第3145日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第6話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]
改めて『ラブライブ!』は友情の物語でもあるのだな、と実感させられた第6話「夢見ていた」でありました。新たな出会いによって結ばれた友情、犬猿の仲と称されるもその実……という友情、そうしてむかしから育まれてきてより堅く結ばれた友情、……。
これまでの9人から5人に減らしたことで生まれた最大のメリットは、丁寧に描かれた人間関係の掘りさげである。始まった当初こそ戸惑いと不安が入り交じっておりましたが、特に9人いなければ『ラブライブ!』ではない、というわけでもない。むしろ5人になったことで物語の密度が濃くなり、各々の関係性や内面の描写がより丁寧に描かれるようになりました。
それを如実に表したのが第6話に於けるかのんと千砂都、シリーズ通じて定番な組み合わせとなった幼馴染みの2人だった。そうして彼女たちが子供の頃から育んできた友情、互いの気持ちは、もしかすると視聴者が考えていたよりも堅く結ばれたものであり、また、シリーズでいちばん深く関係性が掘りさげられたものだったように考えます。
本稿は前回に続いて、澁谷かのんと嵐千砂都の絆、相手への感情など触れてゆきましょう。今回はシナリオの再現が多くを占めるかもしれませんが、あらかじめその旨ご承知置きください。
第6話は千砂都の回想から始まりました。近所であってもはじめて遊びに来た公園で遊んでいると、以前からそこを遊び場にしていた女の子3人から吊し上げに遭ってしまいます。どうやら縄張りを荒らされたことで生じた諍いであったでありましょう。その結果、自分たちの縄張りを荒らした罰として、いじめっ子連(この場合はどうしてもそういういい方になってしまうなぁ)は千砂都の髪留め紐を取りあげてしまう──と、ここで貴重な光景をわれらは拝むことができます。片方のみながら千砂都の髪下ろしシーンが見られるためであります。もうなんというか、可愛いとしかいい様がありません(00分19秒)。
懸命に取り返そうとするもだんだん涙目になってくるのは仕方ないところ。子供ですもん、女の子ですもん。いじめっ子の一人に指摘されてバカにされるも千砂都は、「泣いてないもん!」と抗う。この場面ですが初見では、よくある反応だよね、と見過ごしてしまうのですが、だんだん本話を観てゆくとこれが伏線と申しましょうか、千砂都の原動力の1つになっていることに気附かされるはずであります。
第5話でかのんが子供時代を回想して、千砂都が自分に宣言というか誓ったことがあったのを覚えておられるでしょうか。「私、かのんちゃんができないことをできるようになる」という台詞ですが、第6話での回想シーンはいずれも先程の「泣いてないもん!」とこの台詞の背景と理由を語るものとなります。
いじめっ子連に取られた髪留め紐を取り返そうとあがくも千砂都の心はもう崩壊寸前でした。そこに駆けつけたのが、かのん。あわやこらえきれずに泣き出しそうになるかと思われた瞬間に、助けに駆けつけるかのんが、やたらカッコイイのです(00分48秒)。いじめっ子連の前に毅然と立ち塞がり、「ちぃちゃんをいじめちゃダメ! ちぃちゃんの大事なもの、いますぐ返しなさいよっ!」というかのん(00分52秒-00分59秒)、やはりこの人は弱い者の立場に立つことのできる<お姉ちゃん>気質の人なんだな、と納得させられたことであります。
00分48秒からのシーンです、──
[回想]
かのん;こらーっ!!
(公園の入り口から走ってくるかのん。それを見る千砂都といじめっ子連)
千砂都;かのんちゃん……
(千砂都といじめっ子連の間に割って入る)
かのん;ちぃちゃんをいじめちゃダメ!
いじめっ子A;なんなの、あんた!?
かのん;いいから、ちぃちゃんの大事なもの、いますぐ返しなさいよ!!
いじめっ子A;いらない!
(去ってゆくいじめっ子連。ブランコに坐る千早都の髪を団子にして、取り返した紐でまとめるかのん)
かのん;よし。
千砂都;ありがとう。でも、仕返しされるかも。
かのん;大丈夫。ちぃちゃんのことは私が守るから。困ったら私を呼んで。
千砂都;かのんちゃん……。
[千砂都 モノローグ]
千砂都;私はこのとき思った。このままじゃ嫌だって。いつかかのんちゃんを助けられるようになりたい。いつか必ず。
──と。
駆けつけてくるかのんにいじめっ子連といっしょに目を向ける千砂都にとってはまさしく騎兵隊の登場、いじめっ子連には想定外の援軍の出現だったのでしょうね。
併せてこのゼウス・エクス・マキナ的な登場の仕方、もはや様々な物語に於いて紀元前よりお馴染みとなったものだが、あらためてこうやって正面切って使われると妙な感動さえ覚えさせられます。そんな御託はともかく、駆けつけるかのんの格好良さに改めて、彼女に惚れ直した人も多いのでは。わたくしもその1人であります。もっとも惚れ直すとはいうてもこのときのかのん、小学校に上がっているかどうかも不明な年齢なんですけれどね。
このあと、代フェスの会場になり、第5話で千砂都がかのんに誓ったステージでの場面になるのですが、第5話を観たとき気になっていたこと──千砂都のスカートの膝小僧が汚れていた理由は、いじめっ子連と争ったときにできた汚れだったのか、と納得させられたことも、併せてお伝えしておきます。
それにしても幼少時のかのんと千砂都、単体でいても目を引きますが2人揃って横に並ぶとなんとも神々しさが増したコンビ(カップル?)になりますね。最強クラスの幼馴染みかもしれません。
かのんと千砂都の結びつきの固さ、相手への想い、そうした点が表現された台詞を、以下に再現しましょう。
まずはBパート、12分00秒-16分59秒の場面です。ここは結ヶ丘女子高等学校音楽科のレッスン室と中庭を舞台にした、千砂都と葉月恋の会話です。
余談ながらこの場面のなかで、ようやく<恋ポンコツ化への道>が定められたように感じます。コロンボ刑事ばりの行動を披露したばかりでなく、なんともいえぬ絶妙なボケ具合が相俟って歴代生徒会長の系譜の後継者にふさわしい人物と化していっております……なかの人の壊れっぷりもまた見事なものでありますから(ex;【2021年4月10日配信】ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 ~私たち、デビューしました!~)、歴代の系譜が仮になくともその道は既定路線であったように思われてなりません。青山なぎさは葉月恋を演じるべくしてこの世界に舞い降りた人、と申しあげてよいと思います。
脱線しました。上記時間帯の、千砂都と恋の会話です。曰く、──
恋;おはようございます。
千砂都;わぁ、すごいね。
恋;以前、フィギュアスケートもやっていたので。
千砂都;それだけ踊れたら、なんでも出来そう。
恋;嵐さんのダンスにはかないませんよ。──今日、大会ですよね。
千砂都;うん、午後からなんだけどね。最後に動きを確認しておこうと思って。
恋;そう……。澁谷さんたちは、やはり……?
千砂都;うん、かのんちゃんたちはライヴあるし。
(恋、視線を椅子の上の、千砂都のカバンに移す。それを自分でも気づかぬ間に凝視している)
千砂都;どうかした?
恋;(われに返って)い、いえ。では、がんばってください。
(千砂都、準備運動を始める。恋、レッスン室を出るもすぐに立ち止まる)
(恋、レッスン室のドアを開けて、顔を覗かせる)
恋;あの。
千砂都;うん?
恋;いえ。
(恋、レッスン室のドアを閉めて去る。が、すぐに再び顔を覗かせる)
千砂都;うん?
恋;いえ。
(恋、レッスン室のドアを閉めて去る。千砂都、流石に怪しく思うてドアを見つめる)
(恋、レッスン室のドアを開けて三度[みたび]、顔を覗かせる)
恋;あの~。
千砂都;(ドアの脇から)なに?
恋;ひっ!
(レッスン室から中庭に移動、千砂都も恋も夏服姿である)
千砂都;そうか、見ちゃったのか。
恋;信じてください、けっしてワザとでは。ただ偶然というか、そのぉ。
千砂都;大会で優勝できなかったら、ここを辞めるつもり。決めたんだ。
恋;そんな……。
千砂都;海外で修行するのも悪くないなぁ、って。
恋;どうして?
千砂都;かのんちゃんの力になれないから。
恋;え?
千砂都;それなら、ここでダンスを続けてたって意味ないもん。
恋;すみません、わたくしには意味が……。
千砂都;私ね、小さい頃よくいじめられてたんだ。
[回想 千砂都、公園の片隅、茂みのなかで一人しゃがんで絵を描いている。それを見掛けた女の子4人が──]
女の子1;なにしてるんだろう? (千砂都、顔を引きつらせる)
女の子2;ひとり?
女の子3;友だちいないの?
女の子4;暗い子、嫌い。
千砂都;(モノローグ)むかしの私は気も弱くて、体力もなくて、いつもなにかに怯えてた。
[千砂都、公園から逃げるように走り出し、住宅街の道で転んでしまう]
千砂都;あ!! (千砂都、転ぶ。大声で泣き出してしまう。そこにかのんが通りかかって声を掛ける)
かのん;どうしたの? (千砂都が顔をあげると、脱げてしまった片方の靴を持ったかのんが前屈みになって心配そうな顔で千砂都を見つめている)
千砂都;(モノローグ)助けてくれたのが、かのんちゃんだった。
かのん;(ブランコに坐っている千早都に)あっちでいっしょに遊ぼうよ。
千砂都;私は……。
かのん;行こうよ。(なお渋る様子の千砂都にてを差し伸ばすかのん)私が一緒にいるから。ね?
[千砂都、躊躇いながらもかのんの手を取る。コンクリートマウンテン〔山形遊具〕の上から夕暮れ時の街並みを眺める千砂都とかのん]
千砂都;(モノローグ)かのんちゃんはいろんなことを教えてくれた。前に進む大切さだったり、新しいことを見附ける楽しさだったり。
[心奪われたように街を見つめる千砂都を見ながら、かのんが満足した表情でにっこり笑う。回想終わり]
千砂都;だからいつか、かのんちゃんの横に立てる人になりたくて。
恋;それがダンスとどういう関係が。まさか、──
千砂都;うん、始めたのはね、かのんちゃんがきっかけ。
恋;まあ。
千砂都;かのんちゃんの力になるには、いまの自分じゃダメだって。かのんちゃんができないことを1人でできるようにならなきゃ、って。
恋;1人で?
千砂都;そう、1人で結果を出して、自分に自信を持てるようになりたい。それまではかのんちゃんと一緒になにかをやるのはやめよう、って。
恋;それで、スクールアイドルに入らなかったのですか?
千砂都;うん、自分で決めたことだからね。ダンスで結果を出して、かのんちゃんの力になれるって自分に思えるまでは。だから、今日は勝負の時。そろそろ行くね。
恋;ダンスで──ダンスで結果が出たら、どうするのですか?
千砂都;そんなの決まってるよ。
──と。
『ラブライブ!』、『ラブライブ!サンシャイン!!』及び『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に於いて幼馴染みとは闇堕ちする存在と定められていた部分がありました。為、千砂都の存在を知ったときは「ああ、プルータス、お前もか」と天を仰いだのですが、懸念はどうやら杞憂に終わったようであります。千砂都は自分で自分自身と相手を信じる固い心を揺るぎなく持つ人でした。安堵。
そうして第6話のクライマックスというてよい、神津島から急遽戻ってきたかのんが、ダンス大会のステージを控えた千砂都の許に駆けつけ、尊敬と敬慕の気持ちを告白するシーン。まぁ、どうやって戻ってきたのか、という疑問はありますが、それはさておき。
大会前夜、かのんと千砂都は神津島と原宿界隈という場所の違いこそあれ、満月を眺めながら電話で話していました。その際、千砂都の様子が普段と違うことを不安に思うたかのんが、悠奈に直談判──「あの、お願いがあるんですけど!」(11分38秒)──する。それは、本土に戻って千砂都を応援したいという内容だったのでした。
ダンス会場での会話は文字に起こすと非常に長いのですが、ここは敢えてメモに再現したものを中間省略することなしに載せることにいたします。16分38秒から20分08秒の場面となります。曰く、──
(千砂都、かのんからのメッセージを読んでいる最中、こちらに走ってくる足音に気が付く)
千砂都;うん?
(会場の廊下を走ってくるかのん)
千砂都;かのんちゃん!? ……どうして?
かのん;(呼吸を整えて)ははは、来ちゃった。なんか電話で話してたとき、変だなって思って。(千砂都の手を握る)なんかちぃちゃん、すごい不安なんじゃないか、って思って。勘違いかもしれないけど。
千砂都;うん……
かのん;あ、私が伝えたかったのは1つだけ。私、いつもちぃちゃんのこと、尊敬してる。真面目にがんばって、すこしダメでもめげたり、落ちこんだりしないし。だから、──
(千砂都、かのんの手を放す)
千砂都;やっぱりダメだな。
かのん;え?
千砂都;1人でがんばらなきゃいけないのに。自分で自分に自信持てるまで、かのんちゃんがいないところで1人でやろうと思ったのに。
かのん;ちぃちゃん……。
千砂都;かのんちゃんが来てくれたとき、やっぱりホッとしちゃった。──かのんちゃんは悪くないよ。悪いのは弱い私。かのんちゃんに頼らないって、今日ここでかのんちゃんのできないことをできる自分になるんだって。
かのん;ちぃちゃん……。
千砂都;こう見えて私、負けず嫌いなんだ。
かのん;だったら私も思ってた。ちぃちゃんに助けてもらってばっかりだって。
千砂都;え?
かのん;歌えなかったとき、失敗したとき、いつもちぃちゃんが助けてくれた。
千砂都;それはかのんちゃんがいたから。
かのん;じゃあ、2人一緒だね。
千砂都;え?
かのん;2人ともがんばってきた。お互いがお互いを見て、お互いを大切に想って。私ね、あのとき、本当に感激したの。全身が震えた。
[回想;第5話での幼少時の2人の場面、別アングルで]
千砂都;私、かのんちゃんのできないことをできるようになる。(かのん、心打たれた表情)かのんちゃんの歌みたいに。大好きで、夢中になれるもの。私も持てるように、がんばる! (同上)
[回想、終わり]
かのん;なんてカッコいいんだろう、って。私もちぃちゃんのこと、見習わなきゃ、って。真似できないぐらい、歌えるようにならなきゃ、って。
千砂都;あ……。
かのん;ありがとう。あの言葉があったから、私、いまこうして歌っていられる。
(かのん、ピースサインを作る。千砂都も笑顔でピースサインを作る。指先を重ね合わせて、)
かのん;うぃっす、
ちさと;うぃっす、
2人;うぃっーす!!
(千砂都、かのんに抱きついて見あげる)
千砂都;待っててね! (決戦の場へ走ってゆく千砂都)
かのん;(走り去ってゆく千砂都を笑顔で見送りながら)行ってらっしゃい、ちぃちゃん。
(結ヶ丘女子高等学校理事長室で、ちぃちゃんダンス大会優勝の学内ニュースと千砂都の転科願いを微笑みながら見つめる理事長)
(舞台は神津島へ戻る。夕暮れ時。サニパ、歌い終えてかのんたちを紹介する)
悠奈;ありがとう! ではここで、本日のゲスト!
摩央;私たちがいまいちばん注目している──
サニパ;結ヶ丘女子スクールアイドル!!
(舞台裏)
かのん;(千砂都に)大丈夫?
千砂都;うん。私ね、ずっと夢見ていた気がする。こういう日が来ることを。
かのん;うん。
──と。このあと、4人揃っての初めてのステージで新曲、「常夏☆サンシャイン」が披露される。
千砂都の夢、それは既に自身が言葉にしているように、かのんの横に立てるだけの自信を持って、一緒に同じことをやること。そのためにストイックなまでに千砂都は自分を鍛えあげ、スキルを磨き上げてきた──背水の陣を敷いてのダンス大会挑戦であったが、それは自他共に認める結果で終わりました。つまり、千砂都はすべてに於いて納得できるだけの材料を持ってかのんの許に合流して、コーチ的立場ではなく、つまり外野の助っ人ではなくメンバーの一人としてともにスクールアイドル活動に邁進することができるようになったのです。
代フェスではダンスは綺麗なのに力を感じない、と評していたサニパの二人が、千砂都が合流したあとのパフォーマンスを見て、摩央「これが4人の力」(22分06秒)と驚嘆したのも無理はない。というよりも第5話で自分たちが感じていたこと、恐れていたこと(きみがもしメンバーだったら、グループとしては脅威だったけどね;悠奈)がいま眼の前で現実になってしまったのだから。
逆にいえば昨年東京代表になったサニパをたじろがせるだけの力を、いまの時点でかのんたちグループは既に持っていることの証か。これで恋が加入したら一体どうなるのか……。末恐ろしいスクールアイドルグループを覚醒させてしまったサニパのこれからに要注目、か。
ここに書くことが叶わなかった内容はずいぶんとあります。トレーニングメニューの話ですとか、可可のITスキルの高さ(いや、手先の器用さ、という方がよいのか)、理事長先生のこと、これからの恋の動向の予測などなどであります。
幾つかの話題についてはまた別の機会にでも、と思うております。
次回第7話「決戦! 生徒会長選」は、09月15日放送予定。◆
これまでの9人から5人に減らしたことで生まれた最大のメリットは、丁寧に描かれた人間関係の掘りさげである。始まった当初こそ戸惑いと不安が入り交じっておりましたが、特に9人いなければ『ラブライブ!』ではない、というわけでもない。むしろ5人になったことで物語の密度が濃くなり、各々の関係性や内面の描写がより丁寧に描かれるようになりました。
それを如実に表したのが第6話に於けるかのんと千砂都、シリーズ通じて定番な組み合わせとなった幼馴染みの2人だった。そうして彼女たちが子供の頃から育んできた友情、互いの気持ちは、もしかすると視聴者が考えていたよりも堅く結ばれたものであり、また、シリーズでいちばん深く関係性が掘りさげられたものだったように考えます。
本稿は前回に続いて、澁谷かのんと嵐千砂都の絆、相手への感情など触れてゆきましょう。今回はシナリオの再現が多くを占めるかもしれませんが、あらかじめその旨ご承知置きください。
第6話は千砂都の回想から始まりました。近所であってもはじめて遊びに来た公園で遊んでいると、以前からそこを遊び場にしていた女の子3人から吊し上げに遭ってしまいます。どうやら縄張りを荒らされたことで生じた諍いであったでありましょう。その結果、自分たちの縄張りを荒らした罰として、いじめっ子連(この場合はどうしてもそういういい方になってしまうなぁ)は千砂都の髪留め紐を取りあげてしまう──と、ここで貴重な光景をわれらは拝むことができます。片方のみながら千砂都の髪下ろしシーンが見られるためであります。もうなんというか、可愛いとしかいい様がありません(00分19秒)。
懸命に取り返そうとするもだんだん涙目になってくるのは仕方ないところ。子供ですもん、女の子ですもん。いじめっ子の一人に指摘されてバカにされるも千砂都は、「泣いてないもん!」と抗う。この場面ですが初見では、よくある反応だよね、と見過ごしてしまうのですが、だんだん本話を観てゆくとこれが伏線と申しましょうか、千砂都の原動力の1つになっていることに気附かされるはずであります。
第5話でかのんが子供時代を回想して、千砂都が自分に宣言というか誓ったことがあったのを覚えておられるでしょうか。「私、かのんちゃんができないことをできるようになる」という台詞ですが、第6話での回想シーンはいずれも先程の「泣いてないもん!」とこの台詞の背景と理由を語るものとなります。
いじめっ子連に取られた髪留め紐を取り返そうとあがくも千砂都の心はもう崩壊寸前でした。そこに駆けつけたのが、かのん。あわやこらえきれずに泣き出しそうになるかと思われた瞬間に、助けに駆けつけるかのんが、やたらカッコイイのです(00分48秒)。いじめっ子連の前に毅然と立ち塞がり、「ちぃちゃんをいじめちゃダメ! ちぃちゃんの大事なもの、いますぐ返しなさいよっ!」というかのん(00分52秒-00分59秒)、やはりこの人は弱い者の立場に立つことのできる<お姉ちゃん>気質の人なんだな、と納得させられたことであります。
00分48秒からのシーンです、──
[回想]
かのん;こらーっ!!
(公園の入り口から走ってくるかのん。それを見る千砂都といじめっ子連)
千砂都;かのんちゃん……
(千砂都といじめっ子連の間に割って入る)
かのん;ちぃちゃんをいじめちゃダメ!
いじめっ子A;なんなの、あんた!?
かのん;いいから、ちぃちゃんの大事なもの、いますぐ返しなさいよ!!
いじめっ子A;いらない!
(去ってゆくいじめっ子連。ブランコに坐る千早都の髪を団子にして、取り返した紐でまとめるかのん)
かのん;よし。
千砂都;ありがとう。でも、仕返しされるかも。
かのん;大丈夫。ちぃちゃんのことは私が守るから。困ったら私を呼んで。
千砂都;かのんちゃん……。
[千砂都 モノローグ]
千砂都;私はこのとき思った。このままじゃ嫌だって。いつかかのんちゃんを助けられるようになりたい。いつか必ず。
──と。
駆けつけてくるかのんにいじめっ子連といっしょに目を向ける千砂都にとってはまさしく騎兵隊の登場、いじめっ子連には想定外の援軍の出現だったのでしょうね。
併せてこのゼウス・エクス・マキナ的な登場の仕方、もはや様々な物語に於いて紀元前よりお馴染みとなったものだが、あらためてこうやって正面切って使われると妙な感動さえ覚えさせられます。そんな御託はともかく、駆けつけるかのんの格好良さに改めて、彼女に惚れ直した人も多いのでは。わたくしもその1人であります。もっとも惚れ直すとはいうてもこのときのかのん、小学校に上がっているかどうかも不明な年齢なんですけれどね。
このあと、代フェスの会場になり、第5話で千砂都がかのんに誓ったステージでの場面になるのですが、第5話を観たとき気になっていたこと──千砂都のスカートの膝小僧が汚れていた理由は、いじめっ子連と争ったときにできた汚れだったのか、と納得させられたことも、併せてお伝えしておきます。
それにしても幼少時のかのんと千砂都、単体でいても目を引きますが2人揃って横に並ぶとなんとも神々しさが増したコンビ(カップル?)になりますね。最強クラスの幼馴染みかもしれません。
かのんと千砂都の結びつきの固さ、相手への想い、そうした点が表現された台詞を、以下に再現しましょう。
まずはBパート、12分00秒-16分59秒の場面です。ここは結ヶ丘女子高等学校音楽科のレッスン室と中庭を舞台にした、千砂都と葉月恋の会話です。
余談ながらこの場面のなかで、ようやく<恋ポンコツ化への道>が定められたように感じます。コロンボ刑事ばりの行動を披露したばかりでなく、なんともいえぬ絶妙なボケ具合が相俟って歴代生徒会長の系譜の後継者にふさわしい人物と化していっております……なかの人の壊れっぷりもまた見事なものでありますから(ex;【2021年4月10日配信】ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 ~私たち、デビューしました!~)、歴代の系譜が仮になくともその道は既定路線であったように思われてなりません。青山なぎさは葉月恋を演じるべくしてこの世界に舞い降りた人、と申しあげてよいと思います。
脱線しました。上記時間帯の、千砂都と恋の会話です。曰く、──
恋;おはようございます。
千砂都;わぁ、すごいね。
恋;以前、フィギュアスケートもやっていたので。
千砂都;それだけ踊れたら、なんでも出来そう。
恋;嵐さんのダンスにはかないませんよ。──今日、大会ですよね。
千砂都;うん、午後からなんだけどね。最後に動きを確認しておこうと思って。
恋;そう……。澁谷さんたちは、やはり……?
千砂都;うん、かのんちゃんたちはライヴあるし。
(恋、視線を椅子の上の、千砂都のカバンに移す。それを自分でも気づかぬ間に凝視している)
千砂都;どうかした?
恋;(われに返って)い、いえ。では、がんばってください。
(千砂都、準備運動を始める。恋、レッスン室を出るもすぐに立ち止まる)
(恋、レッスン室のドアを開けて、顔を覗かせる)
恋;あの。
千砂都;うん?
恋;いえ。
(恋、レッスン室のドアを閉めて去る。が、すぐに再び顔を覗かせる)
千砂都;うん?
恋;いえ。
(恋、レッスン室のドアを閉めて去る。千砂都、流石に怪しく思うてドアを見つめる)
(恋、レッスン室のドアを開けて三度[みたび]、顔を覗かせる)
恋;あの~。
千砂都;(ドアの脇から)なに?
恋;ひっ!
(レッスン室から中庭に移動、千砂都も恋も夏服姿である)
千砂都;そうか、見ちゃったのか。
恋;信じてください、けっしてワザとでは。ただ偶然というか、そのぉ。
千砂都;大会で優勝できなかったら、ここを辞めるつもり。決めたんだ。
恋;そんな……。
千砂都;海外で修行するのも悪くないなぁ、って。
恋;どうして?
千砂都;かのんちゃんの力になれないから。
恋;え?
千砂都;それなら、ここでダンスを続けてたって意味ないもん。
恋;すみません、わたくしには意味が……。
千砂都;私ね、小さい頃よくいじめられてたんだ。
[回想 千砂都、公園の片隅、茂みのなかで一人しゃがんで絵を描いている。それを見掛けた女の子4人が──]
女の子1;なにしてるんだろう? (千砂都、顔を引きつらせる)
女の子2;ひとり?
女の子3;友だちいないの?
女の子4;暗い子、嫌い。
千砂都;(モノローグ)むかしの私は気も弱くて、体力もなくて、いつもなにかに怯えてた。
[千砂都、公園から逃げるように走り出し、住宅街の道で転んでしまう]
千砂都;あ!! (千砂都、転ぶ。大声で泣き出してしまう。そこにかのんが通りかかって声を掛ける)
かのん;どうしたの? (千砂都が顔をあげると、脱げてしまった片方の靴を持ったかのんが前屈みになって心配そうな顔で千砂都を見つめている)
千砂都;(モノローグ)助けてくれたのが、かのんちゃんだった。
かのん;(ブランコに坐っている千早都に)あっちでいっしょに遊ぼうよ。
千砂都;私は……。
かのん;行こうよ。(なお渋る様子の千砂都にてを差し伸ばすかのん)私が一緒にいるから。ね?
[千砂都、躊躇いながらもかのんの手を取る。コンクリートマウンテン〔山形遊具〕の上から夕暮れ時の街並みを眺める千砂都とかのん]
千砂都;(モノローグ)かのんちゃんはいろんなことを教えてくれた。前に進む大切さだったり、新しいことを見附ける楽しさだったり。
[心奪われたように街を見つめる千砂都を見ながら、かのんが満足した表情でにっこり笑う。回想終わり]
千砂都;だからいつか、かのんちゃんの横に立てる人になりたくて。
恋;それがダンスとどういう関係が。まさか、──
千砂都;うん、始めたのはね、かのんちゃんがきっかけ。
恋;まあ。
千砂都;かのんちゃんの力になるには、いまの自分じゃダメだって。かのんちゃんができないことを1人でできるようにならなきゃ、って。
恋;1人で?
千砂都;そう、1人で結果を出して、自分に自信を持てるようになりたい。それまではかのんちゃんと一緒になにかをやるのはやめよう、って。
恋;それで、スクールアイドルに入らなかったのですか?
千砂都;うん、自分で決めたことだからね。ダンスで結果を出して、かのんちゃんの力になれるって自分に思えるまでは。だから、今日は勝負の時。そろそろ行くね。
恋;ダンスで──ダンスで結果が出たら、どうするのですか?
千砂都;そんなの決まってるよ。
──と。
『ラブライブ!』、『ラブライブ!サンシャイン!!』及び『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に於いて幼馴染みとは闇堕ちする存在と定められていた部分がありました。為、千砂都の存在を知ったときは「ああ、プルータス、お前もか」と天を仰いだのですが、懸念はどうやら杞憂に終わったようであります。千砂都は自分で自分自身と相手を信じる固い心を揺るぎなく持つ人でした。安堵。
そうして第6話のクライマックスというてよい、神津島から急遽戻ってきたかのんが、ダンス大会のステージを控えた千砂都の許に駆けつけ、尊敬と敬慕の気持ちを告白するシーン。まぁ、どうやって戻ってきたのか、という疑問はありますが、それはさておき。
大会前夜、かのんと千砂都は神津島と原宿界隈という場所の違いこそあれ、満月を眺めながら電話で話していました。その際、千砂都の様子が普段と違うことを不安に思うたかのんが、悠奈に直談判──「あの、お願いがあるんですけど!」(11分38秒)──する。それは、本土に戻って千砂都を応援したいという内容だったのでした。
ダンス会場での会話は文字に起こすと非常に長いのですが、ここは敢えてメモに再現したものを中間省略することなしに載せることにいたします。16分38秒から20分08秒の場面となります。曰く、──
(千砂都、かのんからのメッセージを読んでいる最中、こちらに走ってくる足音に気が付く)
千砂都;うん?
(会場の廊下を走ってくるかのん)
千砂都;かのんちゃん!? ……どうして?
かのん;(呼吸を整えて)ははは、来ちゃった。なんか電話で話してたとき、変だなって思って。(千砂都の手を握る)なんかちぃちゃん、すごい不安なんじゃないか、って思って。勘違いかもしれないけど。
千砂都;うん……
かのん;あ、私が伝えたかったのは1つだけ。私、いつもちぃちゃんのこと、尊敬してる。真面目にがんばって、すこしダメでもめげたり、落ちこんだりしないし。だから、──
(千砂都、かのんの手を放す)
千砂都;やっぱりダメだな。
かのん;え?
千砂都;1人でがんばらなきゃいけないのに。自分で自分に自信持てるまで、かのんちゃんがいないところで1人でやろうと思ったのに。
かのん;ちぃちゃん……。
千砂都;かのんちゃんが来てくれたとき、やっぱりホッとしちゃった。──かのんちゃんは悪くないよ。悪いのは弱い私。かのんちゃんに頼らないって、今日ここでかのんちゃんのできないことをできる自分になるんだって。
かのん;ちぃちゃん……。
千砂都;こう見えて私、負けず嫌いなんだ。
かのん;だったら私も思ってた。ちぃちゃんに助けてもらってばっかりだって。
千砂都;え?
かのん;歌えなかったとき、失敗したとき、いつもちぃちゃんが助けてくれた。
千砂都;それはかのんちゃんがいたから。
かのん;じゃあ、2人一緒だね。
千砂都;え?
かのん;2人ともがんばってきた。お互いがお互いを見て、お互いを大切に想って。私ね、あのとき、本当に感激したの。全身が震えた。
[回想;第5話での幼少時の2人の場面、別アングルで]
千砂都;私、かのんちゃんのできないことをできるようになる。(かのん、心打たれた表情)かのんちゃんの歌みたいに。大好きで、夢中になれるもの。私も持てるように、がんばる! (同上)
[回想、終わり]
かのん;なんてカッコいいんだろう、って。私もちぃちゃんのこと、見習わなきゃ、って。真似できないぐらい、歌えるようにならなきゃ、って。
千砂都;あ……。
かのん;ありがとう。あの言葉があったから、私、いまこうして歌っていられる。
(かのん、ピースサインを作る。千砂都も笑顔でピースサインを作る。指先を重ね合わせて、)
かのん;うぃっす、
ちさと;うぃっす、
2人;うぃっーす!!
(千砂都、かのんに抱きついて見あげる)
千砂都;待っててね! (決戦の場へ走ってゆく千砂都)
かのん;(走り去ってゆく千砂都を笑顔で見送りながら)行ってらっしゃい、ちぃちゃん。
(結ヶ丘女子高等学校理事長室で、ちぃちゃんダンス大会優勝の学内ニュースと千砂都の転科願いを微笑みながら見つめる理事長)
(舞台は神津島へ戻る。夕暮れ時。サニパ、歌い終えてかのんたちを紹介する)
悠奈;ありがとう! ではここで、本日のゲスト!
摩央;私たちがいまいちばん注目している──
サニパ;結ヶ丘女子スクールアイドル!!
(舞台裏)
かのん;(千砂都に)大丈夫?
千砂都;うん。私ね、ずっと夢見ていた気がする。こういう日が来ることを。
かのん;うん。
──と。このあと、4人揃っての初めてのステージで新曲、「常夏☆サンシャイン」が披露される。
千砂都の夢、それは既に自身が言葉にしているように、かのんの横に立てるだけの自信を持って、一緒に同じことをやること。そのためにストイックなまでに千砂都は自分を鍛えあげ、スキルを磨き上げてきた──背水の陣を敷いてのダンス大会挑戦であったが、それは自他共に認める結果で終わりました。つまり、千砂都はすべてに於いて納得できるだけの材料を持ってかのんの許に合流して、コーチ的立場ではなく、つまり外野の助っ人ではなくメンバーの一人としてともにスクールアイドル活動に邁進することができるようになったのです。
代フェスではダンスは綺麗なのに力を感じない、と評していたサニパの二人が、千砂都が合流したあとのパフォーマンスを見て、摩央「これが4人の力」(22分06秒)と驚嘆したのも無理はない。というよりも第5話で自分たちが感じていたこと、恐れていたこと(きみがもしメンバーだったら、グループとしては脅威だったけどね;悠奈)がいま眼の前で現実になってしまったのだから。
逆にいえば昨年東京代表になったサニパをたじろがせるだけの力を、いまの時点でかのんたちグループは既に持っていることの証か。これで恋が加入したら一体どうなるのか……。末恐ろしいスクールアイドルグループを覚醒させてしまったサニパのこれからに要注目、か。
ここに書くことが叶わなかった内容はずいぶんとあります。トレーニングメニューの話ですとか、可可のITスキルの高さ(いや、手先の器用さ、という方がよいのか)、理事長先生のこと、これからの恋の動向の予測などなどであります。
幾つかの話題についてはまた別の機会にでも、と思うております。
次回第7話「決戦! 生徒会長選」は、09月15日放送予定。◆