第1339日目 〈ヨナ書第1章:〈ヨナの逃亡〉with身じろぎしないで、惑わされることなく、〉 [ヨナ書]

 ヨナ書第1章です。

 ヨナ1:1-16〈ヨナの逃亡〉
 アミタイの子ヨナを預言者として召命した主が、ニネベに行ってわたしがお前に語る言葉を告げよ、といった。ヨナは、これに従わず、船を見附けて、反対方向のタルシシュへ逃げた。すたこらさっさ、西へと逃げた。
 その様子を見た主は、海に大きな風を吹かせた。船は大揺れに揺れ、船員は慌てふためき、右往左往し、銘々の神に助けを祈った。ヨナは、といえば、船内の混乱をよそに、船倉で一人ぐっすりと眠りこけていた。船長はそれを見咎め、ヨナを叩き起こし、お前も自分の神に助けを祈れ、と詰った。
 そのうちに誰かがいった、こんな暴風が起きる原因を作ったのは誰か、くじではっきりさせようではないか、と。すると、ヨナがくじに当たった。皆がかれを囲んで訊ねた。いったいお前はどこの誰で、なにをしでかしたのだ。ヨナが自分はヘブライ人で主の命令に逆らってタルシシュへ逃げる途中なのだ、と白状すると、船長以下の船員たちはびっくり仰天してしまった。そうして、お前はなんてことをしてくれたのだ、と口々にぶうたれた。
 海を鎮めるにはどうしたらよいだろう、と誰かがいった。そんならわたくしを海へ放りこめばよい、わたくしが主の命令に逆らったからこの船は暴風に見舞われているのだ、とヨナはいった。
 取り敢えず船員たちは船を近くの陸へ戻そうとした。が、海はますます荒れるばかりだった。万策尽きたかれらは天に命乞いをし、人柱を立てたからとてわれらを責めないでくれ、と許しを求めた。それから、せーの、せっ、でヨナを荒れ狂う海へ投げこんだ。 
 ――斯くして海は鎮まり、船員たちは主を畏れていけにえをささげ、誓いを立てたのであった。

 タルシシュという地名はソロモン王の神殿建築の挿話でも登場してお馴染みです。ではタルシシュとはどこなのか? これには2説あり、1つは小アジアの付け根に当たるタルスス(現在のトルコ共和国にタルサスという地名があります)とする説、もう1つはスペイン南部のタルテッソスがそれである、という説。わたくしは、船団を保有する程の海洋国であるということと、本書での暴風に見舞われたときの種々の描写などを鑑みて、以前同様にタルシシュはスペイン南部のタルテッソスであろうか、という立場を取ります。
 また、「前夜」でも触れましたが、「ヨナ書」に出るニネベはアッシリア時代のニネベというよりペルシア時代のニネベであるまいか、とする考えもある旨ご紹介しました。ヨナの行状を知った船員たちは、イスラエルの神が諸国へ知らしめた業の数々、もしくは畏れというものについて、多少は知っていた様子が窺えます。「いけにえをささげて誓いを立てた」という文言は信仰を補強するための加筆かもしれません。が、船員たちの行動、或いは第3章で見るニネベの民と王の悔い改めの様子などを併せると、やはりこれはペルシア時代の話ではないか、という気がしてくるのであります。ところで「誓い」ってなんなのでしょうね?
 腕の立つ人が筆を執れば、「ヨナ書」は第一級のエンターテインメント小説に仕立て上げられるでしょう。物語としてたいへん優れており、あちこちに想像の余地が残されている。P.G.ウッドハウスやA.A.ミルン、H.スレッサー、否、わが国にもミッション系の学校を卒業してユーモア小説の道へ進んだ佐々木邦のような人がいる。翻訳の経験を活かして小説の筆を執ってもらいたかったが村岡花子でもよい。そうした人たちに「ヨナ書」再創造の筆を執ってもらいたかったな、と、つくづく本書を読むようになってから見果てぬ夢を見るようになりました。或いは自分がやってみようか、と大それたことを考えてみたりも……。それだけ「ヨナ書」には物語として深化させられる部分がある、と信じるのであります。

 昨日は失礼しました。視力は回復、支障なく日常生活に戻れました。



 レイ・ブラッドベリ『キリマンジャロ・マシーン』(ハヤカワ文庫NV)を持っていたかどうか、わからない。迷ったけれど、取り敢えず買ってきた。恩田陸『ネクロポリス』(朝日新聞社)の単行本と一緒に。合計315円。ふらふらゆらゆら、黒ビールの誘惑を敢然と退けて帰宅してすぐさま書棚をチェック、<買い戻しブラッドベリ・コレクション>にダブリなしを確認して、まずは、ほっ、と一息。
 帰り道。夜になると、風がとっても強かった。立っていられるのがやっとな南からの強風。でも、この吹きすさぶ荒々しい風のなか、南西の方角を向き、独りぼっちで立っていると、ふしぎと鍛えあげられる気持ちになれた。身じろぎしないで、惑わされることなく、待ち続けよう。雄々しくあれ、心を強くせよ。
 曙のように姿を現す方(M)、太陽のように輝き、月のように美しく、旗を掲げた軍勢のように恐ろしい方(M)の訪れを待ち望もう。それはあなた。わたくしを刻みつけてください、あなたの心に徴として、あなたの胸に腕に徴として。◆

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