第2479日目 〈ずっと以前にお披露目した小説の原稿を発見したこと。〉 [日々の思い・独り言]

 東日本大震災の起こる直前のことです。当時、わたくしはとても無謀なことを本ブログにて実施いたしました。古くからの読者諸兄はご記憶にあるかもしれないけれど、プロット不完全、結末不明、未完結の短編──リストラされた会社員と喫茶店のメイドのお話を、約1週間にわたって連載したのです。
 どうしてこのようなものを書こうと思い至ったのか、記録がないので皆目不明なのですが、毎日続きを書くことで精神的に追いこまれたものの、未発掘の遺跡か化石を自分一人の手で丹念に掘り起こして地中に埋もれた姿を明らかにしてゆくことの愉しさ、面白さを同時に味わったような覚えはあります。思えばあの頃は「毎日更新」という義務に最も忠実でした……。
 どうしてこんな以前の話題を持ち出したかといえば、過日(必要に迫られて)行っていた部屋の掃除の際、引き出しからこの短編を印刷した紙がクリアファイルに入って出てきたのです。お披露目直後から手直しをしてきっと再公開する、と息巻き、また宣言していた通り、印刷された紙には随所に赤ペンが入っています。
 否、朱筆が入っている、とはちと控えめな表現かも。実質的に改稿という方が正しいか。お披露目当時の文章は半分ぐらい訂正されてまったく新しい展開になっている箇所もあるし、そもそもきちんと固まっていなかった設定を練り直してそれに基づいた文章が赤ペンで書かれている。そんな意味では殆ど面目を一新した作品に仕上がっている──と胸を張っていいたいのですが、申し訳ない、その作業は中途で放り出されております。聖書読書に専念していったのか、自分を取り巻く環境に変化があったのか、それとも単に飽きて引き出しに仕舞いこんだのか……たしかなことはわたくしも覚えておりません。
 瑕疵だらけの短編だけれど、これは個人的にも思い入れのある作品。勿論、まだ改稿途中だから完成した暁には、投げ出してシュレッダーに掛けたくなる程の愚作と判断を下しているかもしれません。それでも、すくなくとも現時点では大事に保護して慈しみ、行く末を見守ってやりたい小説なのであります。
 そろそろ勘の良い読者諸兄は察しているかもしれない。今日のこの文章自体が件の短編──「人生は斯くの如し(ヘンリー・キングの詩より)」──の改稿が終わってお披露目されるときに備えた、いわば橋頭堡の役割を果たしていることを。もっとも、改稿版のお披露目がいつになるのか、作者たるわたくしにもさっぱりわからないのですが。えへ。
 正直なところを告白すれば、現在連載中の長編小説『ザ・ライジング』が完結した後、如何な手段を用いて本ブログの延命措置を謀ってゆくべきか、今後の主たる柱をどのようなものにすれば良いか、未だ決めかねている部分があります。そんななかでこの短編のお披露目が果たす役割は、延命措置の一手段以外のなにものでもないかもしれない。が、かりに繋ぎ役に過ぎないとしても胸を張って、自分の名前で発表するに恥じるところのない作品に仕上げられれば本望であります。
 さて、それでは改稿の続きに取り掛かろう。その前に、朱筆部分の解読しなくっちゃ、だな。◆

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