第0996日目 〈イザヤ書第15章:〈モアブの破滅〉2/2withヒルティ『心の病を癒す生活術』を読みました。〉 [イザヤ書]

 イザヤ書第15章です。

 イザ15:1-9〈モアブの破滅〉2/2
 衰退したモアブは一夜のうちに滅びる。その日、モアブに助けが訪れることはない。民は地のあちこちで泣き叫び、嘆いて崩折れる。悲しみの叫びは遠くの地まで轟き、それを聞いた戦士たちはおののき、心を挫けさせる。
 「わが心はモアブのために叫ぶ。」(イザ15:5)
 泣きながら、彼らは荒廃した国土を行き、逃れようと試みる。絶望の叫びは途切れることなく、あがり続ける。かれらの行く手、ディモン(伝、現キルベト・ディムネ)の水は赤く染まる。「わたしが、ディモンに災いを加え/モアブの難民とアダマの生き残りの者に/獅子を送るからだ。」(イザ15:9)

 モアブの地名と地理ゆえに難渋させられた章でした。
 モアブは塩の海(死海)東岸、アルモン川の南に広がる地で、兄弟イスラエルとは実に微妙な関係にあった国家です。時には味方、時には敵、「イザヤ書」では概ねイスラエル(ユダ)に敵対した国をして扱われます。
 イザヤの時代、モアブは北王国オムリ王の代からその占領下にあり、前8世紀に国力を回復するも一時的で、すぐに衰退を始めた。南王国エホヤキム王がバビロンに反旗を翻すと、モアブは宗主国バビロンの命令でユダを攻め、それが結果的にユダの瓦解・エルサレムの陥落を招いたのでありました。「エズラ記」や「ネヘミヤ記」でモアブが蔑視される所以であります。
 さっきイスラエルの兄弟というのはモアブ人の祖が、「創世記」に登場してソドムの惨事を逃れた、アブラム(アブラハム)の親類であるロトの長女の子供だからです(ex;創13,19。殊に創19:30-38〈ロトの娘たち〉)。ちなみにロトの次女はアンモン人の祖となる子供を産みました。つまり、創世記に於いてイスラエルとモアブ、アンモンは、エドムともども血縁の関係にあるわけであります。
 モアブはモーセ率いるイスラエルの民がカナン入植に際して通過したルートにありました。“乳と蜜の流れる地”カナンへ進むモーセ以下のイスラエルを、モアブ人の王バラクは呪術師バラムの告げる主の託宣に従って通過させます(ex;民22-24)。モーセはヨルダン川西岸を望んだあと、身罷って、モアブの地にある谷へ葬られた由(申34。34:6に、その場所は誰も知らない、とあります)。
 本章に登場する地名は最近読んだなかでは多い方で、引用した「ディモン」を含めて17の地名が挙げられています。ノートへは反映させませんでしたが、「モアブ全土」という意味合いで取ればよい、と思います。わたくしもだいたいの位置を把握するために辞書や地図を見てメモしていたのですが、申し訳ありません、途中で挫折しました。読者諸兄は挑戦してみてください。



 ヒルティ『心の病を癒す生活術』(金森誠也・訳 PHP)読。原題“Kranke Seelen”(1907).神経症の娘を持つ母親に宛てた書簡体の<処方箋>で、食事や信仰、健康と労働の実践を説く一方、「現代社会はノイローゼ化している」という21世紀になってますます深刻化した問題を、人格者ヒルティならではの論拠で指摘する。内容的には優れて良い本だが、時流にそぐわぬ部分あるのは致し方ない。他のヒルティの著作同様、これは大切に読もうと思うた。また、白水社や岩波文庫で馴染んだせいか、彼の著作の場合、原注は本文に組みこむ方が親切かつ本来であることを実感。訳文は、まぁ、悪くはない。なお、白水社『ヒルティ著作集』に既訳有り、訳者にその断りなし。小さなところで杜撰な作業が目立つのが残念。◆

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