第1157日目 〈エレミヤ書第43章:〈エジプトへの逃亡〉&〈エジプトにおける預言〉1/2with運命を免れたあの朝の夢。〉 [エレミヤ書]

 エレミヤ書第43章です。

 エレ43:1-7〈エジプトへの逃亡〉
 エレミヤが預かった主の言葉を高慢不遜なるヨハナンたちは否定した。曰く、━━
 われわれの神はそんなことをいっていない、あなたのいっていることは偽りだ。バルクがあなたを唆したのだ、われわれを仲間割れさせてカルデア人の手にかかって殺されるか、或いはバビロンへ捕囚となって連行されるように。
 主の言葉を求めたかれらは、自分たちの思惑と反対の台詞(ユダに留まれ、安泰だから。エジプトに行くな、滅びるだけだ)をエレミヤの口から聞かされたので、こぞってこれを否定して、憤慨した。
 ヨハナンたちは避難先から戻ってきていたユダヤ人も連れて、エジプトへ出発した。そのなかには主の言葉の正しさを信じるエレミヤとバルクの姿があった。主の言葉を信じぬヨハナンたちに率いられて一行は、やがてエジプト国境にある町タフパンヘスへ到着した。

 エレ43:8-13〈エジプトにおける預言〉1/2
 タフパンヘスにて。エレミヤに主の言葉が臨んだ。曰く、━━
 ユダの人々全員が見る前で、ファラオの宮殿の石畳の下に大きな石を埋めよ。そうして、いえ。わたしは、わが僕にしてバビロニアの王ネブカドネツァルをここへ遣わして、この石の上にかれの王座を置き、天蓋を張らせる。エジプトへ身を寄せた人々はあらかじめ定められた災いによって、かれの前に倒れてゆく。
 バビロニアの王はエジプトを撃つ。太陽の神殿のオベリスクを破壊し、火を放って焼き払う。かれはエジプトから神々を奪い去る。ユダの国やエルサレムの都同様にエジプトの国土を打ち払ったかれは、安らかに、意気揚々と自分の国へ還る。
 ━━以上、タフパンヘスにて、主の言葉。

 タフパンヘスはエジプト国境にあった要塞都市で、シリアとエジプトを結ぶ街道にあった。ハーレイの著書に拠れば、それはスエズ運河西方16キロにある場所と同定される由。
 19世紀後半に発掘された宮殿跡に、エレミヤが大きな石を隠した場所であろう、とされる石畳があった。この宮殿/ファラオの宮殿は“パロの宮殿”とされ、離宮とか御用邸のような施設であった、と考えればよいと思います。タフパンヘスは本章のみでなく、このあともしばらくの間名前の登場する町なので、ハーレイの著書や聖書関連の考古学書、或いはエジプト史など、この機会に繙いてご覧になってみては如何か。吉村作治さんの本とかツタンカーメン発掘の話とかね。面白いよね。そういえば、SKE48の矢方美紀が吉村先生と対面して感極まって号泣していたっけ。
 オベリスク(エレ43:13)はこの時代のエジプト(新王国時代)で特に製作された記念碑で、材質は花崗岩、形は変形四角錐。ナポレオンがエジプト遠征の折に持ち帰ったオベリスクがパリのコンコルド広場に、どん、と鎮座坐しているのをわたくしも見たことがありますが、これがおそらく世界一有名なオベリスクでないか、とはフランス在住の知人の言。実際、そうであるらしいですけれどね。
 で、エジプトに到着したヨハナンたちは、結局どうなったのだろうか。この預言から18年後とされるバビロニアによるエジプト侵攻の際に命を散らしたのだろうか。それ以前に死者の仲間入りをしたのか、或いは、どうにかこうにか生き延びちゃった……? ショスタコーヴィチの《マクベス夫人》のように、主人公格が突然姿を消しちゃったりその顛末が語られなかったりすると、なんだか寝覚めの悪い夢を見たような気分になる。どうにかしてくれよ、って感じですよね。
 〈エジプトにおける預言〉を読んでいて、わたくしは唐突に『LOST』を思い出しました。運命を免れたとしてもそれはすぐに軌道修正してその者に襲いかかる。デズモンドがチャーリーに諭した言葉、それが実現してチャーリーは命を落とすのですが。まぁ、そんな話はともかくとして。これを「エレミヤ書」的にいえば、こうなります。〈わたしのいうことを聞かなかったから、他の国にも迷惑かけることになるんだよ〉、と主がいった。ヨハナンたちが逃げこまなければ、エジプトも主の怒りの対象にはならなかったかもしれない。ユダの歴代の王たちが回心して代々に渡ってイスラエルの主なる神の信仰に立ち帰っていたならば、滅亡は免れたかもしれない。少なくとも、それは少し先に延ばされたかもしれない。そんな、歴史の「if」のお話しであります。まこと、運命はどこまでも追いかけてくる。軌道が変えられても、すぐに修正されるのであります。



 夢を見ました。運命を免れたあの朝の夢。
 2001年9月11日。あの朝、わたくしは私用でNYにいて、まさにWTCの下の広場で、そこで働く友人と待ち合わせをしていた。しかし、先方の都合で約束はキャンセルとなり、その朝は一人NYの街を散策する予定だった。そうして頭上を黒い影がかすめてゆき、耳を聾するような轟音が後頭部のずっと上の方から聞こえてきた。数日後の夜、わたくしはテレヴィであのテロ攻撃についてニュースで見て、知った。
 夢のなかでわたくしは友人と会い、別れて、WTCを背にして歩き出していた。頭の上から轟音、足の下から大地が揺れる音。振り返れば北塔から白煙が立ちのぼり、火の手が広がってゆき、次々と黒い影が落下してくる。影は次第に大きくなってゆき、友人の顔になった。こちらを見て、……顔が崩れた。
 あの日、あの朝の、予定されて免れた運命を、今朝、夢に見た。運命を免れたとしてもそれはすぐに軌道修正してその者に襲いかかる。ならばわたくしにも、それはいつの日か襲いかかるのか? 人は死ぬ、必ず。が、その方法はわからない。◆

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