第3152日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第7話;すみれへの不憫と恋のこれからと。〉【修正版】 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 ちょっと非道いな、幾らなんでも。そう思わざるを得ない程、第7話「決戦! 生徒会長選」に於ける平安名すみれの扱いはネタとか雑を通り越して、悪意と嫌悪すら感じさせるものでありました。
 同じスクールアイドル活動を行うメンバーからは発言を遮られ、無視され、挙げ句に名前を忘れられる始末。むろん、これを目くじら立てて指摘することはないのかもしれません。既にそれだけの関係性──ふざけが許されるゆるい空気と日常のトーンが彼女たちの間で成立している、と考えればよいのでしょう。とはいえ、ちょっとなぁ……と思います。
 生徒会長選に立候補するよう説得にかかる可可と千砂都から逃げたかのんが部室に立て籠もり、必死に抵抗している場面です。06分31秒からのシーンとなります、──
 すみれ;スクールアイドルを続ける身として、この平安名すみれが──
 可可;かのーん!
 すみれ;(可可の両頬を摑んでこちらへ向かせながら)見なさい!
 可可;どちら様ですか。
 すみれ;知ってるでしょ!
 千砂都;あれ、えーと、す……す……なんとかさん。
 すみれ;すみれったらすみれよ。す・み・れ! メンバーの名前忘れてどうするの?
 千砂都;済みません、新入りなもので──
 すみれ;まぁ、いいわ。生徒会長選挙と聞いて正直それ程気は進まないけれど──
 可可;なら結構です。間に合ってます。一昨日来やがれ、身の程わきまえろ、デス。
 すみれ;なにさらっと非道いこといってんの──
──と。
 作者の名前は忘れてしまったが以前、野性時代青春文学賞を受賞した『りはめより100倍恐ろしい』っていうスクールアイドルカースト小説があった。内容はすっかり忘れて記憶の底からも引っ張り出せませんが、このタイトルだけは印象にしっかり残っている。即ち、イジメよりもイジリの方が数段上の悪意を秘めていますよ、それが暴走したらとんでもないことになりかねませんよ、と言外に語っているわけですが、此度のすみれの扱いを観て、わたくしは否応なくこのタイトルを思い出してしまうたのであります。それはおそらく自分のイジメラレ体験とピタリ、と重なる部分があったせいでもありましょう。
 然り、なにげないイジリが周囲の納得と理解を得たと同時にエスカレートを始め、それが爆発した事例なんて現実社会に於いても小説のなかでも数多先例を見出すことが容易であります。為にすみれの、グループ内での扱いが弄られキャラの立場を確立してしまったことに異を唱えるわけではないが、すくなくとも笑って鑑賞できる程の脳天気さは幸いと持ち合わせていない。改善を、とはいわない。彼女たちの関係性が極めて健全である描写を今後は挿しこんでいっていただきたいと願うのみ。……いやあ、まぁ、こんなおふざけ、ボケ具合、どんな集団に於いてもあるものではありますけれどね。ただ、それをどう受け止めるかは、この場合であればすみれ本人の感じ方、メンタルによって如何様も変化いたしましょう……。
 恋の自宅で飼い犬(その名は、チビ)に追いかけ回され、屋敷のあちこちを走り回るてふ描写に眉を顰める向きもあるようですが、それについては正直なところ、あまり思うところがないのですよね。むしろその直後にある恋とメイドの会話、かのんたちへの恋の台詞の前振りとして、作品世界に馴染む演出であった、と考えております。
 ただ、この一連の場面──大型犬に追いかけ回される、という描写に眠っていた『ラブライブ!サンシャイン!!』の悪夢を思い起こし、例の廃校疑惑と併せて冷めてしまった人も多い様子。
 そうしてもう1つ、悪夢を想起させる材料が本話にはありました。尾行がバレそうになったときのかのんたちの隠れ方がそれであります(16分25秒-16分36秒)。劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!』で千歌たちは、月と歩く曜を商店街から尾行しておりましたが、曜が振り向いた際の隠れ場所、隠れ方が、まさに本話と同じであったからです。劇場版では面白く、可笑しく感じた演出も、流石に2度目は不感症になる。柳の下にドジョウは2匹もいないのです。
 なお、千砂都が本話から普通科の制服で登場。転科のことはかのんにさえ伝えていなかったようです。当初は可可と共に違和感の正体を突き止めようと観察、原因が判明したときのかのんと可可のリアクションが堂に入ったコンビネーションで、こちらの気持ちをほっこり、ほっこりさせてくれます。そうか、前回予告で流れた2人が頬をくっつけてびっくりしている場面は、千砂都の制服を見ての反応であったのか……。
 03分16秒からのシーンです、──
 千砂都;シャキッとしなさい!
 かのん;ん?
 可可;うん?
 かのん;ちぃちゃん?
 可可;(目をこすりながら)なにか、違和感が……
 千砂都;これからは前よりも、みっちりダンスの練習するんだから。
 かのん&可可;あ……
 千砂都;疲れてる場合じゃないよ?
 かのん&可可;ああ……!?
 千砂都;うぃーっす! どう、普通科の服? えへ。
 かのん&可可;えぇ……ええっ!!??
 千砂都;本当は退学して、普通科を受け直そうと思ったんだけど、理事長先生が転科を許可してくれるって。
 かのん;でも、どうして?
 千砂都;これからは、かのんちゃんたちと同じ目標に向かって頑張りたいと思って。
 かのん;それで……。
 千砂都;内緒にしてて、ごめんね。
 可可;愛です。(千砂都の前に回って、)[中国語で話す] 可可、感動しました。
 千砂都;そんな大したことじゃないけど。
 かのん;じゃあ、授業始まる前にクラスの皆に紹介しないとね。
──と。
 ……実際のところ、かのんが紹介する以前にクラスメイトでモブ3人衆の1人、「ここの」が気附いてしまいましたがね。かのん同様、他の普通科の生徒たちにも千砂都の転科は青天の霹靂であったらしい。ここのの動転から、そのように想像できます。その後は転校生を迎えたが如く(まぁ、そんな感覚だよね)、クラスの皆が席のまわりに集まって、戸惑い顔の千砂都に質問攻勢をしておりました。もっともそれは以前からかのん経由で普通科にも馴染みのあって好感を持たれていた千砂都だからできたことであって、音楽科の他の生徒であったら、うまく皆のなかに馴染むことはできなかったかもしれない。
 となると問題になるのは、やはり恋であります。彼女が普通科の制服を最終的に着ることになるのは既定路線。初期設定であったかのんの黒タイツが本編では綺麗さっぱり抹殺されたことを考えるに、恋が普通科の制服を着ているのは当初のイメージ画であって本編では普通科の制服は着ませんよ、となる可能性はないではないが、確率としてはあまりに低い──というよりも、いま頃そんなことが運営側、スタッフ側からアナウンスされたら暴動必至でありましょう。おいコラ、ふざけんな、と。
 それはともかく、恋が普通科にもし転科してきたら、相当な反発が生まれることは容易に想像できる。しかも生徒会長選挙中は音楽科と普通科の融和、相互理解を訴え、実現に努めるというていたにもかかわらず、当選後の挨拶、所信表明演説では文化祭を音楽科中心で開催すると明らかな公約違反を宣言したのですから、反発はかなり強いものになるでしょう。
 それをいう前に躊躇いが生んだ空白の時間があったことで、本当にそれが恋が最初から考えていたことなのか、或いはそんなこと考えてはいなかったが創立者の娘という立場が、学校への想いの強さが発言を土壇場で180度転換させたのか、それは定かではない。
 このような状況を生み出した恋が、かのんたちのスクールアイドルに合流するのは極めて難しくなった、と見ざるを得ないでしょう。況んや普通科への転科をや。
 かのんの説得と根回しでどうにかできる段階では、既になくなっております。かのんと千砂都が中心になって恋の気持ちを確かめ、普通科と葉月恋ひいては音楽科との橋渡し役となる予感はありますが、さて、どうなることやら。
 第7話をわたくしは、暗雲の立ちこめる回になった、と昨日の原稿に書きました。次回第8話でこの暗雲がどのようにして一掃されることになるのか、不安であると同時に非常に楽しみにしているのもまた事実なのであります。誰が雷を以て雲を払い、ヴァルハラへの虹の橋を架けるのか──。
 ──いやぁ、それにしても相変わらず可可は可愛いですね。
 そうして、第7話のエンディングを歌うのは葉月恋(青山なぎさ)、「リエラのうた」以外ではじめてこの人の歌う声を聞いたのですが、美しい。しん、と染み渡ってくる声です。◆

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