第0186日目2/2 〈『丘を越えて』〉 [ウォーキング・トーク、シッティング・トーク]

 日本映画専門チャンネル(706ch)で『丘を越えて』を観ました。監督は高橋伴明。出演は西田敏行、池脇千鶴、余貴美子、西島俊介、嶋田久作(加藤~っ!)他。原作者猪瀬直樹が直木三十五役で特別出演(原作は『心の王国』文春文庫)。
 一言でいって、しっとりとした良作でした。観て良かった。見逃さずによかった。「ほのぼの」とは違う意味で、心があたたかくなる映画。

 劇中菊池寛の台詞にあり、放送後軽部支配人も指摘していた「外見はモダンでも心は江戸」という台詞が印象的。大正から昭和戦前にかけての日本は、まさにその台詞通りの時代だったのかも。
 『Allways 三丁目の夕日』(正・続)公開後は昭和30年代を古き良き時代、と曰うのが定説らしいですが、それは『丘を越えて』の時代である昭和戦前の方が相応しいんじゃないのかな。佐藤春夫や谷崎、近松秋江、或いは平井呈一の著作や彼らについて書かれた本を読んでいると、そんな感じがしてならないんですよね。文化学院の創立者西村伊作とそのファミリーも、そんな佐藤や平井同様、時代の精神の体現者でしょ。

 その『丘を越えて』は、菊池寛(西田)と秘書細川葉子(池脇)、馬海松(西島)の三角関係のお話であり、菊池の「老いらくの恋」が描かれた映画でもあります(ぐさっ!)。なんだか16歳の年齢差の恋とはこんな感じなのかなぁ、……、と思ってしまったりして。

 物語は昭和6(1931)年9月18日の柳条湖事件(満州事変のプロローグ)勃発を知らせるラジオのニュース速報で幕を閉じます。これ以降、日本は悲惨な戦争の時代へ、軍部主導の時代へ突入。
 ━━そんな暗い予感を払拭するためにラストで用意されたのが、藤山一郎の名曲「丘を越えて」(昭和6年12月発表)をバックに登場人物が踊るシーン。ここが文句なしに良いんだっ!! ほっこりとした気分になりますよ。この歌も改めて聴くと、ほんと、あたたかい歌だよな~。
 なお、主題歌となる「丘を越えて」はつじあやのが歌っています。

 物語的にはやや知り切れトンボ感も味わわされるけれど、まぁ、それは物語の作り手にいつだって付きまとう宿命的問題なので……。

 来週は『カンフーくん』、再来週は『SWEET RAIN 死神の精度』が放送予定。◆

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