第2923日目 〈池上彰『なぜ、読解力が必要なのか?』を読みました。〉 [日々の思い・独り言]

 ここでいう読解力とは、国語のテストで小説の登場人物の気持ちや著者のメッセージを汲み取る能力を指すのではない。日常生活や社会生活を営んでゆく上で、かならず必要になる力である。ネットや新聞にあふれる情報の取捨選択、分析したり裏を取ったりすること。会話や仕草、表情から相手の真意を探ったりすること。そうした諸々をすべて引っくるめて読解力と呼ぶ。
 池上彰が『なぜ、読解力が必要なのか?』で主として説くのは、如何にして読解力を養うか、読解力を伸ばすにはどうしたらよいか、である。
 まず読解力には、論理的読解力と情緒的読解力の2つがある、と池上さんはいう。前者は専ら優れた評論によって思考を鍛えられること、後者は文学作品から承ける感情によって培われる。
 「情緒的読解力とは、「人間の感覚で考えられる」ということです。人間力がある、あるいは共感力があると言い換えてもいいでしょう。」(P50)
 「一方で論理的読解力はどんな力かというと、相手の主張を理解する力です。また論理的読解力は、多角的なものの見方を身につけるための力であるといえます。」(P53)
 情緒的読解力を養うことで人は、他者の心情に立った物の考え方ができるようになる。論理的読解力を養うことで人は、世界を多角的に、複眼的に捉えることができるようになる。
 その読解力を伸ばすには、①書く、②読む、③聞く(訊く、質問する)、④伝える、の4つの要素が必要だ。わかるように書くためには不断の読書が欠かせない。スマホやSNSでは読解力は養われない(著者は書いていないが、他人の痛みや悲しみ、苦しみを想像するだけの想像力も養われることがない)。相手のいわんとしていることはなにか、を常に考えて相手の話を聞き、相手にわかるように説明する。──これが、池上さんが経験に基づいて導き出した読解力の伸ばし方である。
 本書では端々に、新型コロナウィルスに直面して生活スタイルが変容せざるを得なかった世界で、読解力がどれ程重要なものになってゆくかも述べられている。そのなかでも殊、最後の5行は胸に迫る文章になっている。引用して、本稿の〆括りとしたい、曰く、──
 「新型コロナウィルスの感染拡大により、世界で何十万人もの人が亡くなるという未曾有の事態に直面した2020年、未来は人智の及ばない、不確かなものだという事実が、改めて私たち人類に突きつけられました。だからこそ今、教養を身につけ、読解力によって物事を正しく理解し、立ち向かうことの重要性が高まっています。
 読解力は、不条理な世の中を生き抜くために欠かせない力なのです。」(P179-180)◆

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