第3688日目 〈松坂健『海外ミステリ作家スケッチノート』を読みました。〉 [日々の思い・独り言]

 髪の毛を乾かしている間に、松坂健『海外ミステリ作家スケッチノート』(書肆盛林堂 2022/05)を拾い読みしている。
 昨日一瞬だけ話題に上したジョン・D・マクドナルドが項目立てされていて、嬉しかった。割に好意的に書かれているのが、余計に。
 「ペーパーバック・ライターという冠を卑下せず、コツコツやってきて、最後はメジャーライターになった努力の人、それがジョン・Dなのである」──松坂のジョン・D評である(P96)。
 なぜかこの結びの一文を読んだとき、無性に涙腺がゆるんで仕方なかった。訳者解説の類を除けば、あまりジョン・Dを温かい眼差しで語る文章に、お目にかかることがなかったから(わたくしの怠惰や見落とし等が原因かもしれない)。なぜだかペーパーバック・ライターという出発点が、最後まで殊日本の評者の目を曇らせてきたように思えるのだ。もっとも翻訳の関係もあるのだろうけれど……。
 ああ、この人にもっとジョン・Dを語ってほしかった、と願わずにはおられなかった「スケッチ」である。が、もう著者はこの世にない。
 本書は、松坂が生前企画していた101人のミステリ作家のガイドブック用に書かれた原稿を集めた一冊だそうだ。そのあたりの事情は、(著者歿後の出版であることもあり)編集方針も含めて小山正の解説に詳しいが、或る意味で圧巻は、執筆予定作家も交えた101人のリストである。
 松坂が、エラリー・クイーンやコリン・デクスター、スティーヴン・キングやジェイムズ・エルロイについてなにを、どう書いたか、とても興味深い。読んでみたかった。かれらについてのスケッチが遺されなかったのは、返す返すも残念でならない。◆

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