第0764日目 〈詩編第072篇:〈神よ、あなたによる裁きを、王に〉〉 [詩編]

 詩編第72篇です。

 詩72:1-20〈神よ、あなたによる裁きを、王に〉
 題詞は「ソロモンの詩。」

 お待たせ、「詩編」第二巻もぶじ終わるね。というわけで、第二巻掉尾の詩72である。題詞にびっくり、なんと登場するのは第3代イスラエル王ソロモンだ。そう、最後を飾るのはソロモンによる詩篇なのである(ソロモンの名を挙げる詩篇はもう一つ、第127篇がある)。このソロモン詩篇は《第二ダビデ詩集》に含まれ、それは第20節に「エッサイの子ダビデの祈りの終わり」とあることから明らかだ。
 ソロモンの御代は王都エルサレムに於いて40年に及んだ。その治世は王国へ繁栄をもたらし、諸国が彼に仕えた。その事績や知恵はすべて『ソロモンの知恵の書』に書き記された。シェバの女王の挿話が代表するようにソロモン王の叡智はイスラエルのみならず、周辺諸国にまで及んだ。そうしてなによりもソロモンは、父王ダビデが準備だけで終わらせていた窮極の事業、即ち神殿建築に着手し、これを完成させた。誠、ソロモンは内外より仰いで讃えられるべき存在であった。━━はずなのだが、唯一の背信行為により主に見放されて敵対者を生み、最終的にイスラエルの南北分裂を招いたのもソロモンである。彼にまつわる様々な物語は王上2:12-11:43にまとめられている。
 それを踏まえていえば、詩72はなんとも皮肉な内容になっている。彼は願い、祈り、歌う、王国の永きに永きを重ねた久遠にも等しい歳月の栄華と繁栄を。何人に対しても自分の行いが公正であり、私情を交えぬ裁きが実現できることを。諸国がこの王、この国に仕えて貢ぎ物を納めるようになることを。王の栄光と統治の理想を高らかに歌いあげたのが詩72である。
 おそらくは━━ソロモン作という前提での話だが━━彼の即位後、間もない時分の作物ではないか。逆にそれ以外のタイミングで詠まれたとすれば、あまりに滑稽ではないか。
 とは雖も、この詩は読んでいて大変気持ちのよい詩である。というか、それ以上に、荘重で高い格を備えた作物である、というてよかろう。正直、このノートを完成させるまでとても苦しんだ。上手く文章がまとまること極めて皆無で、内容を引き絞るために詩72へは何遍も目を通し、時には口に上したかわからぬ程だけれども、それでもこの詩の輝きや魅力というのはまったく色褪せることがなかった。ふだんならだんだんと最初の(恋愛感情にも似た)ときめきは失われてゆくものなのだが……。それだけにこの詩を、聖書のなかの「詩編」という書物から切り離して、一個の文学作品として鑑賞したい誘惑に駆られたのである。
 でも考えてみれば《第二ダビデ詩集》の掉尾をソロモンの詩編が飾るのって、なかなか意味深長ですよね。
 なお、この詩は、来るべきメシアの統治と栄光を予見した詩、としても知られる。ハーレイに従って該当箇所を挙げれば、第7節と第8節、第11節と第19節であるそうだ。いまこの件について拘泥するつもりは、わたくしにはない。ただそのように扱われている、とだけここでは述べておく。
 本日を以て「詩編」第二巻読了、1日のインターヴァルを置いて第三巻に入ります。



 映画『世にも怪奇な物語』を観た。10代の頃に観たTV放送ヴァージョンは2話構成だったような覚えがあるんですよね。記憶の混乱か?
 アラン・ドロン主演ブリジット・バルドー共演の第2話「影を殺した男」も捨て難いが、やはりテレンス・スタンプ主演の第3話「悪魔の首飾り」がダントツでよいですね(監督はフェリーニ!)。まさしく悪夢、そうして鮮烈な映像。鞠をつく美しすぎる少女の顔は、嗚呼、夢にまで出てきそうです。仏=伊の合作による1969年の映画。
 フェリーニは別として、ロジェ・バディム(第1話)、L.マレ(第2話)が監督した他2作を観て思うのですが、ポオの原作をフランス人が手掛けると、どうしようもないぐらい優雅な残酷性が浮き彫りになりますね。ボードレールを嚆矢にポオ受容の歴史に誉れあるフランスの底力かもしれません。この調子で「アッシャー家の崩壊」と「赤死病の仮面」の映像化もお願いしたかった、と口惜しく思うのは、わたくしひとりでしょうか。
 『世にも怪奇な物語』は録画したものをDVDに落としましたので、後日、再試聴して感想など認(したた)められたらいいな、と考えております。◆

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