第2492日目 〈『ザ・ライジング』第4章 12/46〉 [小説 ザ・ライジング]

 上野は椅子に浅く坐っていた。椅子のパイプに手首を縛られ、足首も同じように縛られている。脱がされた服と下着が床に散乱している。開かれた足の間に池本がひざまずいて、無心に上野の怒張をほおばっていた。赤塚から連絡があったが、終わるとまた同じ行為にいそしみ始めた。
 脱力しきった眼差しで、上野は池本を見おろした。視線を感じたか、池本は妖艶としかいいようのない眼差しと笑みで奴隷を見あげた。
 上野にしてみればこの時間は苦悶の時間だった。向かい合った椅子にまたがって池本が自慰に耽る姿を見せつけられ、これ以上ないぐらい充血してそそり立った怒張を持て余しているところに、池本の巧みな唇の奉仕が始まった。爆発しそうになると、それを察知した彼女が怒張の根本を強く握りしめ、精液の噴出を防いだ。
 爆発させるなら、深町さんの中になさい。
 ああ、なんと殺生な。そう上野は思った。もう何度となく彼は絶頂に達しかけている。
 血管の浮いた怒張から唇を離すと、彼女は奴隷の足首に巻いたストッキングをほどいた。上野の脇腹に手を添えて、満足げな溜め息をついて立ち上がる。唇の端からこぼれ落ちそうな白濁色の精液を拭わぬまま(口紅の色がにじんでいたが、それが逆に上野を興奮させた)、<夜の女王>が手首のストッキングをほどいてゆくのを彼は見守った。
 「さあ、もうすぐお楽しみの“正餐”の到着よ。――誰が服を着ろなんていったの?」
 トランクスに手を伸ばして履こうとするのを見咎める池本の口調が、やけに冷酷で鋭利に響いた。彼は、でも、といいかけたが、池本が掌をこちらへ向けて喋るのを制したので、そのまま押し黙った。
 「裸のままの方がやりやすいわよ」
 そう池本がいった。だが、上野はそれに頷くより早く、再び甘美な手触りが自分の股間を撫で、それによってしなびかけた怒張が元気を取り戻してゆくのを感じていた。
 彼が池本に、陵辱の儀式の前の最後の誓約をしているときだった。
 「失礼しまあす。上野先生、いらっしゃいますかあ?」扉を開く音に続いて、希美の舌っ足らずな声が部室の方から聞こえてきた。
 上野は思わず天井を仰いだ。もう後戻りはできなくなってしまった。やるより他にない。彼の肩に池本の掌が置かれた。上野は悲嘆の色を浮かべた眼差しで、たわわな乳房を曝す支配者へ向けた。女王がじっと上野を見つめている。そして、微笑した。
 希美の声――それはまさしく正餐の到着を意味し、ショータイムの始まりを高らかに宣言する鐘の響きでもあった。□

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