第2726日目 〈増税前は忙しい。〉 [日々の思い・独り言]

 間もなく消費税が10%にあがります。増税についての意見は棚にあげるとして、駆けこみ需要がどの業界でも目立ってきております。むかし住宅販売の営業をやっていた時分は、少しでも前向きなお気持ちがあるのなら、とにかく消費税が上がる前に本契約までは済ませておかなくちゃならんですよ、と電話営業はおろか参考見学で来た人たちまでその気にさせるテクニックが横行しておりましたが、いまはどうなんでしょう。民法も宅建業法も、否、法律そのものが厳しくなったから、そんな営業スタイルは却って処分の対象になるのかな。
 駆けこみ需要は当然、本の世界にも及んでいる。とはいっても、わたくしが申しあげているのは購入する側のお話なので。消費税8%と10%とでは、1冊の値段はどれだけ変化するのか。手許に税別760円の文庫がある。消費税8%のときは820円だったのが、2%上昇しただけで880円になる。差額は60円。いつだって1冊だけ買う、という信念の人であれば、60円はさしたる問題ではないかもしれない。9,800円の本は、今月末まで10,584円、来月1日からは10,780円。差額は116円。
 ……いま計算してみて、ああこんなものなのか、と納得、合点しそうになった自分がいた。が、駆けこみ需要で本を買う人は、絶対に1度の会計で数冊をレジに運ぶ。今日もわたくしは書店のレジに並んでいるとき、美人のOLさんが時代小説と海外ミステリを中心に文庫・単行本取り混ぜ10冊近く、レジへ積みあげた光景を見ている。一々の価格までは知らないが、合計額は24,969円であったのは、しっかり記憶している。24,969円……えーと、逆算しよう……23,119円か。これを消費税10%で購入すると、25,431円。例によって差額を計算すると、462円となる。金額は騒ぐ程のものではないかも知れぬが、今度はここに心理学がかかわってくる。
 けだし、1円でも安く買おう、というそのさもしい、もとい、健全な根性が働いて、或る種の人々は[増税前の駆けこみ需要]という大義名分を旗印に、書店から書店へ渡り歩き、ほしかった本をこのときとばかりに摑んで、それを繰り返し繰り返しして、レジへどん、と積みあげるのだ。おれは/わたしは、これだけの冊数の本を買うのだ、と誇らしげに、帰りの荷物の重さはそのときだけはすっかり忘れ。
 斯くいうわたくしも、今日は新刊書店にて買いあぐねていた文庫・単行本を、「討ち死」の覚悟を持って買い漁ってきたのである。フレミングを買い、ポオを買い、ルヴェルを買い、ギッシングを買い、ブロンテ姉妹は増税後でもいいやと諦め、また北村薫を買い綾辻行人を買い、鮎川哲也を買い松本清張を買い、鴎外を買い空海を買い、その他投資や金融の本その他諸々を買い、……してきたのである。合計金額はとてもではないが、いえない。先述の美人OLさんとは良い勝負だった、とだけいうておこう。だって、増税前だもん。1円でも安く、でも新刊書店で買いたいもん。が、この一種の祭りは今日では終わらない。28日に欲しい文庫が数冊、出るのだ。これを買わずして、どうして増税前、駆けこみ需要の終焉を飾れるものか。
 明日は1日お家にこもり、本の整理をしなくては。図書館で借りた本も読みたいぞ。そうこうしているうちに、Macをスリープ解除してGoogle Chromeを開き、ヤフオクや「日本の古本屋」を開いて、「ああ、長年探していた本をやっと見附けた!」「増税前に買っておかなくっちゃ!!」なんて台詞を吐きながら、ポチポチしている光景が容易く浮かぶのだ……。あはれその人、あらおかしいね。◆

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