奏曲なのだ。すっかり気に入ってしまった。イヴァンシュキンのチェロは、ずっしりと腹に響いてくる低音が魅力で、野放図でありつつ線を崩さぬ端正さを備えた、実にインテリジェンスな演奏と感じ入った。モスクワ響の分厚いサウンドも独奏チェロの響きとよく調和しており、素直に「これは良いものを聴けた」と思う。
 ヴァイオリン協奏曲は両曲共に万人納得の凄演。特に第1番はマスターピース的演奏とうてよい。よくぞこの録音を採ってくれた、と制作者には感謝の一言も述べたくなってしまう。ムラヴィンスキー程この曲を理想的にサポートできた指揮者もいないだろう。前述のVc協奏曲と併せ、是非に聴いてもらいたい。
 停滞しがちで生彩を欠くピアノ協奏曲の選択については疑問ありと雖も、全体的にこれがショスタコーヴィチ入門に最適なセットであることに変わりはない。これからはこの一組を踏み台にして好みの名演、自分一人の名演奏を見附ける旅に出ればよい。
 BRILLIANTのこのセットが貴方にとって、ショスタコーヴィチ入門の“雪解け”となりますように。◆

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