第3745日目 〈ハズレの年?〉 [日々の思い・独り言]

 『古書ミステリー倶楽部』全三巻をそれなりに楽しく読んで以後も何冊かの小説を読んだけれど、感想文を書くのもTwitterに読了ツイートを流すのもヤメにする程ハズレを引き続けた不運を嘆きたい。
 以後に読み終えた小説四冊の著者とタイトルを列記する非道はしないが、うち二人がベテラン作家で過去には好んで読んだけれど此度の三冊は「徒労」としか言い様のない、スランプなのか耄碌なのか判断しかねる、呆れ果てたる愚作と断を下すより仕方のない代物だった。なかには「良いな」「好きだな」と目次に丸をつけた短編もあったが、それは読後間もない感情であって維持継続される気持ではない。
 唯一読んでよかった、と感じるのは、芥川龍之介の短編をモティーフにした短編を二人のベテラン作家が書いていて、その短編が架蔵する芥川の作品集には入っていないので偶々売りに出ていた文庫版全集揃を購い、「カルメン」「沼地」を読むことができた点のみである。
 残りの一人、一冊は、そろそろ中堅の域に差しかかろうとしている人の、横濱を舞台にした<日常の謎>系の短編集なんだけれど、これがもう箸にも棒にも引っ掛からぬたわけた作品でわずかも琴線に触れるところなく、長所を無理矢理でも見附けることすらできず、正直なところ読み通すにはかなりの体力と精神力を消耗した……もう二度とこの人の小説を手にすることはあるまいな。
 結局、今年一年で読んだ小説のうち、「2023年に読んでよかった本 ベスト……」に入るのは橘外男『蒲団』のみと、現時点ではなりそうである。
 今年ももう残すところ十日を切った。待機中の小説からなにを選ぶかすっかり弱気になっているわたくしだが、鈴木悦夫『幸せな家族』、山田風太郎『厨子家の悪霊』、緑川聖司『晴れた日は図書館へいこう 物語は終わらない』、劉慈欣『三体』は、どれも前期待を裏切らぬものと信じて、過去の四冊についてはもう忘れることにしよう。
 忘れるといって舌の根も乾かぬうちにこんなことをいうのもなんだけれど、最後に生田耕作の著書から、わたくしの気持ちを代弁するような一節を。曰く、──

 最初の数十ページで、私はいさぎよく書物を床に叩きつけるべきであった。批判の最高の形式は沈黙であり、一冊の書物にたいする、一人の著者にたいする最高の批判形式は「読書の中絶」にあるからだ。書評の義務にせまられ、自らに苦役を課する思いで、読みつづけ、上・下二巻千ページ近い大作に目をとおしたあと、いま私は、自ら招いた優柔不断の代償として、不愉快な重労働のあとにつきまとう後悔と、いいようのない腹立たしさに向かい合わされている。私に残されたものは、首尾一貫した書評ではなく、この憤ろしさの原因究明と、その報告があるだけである。(「虚妄の『戦後』」 『生田耕作評論集成Ⅳ 滅びの文学』P273 奢灞都館 1996/01)

──と。ご想像あれ。◆

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