第3596日目 〈三好達治の、あの本が欲しい。〉 [日々の思い・独り言]

 三好達治は気になる詩人の1人である。野呂邦暢の小説に刷りこまれたためか、労働者のための詩人という影を払拭できずにいるせいもあるけれど。
 『測量船』をほるぷ出版の復刻版で持っているだけで気持の上ではじゅうぶん幸せだ。丸山薫の解説目当てで買った旺文社文庫版と、いまでも流通する新潮文庫版の他は特に望む詩集もない。全詩集とか愛蔵版とか、ましてや全集を欲す程でもないですしね。
 強いて挙げれば白凰社から出ていた「青春の詩集」シリーズの三好達治集、か。収録される詩は重複ばかりかもしれないけれど、こちらは高校生のときボードレールとゲーテの詩集を買ったことで詩への扉を開いてくれた、いわば恩あるシリーズゆえに愛着深く、ここに収まる詩集があるなら購入したい、という一種のノスタルジーに起因している。
 ただ、三好達治の本では1冊だけ、『詩を読む人のために』が欲しい。現行の岩波文庫版ではなく、昭和27(1952)年06月至文堂の学生教養新書で出た初版を。古書店のサイトを覗けば安価で売られているのでその気になればすぐ手に入れられる代物である。これはC.D.ルイス『詩をよむ若き人々のために』と並んで一時期よく読んだ、とてもわかりやすく含蓄に富んだ詩論である。
 重い腰をあげて至文堂版『詩を読む人のために』を購入したとき、三好達治は気になる詩人の域を超えて鍾愛する詩人の1人へと格上げされるのだろう。◆

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