第3139日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』の感想はこんな風に書いています。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 小説や映画の感想なら書けるけれど、マンガやアニメはどんな風に書いたらよいのか、さっぱりであった。媒体が変わるだけでなにも、特に変わるところはない、そう了解していても、執った筆が途端に鈍るのは、やはり気負いがあるせいか。
 毎話お披露目中の『ラブライブ!スーパースター!!』(以下『LLSS』と略すことがある)の感想文は、元より目算あっての書き物ではなく、なんとなくの手遊びに始まったのがいまは頭を悩ませながらも書くことを愉しんでいる、というのが正直なところ。毎回感想を認めているところから当方の夢中ぶり、読者諸兄には一端なりともおわかりいただければ幸い、幸い。
 今日は幾分か趣向を変えて、かねて予告していた<『LLSS』の感想文を書くにあたってこんな手順を踏んでいる>という、どれだけの集客(閲覧者)を見込めるかわからぬ舞台裏ツアーのアテンダント気分で本稿を書いている。お退屈になってしまわれたら申し訳ないが、お付き合い願えれば、と思う。

「実際の執筆の過程は、もちろん主題の選択や当初の構想によって異なりますが、わたしの小説すべての来歴が分析されるなら、平均的な手順から、次の一連の規則が導き出せるでしょう。」
──H.P.ラヴクラフト「怪奇小説の執筆について」より
『ラヴクラフト全集』第4巻P314 大瀧啓裕・訳 創元推理文庫 1985/11

 ①すべては日曜日19時からの本放送を録画することから始まる。
 録画したものを当日中乃至は月曜日のうちに、かならず1回は観ておく。このとき、心に浮かんだ様々な感想の類を走り書きすることはあっても精々が二言、三言。目的はあくまで最新話の内容把握にある。最初の視聴では「感想をメモする」行為はあくまで二の次、三の次の作業だ。
 地上波、しかもNHKでの放送とあってニュース速報や災害情報のテロップが挿入されることは間々あるが、そんなことに目くじら立てて怨嗟罵倒の言葉をあげるのは詮ないことだ。リアルタイム放送当時の記録として、貴重な証言として保存しておくのが最善といえよう。

 ②観直して、メモを取る。
 一時停止、巻き戻し、スロー再生、時に字幕スーパーの助けを借りて、片っ端からメモを取ってゆく。メモは紙片に書きつけることもあれば、Macのテキストエディットへ打ちこんでゆくこともある。
 何分何秒の、誰の、どんな台詞、どんな場面、どんなシチュエーションが琴線に触れ、それによってどんな思いが湧いたのか。──どんな些細なことであっても、まともな文章になっていなくても、こじつけに過ぎなかったりまるで見当違いであったとしても、落ち着いて読み返せば支離滅裂気味であったりしても、とりあえずは心に浮かんだこと、引っ掛かったことはすべて、取捨選択することなく片っ端からメモしてゆく。
 メモは自家製のシナリオを兼ねる。これまでも『ラブライブ!スーパースター!!』感想文で登場人物の会話(と必要と判断した最小限のト書き)を再現してきた。この会話は、すべてまだどうにか機能してくれている耳でのヒアリングもしくは字幕スーパーのお世話になって書き起こしたものだ。斯様にト書きであったりシチュエーションも付け足しての再現であるせいか、どうしてもメモの分量は多くなる。使うかどうか、使えるか否かはこの時点ではまだわからない。
 ポイントは最新話を観て自分がなにを思うたか、どんな場面、どんな台詞に心が動いたか、である。
 この見直し作業は、可能であれば当日中乃至は月曜日のうちに行ってしまうのが、ベストだろう。初見の印象がまだ残っている間に観直した方が、最初に抱いた感想の再点検などがまだ鮮明なうちに行えるからだ。翌週火曜日の昼からYouTubeを始めとする動画配信サービスにて最新話が観られるようになるのだが、配信の始まる前にこの作業を済ませてしまうのが個人的にはオススメである。

 ③メモを点検する。
 次は録画を観返すことなく、観ながら作ったメモだけを頼りに最新話を脳内再生し、エピソードの構成や登場人物たちの動き、会話、描写、背景美術などを能う限り正確に甦らせる。そうすることで作品を自分のなかへ取りこみ、同時にトピックの洗い出し作業の呼び水とする。
 この段階で不安要素があったり、確認事項が生じた場合は、勿論躊躇うことなく録画、もしくはYouTubeの配信を観て解消、解決にこれ努める。

 ④第一稿の執筆に取り掛かる。
 ようやくMacの出番である。Pagesを開き、実際にキーボードを叩き始めるのだが、わたくしの場合は専らMacBookAirでの執筆が多い。というのも、iMacはYouTubeを最大画面にし、配信の始まった『ラブライブ!スーパースター!!』最新話を再生するためのマシンと化すためである。
 稀にモレスキンに第一稿を書いたりするが、Macに打ち直してみたら殆ど別物となるケースが大概だ。
 作られたメモを基に第一稿の執筆はされる。この段階では既にメモからなにを取り、なにを捨てるか、概ね決まっているので執筆が大きく停滞したり、まるごと捨てて一から書き直すような事態は、まず生じない。
 なかなか的確な言葉を思い浮かばなかったり、その場に相応しい表現が思い浮かばずウンウン唸ることはあると雖も、そうした問題は遅かれ早かれ解決する。これは経験から導き出された楽観でもあろう。
 なによりもこの段階で重要なのは、どんなことがあっても最後まで書くことだ。どんな文章でもそうだが、どんなに拙くても最後まで書けていれば<推敲>、<改稿>という名の下にブラッシュアップしてゆくことができるのだから。

 ⑤推敲する。
 文字通りのこと。
 短時間で効率的に、能率的に、他人様の目に触れても耐えられる感想文になるまで、繰り返し書き直す。誤字脱字を正し、用語用法の正確性に注意を配り、表記のブレをなくすだけでなく、より相応しい言葉や表現等々ヘの置き換えが可能であればどんどん訂正してゆく。
「必要な場合、あるいは望ましい場合は、全体に加筆訂正をほどこし、最善の配列が見つかるまで、発端から帰結にいたるまでさまざまに書きかえる。」
 「語彙、統語法、文章のリズム、段落わけ、語調、(中略)その他さまざまな要素に注意を払い、小説全体を書き直す。」
──H.P.ラヴクラフト「怪奇小説の執筆について」より
『ラヴクラフト全集』第4巻P315-6 前掲書


 ⑥リンクを貼って、投稿する。
 全工程の9割弱は終わった。が、だからというて気を緩めてはならない。
 ここでは本文中のサブタイトルにYouTubeのURLを埋めこむ。そのあとで確認作業を行う。プレヴュー画面を開いて、きちんとリンクが機能しているかを確かめる作業である。リンクをクリックして当該URLの画面が開いたら、URLの埋めこみ作業は正常に完了したということだ。
 これが済んだらプレヴュー画面を閉じて、公開日時とTwitterへの通知を設定して保存。この予約投稿の手続まで済ませたら、本当の意味で感想文の執筆、それにまつわるエトセトラは終わりだ。

 お気附きの方もあると思うが本稿、『ラブライブ!スーパースター!!』の感想文を書くにあたっての手順を明文化したものであるのみならず、ラヴクラフトのエッセイ「怪奇小説の執筆について」を多分に意識したものになっている。
 別のところでもお話ししたと記憶するが、わたくしはラヴクラフトの小説よりもエッセイや評論、書簡を愛読、偏愛してやまぬ者だ。書簡はちょっと脇に置いて、HPLのノンフィクションで10代の頃から鍾愛した作物はといえば、『文学における超自然的恐怖』と『読書の指針』、そうしてこの『怪奇小説の執筆について』の3編。
 本稿の第一稿は昨日、仕事帰りのスターバックスでモレスキンに一気呵成に筆を走らせたものだが、Macに打ちこんで読み返すとどうにも締まりのない文章に思えた。推敲にあたって手順の項目を立てた形を思い付いた際、即座に意識にのぼってきたのが件のラヴクラフトのエッセイだったのだ。
 途中に引用を挟んだ文章になったのは、そうした所以あってのことである。

 ──『ラブライブ!スーパースター!!』の感想文は、試行錯誤しながらこんな手順で書いてきた。もっと効率的な方法もあるのだろうけれど、わたくしにはこうした方法(書き方)はいちばん性に合っている様子。どうにかして個性というものを出してみたいと思うているけれど、なかなかこれが難しい。◆


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