第1772日目 〈A.E.コッパード『郵便局と蛇』を買いました;読むのは、残念、しばらく先になる。〉 [日々の思い・独り言]

 不動産会社に勤めていていた頃、夏期休暇と年末年始の休暇が楽しみでならなかった。ついでにいえば、販売現地まで1-2時間ぐらいかかる物件の担当になるのも、まんざら嫌ではなかった。休暇の間は勿論、現地からの帰り道はたっぷりと読書に費やすことができたからだ。そんな時分に、国書刊行会の《魔法の本棚》シリーズのA.E.コッパード『郵便局と蛇』を読んだ。
 いまは部屋がぐちゃぐちゃなのでその本を引っ張り出して、当時のことなど懐かしむことに障りあるけれど、ずいぶん切々とした読後感を抱いたのは覚えている。以来、アンソロジーに載るコッパードの短編を読んで、再びまとまった形で読むことができればいいのだがな、と倩思うていたら、光文社古典新訳文庫から南条竹則の訳で、『天来の美酒/消えちゃった』というリリカルな作品集が出た。2009年刊。これはちょうど年末近くに書店へ並び、これ幸いと正月休みに耽読した覚えがある。──改めて感想を書くこともあろうからいまは差し控えるけれど、集中では「天来の美酒」と「去りし王国の姫君」、「天国の鐘を鳴らせ」が良かった。
 それから約4年半。正直、コッパードの作品について特に熱心になることも執心することもなく過ごしてきた。或る日、漫然と情報誌で新刊文庫をチェックしていると、かつて10年以上前に読み耽った『郵便局と蛇』がちくま文庫から再刊される、という。あの、切々とした読後感が思い出される。発売から数日経って購入した本書だが、実をいえば、まだどの一編も読めないでいる。何編かについては懐かしい思いも手伝って目を通したが、いまなおちゃんと最初から最後まで、一巻を読み倒せずにいる。……理由は、おわかりですね?
 どうやら新しく文庫になった『郵便局と蛇』も、元版や『天来の美酒/消えちゃった』同様、休暇や長距離(?)通勤などまとまった時間のなかでないと心の向かぬもののようである。察するところ、コッパードの作品をまとまって読むのは、心のなかがすっきりと片附いていることと世俗から完全遊離して読書に没入できる時間の両方が必要なのかも。拙い物言いで恐縮だが、そんな風にわたくしは思うている。本書を年末年始の読書用に取り置いて楽しみとしていることの言い訳と思わば、思え。否定はしない。
 Twitterでは今回のコッパードの本の感想が既に散見、一段落したようだ。わたくしはそれに乗り遅れてしまったけれど、買った本はすぐに読まねばならぬ決まりはないし、万人にそれが可能なわけではない。有給休暇の消化も兼ねて少し長く取る予定の年末年始の休暇まで『郵便局と蛇』はお預けだ。残念である。が、『郵便局と蛇』については年明けに感想をお披露目させていただくことは、ほぼ決定事項となっている。
 わたくしにとってA.E.コッパードの作品集は、年の瀬とお正月の時間と空気のなかで読むのが、いちばんしっくりくる。◆

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