第3462日目 〈ヘイトの底にある感情。〉 [日々の思い・独り言]

 21世紀の日本人は、海外で大きな問題を起こしている国の国民や宗教の信仰者をターゲットにして、自らが抱えこむ閉塞感や「ままならなさ」といった行き場のない感情をぶつけて発散しているだけのように思える。少なくともそこに確固たる主張やエビデンスはあるまい。負の感情に囚われて、碌に自分自身で検証したりすることなく、自分にとって都合の良い主張に安易に便乗しているだけのように映る。
 偉そうなことを書いてはいるが、とはいえわたくしにも、探ればヘイトの感情はある。先達て本ブログでも書いたが(第3447日目 〈『クルアーン』を買ってきた。〉)、9.11に遭遇して友人2人を奪ったアル・カーイダを憎んだ。知識も理解もないままイスラーム教徒を憎悪した。イラク戦争後に日本語学校の教室でイスラーム教徒の生徒たちを受け持たなければ、かれらへのヘイトは、あちこちで活動を始めていた大きな暴力の渦に身を任せて、そのまま先鋭化していたに違いない。
 イスラーム教徒へのヘイトの感情は、もうない。が、在日韓国人へのそれは、正直にいえば、ある。「嫌悪感」という方がより実態に近いだろうけれど。
 教室には韓国人生徒もいたのに、理解に努めようとしなかったのは、なぜか。
 発端は韓国人生徒たちの居座り、が遠因と分析(呵呵)する。事の詳細を語る気はない。かれらにも事情はあったのかもしれない。が、居座り組の中心人物が「校長」と「親密な関係」を結んでいたので「目こぼし」されている、と判明するや、もうかれらへの理解はそれ以上のステップに進むことはなく──というよりも、停止した。理解しようと努める気持ちが嫌悪感に変わるまで、然程の時間を要さなかった。これが、遠因。
 現在は、こんなことではいけないなぁ、と反省の日々である。もう日本語を教える現場からは離れているけれど、却ってそれが良かったのかもしれない。現場から離れてもう5年以上になるけれど、その間に幾人もの在日韓国人と仕事で、プライヴェートで接する機会が増えた。どうしても障る部分はあるけれど、それは同胞に対するそれと質の面では大差ない。誰にだって好きになれない相手、相容れない相手はいる。そうした意味では、どこの国の人だろうが大差はないのである。好きな人は好き、苦手な人・嫌いな人は……、ということだ。
 好きな人もいる、嫌いな人もいる。それを差別というのなら──その感情の底にあるのはなにか? 日本と周辺国、日本人とかの国の人々が歩んできた歴史もあるが、昨今の異国人に対するヘイトや嫌悪の根っこにあるものは、もっと個人レヴェルで説明できるように思う。
 つまり、生活する上でなにかしら感情を害される場面が多かった、日本の社会法規或いは道徳や秩序もしくは常識から逸脱した行為に遭遇・反感を抱いた、──そのあたりに集約できるのではないか。
 自身を顧みても、そんなところから出発して今日に至っていると考える。たとえば、──
 夜中に外を歩きながら大きな声で喋りまくっている。赤信号を無視して国道1号線を横断しようとする。棒が降りた踏切に侵入して横断そのまま遁走、電車の遅延を招いた。他所様の家の敷地内に不法侵入して坐りこみ、缶ビールを飲み喫煙をして、ゴミを放置した。
──エトセトラ、エトセトラ。
 ちゃんと育てられた日本人なら、まずしないでしょ、ということを平気な面でしでかして、それを詰られたら逆ギレして胸ぐら摑んでくる。こんな連衆を、一体どうやって好きになれ、と?
 まぁ、上記はわたくしが体験した出来事だが、いつしか大声お喋りメンズとゴミ放置男は地域から姿を消した。ご近所の<怖い>方々が追い払ったと噂に聞くが、実際は警察も知らない。かれらの行方は杳として知れない。
 とまれ、平和は戻った。思えばこの頃からだったかしら、わたくしのかれらへの嫌悪のレヴェルが著しく低下し、先述のように職場やプライヴェートで知り合ったかれらとなんの悪感情もなく接することができるようになったのは。もっとも、単に相手に恵まれただけであろうけれど、それはここでは不問とし。
 昨日(22/08/26)の神奈川新聞社会面に、大阪府茨木市にあるコリア国際学園放火事件(22/04/05AM)の公判記事が載った。理事を務める人物の発言が紹介されている。曰く、「今の日本の状況なら起こり得る、と。もはやヘイトスピーチからヘイトクライムへ移行してきている」と。この記事を読んで、ゾッとした。自分がヘイトする側に立っていたら、なにをしていただろうか。そんなゆめ否定できない光景を想像して、寒気がした。吐き気がした。
 この記事を切り抜いていつも持ち歩いているクリアフォルダに仕舞い、自分が外国人に対して負の感情を抱きそうになったら取り出して反省のツールとし、道を踏み外さぬよう己を諫める。◆

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