第0230日目 〈士師記第9章:〈アビメレクの過ち〉〉 [士師記]

 士師記第9章です。

 士9:1-57〈アビメレクの過ち〉
 士師ギデオン、即ちエルバアルの息子にアビメレクという者がいた。母は側女、即ち奴隷であっった。
 そのアビメレクは母方のおじたちを通してシケムのすべての首長を弄して、自分をイスラエルの統治者とさせた。「あなたたちにとって、エルバアルの息子七十人に治められるのと、一人の息子に治められるのと、どちらが得か。ただしわたしが、あなたたちの骨であり肉だということを心に留めよ。」(士9:2)
 統治者アビメレクは異母兄弟70人を一つの石の上で殺した。が、末子ヨタムだけは逃げ延びた。アビメレクがシケムのすべての首長とベト・ミロの全員によって王に推されてその位に就いたとき、ヨタムはゲリジム山の頂で呪いの歌を歌った。
 「もし今日、あなたたちがエルバアルとその一族とに対して誠意をもって正しく行動したのなら、アビメレクと共に喜び祝うがよい。もしそうでなければ、アビメレクから火が出て、シケムの首長たちとベト・ミロをなめ尽くす。またシケムの首長たちとベト・ミロから火が出て、アビメレクをなめ尽くす。」(士9:19-20)
 ヨタムは逃げた。アビメレクを避けてベエルに住んだ。
 3年の統治の後、アビメレクとシケムの首長たちの間に不協和音が奏でられ出した。首長たちは王を裏切った。
 「こうしてエルバアルの七十人の息子に対する不法がそのままにされず、七十人を殺した兄弟アビメレクと、それに手を貸したシケムの首長たちの上に、血の報復が果たされることになる。」(士9:24)
 士9:25-55はその“血の報復”をつぶさに語った件りである。
 アビメレクは最後の戦地、テベツの町の強固な塔にこもった女の放った挽き臼の上石で頭蓋骨を砕かれ、部下に介錯させて死んだ。
 「神は、アビメレクが七十人の兄弟を殺して、父に加えた悪事の報復を果たされた。また神は、シケムの人々の行ったすべての悪事にもそれぞれ報復を果たされた。こうしてシケムの人々は、エルバアルの子ヨタムの呪いをその身に受けることとなった。」(士9:56-57)

 〈驕り〉と〈失墜〉がこの章のテーマであります。偉大な父を持った、出自の卑しい男がたどる一代記、といってもいいでしょう。栄華とは縁遠いアビメレクの一生は、これまで読んできた旧約聖書の数々のエピソードのなかでも、一際異彩を放つものであると同時に、アンチ・ヒーローの要素に充ちたピカレスク・ロマンとして読むことが可能でありましょう。
 これをもっと剛毅かつ骨太にして、汗と血と土と男の匂いをぷんぷんさせると、我が国の戦記物語の傑作中の傑作『平家物語』になる、とはいいすぎでしょうか。しかし、さんさんかは『平家物語』や『承久記』を読むのとまったく同じ醍醐味を味わわせていただいた、と正直な感想を残しておこうと思います。



 アナトール・フランス『舞姫タイス』(白水uブックス)をほぼ24時間前に読了しました。
 舞台は古代エジプト、“舞姫タイスの改悛”を果たさんとする修道院長パフニュスの煩悶があらすじの太軸。無事タイスをアレクサンドリアから連れ出して尼僧院に入れてからの、パフニュスの肉欲と信仰のせめぎ合いには、男性諸氏なら絶対身に覚えあるはず。
 こほむ、それはともかく……。
 読み出して約3週間ですか。読まなかった日が半分ぐらいあるね。怠けていたんじゃあ、ない。読み終わるのがもったいなかったのです。
 1890年原著刊行とあって文章はあの時代らしく現代よりずっとペダントリーに充ちて、筋運びも時代がかっているわけだが、これねぇ、読んでいて時間が経つをの忘れるんですわ。その気になれば数日で読み終われるでしょう。だけど、それはあまりにもったいない。小説を読む面白さ、終わりが近づくのが残念かつちょっと恐ろしい、そんな未練がましさを覚えた久々の小説でした。
 嘗てフランスは日本でも(なんか面妖な表記……)爆発的な人気を保ち、生田耕作師曰く、昔の大学生なら読んでいて当然な作家の一人でありました。そのフランスの単行本(文庫も含めて)が、現在は『舞姫タイス』と『エピクロスの園』(岩波文庫)ぐらいしか容易く入手できない、遺憾な出版流通状況。
 せめて、もう一つの代表作『赤い百合』と再編集された短編集だけでも、新書や文庫で読めるようならぬだろうか(『赤い百合』は2001年に臨川書店から、杉本秀太郎の新訳が刊行済み)。いや、いっそ、『アナトール・フランス小説集』全12巻を、白水社はuブックスから出し直してくれぬか。
 アナトール・フランスの『舞姫タイス』、むろん、マスネの代表作にしてフランス・オペラの至宝《タイス》(1984年初演)の原作です。〈タイスの瞑想曲〉という曲、聴いたことがありませんか? ときどき閉店の音楽に使っているデパートや本屋さんがありますよね。◆

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