第3645日目 〈千里の道も一歩から。──小泉悠『ウクライナ戦争』を読んでいます。〉 [日々の思い・独り言]

 あまり長くいると体に支障を来す場所で、小泉悠『ウクライナ戦争』を読み耽るようになって早1ヶ月。一度に読めるのは、精々2ページから3ページ、小見出し1個分くらい。それでもどうにか半分まで来た。正直、いつ読み終わるのかな、不安にならないでもないが、知らないことを知る愉しみには抗えない。だからそこへ行くときは手ぶらで、ふらり、扉を開けて座を占める。
 昨年2月に始まったウクライナ戦争についてはピンからキリまで、星の数程の本が出版されて新刊書店の棚の一大勢力となっている。新聞は日々、戦況や政治情勢について報道し、節目にはこれまでの流れを総括した記事を載せたりもする。テレヴィやSNSも同様だ。
 情報は膨大にあって、休む間もなくわれらの許へ押し寄せる。情報(ニュース)の真偽を見極めるどころか、この戦争について基礎的な知識や理解も定着しないまま新しい情報に呑みこまれていまに至っているのが、実情というべきだろう。
 それをすこしでも是正したくて読み始めたのが、上述の1冊。こういう本は無理矢理でも読む環境を作らないとページを繰り続けて最後まで到達しないから(わたくしの場合)、まァそういう場所に常置して半強制的に読むよう自分を縛りつけるのだ。
 著者は、2014年のロシアによるクリミア半島併合とドンバス地方での紛争を第一次ロシア・ウクライナ戦争、昨2022年2月24日のロシア侵攻に始まった今回の戦争を第二次ロシア・ウクライナ戦争と位置づける。なお著者には、第一次ロシア・ウクライナ戦争を取り挙げた『現代ロシアの軍事戦略』という本があって、併読必至の1冊だ。
 本書が一線を画した特徴を持つのは、他が専ら政治の面、もしくは人道的な面からこの戦争を取り挙げる(後者は大抵現地リポートの体裁を採る)のに対して、『ウクライナ戦争』は著者の専門であるロシアの軍事・安全保障の方面から、開戦に至るまでの経緯と背景を跡づけた点にある。
 これを読んでいると新聞やテレヴィで報道されるニュースの背景──各地での戦闘やロシア軍の侵攻撤退の事情、ウクライナ軍が善戦できる理由、NATO加盟国によるウクライナ支援の裏で蠢く思惑といったものが見えてくる。筋道立った話として眼前に立ちあがってくるのだ。すくなくとも類書よりはこの戦争に関して得る知見は多い。
 とはいえ、──
 1ヶ月ばかりを費やしてようやく半分とは、随分とゆっくりしたペースである。が、千里の道も一歩から、という。日々着実に、すこしの分量でも読み進めるのが、何だ彼だでいちばんの早道なのだ。通勤もそうだけれど、毎日なかば強制的に発生する時間には、こうした本(専門書と入門書の境界にあるような本)が最も相応しいかもしれない。◆

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