第2995日目 〈耳が聞こえているうちにしておきたいことはありますか?〉 [日々の思い・独り言]

 医師の問うに曰く、耳が聞こえているうちにしておきたいことはありますか、と。いや、そんなこと言われてもねぇ……。その日が来るのはわかっちゃいたが、いざ目の前に可能性として突きつけられるとね、はて……? としか返事のしようがないわけですよ。
 ここ数日で聞こえる音域が狭まったように思う。それまで聞こえていた音域がカットされて、それを視覚化して映像の画面比率にたとえるならば、健聴であった頃が画面比率4:3のスタンダードサイズ、突発性難聴と滲出種性中耳炎を発症してからが画面比率16:9のワイドサイズ、そうしてここ数日が画面比率2.35:1のシネスコサイズ、となろうか。健聴時とくらべていまはその半分ぐらいしか聞こえていない、とも言う。
 耳を聾さんばかりの高い耳鳴りに加えて、ここ2年ぐらいは聞こえなかった地唸りのような音までが復活して、正直なところ、結構辛い。朝起きるのも家を出るのも仕事に行くのも、最初の一歩を踏み出すまでがやたらとしんどい。まぁそれでも行ったら行ったで仕事は好きだし、まぁ、日によっては逢えるわけだし、厭なことばかりなわけではないのだけれど。……仕事の始め方と一緒で最初の一鍬が大事なのだ……。
 それでもわたくしの耳はまだ世界を感じることができている。わたくしの耳はまだ好きな人の声を聴き取ることができている。それはとっても素晴らしいこと、感謝すべきこと。たとい聞こえる音域が狭くなったとはいえ、まだ失聴したわけではない。わたくしはけっして絶望しない。最後の一音が聞こえるだけになったとしても、わたくしは希望を棄てない。
 病院からの帰り道道、まわりの車や自転車、歩行者を避けるため裏道を歩きながら、ぼんやりと考えた。耳が聞こえているうちにしておきたいことはありますか? ある、とわたくしは答える。第3000日目のブログ原稿と、本ブログ最終日のための原稿を完全な状態で用意しておくこと。耳が聞こえなくることで人間関係には大きな支障が生じるだろうから、そのときの悲しみに備えておくこと。。
 わたくしは毎日、自分のなかで自分の一部がすこしずつ死んでゆくのを感じています。◆

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