第2915日目 〈池上彰『わかりやすく〈伝える〉技術』を読みました。〉 [日々の思い・独り言]

 昨日の感想文でわたくしは、相手に物事をわかりやすく伝えるための技術は様々あれど、その根本を支えるのは伝える相手への想像力だ、と結論づけた。
 <三部作プラス・ワン>の2冊目、『わかりやすく〈伝える〉技術』のなかで池上彰は、わかりやすく伝える技法として今度は「地図」と「<3>の魔術」を紹介している。抜き書きノートからこの2点に即した箇所を引用、自分の経験を交えてコメントしよう。
 はじめてその話を聞く人の前に、嵩のある資料を何冊もドン、と積みあげるのは逆効果だ。途端うんざりして、吸収できるものもできなくなってしまう。では。どうすれば?
 かれらの前に最初に提示すべきは、全体を見渡せる1枚の地図だ。
 「あらかじめ「いまからこういう話をしますよ」と聞き手にリードを伝えることを、私は〝話の「地図」を渡す〟と呼んでいます。「今日はここから出発して、ここまで行く」という地図を渡し、「そのルートをいまから説明します」という形を取ることで、わかりやすい説明になります」(P19)
 ニュースの冒頭にあるリード(前文)をたとえて「地図」と呼んでいるのだが、本稿では1枚の紙に描かれた全体俯瞰図としての地図と置き換えてお話しを進める。全体を要約したレジュメと言い換えてもよいか。
 どれだけ膨大、複雑に入り乱れた資料であっても、余程のものでない限り、A4サイズの紙に内容は落としこめる。
 いま職場で使われているスクリプトは改訂更新が頻繁に繰り返されている。最新ヴァージョンはこれまでバラバラだったものを1冊に集約したせいで何と約50ページになんなんとし、うち後半1/2は常時使うものではない。逆にいえば残り1/2は常に使う部分なわけだが、それとてページが行ったり来たりしていて、ベテラン勢からは特に不評を買っている。既存メンバーでさえこれなのだから、来月入ってくる新人たちの混乱ぶりと阿鼻叫喚の連鎖は必至。
 そこで登場するのが、「地図」だ。あらかじめ話の起点と終点、真ん中を埋めるフローを記した地図さえ用意されていれば、余計な不安は除かれよう。そんな地図をいま、パワーポイントで作っている。全体の流れと順番が把握できたらスクリプトで詳細を確認し、スクリプトにあたっていていまの自分の立ち位置を見失ったら地図へ戻ってくればよい。
 池上さんの述べんとしていることと、なにか齟齬でもあるだろうか。否。ニュースのリードは前文であると同時に俯瞰図である。それを、「地図」という。わたくしが上に述べたA4サイズ1枚に業務フローをまとめたそれも、俯瞰図であり地図なのだ。それぞれの立ち位置が違うだけ。
 日本人はどうしたわけか、「3」という数字が好きだ。ことわざや慣用句、また日常生活にも古来より浸透して、不即不離の関係を築いている。一方でこの「3」という数字、物事をロジカルに考えたり、第三者(おう)への説明にも便利な数字である。
 池上さんは「わかりやすく伝える技術」の1つに、「3」というキーワードを採用する。
 「人は、たいてい三つまでなら耳を傾けて聞きます」(P152)
 「その点、「三」という数字は過不足のない、きりのいい数字です。「大事なことは三つあります」と言われると落ち着くのです。何と何と何だろうという興味も持てます」(P153)
 「すべてを三の単位で積みあげて考えてみましょう。……すべてを三つに分けて整理していくと、聞き手にもわかりやすくなりますし、話もしやすくなります」(P154)
 そう、そうなんだよね。周知すべき事柄を3つに絞り、1つの話の柱となる部分を3つに分け、それを前もって相手、聞き手に知らせておくと、聞き手の反応が、知らせていない場合に較べて前向きなのだ、意欲的なのだ、そうしてそのときの集中力と理解力たるや半端ではない。伝える側のこちらがタジタジになってしまう程に。
 加えて、そうやって話すべき事柄を絞りこみ、また話の内容を整理しておくと、話者であるこちらも勉強になるのだ。伝達事項を十全に理解するのは勿論、どうやって話を切り出そうか、記憶に残るフレーズは作れるか、どのように話を展開させようか、この難しい表現を如何にわかりやすく・しかし実態からかけ離れることなく伝えようか、など頭をフル回転させて考えることになる。それ即ちこちらの記憶にも完全に定着するということだ。必要なときに思い出せるかは別として。
 なんにでも「3」という数字を意識して当てはめてゆくことで、伝える能力を磨きあげられるのだ。それは聞き手にとっても話者にとってもウィン・ウィンであることを意味する。◆

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