第2862日目 〈”あなた”が“ここ”にいればいいのに。wish you were hear.〉 [日々の思い・独り言]

 もう来週でわたくしはここからいなくなるのである。残念でならぬ。上のウケや覚えがどうあれ、六本木一丁目での仕事は愉しかった。作業に没頭して、あっ、という間に時間が経ってしまう感覚、作業繁忙だと残業願い出たくなる程に充実した気持ちなど、じつに何年振りか。多少の手空きな時間が生じるのは仕方ないとしても、それがそのまま無意味な暇を持て余すことにつながるわけではない。やることがある、というのは幸せなことである。
 今日は金曜日、令和02年02月21日仏滅。わずかに仕事が途切れている間、わたくしは刹那夢想の世界へ入りこむ。下の階までエレヴェーターで降り、そこから地下鉄の改札がある階まで違うエレヴェーターで降りる。すると、エレヴェーター・ホールに、”あなた”がいるのだ。どこかで食事する約束でもしたのだろうか。近くまで来たら退勤の時刻だったので、不意討ち喰らわすように待ち伏せ……もとい、待っていてくれたのか。勿論、あなた独りではない。親がいて、子供と孫がいる。これから先は火曜日に日附が変わるその瞬間まで、幸せだけがわたくしにはある──。
 が、現実は然に非ず。そこには誰もいない、何事もない。群衆のなかのロビンソン・クルーソーとは、わたくしのことだ。ああ、”あなた”が“ここ”にいればいいのに。wish you were hear.
 わたくしは泉ガーデンをあとにして、いずみ坂から道なりにアークヒルズ一帯へと、歩いてゆく。もしかするとどこかにひょっこり、麻布御用邸跡碑に遭遇するのではないか、と淡い期待を抱きつつ。アーク・カラヤン広場からテレビ朝日の前を過ぎて、サントリー・ホールの懐かしい扉を溜め息と共に眺めて、またここで音楽を聴けるようになるのだろうか、と思うてみてから、またぐるぐると坂を降りて階段を登り、六本木一丁目から溜池山王へ至り、高層マンションなど仰ぎ見て「東京に住みたい、このエリアに住みたい」と心底より希望しているうちに、この場所;赤坂インターシティAirヘ辿り着き、地下1階吹き抜けの丸テーブルにて上階にあるスターバックスで買ったコーヒーを飲みながら、ちと寒さを感じながら、モレスキンの手帳に本稿を書き綴っている。
 麻布御用邸の跡は見附けられなかった。なにかしらのサインになる碑は視界に映らなかった。無念である。が、道すがら見附けた公園内の案内板に、かすかな希望をつなげるかもしれない。昭和13年と平成21年の地図を並べて掲げる案内板が、あったのだ。同じ案内板には周辺にある坂の由来が記されてある。それを、写真に撮った。帰宅してからiMacの画面で見れば、なにかしらの発見があるだろうか、と期待して。結論;発見はなかった。やれやれである。
 為すを望んだ予定は、斯くしてあっさりと済んでしまった。これからわたくしはどうするか。──ああ、そうか。考えるまでもなかった。わたくしはいま、どこにいる? そう、”あなた”に所縁ある場所に近接する地域で、わたくしはいまこうして呆けている。思い出の場所へ足を向け、いつまでこの世に留まらねばならぬのか、せめてもの繰り言を述ぶか。哀れその人、哀れその魂。◆

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