第3164日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第9話を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 なんだか第9話「君たちの名前は?」は予定調和の展開になりましたね。グループ名を決めるとなれば、相応のテンプレ・ストーリーにならざるを得ないのかな。いや、むろんそれがまったく悪いわけではなく、むしろ今回はテンプレに徹してくれたお陰で脚本が暴走しないで済んだ、という、皮肉というか「なんだかなぁ」な結果になったことをわれらはひとまず良しとすべしでありましょう。
 前回予告で発覚した葉月恋の普通科制服問題、これはあっさり解決してしまいましたね。そうか、その手か、と。転科に伴う制服変更かと思いきや、まさか自由選択制とは……。すみれと恋の台詞(04分34秒〜04分45秒)から、──
 すみれ;まさか、あんたまで普通科に移ってこようって?
 恋;いえ、科によって制服で区別するのではなく、自由に選べるようにした方が良いと理事長から提案がありまして。
 ──以上。
 恐れ入った、の一言であります。
 でも、これはこれでアリか、とも思うたりして。考えようによってはいちばん現実的であります。学校側にしてみれば実に合理的な判断で、保護者の立場に立てば負担が軽減される最善の決定でありましょう。
 ただ、続くかのんの「私も音楽科の服、作ってもらおうかな」には、どうしてもドキリ、としてしまいます。歌えないというトラウマを完全に克服したいま、再び音楽科への未練が甦ってきたのかなぁ、と。しかしそれは杞憂だったようです。千砂都とのイチャイチャにも似たやり取りからは、未練云々というよりも単純にファッションを楽しむ、という気持ちの方が強い様子が窺えましたから。よかった、ここに至って再度のトラウマ発動なんて、シャレになりませんものね。
 制服が自由選択制になっただけで、恋までが普通科に転科して来たわけではなさそうです。いや、いろいろ想像してしまったのですよ。ホラ、音楽科の生徒たちのなかにはスクールアイドルを好きではない、良く思うていない、という人たちが不特定多数いるらしいことをわれらは、第1話での千砂都(15分25秒〜)の発言から知っているではないですか。実際、そう捉えられてもおかしくない口調で会話をしていた音楽科の生徒も、第4話にはいたでないですか(18分11秒〜)。
 そんななかにあって葉月恋、学校の運営事情も相俟って音楽科の生徒たち(の一部)から冷たい視線を浴び、四面楚歌に等しい状況に陥ってしまい、救いをかのんに、普通科に転科するという手段を講じて求めたのかなぁ、なんてね。想像してしまうたわけです。
 でもそうではなかった。良かった、良かった。安堵して胸を撫でおろします。
 ──さて、本題のグループ名考案から決定までの経緯を、以下に。
 そも始まりは「ラブライブ!」へのエントリーからだった。OP明けのAパート、可可による「ラブライブ!」講座が始まり、会場が近所でもある神宮競技場であることが判明。ではエントリーを、というときでした。ここでようやく彼女たちは気附くのです、自分たちのグループにはまだ名前がないことを。え、いまさら? とか思うのはやめましょう。
 06分12秒からのシーンです、──
 可可;あっ──あ、あ、あ、あ……。
 かのん;どうしたの?
 可可;あわわわわ……
 [椅子から立ちあがって可可のスマホを後ろから覗き見る4人]
 4人;ん?
 [可可のスマホの画面が映る。「ラブライブ!」エントリー画面、学校名には「結ヶ丘女子高等学校」とあるが、グループ名〔必須〕がブランクである]
 可可;結ヶ丘スクールアイドル部は……
 かのん;グループ名?
 恋;そういえばわたくしたちって、……
 すみれ;なんてグループ名なの?
 [5人の後頭部に、サブタイトル記載]
──以上。
 さあ、どうする? 今回は、というか『ラブライブ!スーパースター!!』に東條希はいない、先代グループもいない。名付け親になるべき存在はいないのだ。が、そこは流石に可可でありました。過去の有名スクールアイドルたちの事績はつぶさに知っている様子。だってあろうことか、この場で可可が引き合いに出したのが(名前こそ出していませんが)、すべての道を切り拓いた”あの”スクールアイドルだったのですから。
 08分18秒からのシーンです、──
 可可;思いつきました! たしかレジェンドスクールアイドルはかつて──
 [場面変わり、廊下。「おなまえ、募集シマース!」とかのんの似顔絵入りカードがスプリングで付けられた「結ヶ丘女子スクールアイドル部 グループ名募集箱が設置されている]
 可可;──こうして名前を募集したのです。[全員が一様に疑わしげな表情を浮かべているなか、一人可可だけが勝ち誇ったような顔でいるのが面白い。可愛らしい]
 かのん;本当に集まるかなぁ?
 すみれ;入ってもマトモなのはなさそうだけど。
 可可;大丈夫ですよ。こうしておけば週末には、──
 [数日後、からっぽの箱をかざして泣き顔の可可]
 可可;ゼロ~
 すみれ;すっからかんったらすっからかん。
 可可;うるさいです!
──以上。
 いやぁ、この様子を穂乃果が見たら大喜びし、海未は嘆息し、ことりは苦笑いし、希は大笑いするんだろうなぁ。
 余談はともかく、『ラブライブ!スーパースター!!』の時代、μ’sは「レジェンド」として語られる存在になっており、その活動、その練習、その歴史は──おそらくAqoursの時代以上の情報と逸話が、フェイクも含めて公になっていると想像できます。
 グループ名についても然りで、如何にして決まったのか、その発端、過程、結果までが知られているというのはそれだけμ’sの存在が「ラブライブ!」の根幹をなし、神聖視されていることの証左というてよいかもしれません。
 第4話で可可がいみじくも発言していた通り、「ラブライブ!」は国民的祭典に等しいイヴェントとなっており、スクールアイドル活動をしていなくてもその存在ぐらいは知っている大会であるのでしょう。実際、グループではいちばんそういうものから遠いところにいた恋までが、第9話時点で最低限の情報を把握しており、かつての出場校のことまで知っていたわけですから、過去情報へのアクセスはかなり容易になっていると考えるべきでしょう。
 このたび可可がμ’sというレジェンドスクールアイドルに触れたことで、μ’sメンバーの誰彼とかのんたちの邂逅を、かなわぬ夢と知りつつますます期待してしまうのでありますよ。むろん、それが実現してはならぬ夢物語であるのは承知しています。それでもわたくしはいまもう一度、μ’sメンバーが動き、喋るところを見てみたい。悲しいことに、いつまでもそんな夢の実現を願ってしまうのですよ。そういえば今回もかのんの背景に映っておりましたな、「COFFEE HONOKA」(19分24秒)。
 閑話休題。
 けっきょく、グループの名付け親はかのんであった。紆余曲折を経たとはいえ、やはりこの人に決めてもらわなければ締まりがつかない。
 作詞もグループ名も、メンバーやクラスメイトたちと話していてヒントを摑んだかのんが、帰宅して作業に取り組む一連の場面の核となるのが、かのんが父の書斎から辞書を見繕って部屋にこもり、作業に勤しむ場面──19分32秒からの場面です。
 父の書斎からフランス語辞典・新版や独和辞典、西日辞典、英語大辞典、現代中国語辞典(出版社名の下に中日辞典の文字あり。これはかつて第2話でかのんが作詞に使ったと同じ辞書である)を見繕い、夜っぴて作業して作詞と命名の両方をこなして見せたかのん。そのヴァイタリティと想像力と、体力と精神力は、たといアニメの描写とはいえわたくしも見習わなくてはならない。そうしてなによりも着目したいのが、その語学力なのであります。
 語学力? 然り、語学力である。ドイツ語とスペイン語は上述の通り独和辞典と西日辞典ゆえ問題はないが、フランス語辞典・新版(FRENCH dictionnaire Nouvelle édition)と英語大辞典(ENGLISH LANGUAGE ENCYCLOPEDIC DICTIONARY)はおそらくフランス語と英語で書かれた辞書である。それをいちおう使いこなせるだけの力量を持っているのですね、澁谷かのん嬢は。父の職業が中国語の翻訳家であることに加えて祖母がスペイン人という設定を持つかのんならではの辞書処理能力と申せましょう。わたくしは辞書オタクだから、こうした描写がなにより嬉しい。三度の飯よりも好きだ、美味い、というては家人にドヤされるけれど、ああ、こうした娘が欲しいや。
 また話が脱線しかけたが、かのんは外国語が或る程度はできる、と、そう考えてまったくおかしいところはないでしょう。スペイン人の祖母を持ち、おそらくは父がその血を引く。祖母がどこに住んでいるのか明らかにされていないが、存命ならば幼い頃から祖母宅に遊びに行ったりして、スペイン語のみならず欧米言語に馴染む機会はあったと考えてよいのではないでしょうか。
 父の蔵書とはいえ、それを読みこなし、使いこなすかのんは、外国語に関しては優秀な部類に入る人のように思います。こうした点からも澁谷かのんという人物が、歴代主人公の系譜を汲みつつも決定的に異種な人物であることが認められるのではないでしょうか。
 この一連の場面でちょっぴり嬉しかったのは、父の書斎に入って数冊の辞書を担いで出てきたとき、父と会って笑顔でなにか話していたときのかのんの表情。家族関係の良好なところが窺えたし、かのんの行動に父が理解を示している様子、応援している様子すら察することができます。これはなかなか良い描写、そうして珍しい描写でありました。娘と父が直接接して会話を交わす場面というのはこれまでに見られなかったものであるがゆえ。
 ──グループ名「Liella!」の意味はかのんの口から「結ぶ」という意味のフランス語だと説明された。それが葉月花の想いを汲んだ命名であることも同時に。
 20分30秒からのシーンです、──
 かのん;それでね、グループ名も思いついたんだ。
 [部室のホワイトボードにの文字]  恋;リエラ……ですか?  かのん;うん。フランス語で「結ぶ」って意味の言葉から作ってみたの。ほら、恋ちゃんのお母さんって学校を通して一つに結ばれるって想いから、「結ヶ丘」って名附けたでしょ?  恋;ええ。  かのん;私たちもそれと同じで、スクールアイドルを通していろんな色の光で結ばれてゆくといいな、って思ったんだ。  千砂都;光かぁ……。  [かのん、ホワイトボードの前を離れて窓へ歩いてゆく。それを見送りながら、]  恋&千砂都;ん?  [かのん、部室の窓を開けて]  かのん;赤だったり、青だったり、緑だったり、つながったり、結ばれてゆくなかで、私たち自身、想像しないような、いろんな色の光になってゆく。それはまだ何色でもない、私たちだからできること。始まったばかりのこの学校だからできること。  千砂都;私たちだから……  すみれ;[髪を指で巻きながら……って真姫ちゃんかいっ!]悪くないんじゃない? Liella!  恋;Liella!  千砂都;Liella!  可可;Liella!  かのん;Liella! ──以上。  ああ、なんと貴い光景、なんと貴い言葉たち。  このあと、可可によって命名記念の横断幕が校舎におろされ、無事「ラブライブ!」へのエントリーを果たすことになります。挿入歌「Dreaming Energy」は「ラブライブ!」出場に際して作られた曲ですので、まだそのステージ風景を見ることはできませんが、かのんたちの想いが詰まったこの歌を早く観てみたいものであります。  斯くしてかのんたち結ヶ丘スクールアイドル、もとい、Liella!は正式に始動し、「ラブライブ!」への舞台目指して本格稼働を始めたのです。その様子は来週の第10話で描かれるのでしょうが……次回「チェケラッ!!」の内容がまるで予想できない……。  今回のエンディング「未来は風のように」は、かのん抜きの4人で歌われておりました。いつもと違い、浮遊感と透明感のある、美しいハーモニーを聴かせていただきました。◆

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