第3185日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第12話(最終回)を観ました。〉1/2 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 第12話最終回を迎えるにあたって、第1期Liella!の物語は存外と綺麗な形で幕を降ろしたように思います。『ラブライブ!』及び『ラブライブ!サンシャイン!!』のように未回収の伏線をむりやり詰めこんで欲求不満にさせる終わり方を迎えるのではないか、と若干不安だったのですが、結果的にそれは杞憂に終わった様子。
 改めて全12話を回顧したとき、わたくしの胸へ、いの一番に飛来する思いは、『ラブライブ!スーパースター!!』がLiella!メンバー各自の成長物語であったということであります。就中その傾向は主人公の澁谷かのんに顕著で、否、『ラブライブ!スーパースター!!』は彼女の成長物語であった、といい直すべきかもしれません。第1話ではあれだけやさぐれて、この子が主人公で大丈夫なのかしら、と親のように心配してしまったのですが、回を重ねるごとにかのんは確実に自分のトラウマを克服し、メンバーの想いをつなぎ止め、グループをまとめ、地に足着けながら成長していった。なんだか娘の成長を見守るような父親のような気持ちでありましたよ、いやマジで(ホレイショ風に)。
 「バーカ、歌えたら苦労しないっつーの」、現在の時間軸にてかのんがいちばん最初に発した台詞がこれでした。幾ら受験失敗した引け目はあると雖も、おい、これから始まる新しい『ラブライブ!』の主人公としていったいどうなのか、と不安になり、この子がどうやってスクールアイドルを結成してゆくことになるんだろう、と小首を傾げてみたりしてね。
 それがどうでしょう、第12話最終回となった「Song for All」ではもはやトラウマは影も形もなく、最後にかのんが発した自分の想いは、「優勝したい!」でした。それまですっかり自分に自信をなくし、歌えるようになっても勝敗にこだわる様子もなく、ただ皆で楽しく歌えたら、私たちの歌を聴いて笑顔になってくれる人たちが一人でも多くいれば、という気持ちの方がが彼女には強かった。それが地区大会を突破して東京大会を目前にしたときからかのんの意識に変化が生じた。
 ──それは即ち、勝負の世界で勝ってこそ見えてくる世界がある、わかるものがある、そう知ったからでした。
 彼女にそれを教えたのは、大会を控えて本土へ買い出しに来たサニーパッションの2人だった。彼女たちの役割はLiella!のライヴァルよりも助言役という方が相応しいようです。
 既に第12話開始早々からかのんの本気は全開でした。嵐千砂都をトレーナーにした練習のあと、可可がすみれがへたばっていたのを尻目に、あたかも全員を鼓舞するかのように放った一言一言が彼女の本気具合、歌うことの楽しさを取り戻した彼女の喜びがはち切れんばかりに描かれておりました。01分58秒からの場面です、──
 可可;うわぁ、足が棒です。
 かのん;まだまだ。かなり良くなってきてる。良い感じ。この調子でランニング、もうワンセット行こう!
 可可;うえー。
 すみれ;あなた、力みすぎじゃない?
 かのん;だって東京大会が近いんだよ!? なんか頑張った分だけ出来るようになってゆくのって、楽しいな、って思って。
 [すみれ、それを聞いて微笑む]
 かのん;よし、行こう!! [かのんの背中にへばりついていた可可、中国語で悲鳴をあげながら弾き飛ばされる]
 すみれ;また外苑?
 かのん;5セットぐらい、いっちゃおう!!
 すみれ;ええっ!?
 恋;[傍らの千砂都に]かのんさん、以前よりだいぶ変わりましたね。前向きになった、というか……
 千砂都;そんなことないよ。これがかのんちゃん……私が知ってる!
──以上。
 呼応するようにして、東京大会の結果が2位で終わったあとの練習に於いても、具体的なメニューには触れませんが他の4人が練習を始めようとしているとき、かのんは1人部室に残ってホワイトボードに次の目標を書きこんでいました(シリーズ定番の演出となりましたね)。曰く、──
 「目指せ! ラブライブ! 優勝!!」
──と。優勝の言葉は赤字で、二重のアンダーラインを引いて(22分22秒)。
 なんだかこの場面まで来て、ジーン、と胸が熱くなりましたね。たしかに結果は残念でしたが、それを発憤材料にしたかのんの奮起、Liella!メンバーの<もう一度、頂点を目指して>という想いが一体になった場面と感じたからです。いやぁ、なんだか隔世の感がありますよ。勝負事にこだわらないスタンスに見えたかのんちゃんがまさか誰よりも強く「優勝」にこだわって、再スタートを切ることになるなんてね。
 その場面のかのんたちの台詞だけ、再現しておきましょう。20分30秒からの場面です、──
 かのん;そっか、こういうことなんだ。
 千砂都;かのんちゃん……?
 かのん;ちぃちゃん、私、くやしい。せっかく皆が協力してくれたのに、なにもお返しできなかった。皆が協力してくれたのに、なにも返せずお終いになっちゃった。[かのん、俯いて悔し涙をこぼす]
 可可;かのん……
 すみれ;また、全力で挑みましょう……
 れん;そうです。
 かのん;……勝ちたい……私、勝ちたい! 勝って、ここにいる皆を笑顔にしたい。やった! って、皆で喜びたい。私たちの歌で、Liella!の歌で、結ヶ丘の歌で、優勝したい! いや、──優勝しよう!!
 すみれ;当たり前でしょう!
 可可;Liella!はこんな所で終わりません!
 千砂都;私は最初からそのつもり。
 恋;結ヶ丘はいちばんの学校です。
 [円陣]
 かのん;結ヶ丘女子高等学校スクールアイドル、Liella! これからもっともっと沢山の人に歌を届けよう。Song foe me, Song for you,
 全員;Song for all!!
──以上。余計な説明は加えません。胸の熱くなる言葉でした。このあとに流れるエンディング「未来は風のように」のLiella!5人の調和の取れた、ある意味神々しいとさえいえるハーモニーがまた聞き惚れてしまうぐらいに美しいのですよ。
 「優勝しよう」──これはμ’sでもAqoursでもいわれてきた台詞ですが、やはりLiella!の場合がいちばん心にグサッと突き刺さりますね。名言であります。
 万全の体制で臨んだ、その東京大会。結果は残念ながら第2位に終わりました。正直なところ、放送前から東京大会突破はないだろうな、と思うていました。残り1話でそれをやったらかなり中途半端な終わり方となるだろうことは想像する以前の話であり、かというて正式アナウンスもされていない第2期へ持ち越すような演出なんて愚行としか言い様がありません。それは過去シリーズのように全13話で構成すべきであり、全12話で片附ける内容のはずであります。
 まぁ、結果的に放送回数が1話減ったことで、枝葉末節を切り棄て夾雑物を紛れこませることなく、綺麗に物語をまとめられた、と申しあげることができるでしょう。過去シリーズで大いなる瑕疵を刻みこんだ前例あるゆえに脚本をはじめとするスタッフ陣の暴走、迷走、独りよがりが不安視されていた『ラブライブ!スーパースター!!』でしたが、終わってみればじゅうぶん満足のゆく終わり方であり、また物語全体としてもじゅうぶん愉しめるものであった、と思います。
 第1話の冒頭から『ラブライブ!スーパースター!!』は多くの素晴らしい歌に彩られてきました。1曲1曲がメンバーの個性を映し出した、そうしてキャラクター/キャストの声質を活かした耳に残るもので、それは常に前に披露された曲のレヴェルを飛び越えたものであったのが更なる驚きを与えてくれました。どの曲がクライマックスで歌われたって、なんの不思議もないぐらいのクオリティ……歌も衣装も演出も。
 とはいえ、終わってみればやはり最後に歌われるのは、「Starlight Prologue」を置いて他にはありませんでした。かのんの伸びやかで澄み渡る歌声、可可の甘やかな声、すみれの芯の強い歌声、千砂都のリズミカルな声、恋のすべてをつなぎ止め包みこむような歌声、それらが調和したLiella!史上最強の曲賭して用意されて、最後の最後で披露されたのが、「Starlight Prologue」だったわけです。
 冬の場面で披露されたせいか、冬ソングとして受け止められている様子の「Starlight Prologue」ですが、μ'sの「Snow halation」の流れを汲むというよりはSaint Aqours Snowの「Awaken the power」の系譜に位置する曲、といえそうであります。おそらく曲の雰囲気やテンポがそう思わせるのでありましょう。とまれ早く音盤で聴きたいものであります。たぶんしばらくの間はヘヴィーローテーションすることになるのでしょう。
 それにしてもこの曲で優勝できないとは、なんたることか。可可や悠奈の口からも過去語られていたように、近年のスクールアイドル人気はうなぎ登りで数も以前に較べればかなり増えている由。それに伴って実力も飛躍的に向上してきており、ちょっとやそっとのことでは「ラブライブ!」大会を勝ち抜くことは困難であるという。
 それだけにこの曲を持ってしても破ることのできなかったサニーパッションがどれだけ高い壁になっているかを窺わせますが、わたくしはこれに納得のゆかない者であります。勘違いなさらぬように! わたくしが申しあげたいのは、サニパの歌もパフォーマンスも披露されることなく(誰かが観ている、という描写だけでもよかった)、また然にあの実力の程や人気の程を客観的に伝える情報が劇中にて皆無だったからであります。まるで存在しないものに戦いを挑んで、その相手を見ずして敗北の結果だけ聞かされた、いわばシャドーゲームに付き合わされたような気分なのであります。
 どうしてスタッフは、サニパのお膝元である神津島で、どれだけサニパが地元から支持されており、島興しにあたって期待をかけられているか、そうした描写を一切しなかったのであろう。ステージも学校の皆と一緒に作っている、という割には、かのんやすみれたちにステージを披露した際誰一人その場に居合わせなかった。それはなぜか。要するに納得させる材料がまるでない状態で、結果だけ知らされても「なんだかなぁ」なのである。学校の生徒とかのんたちを二言三言でも構わぬから接触させるとか、サニーフルーツのアイスを食べている店或いは宿にイヴェントのポスターが貼ってあるなどの演出があれば、どうにか溜飲もさげられようものを……。
 それだけ勝ち上がるのは大変なんですよ、ということをいいたかったのだろうが、まったくサニパ側の描写を欠いたのは偏に失敗であった。A-RISEやSaint Snow程頻繁でなくても構わないから、もう少しサニパのパフォーマンスを或る程度の尺で拝見したかったものであります。その点だけが、最終回で頗る不満に思うた点でありました。
 さて、今回の結果を承けて、第2期の存在が遂に確定した。このままオワコンにするつもりはないだろう。
 第2期ありきで物語が進んでいたのは途中から明白であったが、とりあえず胸を撫でおろしたのは、限られた話数でむりやり可可の帰国問題が詰めこまれなくてよかったな、ということ。これまでのシリーズが1期13話で構成されていたのが今回に限って12話構成になった理由は寡聞にして存じ上げないが、理由がどうあれ1話減ったことで枝葉末節を斬り捨てて幹だけ残し、ストレートな物語展開が出来ていたのではないか。可可の帰国問題はグループ存続を根本から揺るがす、即ち物語全体の方向性を決めてしまう大事な要素である。それを1話で解決しようとしなかったのは、英断であったろう。無印第1期最終話のことり留学の反省から来ているのかもしれない(あれがいちばんファンタジーなエピソードであったように思う)。第2期は可可の帰国問題を中心にして進んでゆくのだろう。
 とりあえず、第2期製作は決定でしょうね、そのスタートは来春『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期の終了から数ヶ月後、3年生になったLiella!を描く劇場版は再来年の春……は難しそうだから夏とか秋かな。引っ張って2023年正月とかになるかもしれないけれど。
 嗚呼、これで『ラブライブ!スーパースター!!』は終わってしまった。これから先は完全にフルハウス……ではないが、しばらくは虚脱状態に襲われそう。とはいえ、まだまだ書き残したことはある。この最終回に関しても書き切れていないことは幾つもあるのだ。東京大会進出が決まったと知った澁谷ファミリーの喜びようとか、Liella!の面々が会場に向かうときの様子とかね(とりあえずここでは、すみれ、名前を呼んでもらえて良かったね、とだけ涙ぐみながらいうておきましょう)。形の上では第12話最終回に関しては前編後編みたくなるのかもね、この感想文──但し、明日のお披露目は期待しないでください。
 また、結ヶ丘女子高等学校のその後判明した事実や新たに生じた疑問(恋ちゃんのお父さんが必要な金額を寄付してくれる! なにより入学希望者数が格段に増えて存続が決定!!)、あとこれは実際に書きかけたが迷走を始めたので切除した「ラブライブ!」大会運営への疑問とか、様々書きたいことはあるのであります。それらをこれからも書いて、お披露目してゆきます。
 愉しくて素敵な時間をありがとう、『ラブライブ!スーパースター!!』!!◆

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