第3674日目 〈とても大事な話をしよう。お金と生活の話だ。〉 [日々の思い・独り言]

 赤面を覚悟の上でいえば、昨年までのわたくしは、お金について無頓着だった。日々の収支をしっかりと記録するわけでなく、税金や年金、保険等について熟知するには至っておらず、加えて一ヵ月生活するにあたってどれだけのお金が必要なのか、ちゃんと把握していたわけでなく──。
 過月、世帯主であった母が逝去した。それに伴って主要金融機関の、母名義の口座は相続手続き完了まで凍結され。
 即ちこれは、生活してゆくに必要な各種支払、引落がされなくなったことを意味する。気附くと気附けぬと引落ができないまま日を経ると、手許へ届けられるのが「督促状」である。或いは、至急指定金融機関口座への振込もしくは振込用紙で支払うようにという催促の書面通知である。今年令和5年は、母みまかって数ヶ月後から今日までの間、この督促状や催促状が新たに届けられない週は、おそらくなかった、と記憶する(均せば、の話だ)。
 わたくしは、自分の恥部の一部を淡々と、満天下に宣べ伝えようとしている。自然主義私小説や無頼派を気取ってのことではない。事実を語るためには、羞恥や気取りを棄てなくてはならぬ。
 お金の話は、とても大事なのだ。
 実体験に基づくお金の話は、反省と教訓の材料として次の世代へ伝えるべき、大切・重要な話だ。また、読者諸兄にもこれを教訓として、お金全般についての意識を新たにしていただきたく希望する次第である。



 お金の話、といえば、税金、年金、保険を含めた、給与明細書をネタにしてトークするのが、社会人や学生諸君には最も受け入れられやすいか。
 ところで、果たしてそれだけの給与所得者が、明細書の各項目に記載される金額をチェックしているのだろう。また、その項目の意味を知っているか。
 あなたは毎月の、自分の額面所得が載る明細書のどの項目が天引対象で、どの項目が源泉徴収の対象なのか、ご存知ですか? ついでに訊くが、源泉徴収の「源泉」を答えられますか?
 そも、あなたはご自分の給与明細書を見たことがあるだろうか。見たとしても実際の支給額の記載覧しか見ていないのでは?
 ああ、実にわたくしがそうだった。稼いだお金は返済、浪費、乱費、消費に消えた。湯水の如く使っていた時分のこと。
 いつ頃からであったろう、給与明細をじっくり見て、残業代や交通費は当然、「所得税」や「住民税」、「厚生年金」、「雇用保険」、「介護保険」といったいわゆる「控除」欄にも目を配るようになったのは。そのきっかけがフィナンシャル・プランナーや証券外務員の資格の勉強をしていた4年前だったことだけは覚えているけれど、残念ながらそのときの興味や疑問が今日まで継続したわけではけっして、ない。というか、FPや証券外務の資格を取っておきながら自らのお金についてルーズであったのは、いったいどうしてなのか、わが事ながら小首を傾げて唸り声をあげつつ考えこむより他にない。



 やはり母の逝去に伴う相続の手続、世帯主変更が決定打だった。
 これによって家や土地にかかる税金(固定資産税・都市計画税)、収益物件建替による事業ローンの毎月の返済、公共料金や各種保険と年金、生活してゆくための支払(お買い物を含む)といったものがすべてわたくしの名前で請求され、支払うようになったからだ。
 お陰で毎月の収入は税金や各種料金の支払い、或いは医療費であっという間に消えて、手許に残るはいうも躊躇われる程の金額である。おまけに前述した督促状や催促の手紙も、当たり前のようにポストに入っているしね。やれやれ。
 貧すれば鈍す、とは生活レヴェルを主に指していうらしいが、給与明細の詳細やお金に対する感覚に関していえば、むしろ、貧するがゆえに鋭くなる、の思いが強い。
 これね、実際に自分一人の肩に掛かってきたから鋭敏になったわけでね。母生前の如く分担制の頃には覚えることのなかった感覚なのですよ。



 こんにち高校では、専門家を招いて「金融」の授業が行われるようになった。成人年齢が18歳に引き下げられたのが、背景の一つになっている様。
 『池上彰と林修が初タッグ! 日本の「今」を徹底解説! 学びコラボSP』(08月19日18時30分〜 テレビ朝日)の後半で、この話題が俎上に上された。出演者の一人、伊集院光の、その際の発言に殊更頷いてしまったわたくしだが、記憶に留める意味でもその発言を以下に引いておきたい。伊集院氏曰く、──
 「大人になって思ったのは、(学校や家庭でも)もっと税金のこと教えてほしかったな、って。どういうことを申告して、どういうものが必要経費で、ということを教わりたかったな、ってやっぱ思うんですよ。こうやってちゃんとお金のことを(学校で)教えるのはいいことだと思います」(2:09:16-30)
──と。聞いていた林修が何度も頷く姿が印象的だった。
 基礎知識があって初めて、金融についての正しい知識が得られる。フェイク情報やマルチ商法から身を守るための鎧をまとうことができる──平たくいえばあらゆる詐欺行為、悪徳商法、犯罪の危険から身を守れるようになる。
 できるならば、その知識を、自分で税金を支払う、確定申告や青色申告をする、など実際の場で活かしてほしい(勿論、授業でのシミュレーションでもよい)。知識は実践してこそ身に付くのである。
 また、その授業では投資や株式についても教えられている由。政府が積極的に国民に投資を呼び掛けている、ナンカちょっと違う、歪な方向に舵を切ってどこへ行くのかわからなくなっている、この妙ちくりんな時代を反映しているね……。
 でも、高校生相手にはそれと並行して、先刻の話ではないが、給与明細書の内訳についてもきちんと授業した方がよいのではないか。なんとなればかれらの過半は進学したらアルバイトで給与を得、就職したら自ずと給与取得者になって給与明細書を受け取る側になるのだから。明細書の見方、内訳の意味や計算方法など、いまから教えておいた方がいい。もっとも、既にそんな授業を行っている学校もあるだろうこと、重々承知……。
 伊集院光の発言は、リアルタイムで金融の授業を受けている高校生にこそ響くのではないか、と思うている。



 夜は、寝る前の一刻に本を読んでいる。
 いま巻を開いてページを繰っているのは(これまで縷々述べてきた反省も手伝って)、社会の仕組み、給与や年金、メディア・リテラシー等に関して、特に高校生に読まれることを想定した一冊である。著者は、川合龍介。書名は、『社会を生きるための教科書』。岩波ジュニア新書、2010年02月刊。
 目次を書き写すと、──
 1,就職する、働く
 2,税金を納める
 3,保険や年金を考える
 4,自分の住まいを探す
 5,家族を考える
 6,お金と正しく付き合う
 7,情報を使いこなす
──となる。「はじめに」と「おわりに」を前後に付す。
 先に高校生に読まれることを想定した云々と書いた。だからというて舐めてかかるととんでもないしっぺ返しを喰らうことになるのが、岩波ジュニア新書である。『社会を生きるための教科書』も例外ではない。
 これは大人が読んでもなかなか重宝する一冊だ。
 重宝、とは、これまでよくわからぬまま過ごしてきた、或いは知ったつもりで過ごしてきた事柄や言葉をわかりやすく教えてくれるからだ。と同時に、正しい知識、正しい概念を自ら知ることで、社会で生きてゆくために必要な備えを(あらかじめ)持っておくことができる、という意味も含んでいる。──前にも書いたし、本書の帯にもあるが、果たしてどれだけの人が「“源泉徴収”ってなに?」、「“源泉”ってどういうこと?」と訊かれて即座に、誤りなく、わかりやすく答えることができるだろうか。
 中高生、大学生、専門学校生、といった学生のみならず、社会人となり給料をもらい、家庭を持つようになった大人たちにも是非読んでいただきたい、お奨めの一冊である。わたくしも、読書にちょっとした間が空いてしまったので、検めて最初から読み直す予定だ。



 なんとも溜息が出てしまうことに、息を吸って吐いているだけで一ト月に均すと時に数十万も持ってゆかれる時代である。おまけに近年稀に見る物価上昇が、それに輪を掛け、追い打ちを掛けている。
 最早、「やれやれ」では済まぬ。わたくしもここ数ヶ月、折に触れて、「貧乏人は死ねということか!?」「低所得で税金や年金エトセトラの支払が滞る者は路頭に迷え、ってか!?」など口のなかで呟くことが多くなった。
 けれども、ふと冷静さを取り戻し、来し方を省みたとき、その雄叫び──喚き、というべきか──も己の無知と無恥、自制心の無さから生じた、正に「身から出た錆」なのだ、と気附くことになる。
 斯くしてみくらさんさんかは、斯様な結論を導くに至るのだ。即ち、──
 自分の不明が奈辺にあるかを(目をそらすことなく己を偽ることなく)客観的に見つめ、把握し、お金と生活の関わり様について見直すことが急務では?
──と。◆

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。