第3725日目 〈日暮雅通『シャーロック・ホームズ・バイブル』を読んでいます。〉 [日々の思い・独り言]

 自分に宿題を課した手前──でもないけれど、けふ、日暮雅通『シャーロック・ホームズ・バイブル』(と、モーリーン・ウィティカー『シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット』高尾菜つこ・訳/日暮雅通・監修 原書房 2023/11)をL.L.Beanのリュックに詰めこんで、いつものスターバックスなう。
 二杯目のコーヒーを飲みながら、セミドライトマトのピザトーストを頬張りながら、『シャーロック・ホームズ・バイブル』(以下、『SHB』)へ目を通す……いつものように適当なページを開いて、蕩けた表情で、鼻の下をすっかり伸ばして。
 今日は第一章を、頬杖ついて読んだ。ホームズが生きたヴィクトリア女王の御代(ヴィクトリア朝)の、ロンドンとイギリスの社会情勢やホームズ物に登場するファッション、職業、貨幣価値、飲食、警察、鉄道、郵便、などなどが、当時の出版物からのイラスト、写真、地図を適所に配して、実にわかりやすく説明されている。
 ヴィクトリア朝イギリス、帝都ロンドンについて、その社会情勢を含めて知るところがなくても名探偵シャーロック・ホームズの活躍は楽しめる。ごもっともな意見だ。わたくしも始めはそうだった。所謂ビギナーズ・ラックの読者であれば、それでよろしかろう。
 が、名のみ知られて詳細が語られない事件や、物語に登場する各種アイテム、そうしてなによりも〈影の主役〉たるロンドンという町、イギリスという国そのものに興味関心があり、また各出版社から出ているホームズ全集を買い揃えてあれこれ読み較べたり、原文で読んでみようと洋書へ手を伸ばしてみるくらい〈ホームズ沼〉へ沈みかけている人は、かならず、遅かれ早かれ、ヴィクトリア朝期の社会風俗の知識を自ずと求めるようになってゆく──勿論、すっかり沈んでシャバへの復帰が困難なレヴェルの重篤患者も、既知の知識を上書きしたり修正したり、或いは未知の知識を獲得する行為に余念がないはずだ──。ここまで来たら、物語の舞台を訪う聖地巡礼まであと一歩。……ようこそ、こちらへ。歓迎しよう。
 こんな風に一歩踏みこんだ楽しみ方、読み方をするようになったとき、知りたいことを正確に、簡潔に、発展的に(ここ、重要!)教えてくれる役目を、本書は果たす。
 質と量を備えた蔵書(資料)を手許へ置いていつでも自由に自在に扱える者でなしに、これだけの使い勝手よく資料としても読み物としても愉しめる大著を物すのは難しい。では、いったいそんな本を書いた人の蔵書とは、どのようなものか。
 答えは──というかその一片は──『絶景本棚』てふ本にあった。『本の雑誌』巻頭カラーページの連載をまとめた本棚紹介本(ミもフタもない説明だな)だが、ここに著者、日暮雅通の本棚──蔵書──仕事場奥の書庫──が載る。この仕事場奥の四畳の書庫、本棚七棹をホームズ本とヴィクトリア朝本が占拠する。当然すべて洋書。これだけの資料を私蔵してこそ『SHB』は相当に濃ゆい充実度を誇り、また、日暮が訳筆を執った光文社文庫版ホームズ全集と各社から出ているホームズ・パスティーシュ、或いは今朝の新聞一面に広告があったヴィクトリア朝本の監修に結実するのであろう。
 こんにちの日本に於いて日暮雅通は、北原尚彦(『シャーロック・ホームズの建築』、ホームズ・パスティーシュの著作あり)と並んでホームズとヴィクトリア朝期に関する仕事を信頼してよい御仁というのを、本書と書庫の写真が証明している。

 ところで──『SHB』の読書感想文、わたくしは本当に書けるんですかね? 愛が大きいと却ってなにもできない性格が、ここでまた弊害をもたらそうとしている……。◆



シャーロック・ホームズ・バイブル 永遠の名探偵をめぐる170年の物語

シャーロック・ホームズ・バイブル 永遠の名探偵をめぐる170年の物語

  • 作者: 日暮 雅通
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2022/10/18
  • メディア: Kindle版



絶景本棚

絶景本棚

  • 出版社/メーカー: 本の雑誌社
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット

シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2023/11/27
  • メディア: 単行本




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