第1038日目 〈イザヤ書第54章:〈新しい祝福〉with「上野黒門町のうさぎや」とは、……〉 [イザヤ書]

 イザヤ書第54章です。

 イザ54:1-17〈新しい祝福〉
 子供を産むことのなかった女たちよ、子供を産むことのできなかった女たちよ、歓声をあげて喜び歌え。あなたの造り主が、あなたの夫となるから。だからもう若いときの恥辱は忘れ、思い出さなくともよい。あなたの夫となるのはあなたの造り主。その御名は万軍の主、あなたを贖う方、イスラエルの聖なる方。あなたは右に左に増えて広がってゆき、あなたの子孫は諸国の民のものであった土地を継ぎ、荒れ果てた町を再建して住むようになる。
 主は、あなたを呼ぶ。「わずかの間、わたしはあなたを捨てたが/深い憐れみをもってわたしはあなたを引き寄せる。/ひととき、激しく怒って顔をあなたから隠したが/とこしえの慈しみをもってあなたを憐れむ。」(イザ54:7-8)という。主にとってそれは、もう二度とノアの洪水を起こさない、と誓ったと同等の重みがある約束(ex;創9:11,15)。再びあなたを怒り、責めることはない、と主はあなたへ誓う。
 「山が移り、丘が揺らぐこともあろう。/しかし、あなたの慈しみはあなたから移らず/わたしの結ぶ平和の約束が揺らぐことはないと/あなたを憐れむ主は言われる。」(イザ54:10)
 主の手により、あなたの都は鉱石で飾られ、再び堅固となる。あなたの子らはみな、主について教えを受け、あなたの子らには平和が豊かにある。かつてのような虐げる者、破壊する者から遠く離れて、主によって与えられた平和のなかで過ごす。
 「どのような武器があなたに対して作られても/何一つ役に立つことはない。/裁きの座であなたに対立するすべての舌を/あなたは罪に定めることができる。/これが主の僕らの嗣業/わたしの与える恵みの業だ、と主は言われる。」(イザ54:17)

 「第二イザヤ書」は希望に満ちたメッセージや言葉が多い旨、開始当初に述べた通りでありますが(第1022日目/イザ40;1/2)、本章と続く第55章はそのうちでも頂点を極めている、と思います。もしかすると、第二イザヤ書がクライマックスを迎えているからかもしれません(それは次の第55章で終わるためです)。昨日のメシア預言を承けている章だけに、尚更そう感じる次第です。
 誰しもが読んだあと、清らかな気持ちになるであろうことを疑わぬのであります。辛苦を経験した者に対して救いの後に与えられる祝福が、どれだけ穏やかで久遠の恵みに彩られたものであるか、読めば読む程に胸の奥の方へ、奥の方へと染みこんでゆくのであります。



 送り火を焚いて田舎へ行った昨日(一昨日ですか)、行き帰りの電車のなかで山村修『増補 遅読のすすめ』を読みました。ゆっくりと、言葉を掘り起こすようにして読むのが自分には合っているのだが、まわりに比べてなんと自分は本を読んでいないことか、と言われなき肩身の狭さを味わったこともある。そんな自分を見かねて友人がこの本の存在を教えてくれたのでした。それ以来、ゆっくりと、丹念に読むことが当たり前となったのは、山村修の本と出会い、それを支えとしたからでもありました。
 そう、書評家<狐>こと山村修は本をすりつぶすようにして、噛み砕くようにして、一週間に一冊のペースで読み進めてゆく人であった。新刊の文庫も田舎への往復の途次、楽しみつつゆっくりと、陶酔しつつ読み進めたのでしたが、再読、三読すると以前は読み落としていたり気が付くことのできなかった箇所に注目するようになる、という著者の指摘に深く頷いた箇所が、今回ありました。
 詩人立原道造と作家杉浦明平が甘味処に入ってぜんざいを注文した、という件りを紹介したところである。引用文のなかにあったことだけれど、どうやらこの二人が入った上野の甘味処は、「上野黒門町のうさぎや」であったそうだ。
 ━━うさぎや! もしや、と思い、帰宅して永井荷風の日記やら他数冊を繙き、上野地区の地図を調べて裏付けした。元よりそこまでやる必要もないことだけれど、やってしまったのだ。立原と杉浦が暖簾をくぐった甘味処は、紛うことなき平井呈一ゆかりのうさぎやであろう。平井翁の実兄谷口喜作が養子となった上野の老舗和菓子店で、一時は文学者の交流の場ともなった、と聞く店である。立原と杉浦が訪れた遠因に、この双子の存在、殊に兄谷口喜作の存在があったのかもしれない、と考えるのはなかなか愉しいことである。
 歴史に埋もれたささやかな事実程、われらをワクワクさせ、和ませてくれるものも、なかなかないように思います。これだから、小さな歴史を探るのは楽しいのであります。たとえば、ホームズ研究の楽しさの一端も、こんなところに理由を求められるような気がします。◆

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